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ツイン・ピークス The Return 考察 後半 (第9章~第16章) まとめ解説 シンクロニシティ

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 今週の第16章で、とうとうクーパーが現実世界で復活しました。それを待っていたかのように、今までバラバラだったパズルのピースが全て "ツイン・ピークス" に集まろうとしています。

 本国アメリカでは旧シリーズの放送形態を再現するかのようにラスト2話(第17章と第18章)を連続で放送していました(旧シリーズの時は第28話と第29話を連続で放送)。ここ日本では通常通り1話ずつ放送するようなので、この "ラストを連続で放送する" という形態にあまり意味はないのかもしれません。しかし、パズルのピースが最終章の手前で全て集まってきているということを考えると、どうも意図的に構成しているのではないかとも思うのです。

 今まで放送された内容を見ると第8章以前と第8章以降では明らかにテイストが違うポイントが3つあります。まず1つは "BANG BANG BAR" ことロードハウスのシーン。第8章以前のロードハウスは現実に即したツイン・ピークスの住人たちが次々と登場していましたが、第8章以降になると物語とはなんの脈略もない人物たちが登場して、わけの分からない会話をボックスシートで繰り広げていました。第9章とか第12章辺りでは、これはもうオマケみたいなものなのかなと思っていたのですが、第14章でビリーの話題が出てきたことで、ちょっと見方が変わりました。それについては後述します。

 もう1つは第8章以降、進化した "腕" が全く登場しないことです。この理由については最終回を迎えてみないとなんとも言えませんが、明らかに第8章が何かの軸になっていることを現わしています。

 そして、最後の1つは "時間軸" 。特にツイン・ピークスを舞台にしたシーンは、どの順番が正規の時系列なのかが全くわかりません。この構図は『マルホランド・ドライブ』のシレンシオ以前と以降、もしくは『インランド・エンパイア』のシルクのハンカチを覗き見る以前と以降と同じ形をしています。『ロスト・ハイウェイ』の入れ替わりシーンも然りです。その構図は前半(第1章~第8章)と同じように、あるテーマを各章ごとに繰り広げるため、あえてシーンをぶつ切りにしてコラージュのように各章にまとめた印象があります。云わば "連想ゲーム" のような姿をしているのです。

 その理由を探るべく、まずは前半考察と同じように、各章の大まかなテーマとロードハウスで何が起きていたかを確認してみます。

 

 【第9章】

テーマ:ガーランド・ブリッグス少佐

ロードハウス:腋が痒い女 エラ

 

 【第10章】

テーマ:愛

ロードハウス:レベッカ・デル・リオ 「No Stars」

 

 【第11章】

前半テーマ:座標と "ゾーン"

後半テーマ:ミッチャム兄弟

 

 【第12章】

テーマ:青いバラ

ロードハウス:アンジェラの話題

 

 【第13章】

テーマ:時間軸

ロードハウス:ジェームズ・ハーリー 「Just You」

 

 【第14章】

テーマ:夢

ロードハウス:ビリーの話題

 

 【第15章】

テーマ:真相

ロードハウス:四つん這いで叫ぶ女 ルビー

 

 【第16章】

テーマ:復活

ロードハウス:オードリーのダンス

 

 こうして大まかに並べていくと各章のテーマとロードハウスはどこかシンクロしているように見えてきます。また一部で話題となっているのが『The Return』に隠されたシンクロニシティです。第1章のサム&トレイシーと第3章のクーパー帰還のシーンは見事なシンクロをしています(Twin Peaks mauve zone - YouTube)。これに限らず、ジャコビー先生のシーンやゴードンのローラ幻視など、ピーカーたちが発見したシンクロは各章に散りばめられ『The Return』と『Fire Walk With Me』までが25年の時を超えて対になっていることまで現わしています(ただし、それがどこまで意図的に製作されているのかはわかりませんが...)。

 このシンクロニシティは、第14章の "夢見人" で考察した "集合的無意識" と深い関わりがあります。僕たちの "意識" や "夢" は、海底よりも深い精神世界で誰もがつながっているという概念が集合的無意識で、それをベースにして例えばAさんはBさんと全く同じ経験を次元の離れた全く違う場所で体験したというのがシンクロニシティになります。それは客観視して初めてわかることであり、主観だけではシンクロしているのかどうかわからないのです。もっと簡単に言うと "正夢" と言い換えることもできるかもしれません。正夢で語ってしまうと "デジャヴ" ということになり、どちらかというとニュアンスが "幻" になってしまいますが、それを既視感ではなくタイムスリップしているような感覚、それがシンクロニシティだと言えるのです。そして、この概念を利用してデイヴィッド・リンチはある人物の物語を他の人物の物語とシンクロさせてストーリーを組み立てているのです。まるで『ロスト・ハイウェイ』のフレッドとピート、『マルホランド・ドライブ』のダイアンとベティ、『インランド・エンパイア』のスーザンとニッキーのような感じです。

 例えば、ロードハウスで腋を掻きむしっていたエラ。彼女の存在はかなり理解に苦しんだのですが、シンクロしているという視点で見てみると、誰とシンクロしているのかが、なんとなくぼんやりと見えてくるのです。彼女はハイになったまま仕事に行ったためクビになったと言っていました。これと同じ境遇のキャラクターは一人しかいません。スティーヴンです。彼はハイになった状態で面接を受けて見事に落ちています。この二人の共通キーワードは "仕事中にハイになっている" こと。ただ、エラは女性でブロンドです。そして、ハンバーガーを売ってる。スティーヴンの妻ベッキーはダブルRダイナーにパンを届けていました。そして、彼女もブロンドです。となると、エラ=ベッキーというのが、なんとなくぼんやりと見えてきます。第15章でスティーヴンは自ら命を絶ったであろう描写がありました。その後のベッキーがどうなったかは描かれていませんが、もしかしたら、その未来の姿がエラなのかもしれません。

 かなりこじつけ感が強くて、自分で書いててもホントかよ?と思ってしまってるのですが、それでも可能性はゼロではないような感じもします。いずれにしても『The Return』の中には共通ワードを持つキャラクターというのがちょいちょい存在するのです。このシンクロニシティが残り2話でどのような結末を迎えるのかはわかりませんが、いずれにしても登場するキャラクターや場所が相互作用しながら、非常に精神性の高い物語がなにかしらの収束を迎えることは確実です。

 エンターテイメントという性質上、リンチ監督は誰もが楽しめる娯楽として物語を紡いでいる一方で、『インランド・エンパイア』からの10年で積み上げてきたインスピレーション、もっと言えばあのカンヌ映画祭での世紀の大ブーイングへの逆襲を、この『The Return』で成し遂げようとしている感じもするのです。

 

 では、第8章以降、各キャラクターたちがどのような道を歩んできたかも最終章の前にざっと振り返ってみたいと思います。

 

◆デイル・クーパーFBI特別捜査官

 第7章でスパイクによる暗殺を撃退したクーパーはラスベガス警察で指紋やDNAを採取される。この頃から妙にコンセントが気になり始めています。警察から解放されたクーパーは、そのままダギーが交通事故に遭った時からの掛かりつけの医師のもとに行き検査を受ける。その夜、ジェイニーEと体を結びオーガズムを味わう。翌日、ミッチャム兄弟から呼び出しを受けてチェリーパイを届けると、相手は大喜びで一晩中大騒ぎをする。家に帰るとジェイニーEは「天国にいるみたい」とクーパーに抱きついて離れない。その翌日、今度は同僚のアンソニーがコーヒーをご馳走してくれる。家に帰りチョコレートケーキを食べながらテレビをつけると「ゴードン・コール」の名前。持っていたフォークをコンセントに差し込み感電。目が覚めるとクーパーに戻っていた。ツイン・ピークス保安官事務所に向かう。

 

◆クーパーのドッペルゲンガー(悪クーパー)

 第8章でレイに撃たれるが生き返る。ハッチ&シャンタルが待つ農家へ向かう。ダンカン・トッドが計画通りに事を済ませていないことを知りハッチに始末を命令する。農場(ファーム)に行き、レイから座標を受取り、フィリップ・ジェフリーズの裏切りを知る。コンビニエンス・ストアを訪れ、フィリップに裏切りの理由を問い詰めるがスルーされてしまう。外にいたリチャードを連れて、ジュディと関係があるらしい場所へ向かうが、そこは罠だった。ダイアンに座標の全てを教えてもらい、ジャック・ラビット・パレスの奥へと向かう。

 

 第8章以前は対照的に描かれていたクーパーと悪クーパーだが、第8章以降は出番が極端に減ってしまいました。その理由は先ほどのシンクロニシティが関係あると思うのですが、それはさて置き、そもそもの目的であった "座標" を手に入れた悪クーパーは、順当に駒を進めている印象です。その最終的なゴールは "ジュディ" 。逆に悪クーパーをロッジに強制送還させるため現生に帰ってきたクーパーは、ダギー・ジョーンズという別の人生を味わうことによって十二因縁を経験することになりました。やっと本来の姿に戻り、いかに悪クーパーを強制送還させることができるのか?が最終章の見所となりそうです。

 

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 次はゴードン・コールを中心としたFBIの面々。

 第7章で悪クーパーと対面したダイアン。FBI一行は一路フィラデルフィアへ帰途しようとするが、国防総省長官からブリッグス少佐の情報が入り、サウスダコタ州バックホーンへ向かう。首のない少佐の遺体と対面し、身体の状態が40代のままであることに疑問を抱く。一緒に発見されたルース・ダヴェンポートの殺害容疑で署に拘留されているビル・ヘイスティングスを事情聴取すると、"ゾーン" という不可思議な空間の話が出てくる。その夜、ダイアンが悪クーパーとメールのやり取りをしていたことが発覚、時同じくしてニューヨークのペントハウスに悪クーパーが訪れていた写真も発見される。

 翌日、ビルの案内によってシカモアという地名の空地を訪れ、ゴードンは "ゾーン" に接近、近くにルース・ダヴェンポートの遺体を発見、ホームレスのような "木こり" の存在にも触れる。ルースの遺体に書かれていた "座標" がツイン・ピークスを指していることも明らかになった。その不可思議な現象の数々に触れた日の夜、ゴードンとアルバートは "青いバラ特捜チーム" にタミーを加入させる。

 トルーマン保安官から連絡をもらっていたゴードンは25年ぶりにツイン・ピークス保安官事務所と連絡を取る。そこでクーパーが2人いるという情報が入る。同じ頃、タミーはアルバートから "青いバラ事件" の顛末を聞き "トゥルパ" の存在を知る。ダイアンが悪クーパーと会った最後の夜、彼はブリッグス少佐の話をしていたことも明らかになった。さらに少佐の遺体から出てきた結婚指輪の話をすると、指輪に彫り込まれていた人物の名がダイアンの姉妹であることが判明、ゴードンはラスベガスのFBIにダギー・ジョーンズの情報収集を命令する。

 ゴードンはその日見た "モニカ・ベルッチ" の夢を語る。その夢の中で1989年2月16日、FBIフィラデルフィア支部にフィリップ・ジェフリーズが現れた時の事を思い出す。

 あくる日、部屋を訪れてきたダイアンは悪クーパーと最後に会った夜のことを告白する。そして、様子がおかしくなった彼女は「私は保安官事務所にいる」と告げるとゴードンに銃を向ける。アルバートとタミーによって撃たれたダイアンは一瞬にして姿を消してしまう。それは "青いバラ事件" の再来のようであった。

 

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 映画「Fire Walk With Me」で長年の謎とされてきた "青いバラ" と "フィリップ・ジェフリーズ" が、ツイン・ピークスという物語の非常に重要なキーワードであることが明らかになりました。第8章以前では、25年間失踪していたクーパーの真偽を問うだけに留まりましたが、第8章以降では "ブリッグス少佐" の謎を追う内にゴードンの原点とも言える "青いバラ事件" が重要視されるようになり、さらには身近な存在であるはずのダイアンが悪クーパーと内密なやり取りをし、"トゥルパ" であることも判明したのです。また、この "トゥルパ" もしくは "化身" という単語がチベット用語であることから、旧シリーズと変わらず "密教" が物語に深く関わっていることも明らかになっています。ダイアンが最後に言い残した「保安官事務所にいる」というセリフから、FBIの面々も最終章でツイン・ピークスに向かうことが示唆されています。

 

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 続いてはツイン・ピークス保安官事務所の面々です。

 トルーマン保安官、ホークと共に実家を訪れたボビーは、父親ブリッグス少佐が残したスティック状の筒を受け取る。その中身には2枚の小さなメモが封入され、1枚には2日後の10月1日に "ジャック・ラビット・パレス" で何かが起きることが、そしてもう1枚には記号の羅列の中に "クーパー / クーパー" と印字がされていた。そのメモを頼りに位置を割り出したトルーマン保安官に、ホークは古い地図を広げてみせる。ブルー・パイン・マウンテンが "崇高かつ神聖な場所" であること、そして、山の上に描かれている黒いマークについては何も知るべきではないと語る。

 町の交差点で起きた悲惨なひき逃げ事件、その目撃者が酷い暴力によって重体に陥ってしまった傷害事件の犯人がリチャードであるとわかったトルーマン保安官は、祖父であるベンジャミン・ホーンのもとを訪れる。事の真相を聞かされたベン・ホーンは目撃者の治療費を全額負担することを約束した。そして、たまたま届いた "315号室" の古いルームキーを、ハリーに記念として渡してほしいとフランクに託す。

 10月1日、リチャードとドラッグの闇取引をし、ミリアムからの手紙を隠蔽しようとした罪で、トルーマン保安官たちはチャドを逮捕する。そして、ボビーの案内に従いジャック・ラビット・パレスへと赴く。そこからさらに東へ253ヤード進むとシカモアの梢が立つ少し開けた場所へ出る。そこにはナイドが全裸で横たわっていた。彼女を助け起こそうとした矢先、突如現れたワームホールにアンディが吸い込まれてしまう。その先には "消防士" がいて、アンディに数々のイメージを見せる。その投影が終わると、一行はいつの間にかジャック・ラビット・パレスまで戻されていた。

 保護したナイド、逮捕されたチャド、そして、左頬に傷がある酔っ払いが留置所に拘留されている。さらにロードハウスで騒ぎを起こしたジェームズとフレディまでが拘留されてしまう。酔っ払いはダギー・ジョーンズのように人の言葉をただオウム返しし、ナイドは何か伝播でも送るかのように鳥のような鳴き声を出し続けている。

 

 悪クーパーが求めていた座標、ヘイスティングスやFBIが求めていた座標を、保安官事務所の面々はブリッグス少佐の、ある意味 "遺書" のような小さなメモから、いとも簡単に手に入れました。それは父から子へのメッセージでもあり、宇宙の果て、ないしは森の奥深くから届いたメッセージでもありました。そこに横たわっていたのは第3章で無限空間に放り出されてしまったナイド。その希有な存在は、今、保安官事務所で保護されています。クーパーやゴードンたちが集うであろう場所に、これだけの面子がこの時点で揃われたことには、かなりの意味がありそうです。

 

 その他、オードリーを含めたホーン・ファミリーについてや、もともとのダギー・ジョーンズとは結局何者だったのか?なども妄想していきたいところですが、それは最終回を迎えてからゆっくりと味わいたいと思っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第16章 クーパー復活!ダイアン消滅!ここのご近所どうなってんだ!

最終回が見えてきたと言うことで、

リンチ先生、ぶっこんできましたよ!

姐さん、カオスです。

カオスがやってきました。

 

◆どこかの丘

冒頭は静かに、

まるで "マルホランド・ドライブ" のオープニング。

今にも正面からヒャッホー!と車が走ってきそう。

 

先週、殴り倒したリチャードに向かって、

「おしゃべりしよう」と言ってた悪クーパー。

なんにも喋りません。

...、...、...。

ほら、リチャード、なにか喋りたそうじゃん。

少しは気使ってるみたいだよ。

 

トラックは開けた丘に辿り着きます。

小高い丘のてっぺんには大きな岩が。

まるでグラストンベリーの丘みたい。

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こっちの丘は教会が建っているけど、

その昔はアーサー王の墓があったというから、

同じように大きな岩がポツンと、

そんな風に置いてあっただけかもしれない。

 

悪クーパー、やっと口を開きます。

「オレは "ある場所" を探しているんだ」

「その場所がなんなのか、わかるか?」

んなの、わかるわけないやん!

リチャード、キョトってるよ。

あんた今まで、なんも喋らへんかったやん。

「3人の人間から "座標" を聞いた」

「うち2つの "座標" が一致した」

「お前なら、どうする?」

リチャード「そりゃ一致した場所に行くさ」

「お前は賢いな、リチャード」

なんなんだ、これ...。

なにが言いたいのかさっぱりわからへん。

 

その向こうから走ってくるのがジェリー!

マジか。

あんた、どこまで迷子なんだ。

おもむろにリュックから双眼鏡を取り出すけど、

お~い!

使い方、間違ってるよ。

ていうか、それでも見えるんかい!

そっちの方が奇跡だよ。

 

岩に近づく悪クーパーとリチャード。

「オレの方が "25" も年上だ」

「お前、あの岩に乗れ」

...、...、...。

ムチャぶりだよ、センパイ...。

でも、リチャードがやけに素直だなぁ。

ひょいひょいと岩に乗ります。

んでもって、座標の位置まで行くと、

「よし!ここだ!」

ってところで電気に打たれます!

バリバリバリバリバリ!!!!!

リチャード電気分解されて、ジ・エンド。

最後は頭部がボン!と火花を吹いて爆発。

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なんなんだ、これ...。

それを無表情で見ている悪クーパー。

「チッ...」と舌打ちします...。

んだよ、罠だったのか...、みたいな。

でもって「じゃあな、息子よ」って、

お~~~い!!!!!

あんたの息子だったんかい!

さらっと、とんでもないことコクりますな!

みんなが言ってた、

オードリー、悪クーパーにヤラれた説、ほぼ確定。

25年前、

ICUの中で何があったか想像するだけでおぞましい。

 

でもさ、旧シリーズでの彼。

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何かと、このセーターで茶化されているジャック。

その名をジョン・ジャスティス・ウィーラー。

ホーン産業の経営難立て直しの為にやってきた男。

旧シリーズの第27話で、

いきなりブラジルに帰国することになって、

自家用機で飛び立つ寸前の彼を呼び止め、

オードリーは処女を捧げたんでしたよね?

てな具合だから、

リチャードの父親はジャックだと思ってましたが、

新シリーズでは何もなかったかのような扱い。

こんな奴いたっけ?みたいな...。

深い事はまた後でじっくり妄想するとして、

どうやら悪クーパーの毒牙は、

ブラジル、リオデジャネイロまで行ってたっぽい。

 

座標を "3人" から聞いたと言うのも気になります。

一致したという "2つ" は、まず間違いなく、

レイとフィリップから教えてもらった座標です。

悪クーパー、端っから疑ってたようで、

うまくリチャードを使って出し抜きました。

残りの "1人" はおそらくダイアン。

ただ、全部教えてもらってたわけじゃないみたい。

で、このメール。

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悪クーパー、絵文字ってなんだよ!

わかりやすく書くなら、

「(笑)ぜんぶ」

怖ぇぇぇ!!!!!

ダイアン、なんで全部教えてなかったん?

 

ていうか、消防士!

結局、クーパー、リチャードに会ってないけど!

リンダはどこにいった?

 

ランスロットコート

ダギー・ジョーンズの家にハッチ&シャンタル到着。

二人とも作業着を着てるので、

何かに成りすまして家に入り込もうって魂胆みたい。

シャンタル、スナック菓子をポリポリ。

ふと足元を見ると、なんと箱買いしてるよ、この人!

どんだけ好きなんだ!

 

先週に引き続き妙な会話をするこの夫婦。

今朝、鳥の鳴き声がうるさかったって...。

もしかして、ナイド?

 

そこにラスベガスのFBIが到着。

ウィルソン!

そんな堂々と窓から中を覗くやつがいるか!

曲がりなりともFBIだろ!

おとぼけ具合がハンパないです。

 

◆病室

ベッドで昏睡状態のクーパー。

ジェイニーEとサニージムが心配気に付き添ってる。

そこにブッシュネル社長、登場。

さらにミッチャム兄弟まで見舞いに来た!

フィンガーサンドウィッチだって。

うまそうやなぁ。

ロドニー、

食料を届けるから家の鍵を貸してくれと言う。

そんな簡単に家の鍵なんて渡さないだろ、

て、あっさり渡したよ、ジェイニーE!

マジか。

「あら、まあ♪」じゃないよ...。

あんた、貰えるものはとことん貰う主義だね!

 

◆メイフェア・ホテル

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なんだかんだで、

第10章から滞在し続けてるメイフェアホテル。

ゴードンが装置の音に耳を澄ましています。

何を感じてるんでしょう。

 

◆病室

ホテルの装置の音と病室のモニターの音がシンクロ。

サニージムがトイレに行きます。

ジュース飲み過ぎたんやな。

一人になったブッシュネル社長にフィルから連絡が。

FBIが病院に向かってると。

ヘッドリー捜査官、なかなか行動が素早いですな。

ウィルソンを怒鳴り散らしてるだけのことはあります。

 

ランスロットコート

スナック菓子を食べ続けてるシャンタル。

向こうからウィルソンがフォードに乗り換えて到着。

 

ハッチはサミーの話をし始める。

金を貸してくれたからいい奴だったんやって。

そうしている内にミッチャム兄弟が到着。

リムジンから出てくる彼らを見てハッチが呟く。

「あん中の一人がダギーか?」

「どいつがうちのボスに似てるってんだ、バカ!」

イラついてるシャンタルに理由を聞くと、

なんとスナック菓子があと一袋しかないらしい!

そんなに食ったんか!

さっき箱にたんまり入ってたじゃん!

ダギーの家に食料を届けるキャンディたち。

シャンタル、なんだったら、あれ貰っとけ。

 

すると今度は目の前にまた1台の車が到着。

ザワスキー会計士?

誰だ、お前?

ハッチ&シャンタルの車が邪魔だと言ってくる。

シャンタル、消えな!と一蹴。

どけないなら動かす、と会計士、

いきなり自分のベンツをワゴンにぶつけてきた!

力づくで動かすにもほどがあるだろ!

生理中のシャンタルは一瞬でブチ切れます。

会計士に拳銃一発をぶち込む!

が、外れた!

嘘だろ!

射撃の名手だぜ!

ベンツの裏に逃げ込む会計士。

今度はマシンガンでお見舞い。

シャンタル、腕を撃たれる!

マジか!

なんちゅう会計士や!

しゃあない、逃げよう!とハッチ。

ワゴンを出すシャンタルに会計士が撃ちまくる。

軟なワゴンでは簡単に弾が車体を貫通してしまう!

ヤバイ、シャンタルがやられた!

さらに容赦なく撃ちまくる会計士。

ハッチまでがマシンガンの餌食に!

なんだ、これ。

まるでタランティーノみたい。

でも、間の取り方はきっちりリンチ印。

いろんな映画のオマージュを散りばめてますな。

 

何事かとダギーの家から出てくるミッチャム兄弟。

おとぼけ具合がたまりません。

この愛すべき兄弟、

後半からグイグイ株を上げてます。

 

フォードで待機していたウィルソン。

会計士を逮捕します。

しかし、この会計士、いったいなんだったん?

ていうか、

このランスロットコートという新興住宅地。

これだけの騒ぎがあるってのに誰も出てこない!

ガレージのシャッターもみんな閉まってる。

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人が生活している気配がまるでない...。

なんか不気味...。

 

◆病室

突如、グレート・ノーザン・ホテルの謎の音が響き、

ブッシュネル社長を病室の外に導きます。

そして、うっすらと片腕の男が現れると、

おもむろにクーパーが目覚めた!

しかも、動きが機敏だ!

「完全に目覚めた」とクーパー。

やっほーい!

15時間も待ったぜ!

普通の2時間映画で言うなら7~8本分だ。

長ぇぇぇ!!!!!

 

片腕の男、いきなり "翡翠の指輪" を渡す。

目をパチクリさせるクーパー。

そんなことよりもって感じで、

「種は持っているか?」と問いかけます。

金色の小さな玉を見せる片腕の男。

クーパー、髪の襟足をひとつまみ抜くと、

「もう一つ作ってもらいたい」と渡します。

なに、このシステム...。

 

ジェイニーEとサニージムがトイレから帰ってくる。

起き上がっているクーパーに大喜び。

サニージムなんてクーパーに抱きついちゃいます。

しかも、寝ぐせがついてるよ!

クーパーの寝ぐせだよ。

ブッシュネルも戻ってくるなりガッツポーズ。

 

今すぐドクターを呼んできてくれないか。

サンドウィッチを取ってくれ腹ペコだ。

(FBIが僕を探してる?)素晴らしい。

バイタルを確認してくれ、退院する。

服を取ってくれ、そこのキャビネットだ。

車を正面にまわしておいてくれないか。

着替える、下で落ち合おう。

...、...、...。

矢継ぎ早とは、このことですな。

今までのダギー状態だったら、

この間にできることって、

せいぜいチョコレートケーキを口に運ぶぐらいだよ。

サニージムもビックリ。

 

ブッシュネルから拳銃を借り、

ミッチャム兄弟に連絡を入れると、

ワシントン州スポケーンへ向かうと伝えます。

ミッチャム兄弟、

お安い御用だと、さっそく自家用機を準備。

3人娘に飛行機に乗るぞぉ~!と言ったところで、

ツイン・ピークスのテーマ」が流れ始める!

なんだ、これ。

否が応でもテンションが上がっちまうじゃないか!

 

ゴードンから電話が掛かってくるだろうから、

これを伝えて欲しいとメモを渡すクーパー。

そして、別れの握手。

あなたは尊敬すべき人物、あなたの親切を忘れない。

そう言って、病室を後にするクーパーに、

ブッシュネルが「FBIはどうする?」と聞いてくる。

振り向いたクーパーは一言。

「私がFBIだ」

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ウギャーーー!!!!!

こんなキメ顔、卑怯だろ!

もう考察もへったくれもあるか!

リンチ先生、あんた最高だよ!

これだけでご飯10杯はおかわりできまっせ。

 

◆病院のロータリー

BMWに乗り込むクーパー、颯爽と出発します。

入れ違いざまにヘッドリーたちが到着。

この絶妙なタイミングもいいね。

そのまま高速道路を疾走していくBMW

サニージム楽しそう。

ジェイニーEもどことなく満足げ...。

 

◆メイフェア・ホテルのバー

幸福な余韻のまま、

いつものように黄昏ているダイアンがいる。

なんだろ、珍しく "青い服" です。

スマホに届く悪クーパーからの "ALL" メール。

幸福な時は一瞬にして消えてしまいます。

時刻は "16:32" 。

覚えてる...、覚えてる...、と座標を打込むダイアン。

「48551420117163956」

うまくいくかどうか心配してるけど、何を?

ちなみに上の座標はこちら。

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第11章でトルーマン保安官が検索してた位置と一致。

48°55'14.20"N 117°16'39.56"W

https://goo.gl/maps/Efa4wXVXhTq

ここが聖なる山かぁ。

 

◆メイフェア・ホテル 1827号室

座標を送るとダイアンの表情が強面になる。

ハンドバックに拳銃を入れたまま部屋へ向かう。

流れる音楽は第1章の悪クーパー初登場時と一緒!

これから何か不穏なことが起こる予感が。

部屋の前までダイアンが辿り着くと、

ゴードン、気配を感じたのか 入れと呼び込みます。

妙に意識が研ぎ澄まされて人間離れしてきました。

アルバートとタミーは至って平然。

なんだろ...、全てお見通しみたいな?

 

ダイアンはクーパーとの最後の夜を語りだします。

今から21~22年前。

ダイアンはまだFBIに勤めていた。

音信が途絶えていたクーパーが突然自宅に現れる。

もちろん、これは悪クーパー。

まるで尋問のようにFBIの様子を事細かに尋ねると、

悪クーパーはダイアンに口づけをした。

「それは前にも一度あったこと」

そうなの?

ゴードンもアルバートも、ふぅんって感じ...。

タミーだけ、妙にゴードンを気にしている。

 

悪クーパーの口づけに違和感を覚えたダイアン。

怖くなったその時、彼は笑ったらしい。

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こんな風に笑ったのか。

それとも、

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こんな風に笑ったのだろうか?

いずれにしても、

クーパーは笑いながらダイアンを犯した。

...、...、...。

涙ながらにダイアンが語っているのに、

ゴードンもアルバートも妙に冷静というか...。

ふぅん、そうなの?みたいな。

なんなんだろ、これ。

 

その後、

ダイアンは古いガソリンスタンドに連れて行かれた。

たぶん、コンビニの事だと思うけど...、

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だったらコンビニって言えばいいのに。

ちゃんと看板までついてるんだし。

なんか、このニュアンスの違いが気になる...。

その告白の時にまたもや "ALL" メールが届く。

時間は "15:50" !

時が逆行しています。

メールを見てどこか正気に戻ったようなダイアン。

「私は保安官事務所に...、保安官事務所にいる」

「彼に座標を送った」

「私は私じゃない。私は私じゃない。私は...」

持っていた拳銃をゴードンに向けるダイアン!

すかさずアルバートとタミーがダイアンを撃つ!

のけぞったダイアンは一瞬にして姿を消した!

ええっ!

"翡翠の指輪" 関係ないの!

マジか。

タミーはリアルな "青いバラ事件" に感嘆。

「ワ~オ、本物のトゥルパ」

よかったね、タミー。

結局、裏切りダイアンはなんだったん?

彼女の言うこと全て信じていいのかな?

 

◆赤い部屋

イスに腰掛けているダイアン。

ダギー・ジョーンズの時と同じように、

「何者かに作られた存在だ」と片腕の男が言います。

ダイアンの顔が卵の殻のように割れ、

黒い炎が吹き出すと中から種が出てきます。

そして、たぶんリチャードのように電気分解されて、

煙と共に存在は消え、イスに種だけが残った。

それは "金" ではなく "銀" だった...。

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ん?

リチャードのように?

...、...、...。

彼も作られた存在なのか?

 

◆シルバー・マスタング・カジノ

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ジェイニーEとお別れの時がやってきました。

思い返せば、

いきなりの平手打ちから始まり、

首根っこをつかまれ、

怒声に次ぐ怒声。

入れてもらったコーヒーはマズくて吹出すし、

食事はいつもサンドウィッチかチョコレートケーキ。

ホットケーキなんて最初の朝だけだったなぁ...。

襲われた時、スパイクの首を絞めている姿を見たら、

本気でこの人は怒らせない方がいいと思った。

だけど、裸を見せたらコロッと変わって、

今では愛してる、愛してる、愛してる...。

なんだかんだ言っても名残惜しいなぁ...。

 

ジェイニーE、もうダギーじゃないとわかってる。

この人は、私の "あの夫" じゃないんだって。

よく喋るし、指示は的確、車の運転だって上手い。

こんな人が私の夫であるはずがない。

でも、サニージムはそんなこと認めたくない。

パパはいつだってパパなんだ。

誰であってもいい、

キャッチボールができなくても、

お菓子をポリポリ食べてるだけでもいい。

ただ、そばに居て欲しい。

離れないでほしい。

クーパーはそんな想いを全部受け止めます。

「君たち二人を愛してる」

抱擁...。

ヤバイ、涙腺が...。

 

別れ際、ジェイニーEがたまらなく追いかけます。

「行かないで」と、すがるのです。

言われたことを繰り返すだけのダギーはもういない。

「行かないと...」

その瞳に宿る決心にジェイニーEは得心します。

別れの口づけ...。

感謝の気持ちを伝えるジェイニーE。

なんなんだ、これ...。

今週はいろんな感情が綯い交ぜになって、

どう処理したらいいのかまったくわからない。

 

◆ミッチャム兄弟のリムジン

彼らとツイン・ピークスに向かうクーパー。

君たちは "黄金の心" を持っていると称えると、

キャンディが感極まります。

 

◆BANG BANG BAR

今週はパール・ジャムエディ・ヴェダー

シアトル出身の彼がツイン・ピークスに出演って、

なんか感慨深いものがあります。

90年代初頭のあの閉塞感と妙な熱気。

お互いに随分と遠いところまで来たねぇ...みたいな。

 

オードリーとチャーリーが、

とうとうロードハウスにやってきました。

んでもって、MCのムチャぶりで、

いきなりオードリーのダンスコーナーが始まる。

曲も "Audrey's Dance" !

マジか。

これって、夢に揺蕩う乙女ってこと?

いい気持ちでクネクネ踊っていると、

いきなり「モニークに手を出すな!」と乱闘が。

で、みんな騒然の鏡シーン!

もう、なんのこっちゃ...。

 

そんなこんなで来週は2話連続放送の最終回!

...、...、...。

ではなくて、普通に1話ずつ放送するみたい...。

だとしたら第8章の後のインターミッションって、

やっぱ普通に宮里藍だっただけなのかなぁ...。

旧シリーズの放送形態を、

まんま再現してるんだと思ってたんだけど...。

ツイン・ピークス The Return コラム マーガレット・ランターマン(丸太おばさん / ログ・レディ)

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今週の第15章が最期となってしまった丸太おばさん。『ツイン・ピークス』の代名詞と言っても過言ではない町一番の変人でした(これは最大限の褒め言葉です)。彼女を演じていたキャサリン・E・コールソンさんは癌闘病の末、2015年9月28日に既に亡くなられています。享年71歳。長編映画テビュー作『イレイザーヘッド』から実に35年以上という長い付き合いになるデイヴィッド・リンチ監督は、彼女の訃報を受けて当時こんなコメントを残していました。

「今日、私は大切な友人のひとりであるキャサリン・コールソンを失いました。キャサリンは、まさに純金のような人物でした。彼女はいつも友人たちのそばにいて、全ての人々、家族、そして仕事への愛に溢れる人物でした。彼女は疲れを知らない働き者でした。彼女は笑いのセンスがあり、笑うことが好きでしたし、周りを笑わせることが大好きでした。彼女はスピリチュアルな人で、長年に渡り超越瞑想を実行していました。そして、彼女は丸太おばさんでした」

新シリーズ『The Return』の出演時も鼻にカニューレを付け、女優さんなのにカツラを被るわけでもなく、普通であればあまり公には見せたくない "素" の状態(しかも癌という非常にデリケートな状態)をこれでもかと曝しながら演じられていました。まるで「キャサリン・コールソン=丸太おばさん」なのだと言わんばかりです。こんな女優さん、今まで見たことがありません。その魂をあるがままの姿でカメラに納めることができたのもリンチ監督だからこそと言えますし、彼女をそうまでさせてしまうリンチ監督への絶大な信頼と愛情に思いを馳せると、観ているこちら側の胸にもズシンと重く響くものがあります。

第15章の考察で丸太おばさんのシーンはさらっと終わらせたのですが、最後に語られた台詞が丸太おばさん曰くキャサリン・コールソンさんからのとても熱いメッセージだったので、とてもあのふざけた駄文の中に入れる気にはなれませんでした。そして、保安官事務所の会議室で捧げられた黙祷、小屋の明かりが静かに消えていく様を観ていると、一つの時代が終わったと感じずにはいられないのです。

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旧シリーズでの丸太おばさんの印象は冒頭の "変人" もしくは "偏屈" な女性というイメージが強く、小学校とかで必ず一人はいた怖いおばさん先生みたいな感じ。裏を返すと「悪いことは悪い」としっかり怒ってくれる、今振り返ると良い先生だったんだな、みたいな人。

集会所のシーンで照明のスイッチをカチカチしていたのも、ダブルRダイナーの隅っこで噛んでいた "松脂" をプホッ!と吹き飛ばすのも、丸太おばさんだから笑って見ることができたキャラクターでした。そんなリンチ印の "ちょっとおかしな人" という面がありながら、ブリッグス少佐に啓示を与えたり、クーパーと共に巨人を目撃したり、最終回では保安官事務所に「これが入口への道よ」と "焦げたオイル" を届けたり、徐々に "森" からのメッセージを伝える重要なファクターへと変貌していきました。

中でも、映画「FIRE WALK WITH ME」での登場シーンが僕は一番好きなのですが、自棄になってロードハウスに向かうローラ・パーマーに、丸太おばさんは次のように語りかけます。

「こういう "火" が燃えだすと消すのが難しくなるのよ。無垢な弱い枝なんて真っ先に燃えてしまう。そして、風が吹くと全ての "善" が危険にさらされてしまうの」

まるで熱を帯びたローラの "火" を鎮めるように額や頬や掌に手を当て、"気を付けるのよ" と目配せすると多くを語らずにその場を去っていきます。ローラは丸太おばさんの手の温もりに一時の安らぎを覚え、ガラスに映る変わり果てた自分の姿を見ると、失い始めていた純真さに気づきます。ロードハウスのステージではジュリー・クルーズが、まるでシューベルトアヴェ・マリアのような祈りの歌「Questions In a World of Blue」を歌っています。失われていくもの、消えていくもの、救われないもの、そんな喪失感にローラの涙が止まらなくなります。

町で一番の変人と思われていた丸太おばさんが、誰の理解も得られず一人苦しんでいたローラを、実は町で唯一理解していたというシーン。いつ観ても、ジュリー・クルーズの歌と相まって静かな浄化を促してくれます。

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丸太おばさんことマーガレット・ランターマンには、今まで語られることがなかった裏設定がありました。『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』には、マーガレット・ランターマンがどのようにしてダグラスモミの丸太を抱えた "丸太おばさん" になったのかが描かれています。その他にも、小学校のクラスメイトに "ある人物" が居たり、その人物と一緒に "ある事件" に巻き込まれたことも描かれているのですが、ここでは丸太おばさんのビギニングについてだけ、少し触れたいと思います。

マーガレット、通称マギーは三十路を超えても恋愛や結婚などに興味がなく天涯孤独の身でした。町の図書館で働きながら、自然保護団体に協力する日々を送っていたのですが、そんなある日、マギーは一人の屈強な "木こり" サム・ランターマンと出会い、雷に打たれたように恋に落ちたのでした。二人の交際は順調に進み、交際を始めてからちょうど1年後、"ジャック・ラビット・パレス" でサムはプロポーズをします。もちろんマギーは喜んで受け入れるのですが、実はかなりの奥手だったサムをプロポーズに導いたのは、他ならぬ彼女の策によってだったのです。

結婚式当日、午後から嵐が吹き荒れはじめ、式の最中に一際大きな雷が森に落ちました。すぐに火の手が上がり、大火はブルー・パイン・マウンテンの麓に向かい始めます。消防団の団長を務めていたサムは、式を中断すると消火活動のために森に向かい、マギーもウェディングドレスを着たまま救助活動を手伝います。森の火は一晩中燃え盛り、ゴーストウッドの森を焼き尽くしていきました。

翌朝、マギーのもとに訃報が届きます。夫であるサムが消火活動中に過って谷に転落し亡くなってしまったのです。その報せが届いた時、マギーはまだドレス姿のままでした。

2日後、彼女は夫の亡骸を自宅の敷地の一区画にそっと埋葬しました。その翌日、想い出の地 "ジャック・ラビット・パレス" に赴いたマギーは、倒木していたダグラスモミの破片から小さな丸太を見つけます。それ以来、彼女は片時も離さずその丸太を腕の中に抱き続けています。まるで生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえるかのように...。

この丸太はマーガレットにとって夫であるサムの分身であり、森からのメッセージを受信するアンテナのようでもあり、天涯孤独で打ち解け合う人もいなかった彼女の唯一のぬくもりでもあったのです。

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マーガレットはラストシーンで自分の死が近いことをホークに報告します。死は終わりじゃないということ、そして、変化があるだけのことなのだと言い残すのです。それでも "怖さ" があると打ち明けます。手放す事が怖いと言うのです。この "心の揺れ" が、僕の胸にひどく突き刺さってきます。頭ではわかっている。終わりじゃないとわかっているんだけど、どうしようもなく込み上げてくるものがやはりあるのです。それをマーガレットは素直に "怖い" と表現していました。

今年、僕の周りでも癌で亡くなった方が数人います。一人はまだ40代で現役バリバリの野郎でした。サーフィンが好きで、野球が好きで、ガッチリとした体格が自慢の野郎でしたが、癌に侵されてから見る見るうちにやせ細っていきました。最後まで「病気には負けない」と口にしていたのですが、病とはやはり恐ろしいものです。自分でなんとかできるものなら、みんながみんな、必ずなんとかしたいと思うはずです。それができない悔しさ、今まで普通にできていたことができなくなっていく絶望、その境地を思うと居たたまれなくなります。鏡を見ると変わり果てていく自分の姿、それが僕だとしたら、あの "野郎" みたいに、あんなに気丈にふるまうことなんて、とてもできないと思います。

キャサリン・コールソンさんは、それを何千何万という視聴者の前で、ありのままに演じきっていきました。その姿をドキュメンタリーではなく、エンターテイメントの中に見事に組み込んだリンチ監督の手腕には敬服するばかりです。今回の新シリーズ『The Return』、リンチ監督の集大成以上の神がかり的な凄さをひしひしと感じます。

"変化" を迎えた世界が、マーガレットにとって、夫サムと大自然の中で新たな生活ができる幸福な世界であることを願っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第15章 エド、おめでとう!コンビニの先でヤカンがお出迎え!丸太おばさんに献杯!

お久しぶりです、姐さん。

先週、物語の根幹を理解したつもりでしたが、

そんなものなんの意味もありませんでした。

姐さん、

恐れていたことがとうとう起きちまいました。

マーク・フロスト、さじを投げちまいやした!

わけわかんねえっす!

森で犬の散歩してる場合じゃないぞ!

どうすりゃいいんだよ!

 

◆ホワイト・テール・マウンテン

リンチ先生、

ドローン撮影が余程お気に召した様子です。

 

◆州間高速道路90号線

ネイディーンが金のシャベル持って歩いてます。

なんか嬉しそうですよ。

ジャコビー先生に会えたのがよっぽどだったみたい。

 

◆ビッグ・エドのガソリンスタンド

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こないだは夜のシーンだったので、

あまり気にならなかったけど、

どうやら場所を変えたらしいです。

ちなみに昔はこんな。

めっちゃ廃れてます。

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そこへやってきたネイディーン。

ノーマとくっつきなさいと言います。

ええ!

今さら!

ネイディーンとエドが出会ったのは1984年。

既に30年以上も経ってますけど!

 

◆ダブルRダイナー

オーティス・レディングの「愛し過ぎて」

もお~、リンチの選曲は間違いがない!

この曲、これから完全にエドのテーマだよ。

歌詞までビッタンコなんだもん!

 

ノーマもフランチャイズをやめるらしい。

ウォルター、ショック。

ていうか、もともと相手にされてなかったし。

まあ、仕方がないさ。

ツイン・ピークスの男達は、

みんな一度はノーマさんに恋をするのだ。

で、30数年の時をかけて、

やっと...、やっと...、二人は結ばれました。

おめでとう!

 

◆電線

先週、アンディーが見た電線。

何かが伝播しているようです。

バリバリバリバリバリ...。

 

◆コンビニエンス・ストア

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悪クーパーがコンビニに到着。

この人、普通にやってきたな。

そんな簡単に行けるところなん?

二階に上がると何やらコンデンサがある。

これって映画に出てたやつやん。

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これね。

昔は "きこり" も身なりがキレイだったよね。

今は真っ黒だけどさ。

ていうか、今の "きこり" 口から血流してるけど...。

 

悪クーパー、フィリップに会いたいんだって。

言われて、コンデンサの電源を入れると、

ジャンピングマンの顔が現れます。

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こいつね。

ただ、怖いのがさ、

セーラの顔がめっちゃダブってるのよ。

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なにこれ?

ジャンピングマン=セーラ・パーマーってこと?

だとしたら、やばくないですか?

なんかラスボス感、出てきたんですけど...。

 

で、案内される悪クーパー。

その扉ってローラが夢で迷い込んだ扉だよね。

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壁の柄まで25年前と一緒です。

んでもって通路を歩いていくんですが、

ちょいちょい森がオーバーラップします。

たぶん、この森はゴーストウッドの森。

どうやら次元の階層が複数重なってるようです。

 

その先にまた階段。

これはゴードンが "ゾーン" で見た階段。

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てことは、ヘイスティングスもここに来た?

ブリッグス少佐は、ここで冬眠をしてた?

ね?

わけわかんないでしょ?

迷宮に入り込んだ感じするでしょ?

 

階段の先はどこかのモーテル。

悪クーパー、8号室の部屋に行きます。

開けようとしたら鍵が掛かってる。

そこに女が現れる。

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鍵を開けてくれます。

ていうか、誰?

ジュディ?

 

8号室の中にはフィリップ・ジェフリーズ。

ていうか、なに?

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みんなヤカンだって言うけど、

これ、ヤカンが喋ってる訳じゃないよね?

ヤカンの先のまるい部分がフィリップってこと?

それとも、その "思念" が具現化したもの?

事情が事情だから仕方ないけど、

もお、なにがなんだかです。

 

悪クーパー、完全にフィリップを疑ってます。

『ジュディ』を教えろと迫ります。

するとヤカンの口から数字が出てきます。

"485514....."

これルースの腕に書かれてた "座標" です。

てことは、聖なる山?

ジュディは聖なる山にいるのね?

 

黒電話に出たら外に追い出される悪クーパー。

そこにはリチャード。

どうやら悪クーパーを追いかけてきたらしい。

オードリーがクーパーの写真を持っていた。

だから、追いかけてきた。

意味がわかりません。

しかも、簡単にボコられます。

まあ、見た目はサイコな感じだけど、

喧嘩は強そうじゃないリチャードですからね。

二人はトラックの中でおしゃべりするんだって。

 

トラックに乗る前にメールを一本打つ悪クーパー。

「ラスベガスは?」

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これ第12章で裏切りダイアンがもらったメールです。

たぶん。

日付はわかりませんが、

ダイアンが受け取ったメールの時間は "19:28"、

悪クーパーが送った時間は "21:34" です。

二人の間にどれだけの時差があるんでしょ?

 

◆ゴーストウッドの森

スティーヴンとガーステン。

森の奥まで逃げてきたみたい。

なにやら左腿をさすっているスティーヴン。

しきりに「俺がやった...」と言ってます。

なにを?

スティーヴン、

どうも見えない何かに追われてるみたい。

それから逃げるため拳銃自殺するらしい。

犬の散歩中のシリルが二人を見かける。

ていうか、どこまで散歩してきてるん?

とりあえず見つかって逃げるガーステン。

銃声が響き渡る。

たぶん、スティーヴン、終わりです。

 

◆ニュー・ファットトラウト・トレイラーパーク

カールにスティーヴンのことを教えるシリル。

さっきのネイディーンもそうだけど、

この人たちの脚力、どうなってるん?

 

◆BANG BANG BAR

ZZ TOPの「SHARP DRESSED MAN」

フルヴォリュームで楽しんでるバーの人たち。

ていうか、バンドいないじゃん!

 

ジェームズとフレディーがやってくる。

レネーに声をかけると、

旦那のチャックがブチ切れます。

まあ、当たり前です。

ダチのスキッパーとボコボコにしてたら、

フレディーが入ってきて、

園芸手袋パンチで一発KO...。

なんなんだ、これ...。

 

◆FBIラスベガス支部

ウィルソンがダグラス・ジョーンズを連行。

その様子を見に行くヘッドリー。

部屋には子沢山なジョーンズ一家

旦那さん、可哀そうに手錠かけられてるやん!

なんなんだ、これ...。

 

◆ダンカンのオフィス

ダンカンとロジャー。

突然現れたシャンタルに殺されます。

なんだよ、シャンタル!

お色気じゃないのかよ!

夫婦そろって射撃の名手かよ!

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

牢屋に入れられるジェームズとフレディー。

「その手袋野郎、今度は何した?」とチャド。

フレディー、前にもなんかしとったんか!

レネーの旦那の様子が気になるジェームズ。

なんか、いちいちウザいんだよなぁ。

黙ってろ。

ナイドは相変わらず鳥の鳴きまね中。

 

◆ハッチの車の中

夫婦でハンバーガーのディナー中。

さりげなくインディアン虐殺の話が出てきます。

いいぞ、もっと語れ。

「火星だ」

...、...、...、

マジか...。

 

◆ダギー・ジョーンズの家

こっちはチョコレートケーキのディナー。

ジェイニーEってコーヒー出さないよね。

やっぱ、まずいのかな...。

テレビをつけると『サンセット大通り』

"ゴードン・コール" というセリフに、

クーパー慌てて一時停止ボタンです。

なんだ?

目覚めるのか?

フォークをコンセントに差して感電します。

 

ここで『サンセット大通り』ってスゴイな。

こんなネタバレ、自分からするなんて、

『The Return』のリンチは何かがいつもと違う。

 

◆丸太おばさんの小屋

ホークに電話をする丸太おばさん。

別れの挨拶です。

おやすみなさい、そして、さようなら。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:会議室

丸太おばさんが亡くなったことが知らされる。

 

◆オードリーの家

相変わらず外に出る出ないで喧嘩してる二人。

なんなんだろなぁ...。

最後にはチャーリーの首絞めてるし。

ていうか、

チャーリーにしろ、スパイクにしろ、

背の小さい人は首を絞められる運命なのか?

 

◆BANG BANG BAR

本日二度目のBANG BANG BAR。

ルビーという娘が人を待ってます。

一見、昔のマデリーンみたい。

なぜか床を四つん這いで歩き始めます。

で、泣き叫んで終わり。

マジ、わけわかんねえよ!

あと3話でホントに終わるのか!

ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹

1.青いバラ事件

 1975年、ワシントン州西部に位置する州都オリンピアで、とある殺人事件が起きた。当時、事件捜査を担当したのは二人のFBI捜査官。一人はワシントン州の地域担当官だったゴードン・コール、もう一人は彼とタッグを組んでいた特別捜査官フィリップ・ジェフリーズであった。二人は捜査の末、事件の犯人である "ロイス・ダフィー" という女性に辿り着き、容疑者逮捕の為に彼女の部屋に赴いた。その時、部屋の中から銃声が響き渡り、FBIの二人は急いで部屋の中へ飛び込むが、その目の前にはまるで鏡写しの様に二人のロイス・ダフィーの姿があった。一人は床に倒れており、腹部に銃弾を受けて瀕死の状態、もう一人は銃を構えたまま後ずさりし、ショックから手に持っていた銃を床に落とした。ゴードンとフィリップは瀕死のロイスに駆け寄りすぐに救助を始めようとするが、彼女はそっと微笑み「私は青いバラと同じ」と言い残すと息を引き取った。そして、不思議なことにゴードンとフィリップの目の前で彼女は忽然と姿を消してしまった。もう一人のロイスは部屋の隅で叫び声を上げ続けていた...。あえなく逮捕された彼女はひたすら無実を訴え続けたが、州裁判所の判決を前に首を吊り自害してしまった。

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※画像は1975年のオリンピア(作品との関連はありません)

 先々週の第12章で "青いバラ特捜チーム" の発端となったのが「青いバラ事件」であったことが語られました。その事件で死んだ女性が最後に言い残した言葉から、このプロジェクト名が取られたというのです。そして今週、その事件のあらましが再びアルバートの口から語られました。ロイス・ダフィー (Lois Duffy) という女性が誰かを殺し、そして彼女にはドッペルゲンガーがいたことが明らかになったのです。銃で撃たれたロイスの左薬指に "翡翠の指輪" が嵌められていたのか?など詳細についての謎は残りますが、先週のレイ・モンローの一件からおおよその想像はみなさん付くのではないかと思います。悪クーパーを殺した暁には左薬指に "翡翠の指輪" を嵌めろというくだりです。しかし、そもそもロイスという女性が若いのかどうかもわかりませんし、容姿がどのようなものだったのかもわかりません。ロイスが誰を殺したのかもわからずじまいです。

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※海外のピーカーが作ったマガジン風の「青いバラ事件」

 第12章のアルバートのセリフを振り返ると「数年後、軍とFBIは極秘チームを立ち上げ、ブルーブック計画が残した謎に連なる "不可思議な事件" の捜査に乗り出した」と語っていました。その "不可思議な事件" が「青いバラ事件」であり、そこには殺人とドッペルゲンガー、未確定ですが "翡翠の指輪" が絡んでいたのでした。アルバートはこうも言っています。「今までとは違う道を進まない限り答えに辿り着かない」と。その意味するところは、オリンピアで起きた殺人事件が、犯人を逮捕して解決という単純なものではなく、UFOなどの超常現象にまつわる不可解な事象を孕んでいることを示しています。まるでローラ・パーマー殺人事件がそうであったように、この "青いバラ事件" も同じ部類のものだと言えるのです。そして、それは1969年にプロジェクト中止に追い込まれたブルーブック計画から "連なっている謎" でもあったのです。

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※報告書は20年に及ぶ調査の結果、地球外生命体は存在しないという結論に達している

 第12章の考察で、僕はブルーブック計画の発端が "ロズウェル事件" であり、その事件が1947年に "ニューメキシコ州" で起きたUFO墜落事件ということから、第8章のトリニティ実験とその後の "森の男" 絡みの事件と関連があるのではないかと論じました。繰り返しになりますが "ブルーブック計画" というのは、実際にアメリカにあった極秘プロジェクトです。第12章の時点では「青いバラ事件」もニューメキシコ州で起きた事件ではないかという "仮説" のもとで考察をしていましたが、今週、その舞台はワシントン州であったことが明らかになりました。ただ舞台は違いますが、そこに関連する人物はアルバート曰く “連なっている" ので、何かしらの繋がりがあるのではないかと思っています。つまり、そこに登場するのは剛腕な握力を持つ "森の男" と、その放送を聞いて倒れていった車の整備士やダイナーのウェイトレス。この二人はただ気絶をしただけなのか、そのまま卒倒してしまったのかははっきりしていません。そして、トビガエルを口から体内に取り入れてしまった少女。トビガエルという奇怪な存在が悪なのかどうなのかもはっきりしていませんし、この物体を産み出したエクスペリメントが何を求めているのかもはっきりとは描かれていません。ただ、これらのことから推測できるのは、マンハッタン計画から綿々と受け継がれてきた研究(エクスペリメントの意味は「実験」)が、どこかの段階で未知の扉を開けてしまい、そこから得体の知れないものたちが出現してしまったということではないかと思うのです。まるでビル・ヘイスティングスが開いてしまった "ゾーン" のように、それは遥か彼方の惑星からやってきたのではなく、私たちのすぐそばに平衡世界として存在しているのだと言いたげなのです。

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マンハッタン計画の主要箇所は、今回の「The Return」の舞台となっている場所と驚くほど酷似している

 タミー・プレイストン捜査官は “青いバラ“ の意味について考察をします。その内容については第7章で論じた僕の記事とほぼ一緒で、1992年に公開された映画「FIRE WALK WITH ME」の時にピーカー達が考察していた内容とも一緒でした。つまり “青いバラ” = “存在しないもの” という定義です。これは長年の謎とされてきた定義が、25年の月日を経てついに公式に認められたということになります。デズモンド捜査官はゴードンからの指令により、この世に存在しないものを探し出そうとしていたのです。さらにタミーがスゴイのはその論理から “化身” というチベット用語にまで発展させていることです。この “化身" という単語は “トゥルパ” とも呼ばれ、タミーが解釈していたように "魔術的顕現" や "喚起されたもの" という意味があります。これはそのままドッペルゲンガーを説明しているようにも聞こえます。ただ、第7章の考察で語ったように ”青いバラ” は現代では “存在するもの” となっています。これはかつては存在しなかったものが存在するようになったというロジックのようにも解釈できるのです。それはまるでロッジから産み出された "化身" のようでもあり、存在を否定されたブルーブック計画への再定義のようにも受け取れます。

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ドッペルゲンガーは "死の前兆" であると信じられていた

 ゴードン・コールは久方ぶりにツイン・ピークス保安官事務所に連絡を取ります。25年ぶりに放射された "ルーシーおとぼけ回答" に瞬間凍結したゴードンは、フランク・トルーマンから知らされた "二人のクーパー" という情報を聞き、事の真相に光明を得たように見えます。第3章のヤンクトン刑務所で対峙したデイル・クーパーへの違和感が、ここで若き日の "青いバラ事件" とオーバーラップし、真のデイル・クーパーが他にいるという解釈へ進んだと思われるのです。僕たち視聴者はゴードンが対峙したクーパーが "ドッペルゲンガー" であることを既に知っているのですが、ゴードンからするとフランクが教えてくれた "二人のクーパー" というキーワードで初めてそこに至ったとなります。さらにその解釈は26年前のフィリップ・ジェフリーズの一言に集約されていきます。1988年のFBIフィラデルフィア支部に突如その姿を現わしたフィリップは、クーパーを指さして「ここにいるのは誰だと思う?」と予言するのです。"青いバラ事件" では相棒だったフィリップ・ジェフリーズ、"青いバラ" を求め失踪してしまった3人のFBI捜査官、存在するはずのない Woodsmanや "ゾーン" への接近、ブルーブック計画に参加しその後も秘密裏にデータ収集をしていたガーランド・ブリッグス少佐、そして、少佐の不自然な遺体、全てバラバラに思えていたパズルのピースがゴードン・コールの中でカチカチと組み合わされていく音が聞こえてきそうです。

 

2.夢見人

 "夢" というキーワードはデイヴィッド・リンチの作品には欠かせない重要な要素だと言えます。特に『ツイン・ピークス』以降の3作品『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』は「感覚映像ー自由連想仮説」を裏付けるような、レム睡眠の偶発的な視覚映像から出発する連想ストーリーをキュビズム的に俯瞰できる構造をしていました。『The Return』はその集大成とも言えるべきもので、各章は物語のあるキーワードを軸に次々と連想もしくは連鎖されていき、その連鎖反応が次章の視覚映像の出発点を産みだしていっているのです。その核心とも真実とも言える大きなテーマが、この第14章でなぜかモニカ・ベルッチによって告げられました。

「夢を見て、夢の中に生きる夢見人。その夢を見ているのは誰?」

 まるで僕たちが生きている現実が誰かの夢の中の世界で、その誰かが目覚めてしまうと僕たちの現実は一瞬にして存在しなくなってしまう。デイヴィッド・リンチはその理論に対して "強烈な不安感" と表現していました。永遠に続くエッシャーの無限階段が突如として外されてしまったような感覚。クリストファー・ノーラン監督作品「インセプション」にもこの理論は登場しています。

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※夢の構造はエッシャーの無限階段に似ている

 そもそも人は睡眠中になぜ "夢" を見るのか。さまざまな研究によって人体の不思議が徐々に解明されつつあるようですが、いずれにしても取り沙汰されるのはその原理やシステムについてであり、肝心な夢の "イメージ" がどこから生まれてくるのかという問いかけへの解答には、少なからずなっていないように個人的には思います。そんな中でカール・グスタフユングが提唱する "集合的無意識" という概念が、その解答に一番接近しているのではないかと思っているのです。それは "夢" だけではなく、リンチが常日頃ライフワークにしている "瞑想" にも当てはまる概念だと思うのです。

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 上記の図はユングが提唱する人間の意識の構造を図式化したものです。人間の意識は『個人の顕在意識』『個人の無意識』『集合的無意識』の3層から成り立っているという考え方です。各個人は海に浮かぶ島であり、海面から突き出ているのが『顕在意識』の領域、海面下に埋もれているのが『無意識』の領域、そして、海底で全てが繋がっている部分が『集合的無意識』の領域になります。『顕在意識』は常日頃僕たちが意識できる当たり前の現実の世界、『無意識』は普段は隠れている領域もしくは意識することができない領域のこと。潜在意識、潜在能力、そんな言葉に置き換えることも可能だと思います。そして『集合的無意識』は人々の意識が全て集まっている場所。それは太古から現代まで、とにかく歴史上存在した全ての人間の意識が集まっている場所、普遍の場所になります。"夢" を見るという行為は顕在意識の島から海にダイブして無意識の領域に潜っていくこと。"瞑想" するということは顕在意識の島から集合的無意識まで深く静かに潜りこんでいく行為だと言えます。そして、この意識の構造の図式、『The Return』の中で見たような覚えがありませんか?

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 そうです第8章で登場したあの島です。大海原の中にポツンと佇む島、これが集合的無意識の海に浮かぶ "誰か" の顕在意識になるのです。その顕在意識の島の突端には宮殿があり、そこに今回明らかになった "消防士" とセニョリータが居ました。消防士の存在については、また然るべき時に考察したいと思いますが、いずれにしても彼らは "誰か" の意識の中にある産物だと言えるのです。そして、モニカ・ベルッチが語った "夢見人が見る夢" を見ている "誰か" とは、この顕在意識の持ち主になるのではないかと思うのです。残り数話の中で、それが解明されるのかどうかはわかりませんが、なにかしらのヒントは提示されるはずだと僕は確信しています。

 

3.ジャック・ラビット・パレス

 ツイン・ピークスという町には不思議な場所が点在しています。ベンジャミン・ホーンが経営しているグレート・ノーザン・ホテルのすぐ脇にある "スノコルミーの滝" 。この滝は、かつて周辺に集落を作っていたインディアンたちの奇妙な精霊信仰の場所でもありました。そして、ツイン・ピークスを象徴する二つの山。ブルー・パイン・マウンテンとホワイト・テール・マウンテン。精神科医の医師免許を剥奪され、今では社会の腐敗と強欲さを凶弾しているローレンス・ジャコビーはホワイト・テールの頂上付近に居を構えています。そして、第11章でトーマス・"ホーク"・ヒル保安官が語っていたようにブルー・パインは "神聖な山" とされています。その "神聖な山" の麓にはゴーストウッドと呼ばれる奥深い森が広がり、その森の奥には "グラストンベリー・グローブ" と呼ばれる12本のシカモアの木で作られたサークルが存在します。

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※実際のグラストンベリーにはアーサー王の墓があるが、その王の存在は未だに実在していたかどうか不明である

 1983年、ブルー・パイン・マウンテンの麓に戦略防衛構想(SDI)関連の施設が政府によって建設されました。この施設建設に疑問を抱いたのが現ニュー・ファットトラウト・トレイラーパークの管理人であるカール・ロッドであり、彼は秘密裏に進められている建設現場への不信をツイン・ピークス・ポスト紙に寄稿しました。それを受けて政府から発表されたのが先のSDI関連施設という回答だったのですが、実はそれは隠れ蓑であり、実際はガーランド・ブリッグス少佐が務める極秘施設「SETIアンテナアレイ7-1」またの名を「リスニング・ポスト・アルファ(LPA)」と呼ばれるブルーブック計画直下の調査施設だったのです。そこには最新鋭の深宇宙マルチスペクトル探査受信装置が設置され、宇宙全体から知的生命の痕跡を探し出そうとするものでした。

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※現時点で3億8000万光年先の宇宙の姿まで人類は確認している

 ブリッグス少佐が残したメモに記された "ジャック・ラビット・パレス" は、このLPA施設のそばにある古いダグラスモミの巨木の跡でした。この巨大なダグラスモミの樹が倒木したのは1927年のある嵐の夜、鋭い稲妻が木のてっぺんに落ち、ゴウゴウと燃え上がったためでした。当時、その燃え上がるダグラスモミの巨木のそばに背丈2メートル以上はありそうな巨人が現れたことをある青年が目撃していますが、町の人たちは一笑に付し相手にしませんでした。この小さな町で起きた巨人伝説の信憑性はさておき、このダグラスモミの巨木には僕たちの理解に及ばない不思議な力が存在していると言えそうです。そして何かに導かれるように、その地点にブリッグス少佐の息子ボビーとツイン・ピークス保安官事務所の面々が辿り着くのです。ボビーは小さい頃「ひとりでこの森をうろつくな」と父親に言われていたようなので、その頃から既にこの森の神秘性もしくは不穏な何かをブリッグス少佐は感じていたのかもしれません。

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 さらにそこから東へ253ヤード進めとメモには記されていました。言われる通り進んでいくと、靄が立ち込める少し開けた場所に辿り着きます。そこには一本のシカモアの木が梢立ち、近くにはグラストンベリー・グローブのオイル壺のような "溜り" ができていました。溜まっている液体がどのような種類のものなのかは判別しにくいですが、"焦げたオイル" ではなさそうです。そして、そのそばには裸で横たわるナイドの姿があったのです。一同は彼女のそばに近づき助け起こそうとしますが、その時、メモにあった2時53分の時刻になり、突然、森の中にワームホールが出現、ナイドのそばにいたアンディーがその渦の中へと吸い込まれてしまうのです。

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 吸い込まれた先での出来事と場所については然るべき時に考察をしますが、もともと悪クーパーが追い求めていた "座標" の位置がこの場所だとしたら、その目的は一つしかありません。もともとここの "座標" はゾーンに入り込んできたウィリアム・ヘイスティングスとルース・ダヴェンポートに、ブリッグス少佐が "安全な場所" に行く為、見つけて欲しいと依頼をした場所でした。つまりブリッグス少佐は、このシカモアの梢が立つ場所に来れば "身の安全を守ることができる" と思っていたことになります。そして、悪クーパーはそこに逃げ込んでいると思しきブリッグス少佐の後を追っているということになるのです。

 では、その "安全な場所" とはどこのことなのか?ということになりますが、これはほぼ "ホワイト・ロッジ" のことを指すのではないかと思われます。その根拠は旧シリーズの第20話のオープニングです。森の中で何者かにさらわれたブリッグス少佐が2日後に生還し、ツイン・ピークス保安官事務所で失踪時の顛末を語っている時でした。今まで頑なに機密として目的を語りたがらなかったブリッグス少佐は一言告白します。

「われわれは "ホワイト・ロッジ" を探している」

 ここからは事の要約になります。"神聖な山" とされているブルー・パイン・マウンテン。それはこの辺りで集落を作っていたインディアンたちの時代から綿々と受け継がれてきた概念です。そこにブルーブック計画直下の極秘施設が政府によって建設され、ガーランド・ブリッグス少佐はその施設で宇宙からの電波を傍受していました。そして具体的には語られていませんが、25年前のツイン・ピークス郊外の政府施設で起きた火災というのは、この極秘施設LPAのことをほぼ指していると思われます。その火災でブリッグス少佐は死亡、その直前に悪クーパーが少佐のもとを訪ねています。しかし、その後25年の間に国防総省ペンタゴンには計15回もブリッグス少佐の指紋照合の結果が送られ、その手掛かりはいつも不明だったのです。25年後のサウスダコタ州バックホーンで、ビル・ヘイスティングスがゾーンへの扉を開いた時、そこで "冬眠" をしていたのはブリッグス少佐でした。冬眠から目覚めた少佐は "安全な場所" を求め、その座標の数字をビル&ルースに入手してもらうよう依頼します。それを手に入れたビル&ルースは、再びブリッグス少佐のもとを訪ね座標の数字を伝えます。すると少佐は宙に浮き「クーパー、クーパー」と言い残し、その頭部が忽然と消えてしまいます。残った胴体は殺されたルース・ダヴェンポートの頭部と一緒にバックホーンのアパートへと飛ばされ、それを調査したコンスタンス鑑識官によりペンタゴンに16回目の指紋照合の結果が送られたのです。そして今、その座標の位置に最愛の息子ボビーが訪れてきました。さらにルースの遺体を見つけたFBIの面々、そして、悪クーパーとつながっているダイアンも、いずれこの地に辿り着く流れが見えてきています。その辿り着いた先、最終的な場所というのが、かのブルーブック計画の時点から追い求められていた "ホワイト・ロッジ" になるのでは?と思います。その重要な場所の目印となるのが、この不思議な引力を持つダグラスモミの巨木 "ジャック・ラビット・パレス" になるのです。

※この節で考察している情報の中で、テレビ放送で明らかになったもの以外の情報が複数ありますが、それらは全て書籍『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』からの引用になります

 

4.その他

【ゴードンとルーシー】

 25年ぶりの連絡なのにその大声で一発でゴードンだと理解したルーシー。ゴードンも相手がルーシーだとわかっていた様子。そこに "お久しぶり" も "ご無沙汰" の挨拶もなし。さすがです。ルーシーに至っては「ボラボラ島にも行きました」なんて話まで飛び出る始末。どうやらアンディーとルーシーの新婚旅行は "太平洋の真珠" へのバカンスだったようです。

 

【ダイアンとジェイニーE】

 至る所で驚愕されている "ダイアンとジェイニーEが姉妹" という話ですが、みなさん、あまりにもチョッパーすぎやしないですか?と僕は思っています(ちなみにチョッパーは漫画『ワンピース』のあのタヌキチもしくはチョニキのことです)。あの裏切りダイアンが果たしてゴードンたちに真実を話すでしょうか?いつも "クソ" と悪態をついて、今回なんか「アシスタント登場」なんてあまりにもわざとらしい登場の仕方をしています。先々週、悪クーパーから「ラスベガスは?」なんてメールをもらっているぐらいなので、これはゴードンたちをラスベガスに誘い込むミスリードではないかと思うのです。仮にこの姉妹説が真実だとするなら、姉妹喧嘩は原爆以上の破壊力で周囲を巻き込みそうです。恐ろしい...。

 

【FBIラスベガス支部

 ヘッドリー捜査官とウィルソン捜査官。ゴードンから連絡を受け、ラスベガス在住のダグラス・ジョーンズの情報を至急集めろ、相手は武装しているから十分警戒しろと言われます。さっそく調べてみると市街地だけで23人もダグラス・ジョーンズがいるらしい。23人!そんなに同姓同名っているもんですか?2人から3人の間違いじゃないですか?しかも、ウィルソン捜査官、23人もいちゃどうやって絞るのさとボヤくと、ヘッドリーからそれがオレたちの仕事なんだ!何回言えばわかるんだ!と怒られます。いやいや、毎回毎回23人もの容疑者から1人に絞っているわけじゃないですよね?ヘッドリー先輩、そんなにゴードンに認めてもらいたいん?あの人、モニカ・ベルッチの夢ばかり見てるらしいよ。

 

【チャド逮捕】

 あっけなく逮捕されたチャド。どうやらフランクは何か月も見張っていたらしいのですが、逮捕の決め手になったのがなんだったのかはわかりません。たぶん、リチャードに "完了" ってメールを送ったり、ドーナツ食べながらミリアムからの手紙を破棄したり、飲食禁止の会議室でお昼ご飯食べたり、ロードハウスでリチャードからお金を受け取ったり、いや、一番はフランクの息子の自殺をおちょくったのが逆鱗に触れたのかもしれません。いずれにしても、今まで描かれていたシーン全てがフランクには筒抜けだったようです。

 

【消防士とアンディー】

 ワームホールにアンディーが吸い込まれたのもビックリですが、突然「私は消防士だ」と、とんでもないカミングアウトをした巨人にもビックリです。あんた消防士だったの?みたいな。これってブラック・ロッジが "火" を弄ぶ場所だとしたら、それを "消火" する場所がホワイト・ロッジって考え方でいいのでしょうか?確定するには、もう少し情報が欲しい感じです。さらに数々の映像をアンディーに見せるわけですが、これが今までのおさらい、というか、とんでもない早送りダイジェストになっています。

 〇エクスペリメントの存在

 〇ボブ玉の誕生

 〇コンビニ オープン

 〇オープンに群がる真っ黒おっちゃん

 〇火、あるか?

 〇電線を伝って悪が伝番

 〇ローラ・パーマー殺害

 〇赤い部屋

 〇二人の天使に救われるローラ

 〇ナイド

 〇善クーパーと悪クーパー

 〇保安官事務所の電話が鳴る

 〇アンディーと不安げなルーシー

 〇再びナイド、アンディーの姿あり

 〇6の電信柱

 ローラが天使に救われるという辺りまでは、それまでの事柄が時系列順にダイジェストされているのがなんとなくわかりますが、ナイド以降はわかるところとそうでないところがあり、なんのこっちゃ?という感じです。これから未来のことを映し出しているようにも見えるし、それにしてもナイドの存在があまりにも謎すぎて、結局はなんのこっちゃ?という感じです。アンディーは十分理解したみたいですけど...。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所】

 保護したナイドにパジャマを着せているルーシー。ただ「ここで犬が迷子になった時からずっとロッカーに入れっぱなし」だったパジャマを着せるって、お~~~い!!!!! あんたらカヨワイ大和撫子になにしとるんじゃい!しかも留置所にチャドと、もう一人酔っ払いまでいるじゃないか!あんた酔っ払ったはずみで左の頬どうしたん?穴でも開いたのか?口から血が止まらないじゃないか。三人で鳥の鳴きまねをするって、僕ら "カゴの中" とでも言いたいんすか?

 

【ジェームズとフレディー】

 ガーデニング用の緑の手袋を右手にしているフレディー。どうやら "森の男" 並みに怪力の持ち主らしい。となると "森の男" は左手が怪力っぽかったので、買わずにビニールを破って手袋を持ち逃げした犯人が彼なのだろうか?いやいや、そんなことはございません。"森の男" は50年以上前の存在なのです。なのに、このロンドンで一番治安の悪い貧困層から飛び出てきた兄ちゃんに、消防士が "森の男" に対抗できる力を与えたって、なんで?消防士の人選ってアンディーもそうだけど、なんかビミョーじゃない?だって、ナイドに犬に使ったパジャマ着せてるんだよ?このフレディーも、なんでわざわざ海の向こうの人間なんだろ?ちなみにフレディーはもうすぐ23才になるらしい。さっきは23人のダグラス・ジョーンズ。なんかロジックでも隠れてます?デイヴィッド・リンチさま。

 

【グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室】

 ボイラーチェックに来るジェームズ。奥の扉からあの奇妙な音が響いてきます。以前、ビバリーが警備の人間に調べてもらったが異常はなかったとベン・ホーンに報告をしていましたが、嘘八百もいいところバリバリ音が鳴っています。バカ正直なジェームズのことなのでビバリーにちゃんとボイラー室と報告をしたでしょうから、これはベン・ホーンといい関係になりたかったビバリーがわざと嘘の報告をしたということっぽいです。

 

【エルクス・ポイント #9】

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 エルクスはヘラジカという意味です。

 日本ではあまり知名度のない動物なのですが、

 調べてみたらビックリしてしまいました。

 これです。

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 デカッ!

 森で出会ったら確実に殺されます。というか、ここ日本でも昔は生息していたみたいですので、第10章で考察したシシ神さまのモデルはシフゾウではなく、このヘラジカだったのかもしれません。ヘラジカの通称が「森の王」と呼ばれているんだから、なんか、もうそのまんまという感じがするじゃないですか。となると "ゴードンが書いた落書き" のモデルもこのヘラジカではないかと思います。さらに体が白いヘラジカは "神の使い" としてインディアン達から崇められていたとも言いますし、通常のヘラジカのことをインディアン達は "木を喰う者" と呼んでいたみたいです。ただ、"エルクス" という名称はヨーロッパ地方での呼び名で、アメリカ北部では "ムース" という名称が一般的なようです。だとしたら、このバーの店長はヨーロッパ出身ということでしょうか?しかも "#9" ってなに?

 

【セーラとトラック・ユー】

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 街でこんなTシャツを着てる輩を見かけたら、みなさん要注意です。彼は超がつく熟女好き、というよりも守備範囲がありえないぐらい広すぎます。ヤバイです。女性の方、特にお気を付けください。もし彼に捕まってしまったらムダな抵抗などはせず、迷わず自分の顔をパッカーンと開いてください。たぶん、彼は知らぬ間に首の半分を食いちぎられ、あっという間に倒れてしまいます。

 冗談はさておき、このセーラの中に存在するものとはいったいなんでしょうか?電気が走り、左の薬指だけが壊死したように真っ黒で、まるで喪黒 福造のような笑みを見せます。今にも「ドーン!!!!!」と指を差されそうですが、相手が不幸に落ちていくという辺り、まんまのような気がしてしまいます。

 第12章の考察でセーラのスメアゴル状態は長い孤独から育まれた分裂症のようなものと結論してみましたが、今回の顔パッカーンでどうやら別の側面もあることが明らかになりました。その側面についてのヒントは旧シリーズの最終話にあります。ダブルRダイナーでコーヒーブレイクをしているブリッグス少佐のもとにジャコビー先生がセーラを連れてきます。なにやらブリッグス少佐に伝えたいことがあるというのです。そして、セーラが口を開くとロッジの住人の声が語り始めます。「わたしはクーパー捜査官とブラック・ロッジにいる」と。そして、こうも続けます。

「私はあなたを待っている」

 ここでセーラを通してブリッグス少佐に語りかけているのは "別の場所から来た小さな男" ではないかと思われます。となると、今回の顔パッカーンの中にいるドス黒いものはブラック・ロッジの小人ということでしょうか?もしくはブラック・ロッジの中でもさらに位の高い何かなのでしょうか。トラック・ユーの首を噛み千切る動作は、ニューヨークのサム&トレイシーを襲ったエクスペリメントを彷彿させるようでもありました。謎は深まります。

 

5.BANG BANG BAR

 今週のBANG BANG BARはLissie。今までにない高揚感あるロックチューンでした。バーのボックス席で語られていたのは、オードリーが話していた "ビリー" について。これ、どうもおかしいです。ここ数回のBANG BANG BARで感じていたことですが、第8章の劇場後からBANG BANG BARのシーンだけ、どうも本編とは別の平行世界を描いているのではないかと思い始めています。これについては、また時間のある時に考察したいと思います。

ツイン・ピークス The Return 考察 第13章 時は乱れて

1.ダギー・ジョーンズ(デイル・クーパー)は現代の救世主なのか?

 唐突に幸福のファンファーレから始まったThe Return 第13章。先々週の "幸せのチェリーパイ" の後、どうやらクーパーは一晩中ミッチャム兄弟たちとお楽しみをしていたようで、ずいぶんと陽気にラッキー7保険の社内に姿を現わします。アルコールも廻っているのか、両頬にキスマークまでつけてだいぶご機嫌な様子。ラッキー7保険の社長ブッシュネルに贈り物を渡すと、彼らは騒ぎに戻っていくのですが、それを戦々恐々と見つめているのが同僚のアンソニーです。ダンカン・トッドからの命令でクーパー殺しをミッチャム兄弟たちにけしかける計画でしたが、完全に真逆の結果を目の当たりにして混乱しています。すぐさまトッドに連絡を取り指示を仰ぐのですが、返答はずいぶんと冷遇なものでした。

 "幸せのチェリーパイ" は第11章での出来事。先週の第12章では、ダギーの息子サニージムと裏庭でキャッチボールをしているシーンが描かれていました。とは言っても、サニージムが単にボールを投げつけ、クーパーの肩に当たるだけという、なんとも微笑ましくも可笑しいシーンなのですが、ここで少し時間軸に歪みが生じます。

 第11章の "サンティーノ" のシーンで、ミッチャム兄弟たちが「子供には遊具セットを与えるべきだ」と語った通り、今週、ジョーンズ家の裏庭に豪華な遊具セットが贈られてきました。サニージムは大喜びで遊んでいるのですが、なぜかBGMは "白鳥の湖" です。あまり深い意味はないのでしょうけど、"夜になると悪魔の呪いが解けるオデット姫" という物語が、このシーンに何かしらの暗示をしているようにも感じます。

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 もとい、そんな遊具セットで遊ぶサニージムをうっとりと眺めているジェイニーEが一言、「ゆうべ帰らないから悪い想像をした」とクーパーに囁きます。その "ゆうべ" というのは、ミッチャム兄弟たちと一晩中お楽しみをしていた夜のことを指すようです。となると、"幸せのチェリーパイ" から "ブッシュネルへの贈り物" まで、クーパーはミッチャム兄弟たちと共に過ごしていたことになり、先週のキャッチボールが、いつの日のどのタイミングなのかがはっきりしません。これもあまり深い意味はないのでしょうけど、こんな時間軸のズレがちょいちょい出てきますので、なんとなく引っかかる感じがします。

 ダンカン・トッドからの命令を実行しようと、アンソニーはラスベガス警察のクラーク刑事のもとを訪ね、足のつかない毒 "アコニチン" を5000ドルで手に入れます。そして翌日、出社してくるクーパーを "サイモンズ・コーヒー" に誘い、彼がチェリーパイに気を取られている隙に毒をコーヒーに仕込みます。しかし、クーパーはアンソニーの肩に散らばった "フケ" に気を取られ、まるでツボでも押すかのようにフケをいじくりだすのです。極度の緊張状態にあったアンソニーの心は、クーパーの何気ない行為に脆くも崩れ去り、暗殺を断念、ブッシュネル社長に全てを懺悔するという流れに行きつきます。

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 ちなみに小ネタですが、サイモンズ・コーヒーでチェリーパイを運んでくるウェイトレスの名札には「Leslie(レズリー)」とあります。"Leslie" の名前の由来は "柊の庭" です。"柊" というのはギザギザした葉が特徴で、その刺々しい葉が魔除けになるとして庭や玄関先に植えられることでも有名です。そこから読み取れるのは、このウェイトレスがクーパーを守護する天使のような存在だった、なんていう深読みも出来そうな感じがします。

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 ※ちなみにクリスマスリースにも使われる柊ですが、このリースにも意味があり「赤い実」は "太陽の炎" や "キリストの血" 、「緑の葉」は "永遠の命" や "神の愛" を、そして、「花輪・冠 (リース)」は "始まりもなく終わりもない永遠の状態" を現わします。このクリスマカラーである "赤と緑" と聞いて、ピンと誰かを思い浮かべた方は、かなりのThe Return マニアだと思いますが、そうです、ダイアンがいつも着ている服が決まって "赤" か "緑" なのです。どうも意味深ですよね。

 いずれにしても現世に戻ってきてからのクーパーは何かと暗殺の危機を何気ない行為で回避しています。全てをここに列挙するのは控えますが、用意周到なはずの計画は全て見えない何かによってなし崩しにされ、関わる人物は全員が全員、クーパーの行為によって "改心" していくのです。ジェイニーE然り、ブッシュネル社長然り、ミッチャム兄弟もアンソニーもそうです。それはまるで方々を伝道し、数々の奇跡を起こしたイエス・キリストのようでもあります。デイヴィッド・リンチ、もしくはマーク・フロストは、現代の救世主は "白痴" の姿をしているとでも言いたいのでしょうか。ただ、ジェイニーEが感じていた「まるで天国にいるみたい」というのは、かなり俗物にまみれた世界とも言えます。ミッチャム兄弟も3000万ドルの小切手がなければ、ここまで手の平を返すことはしなかったはずです。六道輪廻の世界で言うと "餓鬼道" の世界。それは欲望や物惜しみなどの苦しみを責められる世界なのですが、その欲望をクーパーによって満足させることができたために、彼ら彼女らは地獄ではなく "天国" にいるような錯覚を覚えたとも解釈できるのです。

 

2.結局、レイ・モンローとはなんだったのか?

 第9章以来、4話ぶりの登場となった悪クーパー。第8章でレイに撃たれ、第9章でハッチ&シャンタルと合流して以降、しばらく姿を見せませんでした。今回、モンタナ州の西部にある "ファーム (The Farm)" にやってくるのですが、そこはレイやリチャードが所属するごろつき達が集まる組織でした。

 第8章でサウスダコタ刑務所を出た後、悪クーパーとレイはファームを目指すことにするのですが、その時の会話で「それが一番よさそうだが黙って逃がしはしねぇだろう。ヤツらだってすぐに追いかけてくる」とレイは言っていました。あの時点でファームに行って何をしようとしていたのかは不明ですが、経緯から察するに、刑務所を出て、まず安全な場所は "ファーム" になるからそこに行こう、その後の事は現地に着いてから考える、それくらいのニュアンスだったのかもしれません。

 ファームにやってきた悪クーパーはレイを引き渡せと要求し、ボスであるレンゾとアームレスリングで対決することになります。ある程度の世代の人なら、なんでここでスタローン映画「オーバー・ザ・トップ」になるんだ?と、どうせならベースボールキャップまで被ったら?ぐらいに思うかもしれませんが、このアームレスリング、アメリカでは結構、屈強な男たちの象徴になっているようです。そして、14年間無敗とされているレンゾを悪クーパーはいとも容易く打ち負かし、ワンパンチでレンゾを殴り殺してしまいます。まるで漫画「ワンピース」でハイエナ・ベラミーを倒すルフィのようです。素手でも人を殺せる悪クーパーの最強っぷりは、もう七武海を通り越して四皇レベルと言っても過言ではないでしょう。そうするとボブ玉は一種の "悪魔の実" とも言えるのかもしれません。閑話休題

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 圧倒的な強さを目の当たりにして、レンゾからあっさりと悪クーパーに鞍替えをする手下達ですが、そんなことには見向きもせず、悪クーパーはレイを問い詰めます。そこで語られる内容は、裏切り行為の全てはフィリップ・ジェフリーズからの指示だったということでした。そして、レイはポケットから "翡翠の指輪" まで取り出します。悪クーパーを殺した際に、この指輪を嵌めさせロッジ送りにしろということらしいのです。そうするとフィリップ・ジェフリーズ、もしくはフィリップを名乗る何者かは、何かしらの思惑のために悪クーパーとボブを現世からロッジに戻そうとしているのがわかります。ブリッグス少佐について探りを入れる悪クーパーですが、レイはそこまでは深く関わっていないようです。フィリップの居場所を問い質すと「"ダッチマン" って店にいるらしい」とレイが語りますが、「この世にそんな場所はねえ」と言うと、それ以上語るなとばかりに悪クーパーはレイにとどめを刺します。

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 新シリーズ第1章から登場していたレイ・モンロー。そもそもの第1章に登場したあの山奥の小屋がなんなのかがはっきりしませんが、ダーリャと共に呼び出された時点では、まだフィリップ・ジェフリーズとはつながっていなかったように思えます。純粋に悪クーパーの手下として、座標を手に入れる仕事に従事していたはずなのです。それがヘイスティングスの秘書ベティに近寄り始めてから様子がおかしくなり、連行された理由が銃の不法所持なのかどうかの真偽は不明ですが、結果、ヤンクトン刑務所のマーフィー所長とも間接的にグルでした。悪クーパーからすると、レイもダーリャも単なる捨て駒のような感じで、座標さえ手に入れば後は用無しだったようではあります。となると、最強っぷりを発揮する悪クーパーに一矢報いたという点では、今のところレイの功績はかなり大きいのですが、いかんせん相手が悪すぎました。彼が「金」に成りあがるにはあと一歩のところではあったのですが、"ボブ" という飛車・角を落とすには、あまりにも援護射撃が少なかったようです。

 

3.ラスベガスの黒幕だったダンカン・トッド

 風貌的にはミッチャム兄弟がラスベガスの黒幕のように見えましたが(「マルホランド・ドライブ」のカスティリアーニ兄弟のように)、この第13章でダンカン・トッドがその黒幕だったことが明らかになりました。それはラスベガス警察の刑事まで取り込んだ、かなり大規模な裏組織のようです。保険金詐欺を謀り、宿敵ミッチャム兄弟を貶めるために新築のホテルに火をつけることも厭わない。そのやり口はかなり大胆で問答無用なようです。

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 第11章でブッシュネル社長が語っていた汚職警官の話は、もしかしてフスコ三兄弟がその汚職に絡んでいるのか?と思っていましたが、どうやら今週登場したクラーク刑事とその相棒のことのようで、なぜか安心したような、それでいてガッカリしたような気分です。そのフスコ三兄弟、今回もまたもやおバカなやり取りに花を咲かせていました。第9章で手に入れたクーパーの指紋の検査結果が出たのですが、失踪中のFBI捜査官という結果を一笑に付し、ゴミ箱にポイ捨てしてしまうのです。これはちょっとヤバイ結果を招きそうです。というのも、バックホーン警察でコンスタンス鑑識員がブリッグス少佐の指紋をヒットさせただけで国防総省がすっ飛んできました。となると、クーパーの指紋やDNAともなるとFBIが黙ってはいないでしょう。しかも、先週の第12章でダイアンのもとには "ラスベガス" のショートメールまで飛んできているのです。なんとも相変わらず底の浅い考えで物事を判断している、それがフスコ三兄弟とも言えるのですが...。1997年以前のダギー・ジョーンズの過去がないとか、証人保護かもしれないという疑惑は、結局どうなったのでしょう。

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 ちなみに、また小ネタですが、このフスコ三兄弟が登場するシーン、部屋の奥でなにやら女性が取締中に粗相をして騒いでいる様子が描かれています。はっきりとは言えませんが、たぶん、ここで騒いでいる女性はクーパー転送時の空き家の向かいに住んでいた「119!」と叫ぶヤク中の母親ではないかと思います。第5章でダギーの車が爆破して以来、この親子の登場がなくなってしまいましたが、それも第6章で屋根の上に吹っ飛んだ車のナンバーを警官が発見した際に、この119親子も発見されたからではないかと思うのです。それ以降、あの栄養失調気味だった息子くんがどうなったかが心配ですが、サニージムのように、どこかで楽しく暮らしていたらいいなと思います。 

 息子くんと言えば、先週の第12章で無残にも目の前で父親を射殺されてしまったマーフィー所長の息子。その後、どうなってしまったのかは描かれていませんが、きっちりと使命を果たしたハッチ&シャンタルは "U.S. Route 189" を南下、ユタ州ユタ湖湖畔の町プロボまで辿り着き、着々とラスベガスに向かっています。第9章で悪クーパーが "ダブルヘッダー" だと言っていましたので、第1試合がダンカン・トッド、そして、第2試合がダギー・ジョーンズことデイル・クーパーではないかと推察します。トッドもクーパーもシャンタルのお色気攻撃には目もくれなさそうなので、ハッチの悪魔の照準からいかに逃げ果せることができるのか?が見所になりそうです。さらに、ブッシュネル社長を筆頭に「トッドの悪事を白日の下にさらすチーム」、フスコ三兄弟がうっかり開けてしまった「クーパーの指紋に気づいたFBIチーム」、そして「射撃王ハッチとお色気シャンタルチーム」という、ダンカン・トッドを巡っての三つ巴戦が、このラスベガスで壮大に繰り広げられそうな感じがしてくるじゃないですか。黒幕トッドは白日の下にさらされるのか?救世主クーパーはどのようにして射撃王を改心させるのか?今後、ラスベガスが熱くなりそうな予感がします。

 

4.「時間の矢」と「砂時計のくびれ」と「メビウスの輪

 僕たちは通常 "時間" というものは過去から未来に向けて一方向にしか進行しないと認識しています。一度放ってしまった矢が弓に戻ってくることはないと知っているし、飛んでいく矢が連続した空間を移動していくことも知っています。砂時計の砂が上から下へ流れていくのが通常であり、決して砂が逆戻りしたり、砂の量が増えたり減ったりすることはないのです。その概念は書物であったり、絵画であったり、映画であったり、いわゆる "物語" を体感している時も、僕たちは一方向に連続して物語が進んでいると思いがちです。砂時計のくびれた部分は常に一定であると思いがちなのです。しかし、こと「ツイン・ピークス The Return」では、その概念が当てはまりません。飛んでいく矢は突然別の場所に移り変わり、移り変わったと思うと次の瞬間には遥か彼方に姿を現わしたりします。砂時計のくびれた場所では、例えば黄色い砂が突然白に変わり、流れ落ちたと思った白い砂がいつのまにか上に戻って黄色くなっていたりするのです。そして、語られるストーリーの中で唯一 "時間の流れ" が歪みまくっている場所、それが「ツイン・ピークス」という町だけという事実。この現象は "ラスベガス" であったり "サウスダコタ" では一切起きていないのです。映画「インランド・エンパイア」でも、物語をまるで1枚のキュビズム画のようにあらゆる面から切り取ったリンチですが、今回の第13章で描かれているツイン・ピークスの住人たちも同じようにキュビズム的な構成で描かれているのです。

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 ダブルRダイナーでてきぱき働いているシェリーのもとにベッキーから電話がかかってきます。スティーヴンが "2日" も帰ってこなくて心配だと泣いているのです。そんなベッキーをクリームたっぷりのチェリーパイでシェリーはなだめます。このシーンは第11章のベッキー銃撃事件の流れ上にあると言えます。まずこれを "A地点" と仮定します。

 続いて、往年のピーカー大喜びのエド&ノーマのツーショットに進みます。ダイナーにやってきたボビー保安官助手はシェリーの帰宅をノーマに確認しているので、どうも彼女と何か話をしたくてお店にやってきたようです。それを見てエドが「ひとりじゃつまんないだろ。一緒に食べよう」とテーブルに誘います。気後れしながらも席に着くボビーは、エドの何気ない質問にこう答えるのです。「親父が残したものが "今日" 見つかった」

 それが指し示すのは第9章で明らかになったブリッグス少佐のメモ "ジャック・ラビット・パレス" についてです。それが "今日" 見つかったということは、このシーンの時間は一気に第9章の時点まで巻き戻されたということになります。このボビーのシーンを "B地点" とします。

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 ボビーの "B地点" は10月1日の2日前になるので「9月29日の夜」ということになります。そして、シェリーを探している様子から察すると、第11章のシェリーとレッドの逢引きが気になって仕方がない、もしくはベッキーのその後が気に掛かりダイナーにやってきたと推定できます。2日も3日も開けて訪ねてくることはないと思いますので、ダブルRダイナーで親子3人で話し合いをした翌日の夜にボビーが再びシェリーを訪ねてきたと仮定できます。となると、ベッキー銃撃事件やダイナー誤発砲事件は前日の夜となりますので「9月28日」になります。ここからシェリーの "A地点" を導き出すと、スティーヴンが家に "2日間" も帰ってこなくて心配でたまらないとベッキーが泣いていたので「9月28日」の2日後である「9月30日」が "A地点" であると定義できます。

 なぜ、このような時間軸の歪みをリンチがしたのかというと、今回初登場したウォルターというマーケティング主義の男と、次のシーンに出てくるジャコビー先生の反利益主義の対比を描こうとしていたからではないかと思うのです。これはかなり緻密に練られた脚本構成をしており、もう感嘆せずにはいられません。しかも、ウォルターの主義主張はノーマの心に1mmも響いてなく、傍から見ているエドはやきもきしていますが、ノーマ自身は "坊や、私はこのお店が存続できれば、それで十分なんだから" と、かなりの大人な女性っぷりです。まるで映画「紅の豚」のジーナさんのようです。

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 続いて、ネイディーンのドレープ屋さん。金のシャベルのディスプレイに気づいたジャコビー先生は感激して店の扉をノックします。と言うよりも、ジャコビー先生、どんな目的で町まで下りてきたのでしょう?まあ、それはさて置きまして、すっかり意気投合してしまっているこの二人、金のシャベルを前に「我々は奴らと戦わねばならない!」と士気を挙げています。ここで言う "奴ら" というのが、先ほどのウォルターのような輩ということになります。こういう輩はいつも俺たちを裏切るんだ!とネット放送で熱弁しているジャコビー先生ですから、ウォルターもダイナーの利益が出なくなるとノーマを裏切るということを暗に示しているようです。そして、新たなキーワードが二人の会話から出てきます。それは "7年前の大きな嵐"。そんな嵐の中で、なぜネイディーンはスーパーでじゃがいもを落として床に這いつくばり、ジャコビー先生はそれを目撃したのでしょうか?

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 スーパーと言えば、前回、ビーフジャーキーを見て様子がおかしくなってしまったセーラ。今週はテレビでボクシングの試合を見ています。試合を見ながらウォッカを飲もうとしているのですが、どのビンも空に近い状態でなかなかいい気持ちになれません。この状態も少しおかしいです。先週 "スミノフ" を3本も購入し、様子がおかしくなったかと思うと、買ったものをそのままに家に帰ってしまったセーラ。レジの男の子が「家を知ってる」からと、それを届けると言っていました。本当に届けたのかどうかは描写がないのでわかりませんが、ホーク保安官が様子を見に来るぐらいなので、たぶんですが買ったお酒やタバコは家に届けられていたはずです。だとすると、それを飲み干したとしたならテーブルの上にあるのは "スミノフ" の空き瓶のはずですが、実際は全然違うものです。ここから読み取れるのは2つのパターン。ひとつは男の子は商品を家に届けなかった。だとしたら、そんなに深く考える必要はありません。もうひとつのパターンは、今回のこのシーンが先週のスーパーの前日の夜かもしれないということ。お酒がなくなったので、次の日セーラはスーパーで買い物をして、ビーフジャーキーを見てしまったがためにスメアゴル状態になったという流れです。こうなると、またもや "時間の流れ" が歪んでしまいます。

 そして、歪みはテレビのボクシングの試合まで影響しています。第1ラウンドを永遠にループしているのです。いつまでもいつまでも左耳を殴られてダウンするボクサーが気の毒ですが、これも一種のパラドックスになります。殴られているボクサーからすると左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる、左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる、左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる...と、永遠に左耳を殴られ続けるのです。まるでメビウスの世界をどこまでも飛んでいく矢のようです。どこかで立ち上がるのをやめてダウンしたままでいなければ永遠に続いてしまう。それが次のオードリーとチャーリーの会話に出てくる "実存主義" につながっていくのです。

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 前回のカオス的状況のオードリーに比べると、今回はほぼネタバレに近い内容を話し合っています。曰く「自分がここにいないみたいに感じる」「(本当の自分は)他の場所にいて別人になった気分」「自分で自分がわからない!」これらから容易に推察できるのは、25年前の意識不明の状態からオードリーは未だに目覚めていないということです。そんなオードリーに、チャーリーは「ロードハウスに行ってビリーを探してきなさい」と諭します。先週、あれだけ眠い眠い、仕事仕事と言っていたのに、随分と手の平を返してきました。そして、その意図するところは、先ほどのボクサーがダウンし続けることを選ばないとループから抜け出せないように、オードリーもこの家から出ていかないとループから抜け出せないことを暗示しているのです。でないと「君の物語を終わりにさせる」と言います。これはかなりの意味深発言です。"通り沿いの家に住んでいた少女" というのが誰の事を指すのかは、さっぱりわかりませんが、いずれにしてもオードリーが "異空間" の住人であることが判明しつつあります。

 

5.ジェームズ・ハーレー

 ファンの方はごめんなさい。気を悪くされたらごめんなさい。ジェームズ・ファンの方は、どうかここから下は読まないでください。

 僕はジェームズが嫌いです。旧シリーズの頃から、僕はジェームズが嫌いです。こういう "優男" は絶対にムッツリか、もしくはムッツリか、かろうじてムッツリな奴だと相場が決まっています。ローラ、ローラと言いながらドナに乗り換え、どこか悲劇のヒーローを気取り、正論を振りかざしながら人妻に手を出す始末。やりたいなら、素直にやりたいと言えばいいのに、なんかカッコつけるのです。まだ、よう、シェリー!とボビーの前でキスをするレッドの方が何百倍も気持ちがいいです。ビッグ・エドには申し訳ないですが、僕はジェームズが嫌いです。歌なんか聞きたくないし、それを聞いて泣くなんて信じられません。リンチ作品の中で、このシーンが一番、不条理です。いや、ホント、ダメなんです...。ごめんなさい。

ツイン・ピークス The Return 考察 第12章 不機嫌な薔薇たち

 先週の "幸せのチェリーパイ" から打って変わり、今回の第12章は一見するとどこか間延びしたような、取り留めのない回だったという印象を受けます。もともと「ツイン・ピークス」やデイヴィッド・リンチに先週のような幸福感は求めていなかったのですが、不思議なもので、脳内に大量のセロトニンが一度でも放出されると、それが忘れられなくてまた同じ現象を求めてしまいがちです。一種の "多幸感" に近い状態、それが第11章であったと思うのです。それに比べると、今週はまず主人公が不在でサイドストーリーだけが語られていたということ、かつシーン数も極端に少ないというドラマシリーズとしては第8章同様、なかなか特殊な回だったのではないかと思います。旧シリーズを見てもクーパー捜査官がちょろっとしか登場しない回なんて、まずありませんでした。全18章の総体の中で第12章がどんな位置づけになるのかは、最終回を迎えないと俯瞰することができませんが、いずれにしても主人公を差し置いてでも語らなければならない人物たちが登場したという回になるのかもしれません。

 

1.やさぐれている女たち

 今回の第12章、大きなポイントとして挙げられるのが、不思議な共通点を持つ3人の人物が描かれていたことではないでしょうか。その3人とは「オードリー・ホーン」「セーラ・パーマー」「ダイアン・エヴァンス」です。そこにどんな共通点があるのかと言うと、3人が3人とも「F※%K」を連発するということ。吹き替え版で言うと「クソ」や「クソ野郎」を口走るということです。これはなかなか聞いていて心地良いものではありません。この3人は、どうしてここまで不機嫌なのでしょう。さらに、今回登場したばかりのオードリーはまだ確定できませんが、セーラとダイアンは2人ともかなりのヘビースモーカーとして描かれています。とにかくやたらめったらタバコを吸っているのです。不機嫌を抑えるためにタバコを吸っているのか、もしくは不安定な精神を落ち着かせるためにタバコを吸っているのか。いずれにしても、ここで描かれている "不機嫌" というキーワード、なぜこの3人に共通しているのでしょうか。

 

 ①セーラ・パーマー ~娘と夫を亡くした女性の末路~

 ローラ・パーマーの母親であるセーラ。英語表記では "Sarah" ですので、サラ・パーマーとカタカナ表記をしても間違いではありません。たぶん、訳す時に娘が "ローラ" なので、同じようなニュアンスで "セーラ" で設定したのではないかと思います。僕的には "サラ" の方がしっくりとくるのですが、ここではWOWOWの訳に従って "セーラ" で呼ぶようにいたします。旧シリーズでの字幕も "セーラ" 表記ですし。

 で、先ほど書いたようにセーラは旧シリーズの時点からとんでもなくヘビースモーカーでした。事あるごとにタバコに火をつけています。新シリーズ第2章のシーンでもテーブルの上の灰皿は溢れんばかりになっていましたので、この25年間のどこかで禁煙したと言うわけではなさそうです。不安の表れとも、口寂しさからくる甘えの表れとも両義的に汲み取ることができる設定ではありますが、旧シリーズを振り返ると、どこか不安気なところがあり、なんだかんだ言ってリーランドに甘えるという女性的な面もちょいちょいありましたので、そのまんまヘビースモーカーらしい性格と言えそうです。それが娘を失い、夫を失い、さらに長い期間を一人であの広い家で暮らしていたと思うと、その不安や甘えに "孤独" が覆い被さり、現状のセーラの状態になったのではないかと推察します。 

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 さらにセーラと言えば、旧シリーズでの "叫び" があまりにも特徴的です。序章で娘の不幸を電話越しに悟った時の叫びと言ったら、当時、そこだけ事前に身構えてテレビの音量を落としていたほどです。ローラの部屋でボブを目撃した時も同様でした。その娘であるローラも、映画「FIRE WALK WITH ME」でやたらめったら叫んでいましたので、親子の "叫びDNA" は綿々と受け継がれているようです。

 今回のシーンではスーパーマーケットでウォッカを買い漁ってる姿が描かれています。ウォッカと言っても "スミノフ" オンリーのような感じで、他の棚に並ぶウォッカを飲むつもりはないようです。

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 このウォッカというキーワードもダイアンと共通しています。ダイアンは登場時からウォッカを飲み漁り、今回の第12章でもウォッカまみれです。この2人、相当お酒が強そうですが、それも何かの意図を孕んでいるのでしょうか。タバコをガンガン吸い、ウォッカを水のように飲む。まるで屈強なロシア人のようです。

 さらにスーパーのレジでビーフジャーキーを見ると一気に様子がおかしくなります。

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 レジのお姉ちゃんは「新商品のターキーです」と言ってましたが、セーラが聞きたかったのはビーフジャーキーについてです。それは新シリーズ第2章のシーンともつながります。そこではテレビのアニマル番組を見ているだけというものでしたが、そのテレビに映っていたのは水牛を貪るライオンの姿でした。インドでは牛は神聖なものとして崇められていますが、聖書の中での牛は "生贄" などに象徴されるように肉としての意味、そして、"しもべ" という暗喩もあります。ビーフジャーキーの横に並んでいたのは "ターフジャーキー" 七面鳥です。クリスマスにみんなが食べるものです。そこからも "生贄" というキーワードが導かれます。そこから推察できるのは、セーラは何かを従えているのではないかと、しかも己の欲望を満足させる何かを従えている、もしくは従えたいと目論んでいる、そんなニュアンスが読み取れないでしょうか。その表れが "牛" であった。とにかく "牛" を見ると欲望がうずいてしまうのではないかと。

 しかも、"牛" というキーワードが出てきたのは、なにもセーラの登場シーンだけではありません。そうです。月を飛び越えちまったやつです。「The Return」の中で "牛" というキーワードがどれだけ重要なのかは、まだ計り知ることができませんが、さらっと語るなら仏教法話の「十牛図」が少しは絡んでくるのかもしれません。"十牛図" では悟りへの道の比喩として登場する "牛" を、従えるのではなく食べちまうという観念。まるで神が不在の現世を嘲笑っているかのようです。

 様子がおかしくなったセーラは、幻視でも見たのか、レジのお姉ちゃん(名札にヴィクトリアと書かれています)に唐突に警告を発します。

  〇部屋の様子が変わっている

  〇男たちがやってくる

  〇気を付けなさい

  〇何かが起きる

  〇それは私にも起きたこ

 そのすぐ後に「セーラ、こんなことはダメ」と自分で自分を戒めています。その様子は、まるで「ロード・オブ・ザ・リング」のスメアゴルのようです。

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 長い孤独の末に二重人格者のような行動を取り、善の性格と悪の性格が一つの人格の中で会話をしているという異様な魂の形をしているスメアゴル。セーラも彼同様、長い孤独の中で自己対話をし過ぎたためか、欲望が赴くままの性格とそれを抑えようとする理性的な性格が一つの人格の中で分離してしまったように見えます。そして、車のキーを探しながら「あのクソッタレな車」と悪態をつくのです。その悪態は、スーパーでの騒ぎを聞きつけ、様子を見に来たホーク保安官にも向けられます。独り暮らしのはずなのに奥のキッチンから物音がしたり、「ひどい話だよ!」と何について苛立っているのかはわかりませんが、とにかく異様なオーラをプンプンと周りに放っているのです。

 このような様子を見ていると、セーラは「ツイン・ピークス」という世界の中で、一番、孤独に蝕まれている存在といえそうです。そして、ボブとも一番長く共存、もしくは身近だった存在ともいえるのです。発売されている書籍「ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー」によると、1989年の時点でセーラ・ノヴァク・パーマーは44才。政治学専攻の出身で、夫であるリーランド・パーマーとは学生時代からの恋人であったとされています。リーランドはワシントン大学を首席で卒業とありますので、セーラも同じワシントン大学だった可能性が高いです。そして、結婚生活21年目に娘と夫を続けて失うという運命を背負わされてしまうのです。これは生きながらえる宿命の中で一番辛い状況ではないでしょうか。さらに、リーランドとボブがどの時点で同一化したのかは定かではありませんが、おそらく恋人同士であった学生時代の頃からボブという存在をどこかで認識し(窓から男たちがやってきた)、潜在的に脅かされる結婚生活の果てに、ボブに全てを奪われてしまった唯一の被害者とも言えるのです。

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 ②ダイアン・エヴァンス ~不確かな存在~

 第6章で初めてその姿を現わし、第7章で悪クーパーとご対面、第9章では悪クーパーと密かにつながっていることが明らかになったダイアン。第11章ではヘイスティングスが殺される様を見ても助けることもなく、むしろ、してやったりの表情を浮かべていました。黒いおっちゃんを目撃していることからも、タミー捜査官とは確実に違う、どちらかと言うとクーパーやローラのような一種の "あっち側" の世界を経験している人物と言えそうです。

 前述したようにセーラとの共通点は「F※%Kの乱用」「タバコ」「ウォッカ」そして「ボブ」です。悪クーパーとつながっている、イコール、ボブともつながっている、それはロッジともつながっていると拡大解釈してもいいのかもしれません。悪クーパーの計画にどれほど加担しているのかは、現時点で推し量ることは難しいですが、これまでの印象としてはどうも行き当たりばったりな感じも見受けられます。サウスダコタの刑務所でたまたま再会したのを機に、二人はやり取りを始めたような感じがするのです。それらが全て悪クーパーの計画通りだとするなら、ゴードンやアルバートを含めかなりの範囲が悪クーパーの手の平の上だと言えそうですが、まあ、それはまずありえないでしょう。

 そもそもダイアンが実在していたという時点で、何とも言えない違和感を感じます。ゴードンも、第7章でのダイアンの抱擁に違和感を感じ、抱きつかれても抱き返すことをしませんでした。あまりにも感傷的すぎたのか、もしくは、いつものダイアンらしくないと感じたのか、その辺の説明というものがもう少し欲しいところではあるのですが、リンチ作品なので全くされないという。とにかく "違和感" だけは感じたと。なかなか、もどかしいところではあるのですが、かと言って、この違和感の正体、僕もうまく説明することができません。片腕の男のセリフではありませんが「何かが、おかしい」のです。

 ですが、そんなダイアンをゴードンは「青いバラ事件」の調査に誘います。事の理由はクーパーから何かしらの報告を聞いていたはずだから、ということだけです。それに対してダイアンは「Let's Rock!(さあ、やろうぜ!)」と返答します。この「Let's Rock!」というセリフ、意味するところが深すぎて、とてもどれを指しているのかわかりません。旧シリーズ、そして映画、いずれも「Let's Rock!」が登場するシーンはとても重要なシーンだからです。

 

 【「Let's Rock!」の登場シーン①】

 旧シリーズの第2話、ベッドに入り夢を見ているクーパー捜査官。その夢の中で「ツイン・ピークス」で初めて "赤い部屋" が登場します。そして、小人(別の場所から来た小さな男)が初めて語るセリフが「Let's Rock!」なのです。その夢の内容をクーパー捜査官はボイスレコーダーでダイアンに報告していた。だから、ダイアンは「Let's Rock!」と応えたというのが一つあります。

 ただ、この "赤い部屋" のシーン、生粋のツイン・ピークス・フリークの方ならとっくに周知のことですが、テレビシリーズでは抜けているものが "インターナショナル版" ではちゃんと表示されているのです。それは「25年後」というテロップです。旧シリーズでの第3話でも、夢の内容を語るクーパー捜査官は「25年後、僕は "赤い部屋" にいた」とハリーに説明しています。

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 この "赤い部屋" のシーン、よく見るとクーパーはかなり老けています。1989年当時、カイル・マクラクランが25年後になると、こんなおじさんになっているのではないかというメイクがされているので、現状と比べるのも一つの楽しみです。そして、この "25年後" が、実際に今展開されている舞台というのがあまりにも意味深です。"赤い部屋" が「青いバラ事件」と何かしらの関連があると解った上で、ダイアンは口にしたのでしょうか?

 

 【「Let's Rock!」の登場シーン②】

 もう一つは映画「FIRE WALK WITH ME」のファットトラウト・トレイラーパークでのシーンです。失踪したデズモンド捜査官を探しにトレイラーパークを訪れたクーパー捜査官は、今は善きカール管理人に案内されて足取りを追います。そして、あるはずのシャルフォン婦人のトレイラーがなくなり、その近くに放置されていたデズモンド捜査官の車のフロントガラスに赤い口紅で殴り書きされていたのが「Let's Rock!」でした。

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 今回の第12章で、青いバラ計画チームに加入したタミー捜査官。その経緯をアルバートが説明している中で、もともとフィリップ・ジェフリーズをチームリーダーに、アルバート、デイル・クーパー、そして、チェット・デズモンドの3人が召集されたことが明かされました。映画「FIRE WALK WITH ME」で登場した "しかめっ面のリル" が胸に刺していた "青いバラ" を解明しようと、テレサ・バンクスの護送をサムに任せ、一人、トレイラーパークを訪れたデズモンド捜査官は "6の電信柱" に辿り着き、シャルフォン婦人のトレーラー下にあった "翡翠の指輪" を手にした途端に忽然と姿を消します。

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 となると、"青いバラ" と "翡翠の指輪" に何かしらの関連があるように解釈できるのではないかと。先ほどの "赤い部屋" と "翡翠の指輪" は密接な関係にありますので、そこに "青いバラ" までが深く関わってくることが、これらのことから読み取れてきそうなのです。そして、ダイアンは、これらの内容をただ一言「Let's Rock!」で暗示している。これらはダイアンが "赤い部屋" や "翡翠の指輪" に深く関わっていると定義するのに十分なほどの情報ではないでしょうか。

 さらに重要なのが「青いバラ計画」が "ブルーブック計画" の内密な後継捜査チームだったという事実です。ダイアンの話から少しズレますが、そもそも "ブルーブック計画" というのは、以前の第10章の考察でも語った通り、実際にアメリカで行われていた "MJ-12" という委員会の報告書名でした。そして、この "MJ-12" が調査していたのが、アルバートが説明していたようにUFOなど宇宙人関連を調査する組織だったのです。このUFO調査がどこから始まったかというと、1947年、ニューメキシコ州にUFOが墜落したと言われる "ロズウェル事件" が発端なのです。

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 ニューメキシコ州と聞いてピンと来る方が多いと思いますが、そうです、あの第8章のトリニティ実験が行われたのがニューメキシコ州です。1945年に行われた初の原爆実験の2年後にUFOが立て続けに2度も落ちているのです。ちょっと興味本位で「広島 UFO」で検索をしてみると、広島もどうやらUFO目撃が多い地域のようです。長崎も同様みたいですので、なんだかマーク・フロストの都市伝説熱が上がってくるような感じがします。

 ただ、僕が重要だと思うのはUFOについてではありません。青いバラ計画の名前の由来です。アルバートが語る「ある女性が死ぬ前に言った "青いバラ" が計画名になった」という部分です。経緯を整理します。

 

 1945年 トリニティ実験

      ↓

 1947年 ロズウェル事件

      ↓

 1947年 ブルーブック計画始動

      ↓

 1956年 "森の男" がラジオ局を襲う

      ↓

 1970年の数年後 青いバラ事件発生

      ↓

 1970年の数年後 青いバラ計画始動

 

 フィクションとノンフィクションが織り交ざっていますが、これら全てがニューメキシコ州を中心に動いている事実と解釈するのなら、先ほどの "青いバラ" と言い残して死んでしまった女性というのは、第8章でトビガエルを口にしたあの少女のことを指すのではないかと思うのです。そうすると、唐突に描かれたような印象があった第8章のトリニティ実験と "森の男" と真っ黒いおっちゃん達ですが、それらはゴードンが追いかけていた "青いバラ事件" の発端を描いていたと解釈できないでしょうか?そして、その事件解明を手伝ってほしいと誘われたダイアンが放った一言が「Let's Rock!」。要は "赤い部屋" やロッジともつながっていると。

 これらはアルバートが語った内容とそれに対するダイアンのリアクションから推察しただけですので、この考察がどこまで的を得ているのかはわかりません。ただ、書籍「ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー」に "ロズウェル事件" についての記事も掲載されているので、そんなにズレた話ではないような気もするのです。

 さらに悪クーパーからの「ラスベガス」についてのショートメール、これはゴードンたちがダギー・ジョーンズまで辿り着いているかの確認メールになります。たぶんですが、悪クーパーとダイアンのやり取りは、ゴードンたちにハッキングされているとわかった上でのやり取りのような気がします。でなければ、ルース・ダヴェンポートの座標をさっさとメールで送っているはずなのです。さらにその座標がツイン・ピークスを指し示したことも明らかになりました。この発覚が、今後ダイアンの動きにどう絡んでくるのか、裏切りダイアンのスパイ活動も「The Return」の重要なカギになりそうです。

 

 ③オードリー・ホーン ~不可思議な空間~

 新シリーズの第12章でようやく姿を現わしたオードリー。ツイン・ピークスのマドンナの登場を待ち焦がれていたピーカーも多かったようですが、その不可思議な状況とあまりの不機嫌さにショックを受けた方も少なくなかったようです。その不機嫌ぶりは、旧シリーズのあの愛らしい姿からは到底想像できないほどで、ある意味、新シリーズで一番の変貌ぶりではないでしょうか。

 これまでの状況から明らかになっているのは、25年前、父であるベンジャミン・ホーンのゴーストウッド計画を阻止しようと銀行の貸金庫室で抗議を謀ったところ、爆発事故に巻き込まれ意識不明の重症を負ったということ。そして、病院の集中治療室で生死の境をさまよっているところに、なぜか悪クーパーが訪れているということのみです。

 今回のシーンでは状況を把握するしかできないのですが、会話の内容を整理する前に、まずはチャーリーという男性と一緒にいる "部屋" の状況があまりにも前時代的であることに着目したいと思います。今まで例えばトルーマン保安官がスカイプを使ったり、森を彷徨うジェリーがiPhoneであったりタブレットを使っていたりするのに、このオードリーがいる部屋には一切そういう類のものがありません。列挙してみると、

 〇電話は黒電話のみ

 〇書斎にパソコンがない

 〇時計が一切ない

 〇腕時計もしていない

 〇カレンダーがない

 〇写真の類がない

 〇ペーパーレスの時代に机の上が紙だらけ

 〇紙が飛ばないように分銅まで置いている

 〇名刺フォルダーが机の上にある

 〇古い本ばかりが積み上がっている

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 こんな様子から察すると、どうもオードリーがいる時間軸は現在の時間軸とズレている可能性が大いにあります。しかも、登場して最初のセリフが「もう電話が鳴るのを待つなんて耐えられない」です。携帯で電話するもメールするもLINEするも自由なこの時代に、黒電話が鳴るのをただひたすら待っているという状況は、あまりにも不可思議です。さらにチャーリーはオードリーの夫という設定ですが、不思議なのは二人とも結婚指輪をしていないということです。「私は君の夫だ。良き夫を努めてきた」と語るチャーリーが結婚指輪をしていないと言うのが、どうにも理解できません。

 会話の内容を整理してみるとオードリーとチャーリー以外に4人の人物が出てきます。

  〇ビリー・・・・・2日前から行方不明、オードリーの愛人?

  〇ティナ・・・・・ビリーと最後に会った女性、チャーリーが電話をする

  〇チャック・・・・・先週、ビリーのトラックを盗んだ

  〇ポール・・・・・怪しげな書類に関わっている人物

 リストにしてみても全く何が何だかわかりません。トラックを盗んだと聞くと、チャック=リチャードのような気もするのですが、チャックは "チャールズ" の愛称であり、混乱のもとなのですがチャーリーも "チャールズ" の愛称なのです。これが "リック" であったり "リッチー" であったり、もしくは "ディック" であったりするならリチャードだとすぐわかるのですが、今回の情報だけではどうにもこうにも理解ができません。オードリーが探しているビリーは、第7章のラスト、ダブルRダイナーに現れた「なあ?ビリーを見なかったか?」と突然現れた男が探していたビリーと同一人物のような気もします。その際に起きたダブルRダイナーのお客さん総入れ替えというパラレルが、今回のオードリーがいる部屋とも関連づいていそうですが、となると、この携帯もパソコンもない世界がどこかのパラレルとしてつながっているとしても、それがどこなのかはやはり完全な情報不足になります。

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 さらに、オードリーはしきりにロードハウスに行きたいと騒いでいます。そうするとこの部屋はツイン・ピークスのどこかにありそうな感じもしますが、不思議なのは、もしオードリーが結婚してリチャードを産みツイン・ピークスのどこかで暮らしているとするなら、先に登場しているベンジャミン・ホーンやシルビアが、オードリーの話題を出してもいいのではないかと思うのです。それが一切なく、今回の第12章でトルーマン保安官からリチャードの事件を聞いた後、ベン・ホーンがポロリと呟いたのは「リチャードは父親を知らない」という事実だけです。父親の情報は明らかになっても、母親だと思われるオードリーの話題が一切出ない。しかも、オードリーがツイン・ピークスで暮らしていて、かつリチャードの母親なら、トルーマン保安官はベン・ホーンではなくオードリーを訪ねたに違いないのです。

 いずれにしても、この不思議な状況が残り3分の1となった新シリーズで少しは解明するのか。いろいろな謎が収束に向かっている中で新たに提示された謎は、この「The Return」の中でも特殊な状況下に置かれていると言えそうです。

 

2.その他

 デイヴィッド・リンチはダジャレが好きです。今週のフランス美人とのシーンでも必殺の "カブ" 爆弾が放たれました。それを聞いたアルバートが直立不動で完全に固まってしまったところを見ると、その威力は相当なものです。あまりに効きすぎてしまったので、逆にゴードンがアルバートを心配してしまったほどです。

 第9章で悪クーパーにマーフィー刑務所長を殺せと命じられたハッチ&シャンタル。ハッチはただ撃ち殺すのではなく、どうもいたぶって楽しみたかったようですが、お腹が空いたシャンタルは、早くバーガーが食べたくて、さっさと済ませろと煽ります。それに従うハッチ、見事な腕前でマーフィー所長を仕留めます。

 ジャコビー先生のネット放送がまた始まりました。これはあれですね、どうも毎日毎日19:00に放送をしているようです。ということは、物語内の時間経過を図るのにDr.アンプが登場すると1日が終わると計算できそうです。となると、この夜が明けると、運命の10月1日になりそうです。

 第12章のラスト、BANG BANG BARでのシーン。第9章ではやたらと脇を掻いている女の子が出てきましたが、今回はさらに物語と関係なさそうなシーンです。というのも、BANG BANG BARのシーンはライブもそうですが、どうも各回ゲストコーナーとして扱っている節があり、本編とはあまり関係ない、リンチのお遊び的な面が反映されているように思われるのです。ただ、トリックという男が車の事故に遭って死にそうになったという挿話は、たぶん、車で逃げているリチャードと接触したことを暗にほのめかしているようにも受け取れます。さらに彼の左手は先週のゴードンのように小刻みに震えていました。