that passion once again

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ツイン・ピークス The Return 考察 総論 (第1章~第18章) まとめ解説 これは未来か、それとも過去か?

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WOWOWの放送が終了してから早いもので半月が経とうとしています。海外では既にブルーレイボックスが発売されていますが、ここ日本ではボックス発売もレンタル解禁のアナウンスもなんにもない状態。amazonを見てもDVDボックスしか扱ってないし、WOWOWが終わったらすぐにアナウンスがあるかと思ってたら、なかなかな無風状態が続いています。『The Entire Mystery』みたいにインポートでも日本語字幕があれば言うことなしなんですが、どうもその辺で大人の事情が絡んでいそうな雰囲気です。早く8時間だか6時間だかもあるらしい未公開集を見たいんだけど、簡単に価格が3万円だ5万円だなんて言われると、じゃあ見なくてもいっか、なんかめんどくせぇ国だなって感じにもなりそうです。

12月22日に発売される『ファイナル・ドキュメント』で新たな解釈が判明されるかもしれませんが、それも結局はフロスト論になるので、リンチ的にどう解釈するかは現段階でWOWOW放送分を振り返るしかありません。ていうか、そもそもリンチを解釈することは可能なのか?という大命題がありますが、いいんじゃないですか、自分の好きなように解釈すれば。100人いて100通りの解釈があれば100通りの正解があるんです。それがデヴィッド・リンチの作品ってやつじゃないですか。意味不明で斬り捨てるのも正解だし、ループしてるんだと解釈するのも正解、これは全部 "夢" なんだと腑に落ちるのも正解なんです。まあ、こんな風に言ってしまうと、自分の解釈も正解なんだぜ!って自分で自分を擁護してるみたいでなんとも間抜けな感じもしますが、まあ、好きに語らせてください。正直なところ、毎回毎回他のブログとか見て回るのが結構楽しみだったりしたんですよ。こういう解釈の仕方もあるんだなとか、言われてみるとそのシーンって重要だったねとか、自分の解釈と比べるのが面白かったんです。それが放送が終わった途端に誰も更新しなくなったもんだから、なんか寂しくなっちゃったみたいな。

そんなわけで、姐さん、前々から言ってた総論というやつをちょいと繰り広げてみようかと思います。「総論」なんて言ってしまうとおこがましいというか、大げさな感じもしますが、単純に1章から最終回までをまとめて語ってやろうじゃないかというお話です。では、さっそくいってみましょうか。

 

1.A RANCHO ROSA

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なにげに毎回毎回ワクワクしてたのがオープニング・クレジット。今回は何色だろ?と思って見ていたのですが、1章から18章までを並べてみるとこんなに違います。ちなみに左上から順に始まり右にカウントアップしていきます。この中で明らかに異色なのが、

第14章 真っ黒

第17章 真っ白

第18章 真っ黒

この3つです。特に14章と18章が同じというところに何かヒントが隠されていそうな感じがします。振り返ってみると14章では「青いバラ事件」が語られ、モニカ・ベルッチが "夢見人" を語り、ジャック・ラビット・パレスが(たぶん)ホワイト・ロッジへの入り口だとわかった回でした。他にもダイアンとジェイニーEが姉妹だと判明し、消防士がアンディーに「ツイン・ピークス」という物語の全てを明らかにし、さらにセーラが顔パッカーンしてトラック・ユーを噛み千切った回でもありました(ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹)。こうやって書くとなかなかにてんこ盛りな感じですが、それが18章と共通しているというのはどういうことなのか。

素直に解釈するなら最終話で描かれていたものは、

 ①青いバラ事件の顛末

 ②夢見人の夢

 ③ホワイト・ロッジ

以上の3つが描かれていたのではないかと。どれも重要な項目なので詳細については後述しますが、最終話に全てが描かれていると僕が豪語したのにもここに理由があります。

オープニング・クレジットでもう一つ重要なのが17章の真っ白です。一般的な解釈は「17章と18章が対になってるからオープニングも白と黒なんやないの」というもの。確かにそれも一理あると思います。17章がフロストverのエンディング、18章がリンチverのエンディングみたいな感じ。その方がわかりやすいし、物語として見ても17章で終わるとループしてキレイに納まって、あとはリンチ世界!みたいな。ですが、そこは内藤仙人さまと一緒で、僕も "十牛図論" を唱えたいと思います。

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前にも載せましたが、この十牛図というヤツがスゴイのが「八番」です。その名も「人牛倶忘」。意味は全てを忘れてしまうこと。忘れるということさえも忘れてしまうという、なにもかも忘れた真っ白な状態を "円" だけで表現しているのです。昔の人というのはホントにスゴイなぁと思います。考え方も突き抜けてれば、なにも描かないなんていう表現まで突き抜けてます。んでもって、これが17章に当てはまるのではないかと。

17章でなにがあったかというと、

 ①2時53分に保安官事務所に勢ぞろい

 ②ぼんやりクーパー

 ③消えるローラの死体

この3つの項目に共通するのが "忘却" というキーワードです。③の死体が消えるというのがわかりやすいと思いますが、ただ殺されずに済んだというだけではなく、ローラの存在そのものが消えてしまった、要するに "何もかも忘れられてしまった" 状態を現わしているのではないかと。では①と②はどうなのかというと、後述する解釈にも絡んでくることですが、「①に勢ぞろいしているキャラたちはみんな存在していない」「②はそれを必死に思い出そうとしている」と僕は見ています。いずれにしても詳細については後述します。

こうして見ていくとオープニングから既に意味が散りばめられていそうな感じがします。他も見ていくと2章と7章が赤いのは、どちらにも "進化した腕" が登場しているからとか、4章と11章の青はそのまんま "青いバラ" にまつわるエピソードがあるとか、13章の緑は "翡翠の指輪" が重要になるとか。こじつけと言われてしまうとそうかもしれないけど、そうは言っても相手はリンチ監督です。オープニングであろうと、表現することには何かしらのメッセージが隠されているのではないかと思うのです。

 

※続きは後日更新していきます

ツイン・ピークス The Return 考察 第18章 存在への祈り。異世界へのドライブ。電気が消えた!

最終回です、姐さん。25年ぶりに復活した我らがツイン・ピークス。長い沈黙を破り、まさかの続編が制作されると発表された時はどうなることかと思いましたが、いざ蓋を開けてみたらデイヴィッド・リンチの集大成で終わりました。とにかくスゴイです。巷でシーズン4の制作を待ち望んでいる声が多いのももちろん頷けますが(それだけ宙ぶらりんな謎がてんこ盛り!)、仮にそれが制作されたとしても謎が増えるだけでなんの解決にもならなさそうな感じもします。ていうか、僕的にはシーズン3の謎はこの第18章で全て解決できそうな気がするんですよね。それぐらいリンチ作品としては非常に珍しくキレイに納まっていると思うんです。放送当時はグワーッと書き連ねて終わり!みたいな感じになってしまいましたが、それを再度一つ一つゆっくりブラッシュアップしていこうと思います。

 

◆赤い部屋(悪クーパーの消滅)

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『悪クーパーが燃えています。燃やしても燃やしても燃えきれない感じ。もう完全に銅像と化してます』

最終回の冒頭がいきなり "業火に焼かれている悪クーパー" というのがぶったまげてしまいます。前回の第17章でクーパーに翡翠の指輪を嵌められ、カランカランとロッジ送りになったその後のシーンになるみたいですが、これには下記の三通りの感じ方があるようです。

Aさん「やった!とうとう悪クーパーが滅びたぞ!」

Bさん「悪クーパー!てめぇ、結局なにがしたかったんだ!」

Cさん「あのソファは燃えないの?」

燃えているのは悪クーパーの魂なので、家具が燃えて赤い部屋が火事になったりすることはなさそうですよ、Cさん。とまあ、そんなわけで僕は完全にBさんの方なんですが、イマイチ悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかがわかりません。そもそも悪クーパーってドッペルゲンガーですよね。だとすると、

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こんなだったり、

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こんな風に消えるのが今までだったはずです。んでもって、最後に残るのは "金の種" のみ。なのに悪クーパーはオニのように "赤い炎" で燃えています。ここで思い返したいのが第11章でホークが語っていた "黒い火" です。

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ホークが語るところによると、焚き火のように見えるものは "火" の象徴であり、炎の一種ではあるがそれよりも "現代の電気" に近いものであるということ。そして、"黒いトウモロコシ" は「病・異常・死」が肥沃であることを示していて、この二つの象徴を足すと "黒い火" を意味することになる、そんなお話でした。要約すると下記のような式になります。

火(電気)+黒いトウモロコシ=黒い火

ダギー・ジョーンズもダイアン・エヴァンスも "黒いトウモロコシ" の状態であり、赤い部屋で "電気" に触れたことにより "黒い火" となって消えていきました。ここで明らかになるのは、ダギーもダイアンも既に死んでいる状態、もしくは病に犯された異常な状態であるということです。では、悪クーパーはどうなのかというと "黒い火" になっていません。ということは、彼は "黒いトウモロコシ" ではないということです。だったら、いったい悪クーパーはなんなんだ?という話ですが、前半考察にも書いたように彼はウィンダム・アールなのです。

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旧シリーズの最終回でボブに魂を抜かれてしまったウィンダム・アール。その時、初めて赤い部屋で "炎" が立ち上がります。旧シリーズ、映画、新シリーズ、いずれも赤い部屋で炎が立ち上がるのは、このウィンダム・アールが魂を抜かれた時と、アールの魂が宿った悪クーパーが消えていく今のこのシーンだけです。となると、このことから容易に想像できるのは「新シリーズでの悪クーパーの行動は全てウィンダム・アールの企みによるもの」という見方ができます。そうすると、悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかが自ずと見えてきそうではないですか。まあ、その辺の振り返りは、また "総論" の時にゆっくりと語りたいと思います。

 

◆赤い部屋(ダギー・ジョーンズの再誕)

『ソファの上に種とクーパーの髪が置かれる。片腕の男が「電気、電気」と呟き、指先でバチッバチッと4回スパークすると、あっという間にダギーが出来た。なんなんだ、これ...。こんなB級的な発想が普通に許されている時点で既に神』

悪クーパーが燃えているシーンからいきなりこのシーンにつながるので、一瞬、ソファに置かれた "金の種" が悪クーパーの種ではないかと思えてしまうのですが、もちろんこれはダギー・ジョーンズの種。そして、電気を帯びた一房の髪を "種" は食べるようにして吸収していきます。ここで一つ頭に入れておきたいのは、片腕の男が "電気" を操ることができるということ。そして、"進化した腕" は常に放電していたということです。この二人の関係は以下の写真の通り。

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ピーカーには今さら説明不要だと思いますが、もともとこの二人は一つでした。ニューヨークの謎に関するテキストでも少し触れましたが、片腕の男は "神" と出会い、ボブと悪事をすることをやめることにしました。その時に自分の悪の部分を切り落としたのが "左腕" であり、その "左腕" が実体となり意識を持ったのが "小人" もしくは "別の場所から来た小さな男" でした。そして、二人とも "電気" を操ることができる。それは "火" を操ることができると言いかえることもできます。

ドッペルゲンガー、もしくは "トゥルパ" はこうして作られるという「種明かし」になっているシーンがこのダギー再誕になるのですが、さて、この "化身" を作り出せるのは、電気を操ることができるこの二人だけなのでしょうか?仮にそうだとすると、ダギーであったりダイアンであったりのドッペルゲンガーを作り出したのは "進化した腕" ということになりそうです。となると、そこから導き出せるドッペルゲンガーの存在理由は下記の二通りになります。

 A."ガルモンボジーア" を搾取するために産み出された存在

 B.ボブの手助けをするために産み出された存在

Aの方向で考察すると "進化した腕" はガルモンボジーア(痛みや悲しみ)を味わうためにダギーやダイアンが住む世界を作り出したと考えられます。その視点で見ていくと、お酒とギャンブルが大好きだったという元ダギーに、ジェイニーEは随分と悩まされていたようですが、その苦しみは映画でのローラ・パーマーのような役割に見えてきます。そして、真意の程は定かではないですが、片親違いの姉妹であるダイアンも、ストーリーでは描かれていない部分でなにかしらの辛酸を舐めていたのではないかと思われます。

Bの方向で見ていくと、旧シリーズの最終回でウィンダム・アールと共に現世に解き放たれたボブを、何かしらの理由で手助けするためにダイアンとダギーを産み出したと考えられます。そうするとダギーの存在よりもダイアンの存在の方がボブもしくはアールにとっては重要だったのではないかという勘繰りが出てきます。FBIの情報であったり、クーパーからの情報であったりを手に入れるためにダイアンを利用したと考えられるのです。さらに拡大解釈をするなら、悪事のための資金繰りのためにダギーの存在を作り、ラスベガスのトッドであったりミッチャム兄弟であったりを動かすことに成功した。

どちらの方向でもこじつけようと思えばいくらでもこじつけられそうですが、いずれにしてもダイアンの存在、そして、ダギー・ジョーンズ周辺の存在というのは "造られた世界" と言えそうな気がするのです。

 

◆ダギー・ジョーンズの家(ダギーの帰宅)

『チャイムが鳴り、玄関ドアを開けるジェイニーE。そこにはダギーの姿が。サニージムも喜んで駆け寄ります。ダギー、チャイムが押せるようになったね...』

先ほどダギーとダイアンが住む世界は "造られた世界" であると仮定しました。その仮定をもう少し推し進めてみると、ちょっと考えたくない世界が見えてきます。それはジェイニーEとサニー・ジムも "造られた存在" なのではないかという仮説です。さらにそこから見えてくるのはラスベガス自体が "造られた世界" なのではないかという疑惑です。

『The Return』の中でラスベガスのストーリーというのは、本編のミステリーとは完全に切り離された世界が描かれていました。ちょっと振り返ってみると、そもそもラスベガスの舞台は第3章のこれが入口でした。

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ナイドが電圧を落としたであろう大きなコンセントからそもそも転送されてきたわけです。このどこかの画用紙にとりあえず『3』と書いたようなデマカセ的な部分からクーパーはラスベガスにやってきた。ここからして、ただでさえ普通じゃないツイン・ピークスの世界で、さらに異色の世界へ "転送" されていることを象徴しているのではないかと思うのです。

またラスベガスに登場するキャラクターはツイン・ピークスの住人に引けを取らない曲者ばかりが、ここぞとばかりに揃っています。ジェイニーEを筆頭にブッシュネル社長とラッキー7保険の社員たち、ミッチャム兄弟にキャンディー、119のヤク中ママ、フスコ3兄弟、アイク・ザ・スパイク、極めつけは進化した腕や片腕の男が普通に登場!どのキャラクターも愛すべき存在であり(特にジェイニーEとミッチャム兄弟!)『The Return』を大いに盛り上げてくれたキャラクター達ばかりです。そんな彼らや彼女らがいわゆる "幻" の世界の住人だったなんて、思うだけで寂しくなってしまうのですが、物語を追っていくとどうも幻の世界ではないかと思えて仕方がないのです。その理由は、

 ①進化した腕や片腕の男がちょいちょい登場する

 ②ミッチャム兄弟の家に "黒電話" がある

 ③ランスロットコートに住人がいない

 ④「シカモア通り」が存在する

 ⑤「ここは天国」というセリフが登場する

 ⑥シルバー・マスタング=白銀の馬

 ⑦ラッキーセブン=過去・現在・未来・東西南北

 ⑧赤いドアとフクロウ

 ⑨誰もツイン・ピークスとつながらない

 ⑩ラスベガス="肥沃" の土地

とりあえず10項目挙げてみました。他にも細かく観ていくと出てきそうですが、とにかく条件はいろいろと揃ってしまいそうなのです。そんなラスベガスでのラストシーンが、このダギー・ジョーンズの帰還。しかも "赤い部屋" からダイレクトに "赤いドア" まで辿り着いてしまうのです。それでも例え幻の世界であっても、ここは "天国" であり、ジョーンズ一家は幸せな時をこれから過ごしていけそうではあります。そういう意味ではラスベガスがハッピーエンドな世界でホッとします。本当に短いシーンですが、ダギーの「家(Home)」というセリフも泣けてきます。

このセンテンスを読んで「あれ?ミスター・トッドが抜けてない?」と思った方、かなり鋭い方だと思います。安心してください、忘れているわけではありません。ラスベガスのキャラクター達の中で唯一「第2章」に登場していた彼は "現実" のキャラクターになります。その辺については "総論" の時に思う存分語りたいと思っています。

 

◆ゴーストウッドの森(ローラの消失)

『ローラを連れて "森の心臓" に向かうクーパー。カリカリ音がしてローラが消える。森に響き渡るローラの絶叫。どうしたもんじゃろのぉ...と困り顔のクーパー。先週のシーンの繰り返し。困った顔をしたいのは見てるこっち側なんだけどな』

このシーンの解釈として一般的に定着しそうなのが「ローラママの時空を超えた攻撃によってローラ救出は失敗した論」ではないかと思います。その根拠となるのが第17章のこのシーン。

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鬼気迫るローラママが酒瓶で「こんにゃろう!こんにゃろう!」と凄まじい怨念でローラの写真を叩きつけています。これが "1989年2月23日" の夜にまで影響していると思えば思えなくもない解釈ではありますが、どうでしょう?いくらリンチだからと言って、そればっかりは突飛すぎやしないでしょうか。どちらかというとクーパーの時空転送によって、あるはずのローラの死体が歴史から消えてしまったことへの怨念・悔しさみたいな、そんな印象の方が強いような気がするのです。だから、いくら酒瓶で叩きつけても写真にはキズひとつ付かなかった。逆にローラママの攻撃をことごとく跳ね返し、お前の負けだと微笑んでいるようにも見えるのです。

ではこのカリカリ音でローラを連れ去ったものはなんなのか?ですが、音響から辿ると "炎" が燃え盛る音とローラの絶叫が第2章のローラの絶叫とほぼ同じです。となると、あの第2章のクーパーに耳打ちをした後にローラをどこかに連れ去った何者かがカリカリ音の正体になりそうな気がします。そのシーンはこの後にもリフレインされるのです。

では、そのカリカリ音の正体はなんなのか?という話ですが、たぶん、こいつです。

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アルルのヴィーナス。

あの "こすれる" ようなカリカリ音は大理石が擦れる音ではないかと。第1章で消防士は大理石の擦れる音をクーパーに聴かせ「今それは我々の家に」と呟き、クーパーも「そうだ」と応えていました。それはアルルのヴィーナスが消防士とクーパーの家 "ホワイトロッジ" に侵入していることを現わしているのではないかと思うのです。とは言っても、このアルルのヴィーナスがヒョイヒョイと動いているわけではなく、あくまでもヴィーナスは象徴であります。では、何を象徴しているのか?ですが、それはもう言うまでもなく "ジュディ" です。なので、ローラは "ジュディ" にさらわれた、もしくは消滅させられたということになるのではないかと。

あまり伝わらないと思うので順を追って説明をしますが、まず "ジュディ" は「極めてネガティブな存在」であると第17章でゴードンが語っていました。ここまでは誰でもわかると思います。では、なぜそれが "アルルのヴィーナス" とつながるのか?ですが、『The Return』に登場しているヴィーナスは復元前の状態であり、現在ルーブル美術館に展示されているヴィーナスには両腕が復元されています。

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復元された彫刻の右手には "林檎" が、そして左手には "手鏡" が握られていたのではないかと言われています。この二つのキーワード、まず "鏡" はリンチ・ファンでしたら説明するまでもないですよね、あっちの世界への入り口です。問題は "林檎" です。話は聖書に飛びますが、アダムとイブが楽園から追放されたのは "禁断の果実" を食したからでした。それは悪魔の化身である "蛇" がイブをそそのかしたからであり、そそのかされたイブやその子孫であるすべての女性は "産みの苦しみ" を課せられてしまいます。

なんとなく伝わるでしょうか?"アルルのヴィーナス" は罪深いイブを象徴しているのではないか。そして、イブをそそのかした "蛇" が「極めてネガティブな存在」なのではないか。フィリップ・ジェフリーズも暗に "蛇" の象徴である「8」を提示していましたし、第17章では「ここでジュディを見つけるだろう」とも語っていました。

さらにリンチ監督はあえて復元される前の "アルルのヴィーナス" を赤い部屋に配置しています。この時空にまつわる考察は赤い部屋にあるもう一つのヴィーナスである "ミロのヴィーナス" と共に総論で語りたいと思います。

 

◆赤い部屋

突然、第2章にフラッシュバック。

片腕の男「これは過去か、それとも未来か」

しかし、現れるはずのローラの姿がない...。

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過去改変の影響がさっそく現れているけど、

だとしたらクーパーがここに居るのもちょっと変。

 

部屋の向こうで、こっちさ来いと片腕の男。

ついていくと "進化した腕" がいる部屋へ。

完全に第2章の繰り返し。

違うのは "腕" が語るセリフ。

"通り沿いの家に住んでいたあの少女の物語なのか?"

これはオードリーがチャーリーに確認した話題。

それをなぜ "腕" が語っているのだろう?

 

またもや突然に場面が切替わり、

ローラがクーパーに耳打ちをする。

第2章の時は「ああ...」と納得していたクーパー。

今回はそれが「はあん?」に変わっています。

いやいやいや、

はあん?って言いたいのはこっちですけど!

 

悲鳴と共に宙に消えていくローラ。

目線を戻すクーパーの先にクーパー。

またドッペルゲンガーか?

と思いきや、ソファにはリーランド。

「ローラを捜せ」

言われて、何かを決心するクーパー。

赤いカーテンの向こうに行くと、

右手をヒラヒラヒラヒラさせます。

それに呼応するかのように先のカーテンが開く。

 

この右手ヒラヒラ、

第5章でロドニーが支配人をボコってる横で、

キャンディも同じようにヒラヒラさせていました。

また先週の第17章でも、

悪クーパーが保安官事務所に辿り着くと、

急に怯え始めたナイドが右手をヒラヒラしていた。

 

話が飛びますが『インランド・エンパイア』では、

誰かに殺される!とバーに逃げ込んだニッキーを、

赤いカーテンの向こうへ案内したカロリーナが、

サヨナラとばかりに左手をヒラヒラさせていました。

 

一見すると "念" を送っているような印象を受けます。

となると、

クーパーはこの短期間で

ジェダイ並みにフォースが操れるようになったと。

驚異的な覚醒ですな!

 

グラストンベリー・グローブ

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赤いカーテンの先はグラストンベリー・グローブ。

これが正規の出口なんかな?

外ではダイアンが待っていました。

...、...、...。

んん、嘘っぽい、嘘っぽいぞ。

 

◆山間のハイウェイ

ドライブ・タイム。

景色は段々と配電線が立ち並ぶ山間になる。

鉄塔の姿形がフクロウのマークに見えるのは、

もう完全に頭がイカれてしまった証拠かもしれない。

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 「ちょうど430マイルの地点だ」

そう言って車を止めるクーパー。

外に出ると、電気のジリジリ音と時間を確認する。

そして、ウンウン、そうだ、間違いない、と納得。

またジェダイですか?

いったいフォースは何を感じてるんですか?

 

「ここを超えれば全てが変わるだろう」

そう言ってキスをせがむクーパー。

...、...、...。

第8章のあの少年もキスをせがんでいたな...。

今まで逃げ腰だったダイアンは、

クーパーとキスすると「行きましょう」と急に決心。

 

車を動かし、430マイルの地点を超えると電気が走る。

するとクーパーとダイアンの席があべこべになる。

もう右も左も関係ないということかな...。

時は急激に進み、道は暗闇に変わる。

フォースの次はデロリアンか...。

もうBTTFはいいでしょう...。

 

◆どこかのモーテル

車を駐車場に入れ込むと、

チェックインを済ませに行くクーパー。

その間、車中で待っているダイアンは、

建物の向こうに自分の姿を確認する。

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だけど、ダイアン、微動だにせず...。

ねえ、ドッペルゲンガーだよ、ダイアン?

少しは驚いたら?

ダイアンに "死" のフラグが立ってしまいました。

 

◆モーテルの7号室

部屋に入り、抱き合うクーパーとダイアン。

しかし、どうもさっきからクーパーの様子が威圧的。

で、The Plattersの "MY PRAYER" が流れる。

これ第8章で "森の男" がブチ切った続きになります。

なんでしょう、ちょいちょい第8章が顔を覗かせます。

抱き合っているのにクーパーは無表情だし、

ダイアンは何か救いを求めるように天を仰ぐ。

そして、何も見ないでとばかりに、

クーパーの目を両手で覆います。

 

翌朝、目が覚めるとダイアンの姿がない。

部屋の中を見回しても、

古いテレビに古くさいチェスト。

ベッド脇にはダイアル式の電話と1枚のメモ。

起き上がるクーパーはメモを読み上げる。

 

"リチャードへ

私は出ていきます

捜さないで

もう あなたが分からない

私たちが共有したことは終わった

リンダより"

 

クーパーはリチャードとリンダに違和感を感じる。 

 

部屋の外に出ると、昨夜のモーテルとは違う建物。

キーレスで車のロックを外す。

この車も昨夜の古びたクーペとは明らかに違う。

リンカーンのコンチネンタル。

クーパーは建物を振り返り、違和感を感じている。

が、何食わぬ感じでその場から走り去っていく。

 

さて、駆け足でここまできましたが、

一旦、ここまでのクーパーの足跡を

ストーリー順におさらいしてみようかと思います。

 

1989年2月23日 ローラを助けようとするが消失

  ↓

2016年 赤い部屋で右往左往(第2章まで戻る)

  ↓

1970年代 グラストンベリー・グローブに出てくる

  ↓

1970年代 インペリアル・クーペで430マイル先へ

  ↓

1970年代 モーテルに泊まる

  ↓

1991年 モーテルで目覚める

 

実際はどこまでかわかりませんが、

登場している車の車種から、

ほぼこの年代で移ろっているのではないかと妄想。

もう次元というよりも時空がめちゃくちゃです。

 

以前、オードリー関連でも考察しましたが、

スマホだ、タブレットだ、という時代に、

モーテルの部屋にダイアル式の電話があるってのは、

もうそれだけで疑ってかかるべき小道具ですね。

 

さらに消防士のメッセージが一挙に登場。

"430" は "430マイル地点" のことみたいですが、

これは、どこから430マイルなのかイマイチです。

ジャック・ラビット・パレスから235ヤードのように

何かしらの基準になるものがありそうですが、

んん...、そこは想像して楽しみなさいということかな。

 

"リチャードとリンダ" は、

もう全ての人の想像を覆す展開で登場。

このシーン以降のクーパーは、

完全にリチャードの人格に入れ替わっています。

見た目はクーパーだし、

本人もクーパーだと思ってるようですが、

これはリチャードとシンクロした状態ではないかと。

それを念頭にこの後のシーンを見ていきます。

 

オデッサ

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テキサス州オデッサ

クーパーは "ジュディのコーヒーショップ" に赴く。

 

◆ジュディのコーヒーショップ

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店内では老夫婦がブレックファースト。

まるで『マルホランド・ドライブ』の老夫婦みたい。

店に入ってきて誰かを探しているクーパー。

いや、リチャード捜査官。

いないとわかると席に着きます。

「他にもウェイトレスがいるだろ?」と聞かれ、

なぜか一瞬固まるクリスティというウェイトレス。

何か事情を知ってそう。

「今日は休みだし、もう3日も休んでる」と言い残し、

カウボーイ3人組の方におかわりを注ぎに行きます。

ていうか、どんだけコーヒー飲み放題なんだろ?

 

クリスティにちょっかいを出すカウボーイたち。

リチャード捜査官、その手をはなせっ!と一喝。

なんだろ、昔の刑事ドラマを見てるみたい...。

んだと、こんにゃろ~とカウボーイたち。

リチャード捜査官、一人を金蹴り、

もう一人のつま先を拳銃で撃ち抜く。

ていうか、金蹴り!

やっぱ、昔の刑事ドラマみたいだよ...。

彼らの拳銃を奪うと、それをフライヤーの中に入れる。

しかも、銃を構えたままです。

この銃の構え方も、随分と前時代的です...。

「心配しなくていい、私はFBIだ」

逆にそう言われると嘘っぽく感じるんですけど...。

リチャード捜査官、

住所のメモを受け取り店を後にします。

なんかチャールズ・ブロンソンの方が似合いそう。

 

◆キャリー・ペイジの家

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メモの住所に到着。

荒れ果てたピンクい平屋の家。

驚くことに家の脇にはリアルな "6の電信柱" 。

これはカールが幻視していた電信柱です。

 

ノックするとキャリー・ペイジが出てくる。

リチャード捜査官は彼女がローラだと思っている。

キャリーは捜し人が見つかったと思いドアを開けたが、

どうやら的外れだったみたい。

訳の分からないことを聞くFBIを追い出そうとするが、

「母親の名前はセーラじゃないか?」と聞かれ、

急に動揺を隠せなくなる。

「一体、どういうこと?」と聞き返すキャリーに、

リチャード捜査官はまた訳の分からないことを言う。

ひとまずキャリーが心配していたことではなさそう。

「君を母親の家に連れて行きたいんだ」という誘いに、

キャリーはある計画を思いついたみたい。

このFBIを名乗るちょいとお頭が足りない男を使って

ここから逃げ出そうとするらしい。

リチャード捜査官は、それにぜんぜん疑問を抱かない。

 

家の中に入ると、ソファで男の死体が硬直していた。

額を撃ち抜かれ、腹が膨れて膿んでいる。

死後数日経っているのか蝿もたかっている。

見た目はキラーボブのよう。

長髪でジーパン姿、腹にあるのはボブ玉だろうか?

しかし、リチャード捜査官、なにをするわけでもない。

 

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視線は暖炉の上にある馬の模型と青い皿に移る。

床にはライフルが一丁転がっている。

この様子から男の死体の経緯が推測できるけど、

リチャードもキャリーも、そんな事にはお構いなし。

電話が鳴りだすがそれもほったらかし。

ワシントン州って寒いの?

コートがあるから持って行かなきゃ。

食料がなにもない!

途中で調達すればいいのね、最高じゃない!

なんか今からピクニックでも行くような雰囲気です。

さあ、行きましょ行きましょ。

そう言って外に出る二人。

去り際に憎々しげに男の死体をにらむキャリー。

ヤバイ、あの男を殺したの、あんたでしょ。

ということは、母親のセーラも殺してるね!

 

◆ドライブ・タイム

今回、二度目のドライブ・タイム。

テキサス州からワシントン州まで車で移動って、

もろにアメリカ縦断じゃないですか!

なのに一回ガソリンを給油しただけ。

しかもひたすら夜道を走っていきます。

まるでトワイライト・ゾーンですね...。

 

橋を渡り、ツイン・ピークスに入りました。

ダブルRダイナーがある交差点を曲がります。

今まであった "RR2go!" のロゴも消えています。

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ツイン・ピークスに見覚えがあるか?と聞かれるが、

もちろんキャリーにあるわけがない。

彼女はただオデッサから出られればそれでよかった。

逆に途中でよく逃げなかったなぁと思う。

 

◆アリス・トレモンドの家

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かつてパーマー家が住んでいた家に到着。

リチャードとキャリー、

なぜか仲良く手をつないで玄関に向かいます。

あんた達、途中でなんかあったでしょ。

 

長年のピーカーからすると、

これってとんでもないパラドックスですよね。

先週もそうだけどクーパーとローラが手をつなぐって、

普通じゃ考えられないシチュエーションですよ。

 

ドアをノックすると見知らぬ婦人が出てきます。

アリス・トレモンドさん、だそうです。

リチャード捜査官、しきりにセーラ・パーマーを連呼。

知らないものは知らないんだって。

ちょいと変質者気味です。

トレモンドさんの前に住んでたのは、

チャルフォントさん、だそうです。

この2人の名前、説明不要ですよね。

皆さんご存知の、あのご婦人です。

 

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ジャンピングマンの化身である孫を従えていた

あのトレモンド婦人が "ジュディ" なのでしょうか?

いや、なんか違うような気がします。

婦人は "ガルモンボジーア" が大嫌いな人でしたから。

まあ、その辺はまたゆっくり妄想したいと思います。

 

な~んだ、セーラ・パーマーの家じゃないのか...と、

明らかに肩を落として車に引き返すリチャード。

そんなに落ち込むなよ...。

テキサスからは遠かったかもしれないけどさ。

で、ふと何かに気づいたように振り返ります。

「今は何年だ?」

そう問われて、なぜかキャリーも答えられない...。

 

そんなんしている内に、どこからかセーラの声。

「ロォ~ラァ~~~!」

随分と明るいセーラの声です。

それを聞いたキャリー、殺した母親の記憶が蘇った?

急に叫び声を上げます。

リチャード、めっちゃビクッ!となっています。

で、全ての電気が消える!

要するに "火" が消えた!

すげぇ!

 

◆エンドクレジット

ローラの耳打ちに切ない表情を浮かべるクーパー。

まるで何かを諦めてしまったかのよう...。

バダラメンティの重々しい旋律が、

さらにクーパーの諦めを助長します...。

 

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そして、いつもはビシュンビシュンとスパークする

"LYNCH/FROST PRODUCTIONS" のクレジットも、

無音。

 

完全に電気が消えてしまったみたいです...。

 

そんなわけで、終わってしまいました。

今回の『The Return』最高だったなぁ。

リンチ監督の集大成っていうのが、とにかく最高。

やっぱ映画館で観たいよね、全部とは言わないけど。

せめて第1章と第8章、そして第11章かな。

それでもう3時間になっちゃうんだけど。

 

結局は夢オチなの?ループなの?って感じですが、

んん...、僕的には "覚え書き" みたいな感じがします。

リンチの覚え書き。

いろんな映画のオマージュが詰まっていて、

映画だけじゃなくて絵画であったり音楽であったり、

セルフ・パロディまで含めて、

とにかくリンチ監督の全てが詰まった作品。

いや、これで全てじゃないだろうから、

余計にリンチ監督の底知れないクリエティブに、

畏怖の念すら感じます。

 

マーク・フロストは、

そこに "アメリカ" という歴史と社会のスパイスを、

本当に都市伝説的に物語に組み込んでいました。

今さらUFOだもんなぁ。

本当、そういうの好きなんだろうな。

僕も好きだけど。

 

もともとは今回の第18章、

総論として一つの記事を書いたら、

もう終わりにしようと思っていたのですが、

まあ、2~3日でまとめられる量ではないので、

いつもの簡易バージョンを急遽、こしらえました。

 

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 昨今の映画やテレビドラマなんてまったく観てなくて、映画館なんてそれこそ軽く4~5年は行ってないオッサンが、何をとち狂ったか毎週毎週テレビにかじりついている生活もとうとう終わりです。この半年近く、楽しかったなぁ...。デイヴィッド・リンチ監督、ありがとう。やっぱり僕はリンチの世界観が大好きなんだなと痛感しました。そして、その世界観の "行間" を読む作業のなんと楽しいこと楽しいこと。説明台詞やテロップがやけに目立つこの頃のテレビドラマに比べたら、今回の『The Return』は取説や工具なしで車のエンジンを組み立てるようなものです。目の前に部品は転がっているけど、どれがどう組み合わさるのかさっぱりわからない。とりあえず大枠のカバーでこんな形のものっていうのはわかるけど、その中身をどう組み立てれば動くようになるのかが、いろいろ想像したり他の機械を参考にしたりしないと紐解いていけないみたいな。その紐解いていく中で "ハッ!" となる瞬間がたまにあるんだけど、それがたまらなく気持ちいいんですよね。正解なのか見当違いなのかは別として。

 その "ハッ!" となった閃きみたいなものを、この数か月間ブログに書き連ねてきました。それも今回でひとまず区切りをつけようかと思います。各章ごとにまとめたり前半後半でまとめたりしてきたので、最後に総論としてまとめようと思っていたのですが、なかなか時間を作るのが難しくなってきました。

 

 最後に僕なりの『The Return』の解釈をズラズラズラーッと書き連ねていきます。

 総論としては、前にも書いたように "リンチの覚え書き" というのが、今回の『The Return』だと思います。とにかく毎回毎回、短編ドラマのように1時間ごとにテーマがあって、それに沿ってキャラクターが動いている。もしくはドラマが起きていました。第6章の親子であったり、第8章のニューメキシコであったり、第10章の愛であったり、なんでしょう、出てくるキャラクター達が変わらない18編ある短編集のような形、そんな風に僕には見えます。

 『インランド・エンパイア』でデジタルカメラを手にしたリンチ監督が、なんとなく撮りためた映像を後付けで編集したように、今回の『The Return』も同じ手法を逆からしていたのではないかと思います。このテーマだったら、これが使える。こっちのテーマだったら、これが使える。それがキューブリックであったり、ホッパーであったり、自らの過去の作品群であったり。そんなリンチ監督のインスピレーションやイマジネーションが詰まった作品というのが、全体的な印象です。

 

◆結局、オチはなんなの?

 最終的なオチは "クーパーが現実に戻ってきた" というのがオチだと思います。それがあの第16章のありえないぐらいの高揚感ではないかと。現実に戻りボブとドッペルゲンガーをロッジに戻した。ここまでが大筋の流れ。その後のローラ救出は名の通り "別次元" の話のような気がします。

 

◆ラストシーンの意味は?

 それがわかればみなさん苦労しないと思いますが、僕が思うところでは、あのセーラが「ローラ」と呼ぶ声は、旧シリーズの序章、寝坊しているローラを呼ぶセーラの声と同じだと思います。その声を聞いてキャリーが絶叫したというのは、まだ1回や2回見ただけでは理解できないのかもしれません。

 

◆"ジュディ" ってなんなのさ?

 第17章で突然カミングアウトされた "ジャオデイ" というネガティブな存在。はっきりしたことはもちろんわかりませんが、なんとなくこんな感じではないかと思うのが、新シリーズの随所に織り込まれたゴードンのダジャレにヒントが隠されてるっぽいなぁと。

 映画『FIRE WALK WITH ME』でフィリップ・ジェフリーズはゴードンの「メーデーメーデー!」を "MAY" と "DAY" に分け「5月?」と言っていました。同じように "ジャオデイ" を "JOW" と "DAY" に分けると "揺れ動く日" になります。(関係ないと思いますが "ジャオ" って中国語だと "叫び" という意味みたいです。ニュアンス的には叫びの根源、要するに恐怖の根源みたいなイメージにもとれるのですが、まあ、これは僕の妄想でとどめておくことにします。)揺れる、安定しない、そんなイメージが "ジャオデイ" から導かれるのですが、なんかしっくりきません。

 綴りが違うのですが "GEORDIE" という言葉があります。ジョーディと読むのですが、ちょっと調べてみると、これはイギリス北西部の訛りのことを言います。この訛り、例えば "Today" が "The dayah" になったりと同じ意味でも見た目がぜんぜん違うようです。またイギリス "England" の名前の由来は "Angele-land" 天使の国という意味みたいなので、フレディー君、君は天使の国から来たのか?みたいな感じもするのです。ちょいと話がズレましたが、要するに "ジュディ" もしくは "ジャオデイ" は見た目と本質が違うのではないかと思うのです。フィリップが遭遇した若い女性然り、テキサスにあった "ジュディの店" 然り、それは提示されているものとその本質が違う。

 そこから何が導き出されるかというと "ジュディ" = "トレモンド夫人" ではないかと。ジャンピングマンを従い、あちこちのトレーラーハウスなどに幻のように現れては消えていく。彼女が何をしようとしているのかはイマイチわかりませんが、現時点ではローラをどこかに導こうとしている存在であるということしかわかりません。これも何度か『The Return』を繰り返し観ることによって、おぼろげに理解できるのかもしれません。

 

◆セーラ・パーマーはどうしちゃったの?

 大方の感想を見ていると第8章でトビガエルを飲み込んだ少女=ローラママというのが一般的な見解になっていますが、僕的には釈然としません。そもそもトビガエルが孵化するのに11年もかかっているのが不思議だし、タイミングが "森の男" が闇から出現するのと同時というのも図ったような感じです。それよりも仮にローラママがトビガエルを飲み込んだためにあのような非存在的なキャラクターになったというなら、旧シリーズでの彼女のキャラクターが全て崩壊するような感じがします。

 Youtubeで面白い見解があったので貼りますが、

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 まるでマーティーに時空の歪みを説明するドク・ブラウンのようですが(笑)、新シリーズの第1章から既にクーパー改変前と改変後を同時に描いていたという見解です。これおもしろいなぁと思ったのは、今回の新シリーズ、明らかに "現実" を描いているシーンと "非現実" を描いているシーンに分かれていると思うんですね。その違いはエキストラがいるかいないか、道を走っている時に対向車とすれ違うかどうか、そして、リンチ作品の黄金の小道具 "黒電話" があるかどうかなんですが、ローラママが登場するシーンは全て "現実" バージョンになっています。逆にダギーが住むランスロットコートや、ツイン・ピークスでいうとグレート・ノーザン・ホテルや保安官事務所というのは、どこか現実と離れ小島のような印象があります。改変後でわかりやすいのが、最終章のクーパーデロリアンだったりモーテルだったりというのは、明らかに "非現実" バージョンだと思うのです。その棲み分けがこの改変前と改変後だとしたら面白いなぁと、BANG BANG BAR のあの意味不明なシーンも納得できるなぁと。

 ただ、それだけでローラママが変貌するのはやはり腑に落ちません。第15章ではジャンピングマンとローラママがダブっていましたが、ここから読み解けるのがジャンピングマンを従えていたトレモンド夫人=ジュディに操られていたのではないか、というのが一つの見解です。それは旧シリーズの最終回でブリッグス少佐にメッセージを伝えているシーンにもつながります。

 では、第8章でトビガエルを飲み込んだあの少女は誰なのか?ですが、僕的な見解は第14章の考察で語ったように "青いバラ事件" の被害者、もしくは加害者でもあったロイス・ダフィーではないかと思っています。その謎は「ケネディ暗殺の真相」や「マリリン・モンロー自殺の真相」と同じで永遠に解明されないのではないかと思っています。逆にだからこそ、ミステリアスで僕たちの興味を麻薬的にそそるのではないかと思うのです。

 

 いずれにしても、最後の最後に "電気" が消えてしまいました。これは完全に終わったというリンチ監督からのメッセージだと思います。どこで聞いたか見たか忘れてしまいましたが、カイル・マクラクランはこのエンディングが数あるうちの一つだったことをインタビューで答えていました。また、撮影された総時間は180時間分もあるなんてこともどこかで聞いたような気がするので、この18時間で納まりきれなかった数々のエピソードが裏設定として存在していたことを証明しています。

 12月に発売される『ファイナル・ドキュメント』やDVD/ブルーレイなどで、埋もれてしまったエピソードが明らかになると嬉しいですが、それまではWOWOW放送分で、このリンチ集大成クロニクルを存分に味わいたいと思います。

ツイン・ピークス The Return 考察 第17章から見えてきたニューヨークの謎

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 新シリーズがスタートしてからずっと気になっていたのが "ニューヨーク・シティ" だったのですが、今週の第17章で、おぼろげながら、その意味が少しわかったような気がしてきました。そのきっかけはフィリップ・ジェフリーズの存在。ゴードンはフィリップの事を「通常の意味ではもはや存在していない」と語り、フィリップは「ゴードンの記憶に残るのは非公式版だ」と説明していました。これが何を意味するのかとずっと妄想していたのですが、どうやら "フィリップの姿は一つではない" のではないかと思い至ったのです。第14章のモニカ・ベルッチの夢の時でも、2月16日の午前10時10分(今思うと完成された数字が2つも並んでいます)フィラデルフィア支部に現れたフィリップのことを「その日彼は現れた、いや現れなかった」とゴードンは語っていました。放送当時はゴードンの妙な言い回しにひっかかりながらもスルーしていたのですが、それも現時点から見ると、デヴィッド・ボウイの姿が本来の姿ではなかったから "現れたけど現れなかった" という曖昧な表現になったと読めます。では、それらが何につながるのかと言うと。

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 この悪クーパーと一緒に写っている男がフィリップ・ジェフリーズの非公式版の姿ではないかと。第10章でタミーから写真を受け取ったゴードンは「なんてことだ!これは大変なことだ。本当に大変なことだ」と今まで見たことないくらいに驚いていました。カメラは悪クーパーのアップになっていたので、当時はニューヨークの凄惨な殺人事件と悪クーパーが絡んでいることにゴードンは驚いていると思ったのですが、今観なおしてみるとフィリップと悪クーパーが一緒にいることに驚いているようにも見えるのです。また、この写真のフィリップの姿も一見すると宙に浮いているように見えるし、なんだか脚の高いイスに座っているようにも見える、なんとも不思議な構図をしています。いずれにしても、この写真から悪クーパーよりフィリップの方が立場が上という印象を受けます。

 第2章では悪クーパーとフィリップが通信機を通して会話をしていますが「遅いぞ。ニューヨークで会いたかったんだ。まだバックホーンなのか?」というフィリップの問いに対して、「お前はどこでもない場所にいるのか?」と悪クーパーが質問返ししています。この "どこでもない場所" とはコンビニエンス・ストアの2階だというのはすぐに想像できますが、なぜフィリップが ”ニューヨークで会いたかった” のかは最終回直前になってもはっきりした理由が出てきません。

 では、この2人はニューヨークで何をしようとしていたのでしょうか?それが第17章でゴードンが語っていた "極めてネガティブな存在" = "ジュディ" に関係するのではないかと思うのです。映画「FIRE WALK WITH ME」で描かれていたようにフィリップは独自の捜査で "ジュディ" の存在に気がつきました。そして、僕らの知らないところでブリッグス少佐も "ジュディ" の存在を知り、その情報をクーパーとゴードンに知らせていました。では、ブリッグス少佐はどこで "ジュディ" を知ったのか?

 

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 突然、旧シリーズに戻りますが、第27話でブリッグス少佐を拉致したウィンダム・アール。彼はフクロウの洞窟に描かれていた謎を解明するために少佐をハロペリドール漬けにし自白させます。そこから出てきたワードは「木星土星が出会う時、彼らは受け入れる」。それを聞いたアールは、ブラック・ロッジへの入り口は "ある場所のある時刻" に行かなければならないことに気づき、洞窟の絵が "地図" になっていることを知ります。まるで新シリーズのバックホーンで聞いたようなエピソードですが、当時はこの辺りの謎解きのスピード感に相当シビれまくったもんでした。

 ただ、僕がここで言いたいのは、さらにその続きです。レオのファインプレーでアールのアジトから逃げ出したブリッグス少佐は、たまたま通りかかったホークに発見され保安官事務所に保護されます。何があったのかクーパーとハリーから質問されたブリッグス少佐は、旧シリーズの第28話でとんでもないことを言っていたのでした。

ガーランド?妙な名前だな。ジュディ・ガーランド

 25年前、既にガーランドは "ジュディ" のことを口にしていたのです。さらに語りは続きます。

「あれは神だった」

 森の奥深くでブリッグス少佐は "神" と面会していた。それは片腕の男マイクが "腕" を切り落とすきっかけになった "神" と同じような気がするのです。

 その発端はクーパーと山にキャンプに出掛けた時でした。突然、森の暗闇にまばゆいばかりの光が現れ、ブリッグス少佐はどこかへ連れ去られてしまったのです。

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 その時、光の先に現れたこの人影。ブリッグス少佐は "番人" と呼んでいましたが、この恰好、先ほどのニューヨークのペントハウスで悪クーパーと一緒に写っていた男の服装とどこか似ています。

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 森の奥に潜む "神" を守る "番人"。もしかしたら、これもフィリップ・ジェフリーズだったのかもしれません。旧シリーズの第27章でウィンダム・アールはブリッグス少佐に「久しぶりだな!」と語りかけていました。新シリーズではアールのアの字も出てきませんが、彼が "青いバラ特捜チーム" の一員だった可能性があることを『シークレット・ヒストリー』は仄めかしています。ならば、チームリーダーであるフィリップがブリッグス少佐を知らないわけがありません。25年前、フィリップは森の奥にブリッグス少佐を招き入れ、"神" と対面した証である "3つの三角の痣" を首筋に入れた。それは "ジュディ" に対抗する勢力を組織立てるためだった可能性があるのです。

 

 新シリーズに戻り、"番人" であるフィリップが、なぜ悪クーパーと手を組んでニューヨークのペントハウスにガラスの箱を設置したのでしょうか。それは "ジュディ" を炙り出すためではないかと。今一度振り返ります。"ジュディ" = "極めてネガティブな存在" です。強大な負の力。旧シリーズ的に言うなら "強大な悪の力" 。第8章では、その根源が "トリニティ実験" にあったと描かれています。世界を "恐怖" に陥れた核爆弾。そこでエクスペリメントが産まれた、もしくは引寄せられた。では、ニューヨークで起きた極めてネガティブな "恐怖" と言えば、もう明らかです。やはりニューヨークの舞台は "9.11" を描いていたのです。

 建物の中と外に設置された縦横3.0m四方の強化ガラスの箱。その中は、たぶん真空状態になっていそうです。影を作らないように両サイドからLEDライトを当て、ガラスの周囲に6台、箱の真正面に1台設置されたデジタルカメラが24時間回りっ放しで一部始終を録画しています。サムとトレイシーの性行為に引寄せられるかのように(もしくはそうなるように仕向けて)、その箱の中に現れたのは "エクスペリメント・モデル"。彼(もしくは彼女)は強化ガラスを突き破りカップルの頭部(鼻から上部)だけを無残な状態にしてしまいます。まるで卵を殻ごと貪るように "人間の脳" を貪ったように見えます。

 "ジュディ" を炙り出そうとした結果、エクスペリメントが現れ、極秘だった場所がニューヨーク警察、そしてFBIに知られるようになってしまった。そもそも新シリーズを通してフィリップは悪クーパーをどうにか始末しようとしている節がありました。穿った見方をすると、クーパーや消防士が言っていた "一石二鳥" というキーワードは、このフィリップの行動に当てはまるような気がするのです。

 一つの石(ガラスの箱)で、"ボブ" と "ジュディ" という二羽の鳥を捉えようとした。

 結果としては、この事件を機にゴードンたちが悪クーパーと接触することとなり、ゴードンとフィリップの原点でもある "青いバラ事件" にもつながる流れの起点にもなったのです。それは "時" を操ることができるフィリップの何度目かの挑戦だったのかもしれません。

 

【小ネタ】

◆「119」と叫んでいたヤク中の母親は、もしかしたらロッジの住人、もしくはロッジの誰かが憑依したキャラクターかもしれない。アメリカの110番の番号は "911" 。"もてと" と同じ原理。

ツイン・ピークス The Return 考察 第17章 保安官事務所に勢ぞろい!ピートが釣りしてる!すごいもん見たなっ!

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まるで霧深い森に迷い込んだような第17章。

ダンテの『神曲』のオープニングのようです。

"正しい道を踏み迷い、

はたと気づくと暗黒の森の中だった"

 

姐さん、どうしたらいいですか?

カオスに続いて崩壊が始まりました...。

時と空間の秩序の崩壊です。

宇宙の破滅ですわ!

ね?エメット・ブラウン。

 

◆メイフェア・ホテル 1827号室

ダイアンを撃つ事ができなかったと嘆くゴードン。

そもそも撃つ気がなかったように思いますが...。

なんか、いじけたおじいちゃんみたい...。

ワシも撃ちたかったのぉ。

あんたら二人でバン!バン!って撃ちよるさかい、

なんかワシ 仲間外れみたいやのぉ...。

ワシもカッコ良く撃ちたかったのぉ...、みたいな。

ごめんね、ゴードン。

 

ゴードン・コールは、

この25年間、アルバートに隠していたことを告白。

長いモノローグなので要所で分割します。

 

A-1 ブリッグス少佐はある存在を発見した

A-2 それは極めて "ネガティブな力"

A-3 遠い昔は "ジャオデイ" と呼ばれていた

A-4 時を経て呼び名は "ジュディ" に変わった

 

B-1 ゴードン達は "ジュディ" へ辿り着く計画を練った

B-2 その後、ブリッグス少佐に何かが起きた

B-3 クーパーにも何かが起きた

 

C-1 フィリップ・ジェフリーズはこの世に存在しない

C-2 フィリップは "ジュディ" に気づいたと言っていた

C-3 そして、彼も姿を消した

 

D-1 クーパーの最期の言葉

「もし僕が消えたら、

あらゆる手を尽くして見つけ出してほしい

僕は一石で二羽の鳥を狙う」

 

E-1 今抱えている二人のクーパー問題

 

F-1 レイから暗号メッセージが届いていた

F-2 悪クーパーが座標を探している

F-3 その座標を知っているのはブリッグス少佐

 

まずはA項目について。

ジュディ=ジャオデイ。

ていうか、そもそもジュディって女性だったはず。

それがとんでもない存在に変わり始めてます。

極めてネガティブって、どんな?

あ...。

ローラ・ママ?

 

B項目。

アルバートが知らない計画を僕らが知る訳がない。

B-2 ツインピークス郊外で起きた政府施設の火災

B-3 ドッペルゲンガーの誕生

 

C項目。

ジュディが女性だと言っていたのはフィリップ。

彼はシアトルにある "ジュディの店" まで行った。

さらにブエノスアイレスではホテルで待ち合わせ。

彼が接触したのは "化身" だったのだろうか?

フィリップと少佐は同じ存在の事を指してる?

 

D項目。

第1章の消防士のお告げがお目見え。

だけど、それってクーパーが自分で言ってたらしい。

25年も経ったから忘れちゃったん?

それで消防士が念押しで告げたってこと?

いずれにしても "二羽の鳥" は何を指すんだろ?

 

E項目。

暗に "青いバラ事件" を示唆しています。

 

F項目。

このくだりが一番ショッキングかもしれない。

レイって情報屋だったの!みたいな。

しかも刑務所からの送信。

なんか、いろいろとつじつまが合わないんだけど。

でも思い返してみると、

第8章で悪クーパーを撃ち殺した後、

フィリップに報告してる姿はなんかFBIっぽかった。

ていうか、レイは座標を知ってたんだから、

それを教えてもらえばよかったんやない?

あ、でも「金になる」って言ってたから、

もしかしたらゴードンに売るつもりだったんかな?

 

いろいろと謎が解明したようで、

なんだか煙に巻かれたようなゴードンのモノローグ。

真相はいかに?

 

FBIラスベガス支部のヘッドリーから連絡がきます。

ダギーを見つけたけど居場所がわからない。

それを聞いたアルバート

マルクス兄弟か?と斬り捨てます。

いやいや、アルバート

それを言うならフスコ三兄弟の方だよ。

ヘッドリーは優秀なんだよ、たぶん。

 

そこへブッシュネル社長が登場。

クーパーの伝言を伝えます。

トルーマン保安官のもとへ向かう

〇ラスベガスは2時53分

〇3つの数字を足すと完全数字 "10" になる

感謝の意を伝え、電話を切るゴードン。

ブッシュネル、ヘッドリーに電話を渡さない。

この小芝居、マルクス兄弟

 

2:53のそれぞれの数字を足すと "10" になるって、

言われて初めて全部 "素数" だったことに気づいた。

ただ、クーパーの言う "完成された数字" の意味が、

どうも理解できません。

それを言うなら "6" の方がよっぽど完全数字です。

黙示録では逆に不完全な数字とされていますが...。

で、"10" で完全と聞くと思いつくのが「十牛図」。

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自己の悟りに至る10の段階を10枚の絵にしたもの。

前にも "牛" 関連で少し触れましたが、

クーパーの言わんとする所は10枚目「入鄽垂手」、

再び俗物の世界に入って、

人々に安らぎを与え、

悟りへ導く必要がある状態に辿り着いた、と。

詳しいところは、また後日。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

チャド、なんか企んでいます。

ていうか、酔っ払い。

なんか彼に妙な愛着が湧いてきちまいました。

 

◆伝播する何か

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第14章以降、ちょいちょい出現するこのイメージ。

電気を通して何かが伝わってるのはわかりますが、

いったい何が伝播しているのでしょう。

そして、悪クーパーが次の目的地へ向かっています。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

ナイドが何かを感じます。

また鳥の合唱。

のた打ち回るチャド。

ふと思ったんだけど、

二羽の鳥ってナイドと酔っ払いのこと?

 

◆グレート・ノーザン・ホテル

ジェリーが保護されました。

ワイオミング州ジャクソンホールで...。

彼、完全にアイダホを縦断しています。

どんだけの脚力やねん!

しかも保護された時、素っ裸だったみたい。

 

◆伝播する何か

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...、...、...。

もしかして、ジェリー...、

悪クーパーにすっ飛ばされた?

 

◆ジャック・ラビット・パレスの先

悪クーパーが座標の位置に到着。

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この "溜まり" が何なのかイマイチわかりません。

『シークレット・ヒストリー』では、

丸太おばさんが "森の心臓" と呼んでいました。

何か地下から湧き上ってる感はあるんだけど...。

なにはともあれ、

悪クーパー、ワームホールに吸い込まれます。

もう2時53分とかも関係ないみたい...。

 

◆時をつかさどる劇場

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悪クーパー、即行で捕まってるやん!

しかもブリッグス少佐の首もありました。

それ以外は第8章と変わらず。

 

劇場のスクリーンに映し出されている "森の心臓" 。

消防士が宙に浮いています。

この人、浮かぶの好きやなぁ。

 

次にパーマー家が映し出されます。

消防士、何かをスライドさせるジェスチャー

するとスクリーンがどこかの道に切り替わります。

劇場の奥の部屋には大量の梵鐘が!

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なんだ、これ。

まるで発電所やないか!

...、...、...。

発電所

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なんか気づいちゃった?

梵鐘って原子炉の形に似てる!

これもまた後日ゆっくりと。

今週はヤバイ。

まだ始まって15分も経ってないのに既に2800字。

 

でもって、悪クーパーがボン!と弾ける。

なんだ?イレイザーヘッドのヘンリーみたい。

髪が逆立ってますよ。

で、スクリーンの向こうに飛ばされました。

 

ツイン・ピークス保安官事務所

飛ばされた先は保安官事務所。

ちょうどよくアンディがいます。

クーパー捜査官だ!と喜んでいます。

頼む、アンディ。

何かが違うってことに気づいてくれ!

そんなんだからチャドに茶化されるんだぞ。

 

ナイドが不穏な空気を感じて騒いでいます。

それが子守唄に聞こえたのか酔っ払いが寝落ち!

マジか!

どうした酔っ払い。

お前、どんなタイミングで眠気に襲われたんだよ!

そのタイミングを狙っていたチャド。

靴底からカギのスペアを取り出した。

随分と用意がいいじゃねぇか、チャドさんよ。

 

ルーシーまで呑気に喜んでいます。

まあ、この夫婦じゃ仕方がないか...。

ていうか、なんか悪クーパーが朗らかだ!

なんなんだ?気持ち悪いぞ。

トルーマン保安官とオフィスに向かう悪クーパー。

タニタしてるアンディ。

ふと消防士に教わったイメージが脳裏に浮かぶ

 

牢屋のカギを開けるチャド。

抜け出ると武器保管庫に向かいます。

何を企んでるんでしょ?

 

お互い席に着くトルーマン保安官と悪クーパー。

アンディがコーヒーを用意すると言うと、

「いらない」

マジか!

ツイン・ピークスの中で初めてじゃないか。

いや、数あるリンチ作品の中でも初だぞ!

この人、コーヒーを断りやがった!

もう一度、言います。

この人、コーヒーを断りやがった!

スゲエ。

革命的だ。

さすがにアンディも何かに気づいたみたい。

ホークを呼んでくるとバタバタ走っていきます。

 

ルーシーに一大事だ!と叫ぶアンディ。

当たり前だよ、コーヒーを断ったんだ。

もう世界がひっくり返ったっておかしくないさ。

 

で、ホーク!って呼びに来たのが、

なんで留置所なんだよ、アンディ!

あったま、おかしいだろ!

ほら、チャドが拳銃構えて待ってるやん。

酔っ払いはなぜか左頬の絆創膏を剥がしたよ。

何か起きるかと思ったけど、なんも起きないよ。

ただ痒かっただけみたい...。

アンディに詰め寄るチャド。

ナイドと酔っ払いの鳥の合唱を聞かされ続け、

相当に溜まってるっぽい。

で、そこへフレディが園芸手袋パンチを一発。

開いた牢屋にノックアウトされるチャド。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あの人チキン呼ばわりされてムキになってたよね。

 

電話を取るルーシー。

相手はクーパー。

すかさずトルーマン保安官につなぎます。

チカチカしてるボタンだそうです。

彼はクーパーが二人いることを事前にわかってます。

それに勘付いた悪クーパー。

すかさず発砲!

トルーマン保安官の帽子がフワッと浮く!

...、...、...。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あの人、パイ皿投げて危機を救ってたよね。

 

倒れる悪クーパー。

トルーマン保安官を救ったのはルーシー。

銃、撃てるんだね...。

なんかビックリ...。

やっと携帯電話ってのがどんなかわかったんやって。

よかったよかった。

アンディと留置所の面々も上がってきました。

って、お~~~い!!!!!

酔っ払いはどうした?

全員、上に行くぞって言ってたよね?

...、...、...。

もしかしてさ、チャドにしか見えてなかったの?

あの酔っ払い。

 

ホークも到着します。

クーパーは悪クーパーに触るなと忠告します。

すぐに到着するから、それまで待てと。

そうしている内にやってきました。

"木こり" が3人、またワサワサしてます。

どういう原理なのかイマイチわからないけど、

復活の儀式なんだろうね、これは。

そこへクーパーも到着。

でもって、悪クーパーのお腹から、

まるでエイリアンのようにボブ玉が出てきました。

クーパーを見つけるとボブ玉アタック!

んん...。

微妙...。

微妙だ...。

誰かがやられてるのを見ると、

急にしゃしゃり出たくなるのがフレディー。

ボブ玉に向かっていきます。

ていうか、

クーパー、なんでフレディー知っとるん?

あらかじめ消防士から教えてもらってたん?

いずれにしてもボブ玉 VS フレディーの始まり。

んん...。

微妙...。

リンチ先生にはアクションは無理なのかなぁ...。

とりあえずボブ玉を蹴散らすフレディー。

クライマックス感は半端ないぐらいあるけど、

それと同じくらい違和感も感じるという...。

 

フレディーの園芸手袋って、

なんとなく "超人ハルク" みたいと思ってました。

ホント、短絡的な発想なんですけど...。

でもね、ハルクの奥さんの名は "ローラ" だし、

超人ハルクに登場する敵って "電気系" が多い。

ボブ玉みたいな敵 "Galaxy Master" もいる。

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まあ、どこまで関連性があるのかわかりませんが、

なんとなく共通点があるなぁ...と。

閑話休題

 

悪クーパーに "翡翠の指輪" を嵌めるクーパー。

ロッジ強制送還、完了です。

んで、トルーマン保安官に315号室の鍵を求めます。

どうやらブリッグス少佐が教えてくれたらしい。

 

ナイドの姿に目をやるクーパー。

ここからしばらく、

ずっとクーパーの顔が画面いっぱいに映り込みます。

 

部屋に現れるボビー。

クーパーはブリッグス少佐の功績を称えます。

そして、ゴードンたちも到着。

いつの間にかクーパーの独白状態です。

「我々はこうして導かれた」

「これから変わりゆくものもいくつかある」

うなづくホーク。

暗に丸太おばさんの "変化" に言及しています。

「過去が未来を決める」

なんか、聞いたことあるなぁ、こんなセリフ。

未来は白紙だって、自由に描いていけって。

 

キャンディたちがサンドウィッチを運んでくる。

なんだろ、キャンディがシャキッとしてます。

すると突如ナイドが騒ぎ始める。

クーパーと手を合わせると頭が黒い炎に包まれ、

そして、赤い部屋で何かの殻が割れていきます。

そこから現れたのは赤髪のダイアン。

クーパーと熱い口づけを交わします。

全て覚えていることを伝えると時計に目をやります。

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時刻は "2時53分" ちょうどを何度も指しています。

 

そして、画面に映り続けていたクーパーが口を開く。

「僕らは夢の中に生きている」

 

保安官事務所に集った人達に別れの挨拶をする。

突然、辺りを暗闇が襲い掛かる。

クーパーはゴードンに呼びかける。

もう...、世界の崩壊や...。

 

とりあえず、

みんながいきなり拍手をし始めて、

「おめでとう」と言いださなくてよかった...。

 

◆グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室

相変わらず画面いっぱいにクーパーの顔。

暗闇の向こうからクーパー、ダイアン、ゴードン。

ベン・ホーン曰く "修道院の鐘の音色" が響いてる。

クーパーは315号室の鍵でボイラー室の扉を開く。

もう...、全てが滅茶苦茶で何がなんだかだ...。

去り際にクーパーが一言。

「カーテンコールで また会おう」

意味深すぎるだろ!

 

◆次元の狭間

リンチ・ブラックから現れるクーパー。

向かいからは片腕の男が現れる。

 

"未来における過去の暗黒を通して

魔術師は見たいと乞い願う

1つの声が放たれるのは2つの世界の狭間

火よ 我とともに歩め"

 

このセリフはインターナショナル版で、

片腕の男マイクが病院で語っていたセリフ。

この後、病院の地下室にボブがいると教えられ、

クーパーとハリーは刑事ドラマさながらで向かう。

ここで、このセリフが登場したということは、

たぶん、今この場面が25年前であり、

クーパーが夢で見ている世界ということなのか...。

 

◆コンビニエンス・ストアの2階

クーパーと片腕の男が、

ゴーストウッドの回廊を進んでいく。

階段を上り、扉の向こうに消えると、

ジャンピングマンが電気と共に階段を下りてくる。

 

どこかのモーテル。

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前回と同じように8号室の明かりが灯っている。

"木こり" たちの姿はない。

邪悪なものは消滅したのだろうか?

 

フィリップ・ジェフリーズを訪ねるクーパー。

前回の時はあまりよく見えなかったけど、

蒸気の先にはハロ現象のような日暈があります。

一種の "虹の環" みたいなものですが、

どうもフィリップは、

その日輪の向こうから語りかけてくるみたい。

蒸気も "虹の環" を造る為にあるようです。

 

クーパーはフィリップにある日付を伝えます。

"1989年2月23日"

これはローラが殺された日。

ということは、

フィリップがフィラデルフィアのFBIに現れたのは、

やはりその1年前の "1988年" ということになります。

前回、ここに悪クーパーが訪れた時、

なんでそれを "1989年" って言ったんだろう?

 

フィリップはクーパーに忠告します。

「ここは滑りやすい」

「ここで君は "ジュディ" を見つけるだろう」

「恐らく誰かがいる」

そして、君はこれを頼んだか?と、

フクロウのシンボルを吐き出します。

やがてそのシンボルは "8" に変化する。

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∞(無限大) とも読めるこのシンボル、

ループ、メビウスという意味も含んでいそうです。

"8" がひっくり返るというのも意味深です。

そして、片腕の男が "電気だ、電気" と叫ぶと、

クーパーは1989年のあの時にタイムスリップする。

まるで "雷" に打たれた、あの時計塔のように。

確かに何千ワットもある "電気" だね。

 

◆パーマー家の前

ジェームズがローラを迎えにくる。

その様子をリーランドが見つめている。

 

◆21号線の信号

途中、森の中で語り合うローラとジェームズ。

その様子をクーパーが森の中から覗いている...。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あれは次元の切替わる重要な場面だった。

 

そんなクーパーがボブに見えたのか、

ローラが悲鳴を上げます。

これは映画「FIRE WALK WITH ME」でも同様、

見事なシンクロです。

 

信号の前でローラがバイクから飛び降りる。

泣きながら森の中に消えていくローラ。

赤信号と共にジェームズが走り去っていく。

森の先ではジャック、レオ、ロネットが待っている。

 

気持ちが治まり、3人のもとに行こうとした時、

ローラの前にクーパーが現れる。

 ...、...、...。

夢の中でクーパーに会っていた事を思い出すローラ。

「どこに行くの?」と問いかける彼女に、

「家に帰ろう」と森の中に引き連れていくクーパー。

モノクロだった世界が色づいていく...。

 

ただ、なんとなくだけど、

ここで話しているローラは、

ローラに似ているけどローラじゃない気がする。

なんか違和感が...。

 

湖畔に横たわるビニールに包まれた死体が消える。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あれはどこかの新聞記事が入れ替わったんだっけ。

 

◆マーテル家

翌朝、ジョシーがハミングしながら化粧をしている。

ピートは釣りに出かけた。

寂しく鳴る霧笛の音を聴きながら...。

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ヤバッ。

ピートの哀愁が凄まじいんだけど...。

 

◆パーマー家

セーラが何やら唸っている。

そして、ローラの写真をひっつかむと、

酒瓶でおもむろに写真を何度もたたきつける。

しかし、写真は傷一つ付くことがなかった。

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まるで『ワイルド・アット・ハート』のマリエッタ。

そういえば、

彼女も娘がいなくなってから気が狂ってしまった。

 

◆ゴーストウッドの森

たぶん、"森の心臓" に向かっているクーパー。

途中、電気の音が木霊する。

掴んでいたはずのローラの手が消えてしまう。

そして、森の中に彼女の悲鳴が響き渡る。

...、...、...。

さて、何が起きてるのか、さっぱりわかりません。

 

◆「The World Spins」 by Julee Cruise

相変わらずの刹那、相変わらずの天使の声。

若かりし日のローラと相まって、

なんとも言えない切なさが込み上げてきます。

 

で、来週はとうとう最終回。

前評判通り、この回で終わってもいいような出来。

ロスト・ハイウェイ』のラストみたいな感じ。

それがもう一話あるんでしょ?

メビウスの先にいったい何が待ち受けてるん?

 

そして、とうとう "8" が出てきました。

これは "蛇" を現わしていることが確実。

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これは仏教の "三毒" の一つ "瞋" を意味します。

人間の煩悩の一つ "怒り" を現わします。

今週、ブチ切れていた人が数人いましたよね。

あと出てきてないのは "豚" なんですけど。

出てくるのかなぁ...。

 

仏教つながりで、

内藤仙人さまが急にBTTFの話題を振りまいたので、

今週、頭がマーティ・マクフライになりまくり。

確かに共通項がありすぎるような気がします。

片や、超がつくエンターテイメントですけどね。

 

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フクロウのシンボルがメビウスに変化しましたが、

上のシンボルも、

ツイン・ピークスの世界を端的に表しています。

来週、それが明らかになるのか?

なんだかんだで、あと1回。

毎週末のリンチ・タイムも来週で終わりかぁ。

寂しいなぁ。

ツイン・ピークス The Return 考察 後半 (第9章~第16章) まとめ解説 シンクロニシティ

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 今週の第16章で、とうとうクーパーが現実世界で復活しました。それを待っていたかのように、今までバラバラだったパズルのピースが全て "ツイン・ピークス" に集まろうとしています。

 本国アメリカでは旧シリーズの放送形態を再現するかのようにラスト2話(第17章と第18章)を連続で放送していました(旧シリーズの時は第28話と第29話を連続で放送)。ここ日本では通常通り1話ずつ放送するようなので、この "ラストを連続で放送する" という形態にあまり意味はないのかもしれません。しかし、パズルのピースが最終章の手前で全て集まってきているということを考えると、どうも意図的に構成しているのではないかとも思うのです。

 今まで放送された内容を見ると第8章以前と第8章以降では明らかにテイストが違うポイントが3つあります。まず1つは "BANG BANG BAR" ことロードハウスのシーン。第8章以前のロードハウスは現実に即したツイン・ピークスの住人たちが次々と登場していましたが、第8章以降になると物語とはなんの脈略もない人物たちが登場して、わけの分からない会話をボックスシートで繰り広げていました。第9章とか第12章辺りでは、これはもうオマケみたいなものなのかなと思っていたのですが、第14章でビリーの話題が出てきたことで、ちょっと見方が変わりました。それについては後述します。

 もう1つは第8章以降、進化した "腕" が全く登場しないことです。この理由については最終回を迎えてみないとなんとも言えませんが、明らかに第8章が何かの軸になっていることを現わしています。

 そして、最後の1つは "時間軸" 。特にツイン・ピークスを舞台にしたシーンは、どの順番が正規の時系列なのかが全くわかりません。この構図は『マルホランド・ドライブ』のシレンシオ以前と以降、もしくは『インランド・エンパイア』のシルクのハンカチを覗き見る以前と以降と同じ形をしています。『ロスト・ハイウェイ』の入れ替わりシーンも然りです。その構図は前半(第1章~第8章)と同じように、あるテーマを各章ごとに繰り広げるため、あえてシーンをぶつ切りにしてコラージュのように各章にまとめた印象があります。云わば "連想ゲーム" のような姿をしているのです。

 その理由を探るべく、まずは前半考察と同じように、各章の大まかなテーマとロードハウスで何が起きていたかを確認してみます。

 

 【第9章】

テーマ:ガーランド・ブリッグス少佐

ロードハウス:腋が痒い女 エラ

 

 【第10章】

テーマ:愛

ロードハウス:レベッカ・デル・リオ 「No Stars」

 

 【第11章】

前半テーマ:座標と "ゾーン"

後半テーマ:ミッチャム兄弟

 

 【第12章】

テーマ:青いバラ

ロードハウス:アンジェラの話題

 

 【第13章】

テーマ:時間軸

ロードハウス:ジェームズ・ハーリー 「Just You」

 

 【第14章】

テーマ:夢

ロードハウス:ビリーの話題

 

 【第15章】

テーマ:真相

ロードハウス:四つん這いで叫ぶ女 ルビー

 

 【第16章】

テーマ:復活

ロードハウス:オードリーのダンス

 

 こうして大まかに並べていくと各章のテーマとロードハウスはどこかシンクロしているように見えてきます。また一部で話題となっているのが『The Return』に隠されたシンクロニシティです。第1章のサム&トレイシーと第3章のクーパー帰還のシーンは見事なシンクロをしています(Twin Peaks mauve zone - YouTube)。これに限らず、ジャコビー先生のシーンやゴードンのローラ幻視など、ピーカーたちが発見したシンクロは各章に散りばめられ『The Return』と『Fire Walk With Me』までが25年の時を超えて対になっていることまで現わしています(ただし、それがどこまで意図的に製作されているのかはわかりませんが...)。

 このシンクロニシティは、第14章の "夢見人" で考察した "集合的無意識" と深い関わりがあります。僕たちの "意識" や "夢" は、海底よりも深い精神世界で誰もがつながっているという概念が集合的無意識で、それをベースにして例えばAさんはBさんと全く同じ経験を次元の離れた全く違う場所で体験したというのがシンクロニシティになります。それは客観視して初めてわかることであり、主観だけではシンクロしているのかどうかわからないのです。もっと簡単に言うと "正夢" と言い換えることもできるかもしれません。正夢で語ってしまうと "デジャヴ" ということになり、どちらかというとニュアンスが "幻" になってしまいますが、それを既視感ではなくタイムスリップしているような感覚、それがシンクロニシティだと言えるのです。そして、この概念を利用してデイヴィッド・リンチはある人物の物語を他の人物の物語とシンクロさせてストーリーを組み立てているのです。まるで『ロスト・ハイウェイ』のフレッドとピート、『マルホランド・ドライブ』のダイアンとベティ、『インランド・エンパイア』のスーザンとニッキーのような感じです。

 例えば、ロードハウスで腋を掻きむしっていたエラ。彼女の存在はかなり理解に苦しんだのですが、シンクロしているという視点で見てみると、誰とシンクロしているのかが、なんとなくぼんやりと見えてくるのです。彼女はハイになったまま仕事に行ったためクビになったと言っていました。これと同じ境遇のキャラクターは一人しかいません。スティーヴンです。彼はハイになった状態で面接を受けて見事に落ちています。この二人の共通キーワードは "仕事中にハイになっている" こと。ただ、エラは女性でブロンドです。そして、ハンバーガーを売ってる。スティーヴンの妻ベッキーはダブルRダイナーにパンを届けていました。そして、彼女もブロンドです。となると、エラ=ベッキーというのが、なんとなくぼんやりと見えてきます。第15章でスティーヴンは自ら命を絶ったであろう描写がありました。その後のベッキーがどうなったかは描かれていませんが、もしかしたら、その未来の姿がエラなのかもしれません。

 かなりこじつけ感が強くて、自分で書いててもホントかよ?と思ってしまってるのですが、それでも可能性はゼロではないような感じもします。いずれにしても『The Return』の中には共通ワードを持つキャラクターというのがちょいちょい存在するのです。このシンクロニシティが残り2話でどのような結末を迎えるのかはわかりませんが、いずれにしても登場するキャラクターや場所が相互作用しながら、非常に精神性の高い物語がなにかしらの収束を迎えることは確実です。

 エンターテイメントという性質上、リンチ監督は誰もが楽しめる娯楽として物語を紡いでいる一方で、『インランド・エンパイア』からの10年で積み上げてきたインスピレーション、もっと言えばあのカンヌ映画祭での世紀の大ブーイングへの逆襲を、この『The Return』で成し遂げようとしている感じもするのです。

 

 では、第8章以降、各キャラクターたちがどのような道を歩んできたかも最終章の前にざっと振り返ってみたいと思います。

 

◆デイル・クーパーFBI特別捜査官

 第7章でスパイクによる暗殺を撃退したクーパーはラスベガス警察で指紋やDNAを採取される。この頃から妙にコンセントが気になり始めています。警察から解放されたクーパーは、そのままダギーが交通事故に遭った時からの掛かりつけの医師のもとに行き検査を受ける。その夜、ジェイニーEと体を結びオーガズムを味わう。翌日、ミッチャム兄弟から呼び出しを受けてチェリーパイを届けると、相手は大喜びで一晩中大騒ぎをする。家に帰るとジェイニーEは「天国にいるみたい」とクーパーに抱きついて離れない。その翌日、今度は同僚のアンソニーがコーヒーをご馳走してくれる。家に帰りチョコレートケーキを食べながらテレビをつけると「ゴードン・コール」の名前。持っていたフォークをコンセントに差し込み感電。目が覚めるとクーパーに戻っていた。ツイン・ピークス保安官事務所に向かう。

 

◆クーパーのドッペルゲンガー(悪クーパー)

 第8章でレイに撃たれるが生き返る。ハッチ&シャンタルが待つ農家へ向かう。ダンカン・トッドが計画通りに事を済ませていないことを知りハッチに始末を命令する。農場(ファーム)に行き、レイから座標を受取り、フィリップ・ジェフリーズの裏切りを知る。コンビニエンス・ストアを訪れ、フィリップに裏切りの理由を問い詰めるがスルーされてしまう。外にいたリチャードを連れて、ジュディと関係があるらしい場所へ向かうが、そこは罠だった。ダイアンに座標の全てを教えてもらい、ジャック・ラビット・パレスの奥へと向かう。

 

 第8章以前は対照的に描かれていたクーパーと悪クーパーだが、第8章以降は出番が極端に減ってしまいました。その理由は先ほどのシンクロニシティが関係あると思うのですが、それはさて置き、そもそもの目的であった "座標" を手に入れた悪クーパーは、順当に駒を進めている印象です。その最終的なゴールは "ジュディ" 。逆に悪クーパーをロッジに強制送還させるため現生に帰ってきたクーパーは、ダギー・ジョーンズという別の人生を味わうことによって十二因縁を経験することになりました。やっと本来の姿に戻り、いかに悪クーパーを強制送還させることができるのか?が最終章の見所となりそうです。

 

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 次はゴードン・コールを中心としたFBIの面々。

 第7章で悪クーパーと対面したダイアン。FBI一行は一路フィラデルフィアへ帰途しようとするが、国防総省長官からブリッグス少佐の情報が入り、サウスダコタ州バックホーンへ向かう。首のない少佐の遺体と対面し、身体の状態が40代のままであることに疑問を抱く。一緒に発見されたルース・ダヴェンポートの殺害容疑で署に拘留されているビル・ヘイスティングスを事情聴取すると、"ゾーン" という不可思議な空間の話が出てくる。その夜、ダイアンが悪クーパーとメールのやり取りをしていたことが発覚、時同じくしてニューヨークのペントハウスに悪クーパーが訪れていた写真も発見される。

 翌日、ビルの案内によってシカモアという地名の空地を訪れ、ゴードンは "ゾーン" に接近、近くにルース・ダヴェンポートの遺体を発見、ホームレスのような "木こり" の存在にも触れる。ルースの遺体に書かれていた "座標" がツイン・ピークスを指していることも明らかになった。その不可思議な現象の数々に触れた日の夜、ゴードンとアルバートは "青いバラ特捜チーム" にタミーを加入させる。

 トルーマン保安官から連絡をもらっていたゴードンは25年ぶりにツイン・ピークス保安官事務所と連絡を取る。そこでクーパーが2人いるという情報が入る。同じ頃、タミーはアルバートから "青いバラ事件" の顛末を聞き "トゥルパ" の存在を知る。ダイアンが悪クーパーと会った最後の夜、彼はブリッグス少佐の話をしていたことも明らかになった。さらに少佐の遺体から出てきた結婚指輪の話をすると、指輪に彫り込まれていた人物の名がダイアンの姉妹であることが判明、ゴードンはラスベガスのFBIにダギー・ジョーンズの情報収集を命令する。

 ゴードンはその日見た "モニカ・ベルッチ" の夢を語る。その夢の中で1989年2月16日、FBIフィラデルフィア支部にフィリップ・ジェフリーズが現れた時の事を思い出す。

 あくる日、部屋を訪れてきたダイアンは悪クーパーと最後に会った夜のことを告白する。そして、様子がおかしくなった彼女は「私は保安官事務所にいる」と告げるとゴードンに銃を向ける。アルバートとタミーによって撃たれたダイアンは一瞬にして姿を消してしまう。それは "青いバラ事件" の再来のようであった。

 

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 映画「Fire Walk With Me」で長年の謎とされてきた "青いバラ" と "フィリップ・ジェフリーズ" が、ツイン・ピークスという物語の非常に重要なキーワードであることが明らかになりました。第8章以前では、25年間失踪していたクーパーの真偽を問うだけに留まりましたが、第8章以降では "ブリッグス少佐" の謎を追う内にゴードンの原点とも言える "青いバラ事件" が重要視されるようになり、さらには身近な存在であるはずのダイアンが悪クーパーと内密なやり取りをし、"トゥルパ" であることも判明したのです。また、この "トゥルパ" もしくは "化身" という単語がチベット用語であることから、旧シリーズと変わらず "密教" が物語に深く関わっていることも明らかになっています。ダイアンが最後に言い残した「保安官事務所にいる」というセリフから、FBIの面々も最終章でツイン・ピークスに向かうことが示唆されています。

 

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 続いてはツイン・ピークス保安官事務所の面々です。

 トルーマン保安官、ホークと共に実家を訪れたボビーは、父親ブリッグス少佐が残したスティック状の筒を受け取る。その中身には2枚の小さなメモが封入され、1枚には2日後の10月1日に "ジャック・ラビット・パレス" で何かが起きることが、そしてもう1枚には記号の羅列の中に "クーパー / クーパー" と印字がされていた。そのメモを頼りに位置を割り出したトルーマン保安官に、ホークは古い地図を広げてみせる。ブルー・パイン・マウンテンが "崇高かつ神聖な場所" であること、そして、山の上に描かれている黒いマークについては何も知るべきではないと語る。

 町の交差点で起きた悲惨なひき逃げ事件、その目撃者が酷い暴力によって重体に陥ってしまった傷害事件の犯人がリチャードであるとわかったトルーマン保安官は、祖父であるベンジャミン・ホーンのもとを訪れる。事の真相を聞かされたベン・ホーンは目撃者の治療費を全額負担することを約束した。そして、たまたま届いた "315号室" の古いルームキーを、ハリーに記念として渡してほしいとフランクに託す。

 10月1日、リチャードとドラッグの闇取引をし、ミリアムからの手紙を隠蔽しようとした罪で、トルーマン保安官たちはチャドを逮捕する。そして、ボビーの案内に従いジャック・ラビット・パレスへと赴く。そこからさらに東へ253ヤード進むとシカモアの梢が立つ少し開けた場所へ出る。そこにはナイドが全裸で横たわっていた。彼女を助け起こそうとした矢先、突如現れたワームホールにアンディが吸い込まれてしまう。その先には "消防士" がいて、アンディに数々のイメージを見せる。その投影が終わると、一行はいつの間にかジャック・ラビット・パレスまで戻されていた。

 保護したナイド、逮捕されたチャド、そして、左頬に傷がある酔っ払いが留置所に拘留されている。さらにロードハウスで騒ぎを起こしたジェームズとフレディまでが拘留されてしまう。酔っ払いはダギー・ジョーンズのように人の言葉をただオウム返しし、ナイドは何か伝播でも送るかのように鳥のような鳴き声を出し続けている。

 

 悪クーパーが求めていた座標、ヘイスティングスやFBIが求めていた座標を、保安官事務所の面々はブリッグス少佐の、ある意味 "遺書" のような小さなメモから、いとも簡単に手に入れました。それは父から子へのメッセージでもあり、宇宙の果て、ないしは森の奥深くから届いたメッセージでもありました。そこに横たわっていたのは第3章で無限空間に放り出されてしまったナイド。その希有な存在は、今、保安官事務所で保護されています。クーパーやゴードンたちが集うであろう場所に、これだけの面子がこの時点で揃われたことには、かなりの意味がありそうです。

 

 その他、オードリーを含めたホーン・ファミリーについてや、もともとのダギー・ジョーンズとは結局何者だったのか?なども妄想していきたいところですが、それは最終回を迎えてからゆっくりと味わいたいと思っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第16章 クーパー復活!ダイアン消滅!ここのご近所どうなってんだ!

最終回が見えてきたと言うことで、

リンチ先生、ぶっこんできましたよ!

姐さん、カオスです。

カオスがやってきました。

 

◆どこかの丘

冒頭は静かに、

まるで "マルホランド・ドライブ" のオープニング。

今にも正面からヒャッホー!と車が走ってきそう。

 

先週、殴り倒したリチャードに向かって、

「おしゃべりしよう」と言ってた悪クーパー。

なんにも喋りません。

...、...、...。

ほら、リチャード、なにか喋りたそうじゃん。

少しは気使ってるみたいだよ。

 

トラックは開けた丘に辿り着きます。

小高い丘のてっぺんには大きな岩が。

まるでグラストンベリーの丘みたい。

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こっちの丘は教会が建っているけど、

その昔はアーサー王の墓があったというから、

同じように大きな岩がポツンと、

そんな風に置いてあっただけかもしれない。

 

悪クーパー、やっと口を開きます。

「オレは "ある場所" を探しているんだ」

「その場所がなんなのか、わかるか?」

んなの、わかるわけないやん!

リチャード、キョトってるよ。

あんた今まで、なんも喋らへんかったやん。

「3人の人間から "座標" を聞いた」

「うち2つの "座標" が一致した」

「お前なら、どうする?」

リチャード「そりゃ一致した場所に行くさ」

「お前は賢いな、リチャード」

なんなんだ、これ...。

なにが言いたいのかさっぱりわからへん。

 

その向こうから走ってくるのがジェリー!

マジか。

あんた、どこまで迷子なんだ。

おもむろにリュックから双眼鏡を取り出すけど、

お~い!

使い方、間違ってるよ。

ていうか、それでも見えるんかい!

そっちの方が奇跡だよ。

 

岩に近づく悪クーパーとリチャード。

「オレの方が "25" も年上だ」

「お前、あの岩に乗れ」

...、...、...。

ムチャぶりだよ、センパイ...。

でも、リチャードがやけに素直だなぁ。

ひょいひょいと岩に乗ります。

んでもって、座標の位置まで行くと、

「よし!ここだ!」

ってところで電気に打たれます!

バリバリバリバリバリ!!!!!

リチャード電気分解されて、ジ・エンド。

最後は頭部がボン!と火花を吹いて爆発。

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なんなんだ、これ...。

それを無表情で見ている悪クーパー。

「チッ...」と舌打ちします...。

んだよ、罠だったのか...、みたいな。

でもって「じゃあな、息子よ」って、

お~~~い!!!!!

あんたの息子だったんかい!

さらっと、とんでもないことコクりますな!

みんなが言ってた、

オードリー、悪クーパーにヤラれた説、ほぼ確定。

25年前、

ICUの中で何があったか想像するだけでおぞましい。

 

でもさ、旧シリーズでの彼。

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何かと、このセーターで茶化されているジャック。

その名をジョン・ジャスティス・ウィーラー。

ホーン産業の経営難立て直しの為にやってきた男。

旧シリーズの第27話で、

いきなりブラジルに帰国することになって、

自家用機で飛び立つ寸前の彼を呼び止め、

オードリーは処女を捧げたんでしたよね?

てな具合だから、

リチャードの父親はジャックだと思ってましたが、

新シリーズでは何もなかったかのような扱い。

こんな奴いたっけ?みたいな...。

深い事はまた後でじっくり妄想するとして、

どうやら悪クーパーの毒牙は、

ブラジル、リオデジャネイロまで行ってたっぽい。

 

座標を "3人" から聞いたと言うのも気になります。

一致したという "2つ" は、まず間違いなく、

レイとフィリップから教えてもらった座標です。

悪クーパー、端っから疑ってたようで、

うまくリチャードを使って出し抜きました。

残りの "1人" はおそらくダイアン。

ただ、全部教えてもらってたわけじゃないみたい。

で、このメール。

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悪クーパー、絵文字ってなんだよ!

わかりやすく書くなら、

「(笑)ぜんぶ」

怖ぇぇぇ!!!!!

ダイアン、なんで全部教えてなかったん?

 

ていうか、消防士!

結局、クーパー、リチャードに会ってないけど!

リンダはどこにいった?

 

ランスロットコート

ダギー・ジョーンズの家にハッチ&シャンタル到着。

二人とも作業着を着てるので、

何かに成りすまして家に入り込もうって魂胆みたい。

シャンタル、スナック菓子をポリポリ。

ふと足元を見ると、なんと箱買いしてるよ、この人!

どんだけ好きなんだ!

 

先週に引き続き妙な会話をするこの夫婦。

今朝、鳥の鳴き声がうるさかったって...。

もしかして、ナイド?

 

そこにラスベガスのFBIが到着。

ウィルソン!

そんな堂々と窓から中を覗くやつがいるか!

曲がりなりともFBIだろ!

おとぼけ具合がハンパないです。

 

◆病室

ベッドで昏睡状態のクーパー。

ジェイニーEとサニージムが心配気に付き添ってる。

そこにブッシュネル社長、登場。

さらにミッチャム兄弟まで見舞いに来た!

フィンガーサンドウィッチだって。

うまそうやなぁ。

ロドニー、

食料を届けるから家の鍵を貸してくれと言う。

そんな簡単に家の鍵なんて渡さないだろ、

て、あっさり渡したよ、ジェイニーE!

マジか。

「あら、まあ♪」じゃないよ...。

あんた、貰えるものはとことん貰う主義だね!

 

◆メイフェア・ホテル

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なんだかんだで、

第10章から滞在し続けてるメイフェアホテル。

ゴードンが装置の音に耳を澄ましています。

何を感じてるんでしょう。

 

◆病室

ホテルの装置の音と病室のモニターの音がシンクロ。

サニージムがトイレに行きます。

ジュース飲み過ぎたんやな。

一人になったブッシュネル社長にフィルから連絡が。

FBIが病院に向かってると。

ヘッドリー捜査官、なかなか行動が素早いですな。

ウィルソンを怒鳴り散らしてるだけのことはあります。

 

ランスロットコート

スナック菓子を食べ続けてるシャンタル。

向こうからウィルソンがフォードに乗り換えて到着。

 

ハッチはサミーの話をし始める。

金を貸してくれたからいい奴だったんやって。

そうしている内にミッチャム兄弟が到着。

リムジンから出てくる彼らを見てハッチが呟く。

「あん中の一人がダギーか?」

「どいつがうちのボスに似てるってんだ、バカ!」

イラついてるシャンタルに理由を聞くと、

なんとスナック菓子があと一袋しかないらしい!

そんなに食ったんか!

さっき箱にたんまり入ってたじゃん!

ダギーの家に食料を届けるキャンディたち。

シャンタル、なんだったら、あれ貰っとけ。

 

すると今度は目の前にまた1台の車が到着。

ザワスキー会計士?

誰だ、お前?

ハッチ&シャンタルの車が邪魔だと言ってくる。

シャンタル、消えな!と一蹴。

どけないなら動かす、と会計士、

いきなり自分のベンツをワゴンにぶつけてきた!

力づくで動かすにもほどがあるだろ!

生理中のシャンタルは一瞬でブチ切れます。

会計士に拳銃一発をぶち込む!

が、外れた!

嘘だろ!

射撃の名手だぜ!

ベンツの裏に逃げ込む会計士。

今度はマシンガンでお見舞い。

シャンタル、腕を撃たれる!

マジか!

なんちゅう会計士や!

しゃあない、逃げよう!とハッチ。

ワゴンを出すシャンタルに会計士が撃ちまくる。

軟なワゴンでは簡単に弾が車体を貫通してしまう!

ヤバイ、シャンタルがやられた!

さらに容赦なく撃ちまくる会計士。

ハッチまでがマシンガンの餌食に!

なんだ、これ。

まるでタランティーノみたい。

でも、間の取り方はきっちりリンチ印。

いろんな映画のオマージュを散りばめてますな。

 

何事かとダギーの家から出てくるミッチャム兄弟。

おとぼけ具合がたまりません。

この愛すべき兄弟、

後半からグイグイ株を上げてます。

 

フォードで待機していたウィルソン。

会計士を逮捕します。

しかし、この会計士、いったいなんだったん?

ていうか、

このランスロットコートという新興住宅地。

これだけの騒ぎがあるってのに誰も出てこない!

ガレージのシャッターもみんな閉まってる。

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人が生活している気配がまるでない...。

なんか不気味...。

 

◆病室

突如、グレート・ノーザン・ホテルの謎の音が響き、

ブッシュネル社長を病室の外に導きます。

そして、うっすらと片腕の男が現れると、

おもむろにクーパーが目覚めた!

しかも、動きが機敏だ!

「完全に目覚めた」とクーパー。

やっほーい!

15時間も待ったぜ!

普通の2時間映画で言うなら7~8本分だ。

長ぇぇぇ!!!!!

 

片腕の男、いきなり "翡翠の指輪" を渡す。

目をパチクリさせるクーパー。

そんなことよりもって感じで、

「種は持っているか?」と問いかけます。

金色の小さな玉を見せる片腕の男。

クーパー、髪の襟足をひとつまみ抜くと、

「もう一つ作ってもらいたい」と渡します。

なに、このシステム...。

 

ジェイニーEとサニージムがトイレから帰ってくる。

起き上がっているクーパーに大喜び。

サニージムなんてクーパーに抱きついちゃいます。

しかも、寝ぐせがついてるよ!

クーパーの寝ぐせだよ。

ブッシュネルも戻ってくるなりガッツポーズ。

 

今すぐドクターを呼んできてくれないか。

サンドウィッチを取ってくれ腹ペコだ。

(FBIが僕を探してる?)素晴らしい。

バイタルを確認してくれ、退院する。

服を取ってくれ、そこのキャビネットだ。

車を正面にまわしておいてくれないか。

着替える、下で落ち合おう。

...、...、...。

矢継ぎ早とは、このことですな。

今までのダギー状態だったら、

この間にできることって、

せいぜいチョコレートケーキを口に運ぶぐらいだよ。

サニージムもビックリ。

 

ブッシュネルから拳銃を借り、

ミッチャム兄弟に連絡を入れると、

ワシントン州スポケーンへ向かうと伝えます。

ミッチャム兄弟、

お安い御用だと、さっそく自家用機を準備。

3人娘に飛行機に乗るぞぉ~!と言ったところで、

ツイン・ピークスのテーマ」が流れ始める!

なんだ、これ。

否が応でもテンションが上がっちまうじゃないか!

 

ゴードンから電話が掛かってくるだろうから、

これを伝えて欲しいとメモを渡すクーパー。

そして、別れの握手。

あなたは尊敬すべき人物、あなたの親切を忘れない。

そう言って、病室を後にするクーパーに、

ブッシュネルが「FBIはどうする?」と聞いてくる。

振り向いたクーパーは一言。

「私がFBIだ」

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ウギャーーー!!!!!

こんなキメ顔、卑怯だろ!

もう考察もへったくれもあるか!

リンチ先生、あんた最高だよ!

これだけでご飯10杯はおかわりできまっせ。

 

◆病院のロータリー

BMWに乗り込むクーパー、颯爽と出発します。

入れ違いざまにヘッドリーたちが到着。

この絶妙なタイミングもいいね。

そのまま高速道路を疾走していくBMW

サニージム楽しそう。

ジェイニーEもどことなく満足げ...。

 

◆メイフェア・ホテルのバー

幸福な余韻のまま、

いつものように黄昏ているダイアンがいる。

なんだろ、珍しく "青い服" です。

スマホに届く悪クーパーからの "ALL" メール。

幸福な時は一瞬にして消えてしまいます。

時刻は "16:32" 。

覚えてる...、覚えてる...、と座標を打込むダイアン。

「48551420117163956」

うまくいくかどうか心配してるけど、何を?

ちなみに上の座標はこちら。

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第11章でトルーマン保安官が検索してた位置と一致。

48°55'14.20"N 117°16'39.56"W

https://goo.gl/maps/Efa4wXVXhTq

ここが聖なる山かぁ。

 

◆メイフェア・ホテル 1827号室

座標を送るとダイアンの表情が強面になる。

ハンドバックに拳銃を入れたまま部屋へ向かう。

流れる音楽は第1章の悪クーパー初登場時と一緒!

これから何か不穏なことが起こる予感が。

部屋の前までダイアンが辿り着くと、

ゴードン、気配を感じたのか 入れと呼び込みます。

妙に意識が研ぎ澄まされて人間離れしてきました。

アルバートとタミーは至って平然。

なんだろ...、全てお見通しみたいな?

 

ダイアンはクーパーとの最後の夜を語りだします。

今から21~22年前。

ダイアンはまだFBIに勤めていた。

音信が途絶えていたクーパーが突然自宅に現れる。

もちろん、これは悪クーパー。

まるで尋問のようにFBIの様子を事細かに尋ねると、

悪クーパーはダイアンに口づけをした。

「それは前にも一度あったこと」

そうなの?

ゴードンもアルバートも、ふぅんって感じ...。

タミーだけ、妙にゴードンを気にしている。

 

悪クーパーの口づけに違和感を覚えたダイアン。

怖くなったその時、彼は笑ったらしい。

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こんな風に笑ったのか。

それとも、

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こんな風に笑ったのだろうか?

いずれにしても、

クーパーは笑いながらダイアンを犯した。

...、...、...。

涙ながらにダイアンが語っているのに、

ゴードンもアルバートも妙に冷静というか...。

ふぅん、そうなの?みたいな。

なんなんだろ、これ。

 

その後、

ダイアンは古いガソリンスタンドに連れて行かれた。

たぶん、コンビニの事だと思うけど...、

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だったらコンビニって言えばいいのに。

ちゃんと看板までついてるんだし。

なんか、このニュアンスの違いが気になる...。

その告白の時にまたもや "ALL" メールが届く。

時間は "15:50" !

時が逆行しています。

メールを見てどこか正気に戻ったようなダイアン。

「私は保安官事務所に...、保安官事務所にいる」

「彼に座標を送った」

「私は私じゃない。私は私じゃない。私は...」

持っていた拳銃をゴードンに向けるダイアン!

すかさずアルバートとタミーがダイアンを撃つ!

のけぞったダイアンは一瞬にして姿を消した!

ええっ!

"翡翠の指輪" 関係ないの!

マジか。

タミーはリアルな "青いバラ事件" に感嘆。

「ワ~オ、本物のトゥルパ」

よかったね、タミー。

結局、裏切りダイアンはなんだったん?

彼女の言うこと全て信じていいのかな?

 

◆赤い部屋

イスに腰掛けているダイアン。

ダギー・ジョーンズの時と同じように、

「何者かに作られた存在だ」と片腕の男が言います。

ダイアンの顔が卵の殻のように割れ、

黒い炎が吹き出すと中から種が出てきます。

そして、たぶんリチャードのように電気分解されて、

煙と共に存在は消え、イスに種だけが残った。

それは "金" ではなく "銀" だった...。

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ん?

リチャードのように?

...、...、...。

彼も作られた存在なのか?

 

◆シルバー・マスタング・カジノ

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ジェイニーEとお別れの時がやってきました。

思い返せば、

いきなりの平手打ちから始まり、

首根っこをつかまれ、

怒声に次ぐ怒声。

入れてもらったコーヒーはマズくて吹出すし、

食事はいつもサンドウィッチかチョコレートケーキ。

ホットケーキなんて最初の朝だけだったなぁ...。

襲われた時、スパイクの首を絞めている姿を見たら、

本気でこの人は怒らせない方がいいと思った。

だけど、裸を見せたらコロッと変わって、

今では愛してる、愛してる、愛してる...。

なんだかんだ言っても名残惜しいなぁ...。

 

ジェイニーE、もうダギーじゃないとわかってる。

この人は、私の "あの夫" じゃないんだって。

よく喋るし、指示は的確、車の運転だって上手い。

こんな人が私の夫であるはずがない。

でも、サニージムはそんなこと認めたくない。

パパはいつだってパパなんだ。

誰であってもいい、

キャッチボールができなくても、

お菓子をポリポリ食べてるだけでもいい。

ただ、そばに居て欲しい。

離れないでほしい。

クーパーはそんな想いを全部受け止めます。

「君たち二人を愛してる」

抱擁...。

ヤバイ、涙腺が...。

 

別れ際、ジェイニーEがたまらなく追いかけます。

「行かないで」と、すがるのです。

言われたことを繰り返すだけのダギーはもういない。

「行かないと...」

その瞳に宿る決心にジェイニーEは得心します。

別れの口づけ...。

感謝の気持ちを伝えるジェイニーE。

なんなんだ、これ...。

今週はいろんな感情が綯い交ぜになって、

どう処理したらいいのかまったくわからない。

 

◆ミッチャム兄弟のリムジン

彼らとツイン・ピークスに向かうクーパー。

君たちは "黄金の心" を持っていると称えると、

キャンディが感極まります。

 

◆BANG BANG BAR

今週はパール・ジャムエディ・ヴェダー

シアトル出身の彼がツイン・ピークスに出演って、

なんか感慨深いものがあります。

90年代初頭のあの閉塞感と妙な熱気。

お互いに随分と遠いところまで来たねぇ...みたいな。

 

オードリーとチャーリーが、

とうとうロードハウスにやってきました。

んでもって、MCのムチャぶりで、

いきなりオードリーのダンスコーナーが始まる。

曲も "Audrey's Dance" !

マジか。

これって、夢に揺蕩う乙女ってこと?

いい気持ちでクネクネ踊っていると、

いきなり「モニークに手を出すな!」と乱闘が。

で、みんな騒然の鏡シーン!

もう、なんのこっちゃ...。

 

そんなこんなで来週は2話連続放送の最終回!

...、...、...。

ではなくて、普通に1話ずつ放送するみたい...。

だとしたら第8章の後のインターミッションって、

やっぱ普通に宮里藍だっただけなのかなぁ...。

旧シリーズの放送形態を、

まんま再現してるんだと思ってたんだけど...。

ツイン・ピークス The Return コラム マーガレット・ランターマン(丸太おばさん / ログ・レディ)

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今週の第15章が最期となってしまった丸太おばさん。『ツイン・ピークス』の代名詞と言っても過言ではない町一番の変人でした(これは最大限の褒め言葉です)。彼女を演じていたキャサリン・E・コールソンさんは癌闘病の末、2015年9月28日に既に亡くなられています。享年71歳。長編映画テビュー作『イレイザーヘッド』から実に35年以上という長い付き合いになるデイヴィッド・リンチ監督は、彼女の訃報を受けて当時こんなコメントを残していました。

「今日、私は大切な友人のひとりであるキャサリン・コールソンを失いました。キャサリンは、まさに純金のような人物でした。彼女はいつも友人たちのそばにいて、全ての人々、家族、そして仕事への愛に溢れる人物でした。彼女は疲れを知らない働き者でした。彼女は笑いのセンスがあり、笑うことが好きでしたし、周りを笑わせることが大好きでした。彼女はスピリチュアルな人で、長年に渡り超越瞑想を実行していました。そして、彼女は丸太おばさんでした」

新シリーズ『The Return』の出演時も鼻にカニューレを付け、女優さんなのにカツラを被るわけでもなく、普通であればあまり公には見せたくない "素" の状態(しかも癌という非常にデリケートな状態)をこれでもかと曝しながら演じられていました。まるで「キャサリン・コールソン=丸太おばさん」なのだと言わんばかりです。こんな女優さん、今まで見たことがありません。その魂をあるがままの姿でカメラに納めることができたのもリンチ監督だからこそと言えますし、彼女をそうまでさせてしまうリンチ監督への絶大な信頼と愛情に思いを馳せると、観ているこちら側の胸にもズシンと重く響くものがあります。

第15章の考察で丸太おばさんのシーンはさらっと終わらせたのですが、最後に語られた台詞が丸太おばさん曰くキャサリン・コールソンさんからのとても熱いメッセージだったので、とてもあのふざけた駄文の中に入れる気にはなれませんでした。そして、保安官事務所の会議室で捧げられた黙祷、小屋の明かりが静かに消えていく様を観ていると、一つの時代が終わったと感じずにはいられないのです。

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旧シリーズでの丸太おばさんの印象は冒頭の "変人" もしくは "偏屈" な女性というイメージが強く、小学校とかで必ず一人はいた怖いおばさん先生みたいな感じ。裏を返すと「悪いことは悪い」としっかり怒ってくれる、今振り返ると良い先生だったんだな、みたいな人。

集会所のシーンで照明のスイッチをカチカチしていたのも、ダブルRダイナーの隅っこで噛んでいた "松脂" をプホッ!と吹き飛ばすのも、丸太おばさんだから笑って見ることができたキャラクターでした。そんなリンチ印の "ちょっとおかしな人" という面がありながら、ブリッグス少佐に啓示を与えたり、クーパーと共に巨人を目撃したり、最終回では保安官事務所に「これが入口への道よ」と "焦げたオイル" を届けたり、徐々に "森" からのメッセージを伝える重要なファクターへと変貌していきました。

中でも、映画「FIRE WALK WITH ME」での登場シーンが僕は一番好きなのですが、自棄になってロードハウスに向かうローラ・パーマーに、丸太おばさんは次のように語りかけます。

「こういう "火" が燃えだすと消すのが難しくなるのよ。無垢な弱い枝なんて真っ先に燃えてしまう。そして、風が吹くと全ての "善" が危険にさらされてしまうの」

まるで熱を帯びたローラの "火" を鎮めるように額や頬や掌に手を当て、"気を付けるのよ" と目配せすると多くを語らずにその場を去っていきます。ローラは丸太おばさんの手の温もりに一時の安らぎを覚え、ガラスに映る変わり果てた自分の姿を見ると、失い始めていた純真さに気づきます。ロードハウスのステージではジュリー・クルーズが、まるでシューベルトアヴェ・マリアのような祈りの歌「Questions In a World of Blue」を歌っています。失われていくもの、消えていくもの、救われないもの、そんな喪失感にローラの涙が止まらなくなります。

町で一番の変人と思われていた丸太おばさんが、誰の理解も得られず一人苦しんでいたローラを、実は町で唯一理解していたというシーン。いつ観ても、ジュリー・クルーズの歌と相まって静かな浄化を促してくれます。

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丸太おばさんことマーガレット・ランターマンには、今まで語られることがなかった裏設定がありました。『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』には、マーガレット・ランターマンがどのようにしてダグラスモミの丸太を抱えた "丸太おばさん" になったのかが描かれています。その他にも、小学校のクラスメイトに "ある人物" が居たり、その人物と一緒に "ある事件" に巻き込まれたことも描かれているのですが、ここでは丸太おばさんのビギニングについてだけ、少し触れたいと思います。

マーガレット、通称マギーは三十路を超えても恋愛や結婚などに興味がなく天涯孤独の身でした。町の図書館で働きながら、自然保護団体に協力する日々を送っていたのですが、そんなある日、マギーは一人の屈強な "木こり" サム・ランターマンと出会い、雷に打たれたように恋に落ちたのでした。二人の交際は順調に進み、交際を始めてからちょうど1年後、"ジャック・ラビット・パレス" でサムはプロポーズをします。もちろんマギーは喜んで受け入れるのですが、実はかなりの奥手だったサムをプロポーズに導いたのは、他ならぬ彼女の策によってだったのです。

結婚式当日、午後から嵐が吹き荒れはじめ、式の最中に一際大きな雷が森に落ちました。すぐに火の手が上がり、大火はブルー・パイン・マウンテンの麓に向かい始めます。消防団の団長を務めていたサムは、式を中断すると消火活動のために森に向かい、マギーもウェディングドレスを着たまま救助活動を手伝います。森の火は一晩中燃え盛り、ゴーストウッドの森を焼き尽くしていきました。

翌朝、マギーのもとに訃報が届きます。夫であるサムが消火活動中に過って谷に転落し亡くなってしまったのです。その報せが届いた時、マギーはまだドレス姿のままでした。

2日後、彼女は夫の亡骸を自宅の敷地の一区画にそっと埋葬しました。その翌日、想い出の地 "ジャック・ラビット・パレス" に赴いたマギーは、倒木していたダグラスモミの破片から小さな丸太を見つけます。それ以来、彼女は片時も離さずその丸太を腕の中に抱き続けています。まるで生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえるかのように...。

この丸太はマーガレットにとって夫であるサムの分身であり、森からのメッセージを受信するアンテナのようでもあり、天涯孤独で打ち解け合う人もいなかった彼女の唯一のぬくもりでもあったのです。

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マーガレットはラストシーンで自分の死が近いことをホークに報告します。死は終わりじゃないということ、そして、変化があるだけのことなのだと言い残すのです。それでも "怖さ" があると打ち明けます。手放す事が怖いと言うのです。この "心の揺れ" が、僕の胸にひどく突き刺さってきます。頭ではわかっている。終わりじゃないとわかっているんだけど、どうしようもなく込み上げてくるものがやはりあるのです。それをマーガレットは素直に "怖い" と表現していました。

今年、僕の周りでも癌で亡くなった方が数人います。一人はまだ40代で現役バリバリの野郎でした。サーフィンが好きで、野球が好きで、ガッチリとした体格が自慢の野郎でしたが、癌に侵されてから見る見るうちにやせ細っていきました。最後まで「病気には負けない」と口にしていたのですが、病とはやはり恐ろしいものです。自分でなんとかできるものなら、みんながみんな、必ずなんとかしたいと思うはずです。それができない悔しさ、今まで普通にできていたことができなくなっていく絶望、その境地を思うと居たたまれなくなります。鏡を見ると変わり果てていく自分の姿、それが僕だとしたら、あの "野郎" みたいに、あんなに気丈にふるまうことなんて、とてもできないと思います。

キャサリン・コールソンさんは、それを何千何万という視聴者の前で、ありのままに演じきっていきました。その姿をドキュメンタリーではなく、エンターテイメントの中に見事に組み込んだリンチ監督の手腕には敬服するばかりです。今回の新シリーズ『The Return』、リンチ監督の集大成以上の神がかり的な凄さをひしひしと感じます。

"変化" を迎えた世界が、マーガレットにとって、夫サムと大自然の中で新たな生活ができる幸福な世界であることを願っています。