that passion once again

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ツイン・ピークス The Return コラム マーガレット・ランターマン(丸太おばさん / ログ・レディ)

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今週の第15章が最期となってしまった丸太おばさん。『ツイン・ピークス』の代名詞と言っても過言ではない町一番の変人でした(これは最大限の褒め言葉です)。彼女を演じていたキャサリン・E・コールソンさんは癌闘病の末、2015年9月28日に既に亡くなられています。享年71歳。長編映画テビュー作『イレイザーヘッド』から実に35年以上という長い付き合いになるデイヴィッド・リンチ監督は、彼女の訃報を受けて当時こんなコメントを残していました。

「今日、私は大切な友人のひとりであるキャサリン・コールソンを失いました。キャサリンは、まさに純金のような人物でした。彼女はいつも友人たちのそばにいて、全ての人々、家族、そして仕事への愛に溢れる人物でした。彼女は疲れを知らない働き者でした。彼女は笑いのセンスがあり、笑うことが好きでしたし、周りを笑わせることが大好きでした。彼女はスピリチュアルな人で、長年に渡り超越瞑想を実行していました。そして、彼女は丸太おばさんでした」

新シリーズ『The Return』の出演時も鼻にカニューレを付け、女優さんなのにカツラを被るわけでもなく、普通であればあまり公には見せたくない "素" の状態(しかも癌という非常にデリケートな状態)をこれでもかと曝しながら演じられていました。まるで「キャサリン・コールソン=丸太おばさん」なのだと言わんばかりです。こんな女優さん、今まで見たことがありません。その魂をあるがままの姿でカメラに納めることができたのもリンチ監督だからこそと言えますし、彼女をそうまでさせてしまうリンチ監督への絶大な信頼と愛情に思いを馳せると、観ているこちら側の胸にもズシンと重く響くものがあります。

第15章の考察で丸太おばさんのシーンはさらっと終わらせたのですが、最後に語られた台詞が丸太おばさん曰くキャサリン・コールソンさんからのとても熱いメッセージだったので、とてもあのふざけた駄文の中に入れる気にはなれませんでした。そして、保安官事務所の会議室で捧げられた黙祷、小屋の明かりが静かに消えていく様を観ていると、一つの時代が終わったと感じずにはいられないのです。

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旧シリーズでの丸太おばさんの印象は冒頭の "変人" もしくは "偏屈" な女性というイメージが強く、小学校とかで必ず一人はいた怖いおばさん先生みたいな感じ。裏を返すと「悪いことは悪い」としっかり怒ってくれる、今振り返ると良い先生だったんだな、みたいな人。

集会所のシーンで照明のスイッチをカチカチしていたのも、ダブルRダイナーの隅っこで噛んでいた "松脂" をプホッ!と吹き飛ばすのも、丸太おばさんだから笑って見ることができたキャラクターでした。そんなリンチ印の "ちょっとおかしな人" という面がありながら、ブリッグス少佐に啓示を与えたり、クーパーと共に巨人を目撃したり、最終回では保安官事務所に「これが入口への道よ」と "焦げたオイル" を届けたり、徐々に "森" からのメッセージを伝える重要なファクターへと変貌していきました。

中でも、映画「FIRE WALK WITH ME」での登場シーンが僕は一番好きなのですが、自棄になってロードハウスに向かうローラ・パーマーに、丸太おばさんは次のように語りかけます。

「こういう "火" が燃えだすと消すのが難しくなるのよ。無垢な弱い枝なんて真っ先に燃えてしまう。そして、風が吹くと全ての "善" が危険にさらされてしまうの」

まるで熱を帯びたローラの "火" を鎮めるように額や頬や掌に手を当て、"気を付けるのよ" と目配せすると多くを語らずにその場を去っていきます。ローラは丸太おばさんの手の温もりに一時の安らぎを覚え、ガラスに映る変わり果てた自分の姿を見ると、失い始めていた純真さに気づきます。ロードハウスのステージではジュリー・クルーズが、まるでシューベルトアヴェ・マリアのような祈りの歌「Questions In a World of Blue」を歌っています。失われていくもの、消えていくもの、救われないもの、そんな喪失感にローラの涙が止まらなくなります。

町で一番の変人と思われていた丸太おばさんが、誰の理解も得られず一人苦しんでいたローラを、実は町で唯一理解していたというシーン。いつ観ても、ジュリー・クルーズの歌と相まって静かな浄化を促してくれます。

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丸太おばさんことマーガレット・ランターマンには、今まで語られることがなかった裏設定がありました。『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』には、マーガレット・ランターマンがどのようにしてダグラスモミの丸太を抱えた "丸太おばさん" になったのかが描かれています。その他にも、小学校のクラスメイトに "ある人物" が居たり、その人物と一緒に "ある事件" に巻き込まれたことも描かれているのですが、ここでは丸太おばさんのビギニングについてだけ、少し触れたいと思います。

マーガレット、通称マギーは三十路を超えても恋愛や結婚などに興味がなく天涯孤独の身でした。町の図書館で働きながら、自然保護団体に協力する日々を送っていたのですが、そんなある日、マギーは一人の屈強な "木こり" サム・ランターマンと出会い、雷に打たれたように恋に落ちたのでした。二人の交際は順調に進み、交際を始めてからちょうど1年後、"ジャック・ラビット・パレス" でサムはプロポーズをします。もちろんマギーは喜んで受け入れるのですが、実はかなりの奥手だったサムをプロポーズに導いたのは、他ならぬ彼女の策によってだったのです。

結婚式当日、午後から嵐が吹き荒れはじめ、式の最中に一際大きな雷が森に落ちました。すぐに火の手が上がり、大火はブルー・パイン・マウンテンの麓に向かい始めます。消防団の団長を務めていたサムは、式を中断すると消火活動のために森に向かい、マギーもウェディングドレスを着たまま救助活動を手伝います。森の火は一晩中燃え盛り、ゴーストウッドの森を焼き尽くしていきました。

翌朝、マギーのもとに訃報が届きます。夫であるサムが消火活動中に過って谷に転落し亡くなってしまったのです。その報せが届いた時、マギーはまだドレス姿のままでした。

2日後、彼女は夫の亡骸を自宅の敷地の一区画にそっと埋葬しました。その翌日、想い出の地 "ジャック・ラビット・パレス" に赴いたマギーは、倒木していたダグラスモミの破片から小さな丸太を見つけます。それ以来、彼女は片時も離さずその丸太を腕の中に抱き続けています。まるで生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえるかのように...。

この丸太はマーガレットにとって夫であるサムの分身であり、森からのメッセージを受信するアンテナのようでもあり、天涯孤独で打ち解け合う人もいなかった彼女の唯一のぬくもりでもあったのです。

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マーガレットはラストシーンで自分の死が近いことをホークに報告します。死は終わりじゃないということ、そして、変化があるだけのことなのだと言い残すのです。それでも "怖さ" があると打ち明けます。手放す事が怖いと言うのです。この "心の揺れ" が、僕の胸にひどく突き刺さってきます。頭ではわかっている。終わりじゃないとわかっているんだけど、どうしようもなく込み上げてくるものがやはりあるのです。それをマーガレットは素直に "怖い" と表現していました。

今年、僕の周りでも癌で亡くなった方が数人います。一人はまだ40代で現役バリバリの野郎でした。サーフィンが好きで、野球が好きで、ガッチリとした体格が自慢の野郎でしたが、癌に侵されてから見る見るうちにやせ細っていきました。最後まで「病気には負けない」と口にしていたのですが、病とはやはり恐ろしいものです。自分でなんとかできるものなら、みんながみんな、必ずなんとかしたいと思うはずです。それができない悔しさ、今まで普通にできていたことができなくなっていく絶望、その境地を思うと居たたまれなくなります。鏡を見ると変わり果てていく自分の姿、それが僕だとしたら、あの "野郎" みたいに、あんなに気丈にふるまうことなんて、とてもできないと思います。

キャサリン・コールソンさんは、それを何千何万という視聴者の前で、ありのままに演じきっていきました。その姿をドキュメンタリーではなく、エンターテイメントの中に見事に組み込んだリンチ監督の手腕には敬服するばかりです。今回の新シリーズ『The Return』、リンチ監督の集大成以上の神がかり的な凄さをひしひしと感じます。

"変化" を迎えた世界が、マーガレットにとって、夫サムと大自然の中で新たな生活ができる幸福な世界であることを願っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第15章 エド、おめでとう!コンビニの先でヤカンがお出迎え!丸太おばさんに献杯!

お久しぶりです、姐さん。

先週、物語の根幹を理解したつもりでしたが、

そんなものなんの意味もありませんでした。

姐さん、

恐れていたことがとうとう起きちまいました。

マーク・フロスト、さじを投げちまいやした!

わけわかんねえっす!

森で犬の散歩してる場合じゃないぞ!

どうすりゃいいんだよ!

 

◆ホワイト・テール・マウンテン

リンチ先生、

ドローン撮影が余程お気に召した様子です。

 

◆州間高速道路90号線

ネイディーンが金のシャベル持って歩いてます。

なんか嬉しそうですよ。

ジャコビー先生に会えたのがよっぽどだったみたい。

 

◆ビッグ・エドのガソリンスタンド

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こないだは夜のシーンだったので、

あまり気にならなかったけど、

どうやら場所を変えたらしいです。

ちなみに昔はこんな。

めっちゃ廃れてます。

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そこへやってきたネイディーン。

ノーマとくっつきなさいと言います。

ええ!

今さら!

ネイディーンとエドが出会ったのは1984年。

既に30年以上も経ってますけど!

 

◆ダブルRダイナー

オーティス・レディングの「愛し過ぎて」

もお~、リンチの選曲は間違いがない!

この曲、これから完全にエドのテーマだよ。

歌詞までビッタンコなんだもん!

 

ノーマもフランチャイズをやめるらしい。

ウォルター、ショック。

ていうか、もともと相手にされてなかったし。

まあ、仕方がないさ。

ツイン・ピークスの男達は、

みんな一度はノーマさんに恋をするのだ。

で、30数年の時をかけて、

やっと...、やっと...、二人は結ばれました。

おめでとう!

 

◆電線

先週、アンディーが見た電線。

何かが伝播しているようです。

バリバリバリバリバリ...。

 

◆コンビニエンス・ストア

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悪クーパーがコンビニに到着。

この人、普通にやってきたな。

そんな簡単に行けるところなん?

二階に上がると何やらコンデンサがある。

これって映画に出てたやつやん。

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これね。

昔は "きこり" も身なりがキレイだったよね。

今は真っ黒だけどさ。

ていうか、今の "きこり" 口から血流してるけど...。

 

悪クーパー、フィリップに会いたいんだって。

言われて、コンデンサの電源を入れると、

ジャンピングマンの顔が現れます。

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こいつね。

ただ、怖いのがさ、

セーラの顔がめっちゃダブってるのよ。

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なにこれ?

ジャンピングマン=セーラ・パーマーってこと?

だとしたら、やばくないですか?

なんかラスボス感、出てきたんですけど...。

 

で、案内される悪クーパー。

その扉ってローラが夢で迷い込んだ扉だよね。

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壁の柄まで25年前と一緒です。

んでもって通路を歩いていくんですが、

ちょいちょい森がオーバーラップします。

たぶん、この森はゴーストウッドの森。

どうやら次元の階層が複数重なってるようです。

 

その先にまた階段。

これはゴードンが "ゾーン" で見た階段。

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てことは、ヘイスティングスもここに来た?

ブリッグス少佐は、ここで冬眠をしてた?

ね?

わけわかんないでしょ?

迷宮に入り込んだ感じするでしょ?

 

階段の先はどこかのモーテル。

悪クーパー、8号室の部屋に行きます。

開けようとしたら鍵が掛かってる。

そこに女が現れる。

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鍵を開けてくれます。

ていうか、誰?

ジュディ?

 

8号室の中にはフィリップ・ジェフリーズ。

ていうか、なに?

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みんなヤカンだって言うけど、

これ、ヤカンが喋ってる訳じゃないよね?

ヤカンの先のまるい部分がフィリップってこと?

それとも、その "思念" が具現化したもの?

事情が事情だから仕方ないけど、

もお、なにがなんだかです。

 

悪クーパー、完全にフィリップを疑ってます。

『ジュディ』を教えろと迫ります。

するとヤカンの口から数字が出てきます。

"485514....."

これルースの腕に書かれてた "座標" です。

てことは、聖なる山?

ジュディは聖なる山にいるのね?

 

黒電話に出たら外に追い出される悪クーパー。

そこにはリチャード。

どうやら悪クーパーを追いかけてきたらしい。

オードリーがクーパーの写真を持っていた。

だから、追いかけてきた。

意味がわかりません。

しかも、簡単にボコられます。

まあ、見た目はサイコな感じだけど、

喧嘩は強そうじゃないリチャードですからね。

二人はトラックの中でおしゃべりするんだって。

 

トラックに乗る前にメールを一本打つ悪クーパー。

「ラスベガスは?」

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これ第12章で裏切りダイアンがもらったメールです。

たぶん。

日付はわかりませんが、

ダイアンが受け取ったメールの時間は "19:28"、

悪クーパーが送った時間は "21:34" です。

二人の間にどれだけの時差があるんでしょ?

 

◆ゴーストウッドの森

スティーヴンとガーステン。

森の奥まで逃げてきたみたい。

なにやら左腿をさすっているスティーヴン。

しきりに「俺がやった...」と言ってます。

なにを?

スティーヴン、

どうも見えない何かに追われてるみたい。

それから逃げるため拳銃自殺するらしい。

犬の散歩中のシリルが二人を見かける。

ていうか、どこまで散歩してきてるん?

とりあえず見つかって逃げるガーステン。

銃声が響き渡る。

たぶん、スティーヴン、終わりです。

 

◆ニュー・ファットトラウト・トレイラーパーク

カールにスティーヴンのことを教えるシリル。

さっきのネイディーンもそうだけど、

この人たちの脚力、どうなってるん?

 

◆BANG BANG BAR

ZZ TOPの「SHARP DRESSED MAN」

フルヴォリュームで楽しんでるバーの人たち。

ていうか、バンドいないじゃん!

 

ジェームズとフレディーがやってくる。

レネーに声をかけると、

旦那のチャックがブチ切れます。

まあ、当たり前です。

ダチのスキッパーとボコボコにしてたら、

フレディーが入ってきて、

園芸手袋パンチで一発KO...。

なんなんだ、これ...。

 

◆FBIラスベガス支部

ウィルソンがダグラス・ジョーンズを連行。

その様子を見に行くヘッドリー。

部屋には子沢山なジョーンズ一家

旦那さん、可哀そうに手錠かけられてるやん!

なんなんだ、これ...。

 

◆ダンカンのオフィス

ダンカンとロジャー。

突然現れたシャンタルに殺されます。

なんだよ、シャンタル!

お色気じゃないのかよ!

夫婦そろって射撃の名手かよ!

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

牢屋に入れられるジェームズとフレディー。

「その手袋野郎、今度は何した?」とチャド。

フレディー、前にもなんかしとったんか!

レネーの旦那の様子が気になるジェームズ。

なんか、いちいちウザいんだよなぁ。

黙ってろ。

ナイドは相変わらず鳥の鳴きまね中。

 

◆ハッチの車の中

夫婦でハンバーガーのディナー中。

さりげなくインディアン虐殺の話が出てきます。

いいぞ、もっと語れ。

「火星だ」

...、...、...、

マジか...。

 

◆ダギー・ジョーンズの家

こっちはチョコレートケーキのディナー。

ジェイニーEってコーヒー出さないよね。

やっぱ、まずいのかな...。

テレビをつけると『サンセット大通り』

"ゴードン・コール" というセリフに、

クーパー慌てて一時停止ボタンです。

なんだ?

目覚めるのか?

フォークをコンセントに差して感電します。

 

ここで『サンセット大通り』ってスゴイな。

こんなネタバレ、自分からするなんて、

『The Return』のリンチは何かがいつもと違う。

 

◆丸太おばさんの小屋

ホークに電話をする丸太おばさん。

別れの挨拶です。

おやすみなさい、そして、さようなら。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:会議室

丸太おばさんが亡くなったことが知らされる。

 

◆オードリーの家

相変わらず外に出る出ないで喧嘩してる二人。

なんなんだろなぁ...。

最後にはチャーリーの首絞めてるし。

ていうか、

チャーリーにしろ、スパイクにしろ、

背の小さい人は首を絞められる運命なのか?

 

◆BANG BANG BAR

本日二度目のBANG BANG BAR。

ルビーという娘が人を待ってます。

一見、昔のマデリーンみたい。

なぜか床を四つん這いで歩き始めます。

で、泣き叫んで終わり。

マジ、わけわかんねえよ!

あと3話でホントに終わるのか!

ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹

1.青いバラ事件

 1975年、ワシントン州西部に位置する州都オリンピアで、とある殺人事件が起きた。当時、事件捜査を担当したのは二人のFBI捜査官。一人はワシントン州の地域担当官だったゴードン・コール、もう一人は彼とタッグを組んでいた特別捜査官フィリップ・ジェフリーズであった。二人は捜査の末、事件の犯人である "ロイス・ダフィー" という女性に辿り着き、容疑者逮捕の為に彼女の部屋に赴いた。その時、部屋の中から銃声が響き渡り、FBIの二人は急いで部屋の中へ飛び込むが、その目の前にはまるで鏡写しの様に二人のロイス・ダフィーの姿があった。一人は床に倒れており、腹部に銃弾を受けて瀕死の状態、もう一人は銃を構えたまま後ずさりし、ショックから手に持っていた銃を床に落とした。ゴードンとフィリップは瀕死のロイスに駆け寄りすぐに救助を始めようとするが、彼女はそっと微笑み「私は青いバラと同じ」と言い残すと息を引き取った。そして、不思議なことにゴードンとフィリップの目の前で彼女は忽然と姿を消してしまった。もう一人のロイスは部屋の隅で叫び声を上げ続けていた...。あえなく逮捕された彼女はひたすら無実を訴え続けたが、州裁判所の判決を前に首を吊り自害してしまった。

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※画像は1975年のオリンピア(作品との関連はありません)

 先々週の第12章で "青いバラ特捜チーム" の発端となったのが「青いバラ事件」であったことが語られました。その事件で死んだ女性が最後に言い残した言葉から、このプロジェクト名が取られたというのです。そして今週、その事件のあらましが再びアルバートの口から語られました。ロイス・ダフィー (Lois Duffy) という女性が誰かを殺し、そして彼女にはドッペルゲンガーがいたことが明らかになったのです。銃で撃たれたロイスの左薬指に "翡翠の指輪" が嵌められていたのか?など詳細についての謎は残りますが、先週のレイ・モンローの一件からおおよその想像はみなさん付くのではないかと思います。悪クーパーを殺した暁には左薬指に "翡翠の指輪" を嵌めろというくだりです。しかし、そもそもロイスという女性が若いのかどうかもわかりませんし、容姿がどのようなものだったのかもわかりません。ロイスが誰を殺したのかもわからずじまいです。

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※海外のピーカーが作ったマガジン風の「青いバラ事件」

 第12章のアルバートのセリフを振り返ると「数年後、軍とFBIは極秘チームを立ち上げ、ブルーブック計画が残した謎に連なる "不可思議な事件" の捜査に乗り出した」と語っていました。その "不可思議な事件" が「青いバラ事件」であり、そこには殺人とドッペルゲンガー、未確定ですが "翡翠の指輪" が絡んでいたのでした。アルバートはこうも言っています。「今までとは違う道を進まない限り答えに辿り着かない」と。その意味するところは、オリンピアで起きた殺人事件が、犯人を逮捕して解決という単純なものではなく、UFOなどの超常現象にまつわる不可解な事象を孕んでいることを示しています。まるでローラ・パーマー殺人事件がそうであったように、この "青いバラ事件" も同じ部類のものだと言えるのです。そして、それは1969年にプロジェクト中止に追い込まれたブルーブック計画から "連なっている謎" でもあったのです。

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※報告書は20年に及ぶ調査の結果、地球外生命体は存在しないという結論に達している

 第12章の考察で、僕はブルーブック計画の発端が "ロズウェル事件" であり、その事件が1947年に "ニューメキシコ州" で起きたUFO墜落事件ということから、第8章のトリニティ実験とその後の "森の男" 絡みの事件と関連があるのではないかと論じました。繰り返しになりますが "ブルーブック計画" というのは、実際にアメリカにあった極秘プロジェクトです。第12章の時点では「青いバラ事件」もニューメキシコ州で起きた事件ではないかという "仮説" のもとで考察をしていましたが、今週、その舞台はワシントン州であったことが明らかになりました。ただ舞台は違いますが、そこに関連する人物はアルバート曰く “連なっている" ので、何かしらの繋がりがあるのではないかと思っています。つまり、そこに登場するのは剛腕な握力を持つ "森の男" と、その放送を聞いて倒れていった車の整備士やダイナーのウェイトレス。この二人はただ気絶をしただけなのか、そのまま卒倒してしまったのかははっきりしていません。そして、トビガエルを口から体内に取り入れてしまった少女。トビガエルという奇怪な存在が悪なのかどうなのかもはっきりしていませんし、この物体を産み出したエクスペリメントが何を求めているのかもはっきりとは描かれていません。ただ、これらのことから推測できるのは、マンハッタン計画から綿々と受け継がれてきた研究(エクスペリメントの意味は「実験」)が、どこかの段階で未知の扉を開けてしまい、そこから得体の知れないものたちが出現してしまったということではないかと思うのです。まるでビル・ヘイスティングスが開いてしまった "ゾーン" のように、それは遥か彼方の惑星からやってきたのではなく、私たちのすぐそばに平衡世界として存在しているのだと言いたげなのです。

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マンハッタン計画の主要箇所は、今回の「The Return」の舞台となっている場所と驚くほど酷似している

 タミー・プレイストン捜査官は “青いバラ“ の意味について考察をします。その内容については第7章で論じた僕の記事とほぼ一緒で、1992年に公開された映画「FIRE WALK WITH ME」の時にピーカー達が考察していた内容とも一緒でした。つまり “青いバラ” = “存在しないもの” という定義です。これは長年の謎とされてきた定義が、25年の月日を経てついに公式に認められたということになります。デズモンド捜査官はゴードンからの指令により、この世に存在しないものを探し出そうとしていたのです。さらにタミーがスゴイのはその論理から “化身” というチベット用語にまで発展させていることです。この “化身" という単語は “トゥルパ” とも呼ばれ、タミーが解釈していたように "魔術的顕現" や "喚起されたもの" という意味があります。これはそのままドッペルゲンガーを説明しているようにも聞こえます。ただ、第7章の考察で語ったように ”青いバラ” は現代では “存在するもの” となっています。これはかつては存在しなかったものが存在するようになったというロジックのようにも解釈できるのです。それはまるでロッジから産み出された "化身" のようでもあり、存在を否定されたブルーブック計画への再定義のようにも受け取れます。

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ドッペルゲンガーは "死の前兆" であると信じられていた

 ゴードン・コールは久方ぶりにツイン・ピークス保安官事務所に連絡を取ります。25年ぶりに放射された "ルーシーおとぼけ回答" に瞬間凍結したゴードンは、フランク・トルーマンから知らされた "二人のクーパー" という情報を聞き、事の真相に光明を得たように見えます。第3章のヤンクトン刑務所で対峙したデイル・クーパーへの違和感が、ここで若き日の "青いバラ事件" とオーバーラップし、真のデイル・クーパーが他にいるという解釈へ進んだと思われるのです。僕たち視聴者はゴードンが対峙したクーパーが "ドッペルゲンガー" であることを既に知っているのですが、ゴードンからするとフランクが教えてくれた "二人のクーパー" というキーワードで初めてそこに至ったとなります。さらにその解釈は26年前のフィリップ・ジェフリーズの一言に集約されていきます。1988年のFBIフィラデルフィア支部に突如その姿を現わしたフィリップは、クーパーを指さして「ここにいるのは誰だと思う?」と予言するのです。"青いバラ事件" では相棒だったフィリップ・ジェフリーズ、"青いバラ" を求め失踪してしまった3人のFBI捜査官、存在するはずのない Woodsmanや "ゾーン" への接近、ブルーブック計画に参加しその後も秘密裏にデータ収集をしていたガーランド・ブリッグス少佐、そして、少佐の不自然な遺体、全てバラバラに思えていたパズルのピースがゴードン・コールの中でカチカチと組み合わされていく音が聞こえてきそうです。

 

2.夢見人

 "夢" というキーワードはデイヴィッド・リンチの作品には欠かせない重要な要素だと言えます。特に『ツイン・ピークス』以降の3作品『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』は「感覚映像ー自由連想仮説」を裏付けるような、レム睡眠の偶発的な視覚映像から出発する連想ストーリーをキュビズム的に俯瞰できる構造をしていました。『The Return』はその集大成とも言えるべきもので、各章は物語のあるキーワードを軸に次々と連想もしくは連鎖されていき、その連鎖反応が次章の視覚映像の出発点を産みだしていっているのです。その核心とも真実とも言える大きなテーマが、この第14章でなぜかモニカ・ベルッチによって告げられました。

「夢を見て、夢の中に生きる夢見人。その夢を見ているのは誰?」

 まるで僕たちが生きている現実が誰かの夢の中の世界で、その誰かが目覚めてしまうと僕たちの現実は一瞬にして存在しなくなってしまう。デイヴィッド・リンチはその理論に対して "強烈な不安感" と表現していました。永遠に続くエッシャーの無限階段が突如として外されてしまったような感覚。クリストファー・ノーラン監督作品「インセプション」にもこの理論は登場しています。

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※夢の構造はエッシャーの無限階段に似ている

 そもそも人は睡眠中になぜ "夢" を見るのか。さまざまな研究によって人体の不思議が徐々に解明されつつあるようですが、いずれにしても取り沙汰されるのはその原理やシステムについてであり、肝心な夢の "イメージ" がどこから生まれてくるのかという問いかけへの解答には、少なからずなっていないように個人的には思います。そんな中でカール・グスタフユングが提唱する "集合的無意識" という概念が、その解答に一番接近しているのではないかと思っているのです。それは "夢" だけではなく、リンチが常日頃ライフワークにしている "瞑想" にも当てはまる概念だと思うのです。

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 上記の図はユングが提唱する人間の意識の構造を図式化したものです。人間の意識は『個人の顕在意識』『個人の無意識』『集合的無意識』の3層から成り立っているという考え方です。各個人は海に浮かぶ島であり、海面から突き出ているのが『顕在意識』の領域、海面下に埋もれているのが『無意識』の領域、そして、海底で全てが繋がっている部分が『集合的無意識』の領域になります。『顕在意識』は常日頃僕たちが意識できる当たり前の現実の世界、『無意識』は普段は隠れている領域もしくは意識することができない領域のこと。潜在意識、潜在能力、そんな言葉に置き換えることも可能だと思います。そして『集合的無意識』は人々の意識が全て集まっている場所。それは太古から現代まで、とにかく歴史上存在した全ての人間の意識が集まっている場所、普遍の場所になります。"夢" を見るという行為は顕在意識の島から海にダイブして無意識の領域に潜っていくこと。"瞑想" するということは顕在意識の島から集合的無意識まで深く静かに潜りこんでいく行為だと言えます。そして、この意識の構造の図式、『The Return』の中で見たような覚えがありませんか?

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 そうです第8章で登場したあの島です。大海原の中にポツンと佇む島、これが集合的無意識の海に浮かぶ "誰か" の顕在意識になるのです。その顕在意識の島の突端には宮殿があり、そこに今回明らかになった "消防士" とセニョリータが居ました。消防士の存在については、また然るべき時に考察したいと思いますが、いずれにしても彼らは "誰か" の意識の中にある産物だと言えるのです。そして、モニカ・ベルッチが語った "夢見人が見る夢" を見ている "誰か" とは、この顕在意識の持ち主になるのではないかと思うのです。残り数話の中で、それが解明されるのかどうかはわかりませんが、なにかしらのヒントは提示されるはずだと僕は確信しています。

 

3.ジャック・ラビット・パレス

 ツイン・ピークスという町には不思議な場所が点在しています。ベンジャミン・ホーンが経営しているグレート・ノーザン・ホテルのすぐ脇にある "スノコルミーの滝" 。この滝は、かつて周辺に集落を作っていたインディアンたちの奇妙な精霊信仰の場所でもありました。そして、ツイン・ピークスを象徴する二つの山。ブルー・パイン・マウンテンとホワイト・テール・マウンテン。精神科医の医師免許を剥奪され、今では社会の腐敗と強欲さを凶弾しているローレンス・ジャコビーはホワイト・テールの頂上付近に居を構えています。そして、第11章でトーマス・"ホーク"・ヒル保安官が語っていたようにブルー・パインは "神聖な山" とされています。その "神聖な山" の麓にはゴーストウッドと呼ばれる奥深い森が広がり、その森の奥には "グラストンベリー・グローブ" と呼ばれる12本のシカモアの木で作られたサークルが存在します。

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※実際のグラストンベリーにはアーサー王の墓があるが、その王の存在は未だに実在していたかどうか不明である

 1983年、ブルー・パイン・マウンテンの麓に戦略防衛構想(SDI)関連の施設が政府によって建設されました。この施設建設に疑問を抱いたのが現ニュー・ファットトラウト・トレイラーパークの管理人であるカール・ロッドであり、彼は秘密裏に進められている建設現場への不信をツイン・ピークス・ポスト紙に寄稿しました。それを受けて政府から発表されたのが先のSDI関連施設という回答だったのですが、実はそれは隠れ蓑であり、実際はガーランド・ブリッグス少佐が務める極秘施設「SETIアンテナアレイ7-1」またの名を「リスニング・ポスト・アルファ(LPA)」と呼ばれるブルーブック計画直下の調査施設だったのです。そこには最新鋭の深宇宙マルチスペクトル探査受信装置が設置され、宇宙全体から知的生命の痕跡を探し出そうとするものでした。

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※現時点で3億8000万光年先の宇宙の姿まで人類は確認している

 ブリッグス少佐が残したメモに記された "ジャック・ラビット・パレス" は、このLPA施設のそばにある古いダグラスモミの巨木の跡でした。この巨大なダグラスモミの樹が倒木したのは1927年のある嵐の夜、鋭い稲妻が木のてっぺんに落ち、ゴウゴウと燃え上がったためでした。当時、その燃え上がるダグラスモミの巨木のそばに背丈2メートル以上はありそうな巨人が現れたことをある青年が目撃していますが、町の人たちは一笑に付し相手にしませんでした。この小さな町で起きた巨人伝説の信憑性はさておき、このダグラスモミの巨木には僕たちの理解に及ばない不思議な力が存在していると言えそうです。そして何かに導かれるように、その地点にブリッグス少佐の息子ボビーとツイン・ピークス保安官事務所の面々が辿り着くのです。ボビーは小さい頃「ひとりでこの森をうろつくな」と父親に言われていたようなので、その頃から既にこの森の神秘性もしくは不穏な何かをブリッグス少佐は感じていたのかもしれません。

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 さらにそこから東へ253ヤード進めとメモには記されていました。言われる通り進んでいくと、靄が立ち込める少し開けた場所に辿り着きます。そこには一本のシカモアの木が梢立ち、近くにはグラストンベリー・グローブのオイル壺のような "溜り" ができていました。溜まっている液体がどのような種類のものなのかは判別しにくいですが、"焦げたオイル" ではなさそうです。そして、そのそばには裸で横たわるナイドの姿があったのです。一同は彼女のそばに近づき助け起こそうとしますが、その時、メモにあった2時53分の時刻になり、突然、森の中にワームホールが出現、ナイドのそばにいたアンディーがその渦の中へと吸い込まれてしまうのです。

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 吸い込まれた先での出来事と場所については然るべき時に考察をしますが、もともと悪クーパーが追い求めていた "座標" の位置がこの場所だとしたら、その目的は一つしかありません。もともとここの "座標" はゾーンに入り込んできたウィリアム・ヘイスティングスとルース・ダヴェンポートに、ブリッグス少佐が "安全な場所" に行く為、見つけて欲しいと依頼をした場所でした。つまりブリッグス少佐は、このシカモアの梢が立つ場所に来れば "身の安全を守ることができる" と思っていたことになります。そして、悪クーパーはそこに逃げ込んでいると思しきブリッグス少佐の後を追っているということになるのです。

 では、その "安全な場所" とはどこのことなのか?ということになりますが、これはほぼ "ホワイト・ロッジ" のことを指すのではないかと思われます。その根拠は旧シリーズの第20話のオープニングです。森の中で何者かにさらわれたブリッグス少佐が2日後に生還し、ツイン・ピークス保安官事務所で失踪時の顛末を語っている時でした。今まで頑なに機密として目的を語りたがらなかったブリッグス少佐は一言告白します。

「われわれは "ホワイト・ロッジ" を探している」

 ここからは事の要約になります。"神聖な山" とされているブルー・パイン・マウンテン。それはこの辺りで集落を作っていたインディアンたちの時代から綿々と受け継がれてきた概念です。そこにブルーブック計画直下の極秘施設が政府によって建設され、ガーランド・ブリッグス少佐はその施設で宇宙からの電波を傍受していました。そして具体的には語られていませんが、25年前のツイン・ピークス郊外の政府施設で起きた火災というのは、この極秘施設LPAのことをほぼ指していると思われます。その火災でブリッグス少佐は死亡、その直前に悪クーパーが少佐のもとを訪ねています。しかし、その後25年の間に国防総省ペンタゴンには計15回もブリッグス少佐の指紋照合の結果が送られ、その手掛かりはいつも不明だったのです。25年後のサウスダコタ州バックホーンで、ビル・ヘイスティングスがゾーンへの扉を開いた時、そこで "冬眠" をしていたのはブリッグス少佐でした。冬眠から目覚めた少佐は "安全な場所" を求め、その座標の数字をビル&ルースに入手してもらうよう依頼します。それを手に入れたビル&ルースは、再びブリッグス少佐のもとを訪ね座標の数字を伝えます。すると少佐は宙に浮き「クーパー、クーパー」と言い残し、その頭部が忽然と消えてしまいます。残った胴体は殺されたルース・ダヴェンポートの頭部と一緒にバックホーンのアパートへと飛ばされ、それを調査したコンスタンス鑑識官によりペンタゴンに16回目の指紋照合の結果が送られたのです。そして今、その座標の位置に最愛の息子ボビーが訪れてきました。さらにルースの遺体を見つけたFBIの面々、そして、悪クーパーとつながっているダイアンも、いずれこの地に辿り着く流れが見えてきています。その辿り着いた先、最終的な場所というのが、かのブルーブック計画の時点から追い求められていた "ホワイト・ロッジ" になるのでは?と思います。その重要な場所の目印となるのが、この不思議な引力を持つダグラスモミの巨木 "ジャック・ラビット・パレス" になるのです。

※この節で考察している情報の中で、テレビ放送で明らかになったもの以外の情報が複数ありますが、それらは全て書籍『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』からの引用になります

 

4.その他

【ゴードンとルーシー】

 25年ぶりの連絡なのにその大声で一発でゴードンだと理解したルーシー。ゴードンも相手がルーシーだとわかっていた様子。そこに "お久しぶり" も "ご無沙汰" の挨拶もなし。さすがです。ルーシーに至っては「ボラボラ島にも行きました」なんて話まで飛び出る始末。どうやらアンディーとルーシーの新婚旅行は "太平洋の真珠" へのバカンスだったようです。

 

【ダイアンとジェイニーE】

 至る所で驚愕されている "ダイアンとジェイニーEが姉妹" という話ですが、みなさん、あまりにもチョッパーすぎやしないですか?と僕は思っています(ちなみにチョッパーは漫画『ワンピース』のあのタヌキチもしくはチョニキのことです)。あの裏切りダイアンが果たしてゴードンたちに真実を話すでしょうか?いつも "クソ" と悪態をついて、今回なんか「アシスタント登場」なんてあまりにもわざとらしい登場の仕方をしています。先々週、悪クーパーから「ラスベガスは?」なんてメールをもらっているぐらいなので、これはゴードンたちをラスベガスに誘い込むミスリードではないかと思うのです。仮にこの姉妹説が真実だとするなら、姉妹喧嘩は原爆以上の破壊力で周囲を巻き込みそうです。恐ろしい...。

 

【FBIラスベガス支部

 ヘッドリー捜査官とウィルソン捜査官。ゴードンから連絡を受け、ラスベガス在住のダグラス・ジョーンズの情報を至急集めろ、相手は武装しているから十分警戒しろと言われます。さっそく調べてみると市街地だけで23人もダグラス・ジョーンズがいるらしい。23人!そんなに同姓同名っているもんですか?2人から3人の間違いじゃないですか?しかも、ウィルソン捜査官、23人もいちゃどうやって絞るのさとボヤくと、ヘッドリーからそれがオレたちの仕事なんだ!何回言えばわかるんだ!と怒られます。いやいや、毎回毎回23人もの容疑者から1人に絞っているわけじゃないですよね?ヘッドリー先輩、そんなにゴードンに認めてもらいたいん?あの人、モニカ・ベルッチの夢ばかり見てるらしいよ。

 

【チャド逮捕】

 あっけなく逮捕されたチャド。どうやらフランクは何か月も見張っていたらしいのですが、逮捕の決め手になったのがなんだったのかはわかりません。たぶん、リチャードに "完了" ってメールを送ったり、ドーナツ食べながらミリアムからの手紙を破棄したり、飲食禁止の会議室でお昼ご飯食べたり、ロードハウスでリチャードからお金を受け取ったり、いや、一番はフランクの息子の自殺をおちょくったのが逆鱗に触れたのかもしれません。いずれにしても、今まで描かれていたシーン全てがフランクには筒抜けだったようです。

 

【消防士とアンディー】

 ワームホールにアンディーが吸い込まれたのもビックリですが、突然「私は消防士だ」と、とんでもないカミングアウトをした巨人にもビックリです。あんた消防士だったの?みたいな。これってブラック・ロッジが "火" を弄ぶ場所だとしたら、それを "消火" する場所がホワイト・ロッジって考え方でいいのでしょうか?確定するには、もう少し情報が欲しい感じです。さらに数々の映像をアンディーに見せるわけですが、これが今までのおさらい、というか、とんでもない早送りダイジェストになっています。

 〇エクスペリメントの存在

 〇ボブ玉の誕生

 〇コンビニ オープン

 〇オープンに群がる真っ黒おっちゃん

 〇火、あるか?

 〇電線を伝って悪が伝番

 〇ローラ・パーマー殺害

 〇赤い部屋

 〇二人の天使に救われるローラ

 〇ナイド

 〇善クーパーと悪クーパー

 〇保安官事務所の電話が鳴る

 〇アンディーと不安げなルーシー

 〇再びナイド、アンディーの姿あり

 〇6の電信柱

 ローラが天使に救われるという辺りまでは、それまでの事柄が時系列順にダイジェストされているのがなんとなくわかりますが、ナイド以降はわかるところとそうでないところがあり、なんのこっちゃ?という感じです。これから未来のことを映し出しているようにも見えるし、それにしてもナイドの存在があまりにも謎すぎて、結局はなんのこっちゃ?という感じです。アンディーは十分理解したみたいですけど...。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所】

 保護したナイドにパジャマを着せているルーシー。ただ「ここで犬が迷子になった時からずっとロッカーに入れっぱなし」だったパジャマを着せるって、お~~~い!!!!! あんたらカヨワイ大和撫子になにしとるんじゃい!しかも留置所にチャドと、もう一人酔っ払いまでいるじゃないか!あんた酔っ払ったはずみで左の頬どうしたん?穴でも開いたのか?口から血が止まらないじゃないか。三人で鳥の鳴きまねをするって、僕ら "カゴの中" とでも言いたいんすか?

 

【ジェームズとフレディー】

 ガーデニング用の緑の手袋を右手にしているフレディー。どうやら "森の男" 並みに怪力の持ち主らしい。となると "森の男" は左手が怪力っぽかったので、買わずにビニールを破って手袋を持ち逃げした犯人が彼なのだろうか?いやいや、そんなことはございません。"森の男" は50年以上前の存在なのです。なのに、このロンドンで一番治安の悪い貧困層から飛び出てきた兄ちゃんに、消防士が "森の男" に対抗できる力を与えたって、なんで?消防士の人選ってアンディーもそうだけど、なんかビミョーじゃない?だって、ナイドに犬に使ったパジャマ着せてるんだよ?このフレディーも、なんでわざわざ海の向こうの人間なんだろ?ちなみにフレディーはもうすぐ23才になるらしい。さっきは23人のダグラス・ジョーンズ。なんかロジックでも隠れてます?デイヴィッド・リンチさま。

 

【グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室】

 ボイラーチェックに来るジェームズ。奥の扉からあの奇妙な音が響いてきます。以前、ビバリーが警備の人間に調べてもらったが異常はなかったとベン・ホーンに報告をしていましたが、嘘八百もいいところバリバリ音が鳴っています。バカ正直なジェームズのことなのでビバリーにちゃんとボイラー室と報告をしたでしょうから、これはベン・ホーンといい関係になりたかったビバリーがわざと嘘の報告をしたということっぽいです。

 

【エルクス・ポイント #9】

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 エルクスはヘラジカという意味です。

 日本ではあまり知名度のない動物なのですが、

 調べてみたらビックリしてしまいました。

 これです。

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 デカッ!

 森で出会ったら確実に殺されます。というか、ここ日本でも昔は生息していたみたいですので、第10章で考察したシシ神さまのモデルはシフゾウではなく、このヘラジカだったのかもしれません。ヘラジカの通称が「森の王」と呼ばれているんだから、なんか、もうそのまんまという感じがするじゃないですか。となると "ゴードンが書いた落書き" のモデルもこのヘラジカではないかと思います。さらに体が白いヘラジカは "神の使い" としてインディアン達から崇められていたとも言いますし、通常のヘラジカのことをインディアン達は "木を喰う者" と呼んでいたみたいです。ただ、"エルクス" という名称はヨーロッパ地方での呼び名で、アメリカ北部では "ムース" という名称が一般的なようです。だとしたら、このバーの店長はヨーロッパ出身ということでしょうか?しかも "#9" ってなに?

 

【セーラとトラック・ユー】

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 街でこんなTシャツを着てる輩を見かけたら、みなさん要注意です。彼は超がつく熟女好き、というよりも守備範囲がありえないぐらい広すぎます。ヤバイです。女性の方、特にお気を付けください。もし彼に捕まってしまったらムダな抵抗などはせず、迷わず自分の顔をパッカーンと開いてください。たぶん、彼は知らぬ間に首の半分を食いちぎられ、あっという間に倒れてしまいます。

 冗談はさておき、このセーラの中に存在するものとはいったいなんでしょうか?電気が走り、左の薬指だけが壊死したように真っ黒で、まるで喪黒 福造のような笑みを見せます。今にも「ドーン!!!!!」と指を差されそうですが、相手が不幸に落ちていくという辺り、まんまのような気がしてしまいます。

 第12章の考察でセーラのスメアゴル状態は長い孤独から育まれた分裂症のようなものと結論してみましたが、今回の顔パッカーンでどうやら別の側面もあることが明らかになりました。その側面についてのヒントは旧シリーズの最終話にあります。ダブルRダイナーでコーヒーブレイクをしているブリッグス少佐のもとにジャコビー先生がセーラを連れてきます。なにやらブリッグス少佐に伝えたいことがあるというのです。そして、セーラが口を開くとロッジの住人の声が語り始めます。「わたしはクーパー捜査官とブラック・ロッジにいる」と。そして、こうも続けます。

「私はあなたを待っている」

 ここでセーラを通してブリッグス少佐に語りかけているのは "別の場所から来た小さな男" ではないかと思われます。となると、今回の顔パッカーンの中にいるドス黒いものはブラック・ロッジの小人ということでしょうか?もしくはブラック・ロッジの中でもさらに位の高い何かなのでしょうか。トラック・ユーの首を噛み千切る動作は、ニューヨークのサム&トレイシーを襲ったエクスペリメントを彷彿させるようでもありました。謎は深まります。

 

5.BANG BANG BAR

 今週のBANG BANG BARはLissie。今までにない高揚感あるロックチューンでした。バーのボックス席で語られていたのは、オードリーが話していた "ビリー" について。これ、どうもおかしいです。ここ数回のBANG BANG BARで感じていたことですが、第8章の劇場後からBANG BANG BARのシーンだけ、どうも本編とは別の平行世界を描いているのではないかと思い始めています。これについては、また時間のある時に考察したいと思います。

ツイン・ピークス The Return 考察 第13章 時は乱れて

1.ダギー・ジョーンズ(デイル・クーパー)は現代の救世主なのか?

 唐突に幸福のファンファーレから始まったThe Return 第13章。先々週の "幸せのチェリーパイ" の後、どうやらクーパーは一晩中ミッチャム兄弟たちとお楽しみをしていたようで、ずいぶんと陽気にラッキー7保険の社内に姿を現わします。アルコールも廻っているのか、両頬にキスマークまでつけてだいぶご機嫌な様子。ラッキー7保険の社長ブッシュネルに贈り物を渡すと、彼らは騒ぎに戻っていくのですが、それを戦々恐々と見つめているのが同僚のアンソニーです。ダンカン・トッドからの命令でクーパー殺しをミッチャム兄弟たちにけしかける計画でしたが、完全に真逆の結果を目の当たりにして混乱しています。すぐさまトッドに連絡を取り指示を仰ぐのですが、返答はずいぶんと冷遇なものでした。

 "幸せのチェリーパイ" は第11章での出来事。先週の第12章では、ダギーの息子サニージムと裏庭でキャッチボールをしているシーンが描かれていました。とは言っても、サニージムが単にボールを投げつけ、クーパーの肩に当たるだけという、なんとも微笑ましくも可笑しいシーンなのですが、ここで少し時間軸に歪みが生じます。

 第11章の "サンティーノ" のシーンで、ミッチャム兄弟たちが「子供には遊具セットを与えるべきだ」と語った通り、今週、ジョーンズ家の裏庭に豪華な遊具セットが贈られてきました。サニージムは大喜びで遊んでいるのですが、なぜかBGMは "白鳥の湖" です。あまり深い意味はないのでしょうけど、"夜になると悪魔の呪いが解けるオデット姫" という物語が、このシーンに何かしらの暗示をしているようにも感じます。

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 もとい、そんな遊具セットで遊ぶサニージムをうっとりと眺めているジェイニーEが一言、「ゆうべ帰らないから悪い想像をした」とクーパーに囁きます。その "ゆうべ" というのは、ミッチャム兄弟たちと一晩中お楽しみをしていた夜のことを指すようです。となると、"幸せのチェリーパイ" から "ブッシュネルへの贈り物" まで、クーパーはミッチャム兄弟たちと共に過ごしていたことになり、先週のキャッチボールが、いつの日のどのタイミングなのかがはっきりしません。これもあまり深い意味はないのでしょうけど、こんな時間軸のズレがちょいちょい出てきますので、なんとなく引っかかる感じがします。

 ダンカン・トッドからの命令を実行しようと、アンソニーはラスベガス警察のクラーク刑事のもとを訪ね、足のつかない毒 "アコニチン" を5000ドルで手に入れます。そして翌日、出社してくるクーパーを "サイモンズ・コーヒー" に誘い、彼がチェリーパイに気を取られている隙に毒をコーヒーに仕込みます。しかし、クーパーはアンソニーの肩に散らばった "フケ" に気を取られ、まるでツボでも押すかのようにフケをいじくりだすのです。極度の緊張状態にあったアンソニーの心は、クーパーの何気ない行為に脆くも崩れ去り、暗殺を断念、ブッシュネル社長に全てを懺悔するという流れに行きつきます。

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 ちなみに小ネタですが、サイモンズ・コーヒーでチェリーパイを運んでくるウェイトレスの名札には「Leslie(レズリー)」とあります。"Leslie" の名前の由来は "柊の庭" です。"柊" というのはギザギザした葉が特徴で、その刺々しい葉が魔除けになるとして庭や玄関先に植えられることでも有名です。そこから読み取れるのは、このウェイトレスがクーパーを守護する天使のような存在だった、なんていう深読みも出来そうな感じがします。

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 ※ちなみにクリスマスリースにも使われる柊ですが、このリースにも意味があり「赤い実」は "太陽の炎" や "キリストの血" 、「緑の葉」は "永遠の命" や "神の愛" を、そして、「花輪・冠 (リース)」は "始まりもなく終わりもない永遠の状態" を現わします。このクリスマカラーである "赤と緑" と聞いて、ピンと誰かを思い浮かべた方は、かなりのThe Return マニアだと思いますが、そうです、ダイアンがいつも着ている服が決まって "赤" か "緑" なのです。どうも意味深ですよね。

 いずれにしても現世に戻ってきてからのクーパーは何かと暗殺の危機を何気ない行為で回避しています。全てをここに列挙するのは控えますが、用意周到なはずの計画は全て見えない何かによってなし崩しにされ、関わる人物は全員が全員、クーパーの行為によって "改心" していくのです。ジェイニーE然り、ブッシュネル社長然り、ミッチャム兄弟もアンソニーもそうです。それはまるで方々を伝道し、数々の奇跡を起こしたイエス・キリストのようでもあります。デイヴィッド・リンチ、もしくはマーク・フロストは、現代の救世主は "白痴" の姿をしているとでも言いたいのでしょうか。ただ、ジェイニーEが感じていた「まるで天国にいるみたい」というのは、かなり俗物にまみれた世界とも言えます。ミッチャム兄弟も3000万ドルの小切手がなければ、ここまで手の平を返すことはしなかったはずです。六道輪廻の世界で言うと "餓鬼道" の世界。それは欲望や物惜しみなどの苦しみを責められる世界なのですが、その欲望をクーパーによって満足させることができたために、彼ら彼女らは地獄ではなく "天国" にいるような錯覚を覚えたとも解釈できるのです。

 

2.結局、レイ・モンローとはなんだったのか?

 第9章以来、4話ぶりの登場となった悪クーパー。第8章でレイに撃たれ、第9章でハッチ&シャンタルと合流して以降、しばらく姿を見せませんでした。今回、モンタナ州の西部にある "ファーム (The Farm)" にやってくるのですが、そこはレイやリチャードが所属するごろつき達が集まる組織でした。

 第8章でサウスダコタ刑務所を出た後、悪クーパーとレイはファームを目指すことにするのですが、その時の会話で「それが一番よさそうだが黙って逃がしはしねぇだろう。ヤツらだってすぐに追いかけてくる」とレイは言っていました。あの時点でファームに行って何をしようとしていたのかは不明ですが、経緯から察するに、刑務所を出て、まず安全な場所は "ファーム" になるからそこに行こう、その後の事は現地に着いてから考える、それくらいのニュアンスだったのかもしれません。

 ファームにやってきた悪クーパーはレイを引き渡せと要求し、ボスであるレンゾとアームレスリングで対決することになります。ある程度の世代の人なら、なんでここでスタローン映画「オーバー・ザ・トップ」になるんだ?と、どうせならベースボールキャップまで被ったら?ぐらいに思うかもしれませんが、このアームレスリング、アメリカでは結構、屈強な男たちの象徴になっているようです。そして、14年間無敗とされているレンゾを悪クーパーはいとも容易く打ち負かし、ワンパンチでレンゾを殴り殺してしまいます。まるで漫画「ワンピース」でハイエナ・ベラミーを倒すルフィのようです。素手でも人を殺せる悪クーパーの最強っぷりは、もう七武海を通り越して四皇レベルと言っても過言ではないでしょう。そうするとボブ玉は一種の "悪魔の実" とも言えるのかもしれません。閑話休題

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 圧倒的な強さを目の当たりにして、レンゾからあっさりと悪クーパーに鞍替えをする手下達ですが、そんなことには見向きもせず、悪クーパーはレイを問い詰めます。そこで語られる内容は、裏切り行為の全てはフィリップ・ジェフリーズからの指示だったということでした。そして、レイはポケットから "翡翠の指輪" まで取り出します。悪クーパーを殺した際に、この指輪を嵌めさせロッジ送りにしろということらしいのです。そうするとフィリップ・ジェフリーズ、もしくはフィリップを名乗る何者かは、何かしらの思惑のために悪クーパーとボブを現世からロッジに戻そうとしているのがわかります。ブリッグス少佐について探りを入れる悪クーパーですが、レイはそこまでは深く関わっていないようです。フィリップの居場所を問い質すと「"ダッチマン" って店にいるらしい」とレイが語りますが、「この世にそんな場所はねえ」と言うと、それ以上語るなとばかりに悪クーパーはレイにとどめを刺します。

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 新シリーズ第1章から登場していたレイ・モンロー。そもそもの第1章に登場したあの山奥の小屋がなんなのかがはっきりしませんが、ダーリャと共に呼び出された時点では、まだフィリップ・ジェフリーズとはつながっていなかったように思えます。純粋に悪クーパーの手下として、座標を手に入れる仕事に従事していたはずなのです。それがヘイスティングスの秘書ベティに近寄り始めてから様子がおかしくなり、連行された理由が銃の不法所持なのかどうかの真偽は不明ですが、結果、ヤンクトン刑務所のマーフィー所長とも間接的にグルでした。悪クーパーからすると、レイもダーリャも単なる捨て駒のような感じで、座標さえ手に入れば後は用無しだったようではあります。となると、最強っぷりを発揮する悪クーパーに一矢報いたという点では、今のところレイの功績はかなり大きいのですが、いかんせん相手が悪すぎました。彼が「金」に成りあがるにはあと一歩のところではあったのですが、"ボブ" という飛車・角を落とすには、あまりにも援護射撃が少なかったようです。

 

3.ラスベガスの黒幕だったダンカン・トッド

 風貌的にはミッチャム兄弟がラスベガスの黒幕のように見えましたが(「マルホランド・ドライブ」のカスティリアーニ兄弟のように)、この第13章でダンカン・トッドがその黒幕だったことが明らかになりました。それはラスベガス警察の刑事まで取り込んだ、かなり大規模な裏組織のようです。保険金詐欺を謀り、宿敵ミッチャム兄弟を貶めるために新築のホテルに火をつけることも厭わない。そのやり口はかなり大胆で問答無用なようです。

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 第11章でブッシュネル社長が語っていた汚職警官の話は、もしかしてフスコ三兄弟がその汚職に絡んでいるのか?と思っていましたが、どうやら今週登場したクラーク刑事とその相棒のことのようで、なぜか安心したような、それでいてガッカリしたような気分です。そのフスコ三兄弟、今回もまたもやおバカなやり取りに花を咲かせていました。第9章で手に入れたクーパーの指紋の検査結果が出たのですが、失踪中のFBI捜査官という結果を一笑に付し、ゴミ箱にポイ捨てしてしまうのです。これはちょっとヤバイ結果を招きそうです。というのも、バックホーン警察でコンスタンス鑑識員がブリッグス少佐の指紋をヒットさせただけで国防総省がすっ飛んできました。となると、クーパーの指紋やDNAともなるとFBIが黙ってはいないでしょう。しかも、先週の第12章でダイアンのもとには "ラスベガス" のショートメールまで飛んできているのです。なんとも相変わらず底の浅い考えで物事を判断している、それがフスコ三兄弟とも言えるのですが...。1997年以前のダギー・ジョーンズの過去がないとか、証人保護かもしれないという疑惑は、結局どうなったのでしょう。

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 ちなみに、また小ネタですが、このフスコ三兄弟が登場するシーン、部屋の奥でなにやら女性が取締中に粗相をして騒いでいる様子が描かれています。はっきりとは言えませんが、たぶん、ここで騒いでいる女性はクーパー転送時の空き家の向かいに住んでいた「119!」と叫ぶヤク中の母親ではないかと思います。第5章でダギーの車が爆破して以来、この親子の登場がなくなってしまいましたが、それも第6章で屋根の上に吹っ飛んだ車のナンバーを警官が発見した際に、この119親子も発見されたからではないかと思うのです。それ以降、あの栄養失調気味だった息子くんがどうなったかが心配ですが、サニージムのように、どこかで楽しく暮らしていたらいいなと思います。 

 息子くんと言えば、先週の第12章で無残にも目の前で父親を射殺されてしまったマーフィー所長の息子。その後、どうなってしまったのかは描かれていませんが、きっちりと使命を果たしたハッチ&シャンタルは "U.S. Route 189" を南下、ユタ州ユタ湖湖畔の町プロボまで辿り着き、着々とラスベガスに向かっています。第9章で悪クーパーが "ダブルヘッダー" だと言っていましたので、第1試合がダンカン・トッド、そして、第2試合がダギー・ジョーンズことデイル・クーパーではないかと推察します。トッドもクーパーもシャンタルのお色気攻撃には目もくれなさそうなので、ハッチの悪魔の照準からいかに逃げ果せることができるのか?が見所になりそうです。さらに、ブッシュネル社長を筆頭に「トッドの悪事を白日の下にさらすチーム」、フスコ三兄弟がうっかり開けてしまった「クーパーの指紋に気づいたFBIチーム」、そして「射撃王ハッチとお色気シャンタルチーム」という、ダンカン・トッドを巡っての三つ巴戦が、このラスベガスで壮大に繰り広げられそうな感じがしてくるじゃないですか。黒幕トッドは白日の下にさらされるのか?救世主クーパーはどのようにして射撃王を改心させるのか?今後、ラスベガスが熱くなりそうな予感がします。

 

4.「時間の矢」と「砂時計のくびれ」と「メビウスの輪

 僕たちは通常 "時間" というものは過去から未来に向けて一方向にしか進行しないと認識しています。一度放ってしまった矢が弓に戻ってくることはないと知っているし、飛んでいく矢が連続した空間を移動していくことも知っています。砂時計の砂が上から下へ流れていくのが通常であり、決して砂が逆戻りしたり、砂の量が増えたり減ったりすることはないのです。その概念は書物であったり、絵画であったり、映画であったり、いわゆる "物語" を体感している時も、僕たちは一方向に連続して物語が進んでいると思いがちです。砂時計のくびれた部分は常に一定であると思いがちなのです。しかし、こと「ツイン・ピークス The Return」では、その概念が当てはまりません。飛んでいく矢は突然別の場所に移り変わり、移り変わったと思うと次の瞬間には遥か彼方に姿を現わしたりします。砂時計のくびれた場所では、例えば黄色い砂が突然白に変わり、流れ落ちたと思った白い砂がいつのまにか上に戻って黄色くなっていたりするのです。そして、語られるストーリーの中で唯一 "時間の流れ" が歪みまくっている場所、それが「ツイン・ピークス」という町だけという事実。この現象は "ラスベガス" であったり "サウスダコタ" では一切起きていないのです。映画「インランド・エンパイア」でも、物語をまるで1枚のキュビズム画のようにあらゆる面から切り取ったリンチですが、今回の第13章で描かれているツイン・ピークスの住人たちも同じようにキュビズム的な構成で描かれているのです。

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 ダブルRダイナーでてきぱき働いているシェリーのもとにベッキーから電話がかかってきます。スティーヴンが "2日" も帰ってこなくて心配だと泣いているのです。そんなベッキーをクリームたっぷりのチェリーパイでシェリーはなだめます。このシーンは第11章のベッキー銃撃事件の流れ上にあると言えます。まずこれを "A地点" と仮定します。

 続いて、往年のピーカー大喜びのエド&ノーマのツーショットに進みます。ダイナーにやってきたボビー保安官助手はシェリーの帰宅をノーマに確認しているので、どうも彼女と何か話をしたくてお店にやってきたようです。それを見てエドが「ひとりじゃつまんないだろ。一緒に食べよう」とテーブルに誘います。気後れしながらも席に着くボビーは、エドの何気ない質問にこう答えるのです。「親父が残したものが "今日" 見つかった」

 それが指し示すのは第9章で明らかになったブリッグス少佐のメモ "ジャック・ラビット・パレス" についてです。それが "今日" 見つかったということは、このシーンの時間は一気に第9章の時点まで巻き戻されたということになります。このボビーのシーンを "B地点" とします。

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 ボビーの "B地点" は10月1日の2日前になるので「9月29日の夜」ということになります。そして、シェリーを探している様子から察すると、第11章のシェリーとレッドの逢引きが気になって仕方がない、もしくはベッキーのその後が気に掛かりダイナーにやってきたと推定できます。2日も3日も開けて訪ねてくることはないと思いますので、ダブルRダイナーで親子3人で話し合いをした翌日の夜にボビーが再びシェリーを訪ねてきたと仮定できます。となると、ベッキー銃撃事件やダイナー誤発砲事件は前日の夜となりますので「9月28日」になります。ここからシェリーの "A地点" を導き出すと、スティーヴンが家に "2日間" も帰ってこなくて心配でたまらないとベッキーが泣いていたので「9月28日」の2日後である「9月30日」が "A地点" であると定義できます。

 なぜ、このような時間軸の歪みをリンチがしたのかというと、今回初登場したウォルターというマーケティング主義の男と、次のシーンに出てくるジャコビー先生の反利益主義の対比を描こうとしていたからではないかと思うのです。これはかなり緻密に練られた脚本構成をしており、もう感嘆せずにはいられません。しかも、ウォルターの主義主張はノーマの心に1mmも響いてなく、傍から見ているエドはやきもきしていますが、ノーマ自身は "坊や、私はこのお店が存続できれば、それで十分なんだから" と、かなりの大人な女性っぷりです。まるで映画「紅の豚」のジーナさんのようです。

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 続いて、ネイディーンのドレープ屋さん。金のシャベルのディスプレイに気づいたジャコビー先生は感激して店の扉をノックします。と言うよりも、ジャコビー先生、どんな目的で町まで下りてきたのでしょう?まあ、それはさて置きまして、すっかり意気投合してしまっているこの二人、金のシャベルを前に「我々は奴らと戦わねばならない!」と士気を挙げています。ここで言う "奴ら" というのが、先ほどのウォルターのような輩ということになります。こういう輩はいつも俺たちを裏切るんだ!とネット放送で熱弁しているジャコビー先生ですから、ウォルターもダイナーの利益が出なくなるとノーマを裏切るということを暗に示しているようです。そして、新たなキーワードが二人の会話から出てきます。それは "7年前の大きな嵐"。そんな嵐の中で、なぜネイディーンはスーパーでじゃがいもを落として床に這いつくばり、ジャコビー先生はそれを目撃したのでしょうか?

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 スーパーと言えば、前回、ビーフジャーキーを見て様子がおかしくなってしまったセーラ。今週はテレビでボクシングの試合を見ています。試合を見ながらウォッカを飲もうとしているのですが、どのビンも空に近い状態でなかなかいい気持ちになれません。この状態も少しおかしいです。先週 "スミノフ" を3本も購入し、様子がおかしくなったかと思うと、買ったものをそのままに家に帰ってしまったセーラ。レジの男の子が「家を知ってる」からと、それを届けると言っていました。本当に届けたのかどうかは描写がないのでわかりませんが、ホーク保安官が様子を見に来るぐらいなので、たぶんですが買ったお酒やタバコは家に届けられていたはずです。だとすると、それを飲み干したとしたならテーブルの上にあるのは "スミノフ" の空き瓶のはずですが、実際は全然違うものです。ここから読み取れるのは2つのパターン。ひとつは男の子は商品を家に届けなかった。だとしたら、そんなに深く考える必要はありません。もうひとつのパターンは、今回のこのシーンが先週のスーパーの前日の夜かもしれないということ。お酒がなくなったので、次の日セーラはスーパーで買い物をして、ビーフジャーキーを見てしまったがためにスメアゴル状態になったという流れです。こうなると、またもや "時間の流れ" が歪んでしまいます。

 そして、歪みはテレビのボクシングの試合まで影響しています。第1ラウンドを永遠にループしているのです。いつまでもいつまでも左耳を殴られてダウンするボクサーが気の毒ですが、これも一種のパラドックスになります。殴られているボクサーからすると左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる、左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる、左耳を殴られる、ダウンする、立ち上がる...と、永遠に左耳を殴られ続けるのです。まるでメビウスの世界をどこまでも飛んでいく矢のようです。どこかで立ち上がるのをやめてダウンしたままでいなければ永遠に続いてしまう。それが次のオードリーとチャーリーの会話に出てくる "実存主義" につながっていくのです。

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 前回のカオス的状況のオードリーに比べると、今回はほぼネタバレに近い内容を話し合っています。曰く「自分がここにいないみたいに感じる」「(本当の自分は)他の場所にいて別人になった気分」「自分で自分がわからない!」これらから容易に推察できるのは、25年前の意識不明の状態からオードリーは未だに目覚めていないということです。そんなオードリーに、チャーリーは「ロードハウスに行ってビリーを探してきなさい」と諭します。先週、あれだけ眠い眠い、仕事仕事と言っていたのに、随分と手の平を返してきました。そして、その意図するところは、先ほどのボクサーがダウンし続けることを選ばないとループから抜け出せないように、オードリーもこの家から出ていかないとループから抜け出せないことを暗示しているのです。でないと「君の物語を終わりにさせる」と言います。これはかなりの意味深発言です。"通り沿いの家に住んでいた少女" というのが誰の事を指すのかは、さっぱりわかりませんが、いずれにしてもオードリーが "異空間" の住人であることが判明しつつあります。

 

5.ジェームズ・ハーレー

 ファンの方はごめんなさい。気を悪くされたらごめんなさい。ジェームズ・ファンの方は、どうかここから下は読まないでください。

 僕はジェームズが嫌いです。旧シリーズの頃から、僕はジェームズが嫌いです。こういう "優男" は絶対にムッツリか、もしくはムッツリか、かろうじてムッツリな奴だと相場が決まっています。ローラ、ローラと言いながらドナに乗り換え、どこか悲劇のヒーローを気取り、正論を振りかざしながら人妻に手を出す始末。やりたいなら、素直にやりたいと言えばいいのに、なんかカッコつけるのです。まだ、よう、シェリー!とボビーの前でキスをするレッドの方が何百倍も気持ちがいいです。ビッグ・エドには申し訳ないですが、僕はジェームズが嫌いです。歌なんか聞きたくないし、それを聞いて泣くなんて信じられません。リンチ作品の中で、このシーンが一番、不条理です。いや、ホント、ダメなんです...。ごめんなさい。

ツイン・ピークス The Return 考察 第12章 不機嫌な薔薇たち

 先週の "幸せのチェリーパイ" から打って変わり、今回の第12章は一見するとどこか間延びしたような、取り留めのない回だったという印象を受けます。もともと「ツイン・ピークス」やデイヴィッド・リンチに先週のような幸福感は求めていなかったのですが、不思議なもので、脳内に大量のセロトニンが一度でも放出されると、それが忘れられなくてまた同じ現象を求めてしまいがちです。一種の "多幸感" に近い状態、それが第11章であったと思うのです。それに比べると、今週はまず主人公が不在でサイドストーリーだけが語られていたということ、かつシーン数も極端に少ないというドラマシリーズとしては第8章同様、なかなか特殊な回だったのではないかと思います。旧シリーズを見てもクーパー捜査官がちょろっとしか登場しない回なんて、まずありませんでした。全18章の総体の中で第12章がどんな位置づけになるのかは、最終回を迎えないと俯瞰することができませんが、いずれにしても主人公を差し置いてでも語らなければならない人物たちが登場したという回になるのかもしれません。

 

1.やさぐれている女たち

 今回の第12章、大きなポイントとして挙げられるのが、不思議な共通点を持つ3人の人物が描かれていたことではないでしょうか。その3人とは「オードリー・ホーン」「セーラ・パーマー」「ダイアン・エヴァンス」です。そこにどんな共通点があるのかと言うと、3人が3人とも「F※%K」を連発するということ。吹き替え版で言うと「クソ」や「クソ野郎」を口走るということです。これはなかなか聞いていて心地良いものではありません。この3人は、どうしてここまで不機嫌なのでしょう。さらに、今回登場したばかりのオードリーはまだ確定できませんが、セーラとダイアンは2人ともかなりのヘビースモーカーとして描かれています。とにかくやたらめったらタバコを吸っているのです。不機嫌を抑えるためにタバコを吸っているのか、もしくは不安定な精神を落ち着かせるためにタバコを吸っているのか。いずれにしても、ここで描かれている "不機嫌" というキーワード、なぜこの3人に共通しているのでしょうか。

 

 ①セーラ・パーマー ~娘と夫を亡くした女性の末路~

 ローラ・パーマーの母親であるセーラ。英語表記では "Sarah" ですので、サラ・パーマーとカタカナ表記をしても間違いではありません。たぶん、訳す時に娘が "ローラ" なので、同じようなニュアンスで "セーラ" で設定したのではないかと思います。僕的には "サラ" の方がしっくりとくるのですが、ここではWOWOWの訳に従って "セーラ" で呼ぶようにいたします。旧シリーズでの字幕も "セーラ" 表記ですし。

 で、先ほど書いたようにセーラは旧シリーズの時点からとんでもなくヘビースモーカーでした。事あるごとにタバコに火をつけています。新シリーズ第2章のシーンでもテーブルの上の灰皿は溢れんばかりになっていましたので、この25年間のどこかで禁煙したと言うわけではなさそうです。不安の表れとも、口寂しさからくる甘えの表れとも両義的に汲み取ることができる設定ではありますが、旧シリーズを振り返ると、どこか不安気なところがあり、なんだかんだ言ってリーランドに甘えるという女性的な面もちょいちょいありましたので、そのまんまヘビースモーカーらしい性格と言えそうです。それが娘を失い、夫を失い、さらに長い期間を一人であの広い家で暮らしていたと思うと、その不安や甘えに "孤独" が覆い被さり、現状のセーラの状態になったのではないかと推察します。 

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 さらにセーラと言えば、旧シリーズでの "叫び" があまりにも特徴的です。序章で娘の不幸を電話越しに悟った時の叫びと言ったら、当時、そこだけ事前に身構えてテレビの音量を落としていたほどです。ローラの部屋でボブを目撃した時も同様でした。その娘であるローラも、映画「FIRE WALK WITH ME」でやたらめったら叫んでいましたので、親子の "叫びDNA" は綿々と受け継がれているようです。

 今回のシーンではスーパーマーケットでウォッカを買い漁ってる姿が描かれています。ウォッカと言っても "スミノフ" オンリーのような感じで、他の棚に並ぶウォッカを飲むつもりはないようです。

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 このウォッカというキーワードもダイアンと共通しています。ダイアンは登場時からウォッカを飲み漁り、今回の第12章でもウォッカまみれです。この2人、相当お酒が強そうですが、それも何かの意図を孕んでいるのでしょうか。タバコをガンガン吸い、ウォッカを水のように飲む。まるで屈強なロシア人のようです。

 さらにスーパーのレジでビーフジャーキーを見ると一気に様子がおかしくなります。

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 レジのお姉ちゃんは「新商品のターキーです」と言ってましたが、セーラが聞きたかったのはビーフジャーキーについてです。それは新シリーズ第2章のシーンともつながります。そこではテレビのアニマル番組を見ているだけというものでしたが、そのテレビに映っていたのは水牛を貪るライオンの姿でした。インドでは牛は神聖なものとして崇められていますが、聖書の中での牛は "生贄" などに象徴されるように肉としての意味、そして、"しもべ" という暗喩もあります。ビーフジャーキーの横に並んでいたのは "ターフジャーキー" 七面鳥です。クリスマスにみんなが食べるものです。そこからも "生贄" というキーワードが導かれます。そこから推察できるのは、セーラは何かを従えているのではないかと、しかも己の欲望を満足させる何かを従えている、もしくは従えたいと目論んでいる、そんなニュアンスが読み取れないでしょうか。その表れが "牛" であった。とにかく "牛" を見ると欲望がうずいてしまうのではないかと。

 しかも、"牛" というキーワードが出てきたのは、なにもセーラの登場シーンだけではありません。そうです。月を飛び越えちまったやつです。「The Return」の中で "牛" というキーワードがどれだけ重要なのかは、まだ計り知ることができませんが、さらっと語るなら仏教法話の「十牛図」が少しは絡んでくるのかもしれません。"十牛図" では悟りへの道の比喩として登場する "牛" を、従えるのではなく食べちまうという観念。まるで神が不在の現世を嘲笑っているかのようです。

 様子がおかしくなったセーラは、幻視でも見たのか、レジのお姉ちゃん(名札にヴィクトリアと書かれています)に唐突に警告を発します。

  〇部屋の様子が変わっている

  〇男たちがやってくる

  〇気を付けなさい

  〇何かが起きる

  〇それは私にも起きたこ

 そのすぐ後に「セーラ、こんなことはダメ」と自分で自分を戒めています。その様子は、まるで「ロード・オブ・ザ・リング」のスメアゴルのようです。

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 長い孤独の末に二重人格者のような行動を取り、善の性格と悪の性格が一つの人格の中で会話をしているという異様な魂の形をしているスメアゴル。セーラも彼同様、長い孤独の中で自己対話をし過ぎたためか、欲望が赴くままの性格とそれを抑えようとする理性的な性格が一つの人格の中で分離してしまったように見えます。そして、車のキーを探しながら「あのクソッタレな車」と悪態をつくのです。その悪態は、スーパーでの騒ぎを聞きつけ、様子を見に来たホーク保安官にも向けられます。独り暮らしのはずなのに奥のキッチンから物音がしたり、「ひどい話だよ!」と何について苛立っているのかはわかりませんが、とにかく異様なオーラをプンプンと周りに放っているのです。

 このような様子を見ていると、セーラは「ツイン・ピークス」という世界の中で、一番、孤独に蝕まれている存在といえそうです。そして、ボブとも一番長く共存、もしくは身近だった存在ともいえるのです。発売されている書籍「ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー」によると、1989年の時点でセーラ・ノヴァク・パーマーは44才。政治学専攻の出身で、夫であるリーランド・パーマーとは学生時代からの恋人であったとされています。リーランドはワシントン大学を首席で卒業とありますので、セーラも同じワシントン大学だった可能性が高いです。そして、結婚生活21年目に娘と夫を続けて失うという運命を背負わされてしまうのです。これは生きながらえる宿命の中で一番辛い状況ではないでしょうか。さらに、リーランドとボブがどの時点で同一化したのかは定かではありませんが、おそらく恋人同士であった学生時代の頃からボブという存在をどこかで認識し(窓から男たちがやってきた)、潜在的に脅かされる結婚生活の果てに、ボブに全てを奪われてしまった唯一の被害者とも言えるのです。

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 ②ダイアン・エヴァンス ~不確かな存在~

 第6章で初めてその姿を現わし、第7章で悪クーパーとご対面、第9章では悪クーパーと密かにつながっていることが明らかになったダイアン。第11章ではヘイスティングスが殺される様を見ても助けることもなく、むしろ、してやったりの表情を浮かべていました。黒いおっちゃんを目撃していることからも、タミー捜査官とは確実に違う、どちらかと言うとクーパーやローラのような一種の "あっち側" の世界を経験している人物と言えそうです。

 前述したようにセーラとの共通点は「F※%Kの乱用」「タバコ」「ウォッカ」そして「ボブ」です。悪クーパーとつながっている、イコール、ボブともつながっている、それはロッジともつながっていると拡大解釈してもいいのかもしれません。悪クーパーの計画にどれほど加担しているのかは、現時点で推し量ることは難しいですが、これまでの印象としてはどうも行き当たりばったりな感じも見受けられます。サウスダコタの刑務所でたまたま再会したのを機に、二人はやり取りを始めたような感じがするのです。それらが全て悪クーパーの計画通りだとするなら、ゴードンやアルバートを含めかなりの範囲が悪クーパーの手の平の上だと言えそうですが、まあ、それはまずありえないでしょう。

 そもそもダイアンが実在していたという時点で、何とも言えない違和感を感じます。ゴードンも、第7章でのダイアンの抱擁に違和感を感じ、抱きつかれても抱き返すことをしませんでした。あまりにも感傷的すぎたのか、もしくは、いつものダイアンらしくないと感じたのか、その辺の説明というものがもう少し欲しいところではあるのですが、リンチ作品なので全くされないという。とにかく "違和感" だけは感じたと。なかなか、もどかしいところではあるのですが、かと言って、この違和感の正体、僕もうまく説明することができません。片腕の男のセリフではありませんが「何かが、おかしい」のです。

 ですが、そんなダイアンをゴードンは「青いバラ事件」の調査に誘います。事の理由はクーパーから何かしらの報告を聞いていたはずだから、ということだけです。それに対してダイアンは「Let's Rock!(さあ、やろうぜ!)」と返答します。この「Let's Rock!」というセリフ、意味するところが深すぎて、とてもどれを指しているのかわかりません。旧シリーズ、そして映画、いずれも「Let's Rock!」が登場するシーンはとても重要なシーンだからです。

 

 【「Let's Rock!」の登場シーン①】

 旧シリーズの第2話、ベッドに入り夢を見ているクーパー捜査官。その夢の中で「ツイン・ピークス」で初めて "赤い部屋" が登場します。そして、小人(別の場所から来た小さな男)が初めて語るセリフが「Let's Rock!」なのです。その夢の内容をクーパー捜査官はボイスレコーダーでダイアンに報告していた。だから、ダイアンは「Let's Rock!」と応えたというのが一つあります。

 ただ、この "赤い部屋" のシーン、生粋のツイン・ピークス・フリークの方ならとっくに周知のことですが、テレビシリーズでは抜けているものが "インターナショナル版" ではちゃんと表示されているのです。それは「25年後」というテロップです。旧シリーズでの第3話でも、夢の内容を語るクーパー捜査官は「25年後、僕は "赤い部屋" にいた」とハリーに説明しています。

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 この "赤い部屋" のシーン、よく見るとクーパーはかなり老けています。1989年当時、カイル・マクラクランが25年後になると、こんなおじさんになっているのではないかというメイクがされているので、現状と比べるのも一つの楽しみです。そして、この "25年後" が、実際に今展開されている舞台というのがあまりにも意味深です。"赤い部屋" が「青いバラ事件」と何かしらの関連があると解った上で、ダイアンは口にしたのでしょうか?

 

 【「Let's Rock!」の登場シーン②】

 もう一つは映画「FIRE WALK WITH ME」のファットトラウト・トレイラーパークでのシーンです。失踪したデズモンド捜査官を探しにトレイラーパークを訪れたクーパー捜査官は、今は善きカール管理人に案内されて足取りを追います。そして、あるはずのシャルフォン婦人のトレイラーがなくなり、その近くに放置されていたデズモンド捜査官の車のフロントガラスに赤い口紅で殴り書きされていたのが「Let's Rock!」でした。

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 今回の第12章で、青いバラ計画チームに加入したタミー捜査官。その経緯をアルバートが説明している中で、もともとフィリップ・ジェフリーズをチームリーダーに、アルバート、デイル・クーパー、そして、チェット・デズモンドの3人が召集されたことが明かされました。映画「FIRE WALK WITH ME」で登場した "しかめっ面のリル" が胸に刺していた "青いバラ" を解明しようと、テレサ・バンクスの護送をサムに任せ、一人、トレイラーパークを訪れたデズモンド捜査官は "6の電信柱" に辿り着き、シャルフォン婦人のトレーラー下にあった "翡翠の指輪" を手にした途端に忽然と姿を消します。

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 となると、"青いバラ" と "翡翠の指輪" に何かしらの関連があるように解釈できるのではないかと。先ほどの "赤い部屋" と "翡翠の指輪" は密接な関係にありますので、そこに "青いバラ" までが深く関わってくることが、これらのことから読み取れてきそうなのです。そして、ダイアンは、これらの内容をただ一言「Let's Rock!」で暗示している。これらはダイアンが "赤い部屋" や "翡翠の指輪" に深く関わっていると定義するのに十分なほどの情報ではないでしょうか。

 さらに重要なのが「青いバラ計画」が "ブルーブック計画" の内密な後継捜査チームだったという事実です。ダイアンの話から少しズレますが、そもそも "ブルーブック計画" というのは、以前の第10章の考察でも語った通り、実際にアメリカで行われていた "MJ-12" という委員会の報告書名でした。そして、この "MJ-12" が調査していたのが、アルバートが説明していたようにUFOなど宇宙人関連を調査する組織だったのです。このUFO調査がどこから始まったかというと、1947年、ニューメキシコ州にUFOが墜落したと言われる "ロズウェル事件" が発端なのです。

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 ニューメキシコ州と聞いてピンと来る方が多いと思いますが、そうです、あの第8章のトリニティ実験が行われたのがニューメキシコ州です。1945年に行われた初の原爆実験の2年後にUFOが立て続けに2度も落ちているのです。ちょっと興味本位で「広島 UFO」で検索をしてみると、広島もどうやらUFO目撃が多い地域のようです。長崎も同様みたいですので、なんだかマーク・フロストの都市伝説熱が上がってくるような感じがします。

 ただ、僕が重要だと思うのはUFOについてではありません。青いバラ計画の名前の由来です。アルバートが語る「ある女性が死ぬ前に言った "青いバラ" が計画名になった」という部分です。経緯を整理します。

 

 1945年 トリニティ実験

      ↓

 1947年 ロズウェル事件

      ↓

 1947年 ブルーブック計画始動

      ↓

 1956年 "森の男" がラジオ局を襲う

      ↓

 1970年の数年後 青いバラ事件発生

      ↓

 1970年の数年後 青いバラ計画始動

 

 フィクションとノンフィクションが織り交ざっていますが、これら全てがニューメキシコ州を中心に動いている事実と解釈するのなら、先ほどの "青いバラ" と言い残して死んでしまった女性というのは、第8章でトビガエルを口にしたあの少女のことを指すのではないかと思うのです。そうすると、唐突に描かれたような印象があった第8章のトリニティ実験と "森の男" と真っ黒いおっちゃん達ですが、それらはゴードンが追いかけていた "青いバラ事件" の発端を描いていたと解釈できないでしょうか?そして、その事件解明を手伝ってほしいと誘われたダイアンが放った一言が「Let's Rock!」。要は "赤い部屋" やロッジともつながっていると。

 これらはアルバートが語った内容とそれに対するダイアンのリアクションから推察しただけですので、この考察がどこまで的を得ているのかはわかりません。ただ、書籍「ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー」に "ロズウェル事件" についての記事も掲載されているので、そんなにズレた話ではないような気もするのです。

 さらに悪クーパーからの「ラスベガス」についてのショートメール、これはゴードンたちがダギー・ジョーンズまで辿り着いているかの確認メールになります。たぶんですが、悪クーパーとダイアンのやり取りは、ゴードンたちにハッキングされているとわかった上でのやり取りのような気がします。でなければ、ルース・ダヴェンポートの座標をさっさとメールで送っているはずなのです。さらにその座標がツイン・ピークスを指し示したことも明らかになりました。この発覚が、今後ダイアンの動きにどう絡んでくるのか、裏切りダイアンのスパイ活動も「The Return」の重要なカギになりそうです。

 

 ③オードリー・ホーン ~不可思議な空間~

 新シリーズの第12章でようやく姿を現わしたオードリー。ツイン・ピークスのマドンナの登場を待ち焦がれていたピーカーも多かったようですが、その不可思議な状況とあまりの不機嫌さにショックを受けた方も少なくなかったようです。その不機嫌ぶりは、旧シリーズのあの愛らしい姿からは到底想像できないほどで、ある意味、新シリーズで一番の変貌ぶりではないでしょうか。

 これまでの状況から明らかになっているのは、25年前、父であるベンジャミン・ホーンのゴーストウッド計画を阻止しようと銀行の貸金庫室で抗議を謀ったところ、爆発事故に巻き込まれ意識不明の重症を負ったということ。そして、病院の集中治療室で生死の境をさまよっているところに、なぜか悪クーパーが訪れているということのみです。

 今回のシーンでは状況を把握するしかできないのですが、会話の内容を整理する前に、まずはチャーリーという男性と一緒にいる "部屋" の状況があまりにも前時代的であることに着目したいと思います。今まで例えばトルーマン保安官がスカイプを使ったり、森を彷徨うジェリーがiPhoneであったりタブレットを使っていたりするのに、このオードリーがいる部屋には一切そういう類のものがありません。列挙してみると、

 〇電話は黒電話のみ

 〇書斎にパソコンがない

 〇時計が一切ない

 〇腕時計もしていない

 〇カレンダーがない

 〇写真の類がない

 〇ペーパーレスの時代に机の上が紙だらけ

 〇紙が飛ばないように分銅まで置いている

 〇名刺フォルダーが机の上にある

 〇古い本ばかりが積み上がっている

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 こんな様子から察すると、どうもオードリーがいる時間軸は現在の時間軸とズレている可能性が大いにあります。しかも、登場して最初のセリフが「もう電話が鳴るのを待つなんて耐えられない」です。携帯で電話するもメールするもLINEするも自由なこの時代に、黒電話が鳴るのをただひたすら待っているという状況は、あまりにも不可思議です。さらにチャーリーはオードリーの夫という設定ですが、不思議なのは二人とも結婚指輪をしていないということです。「私は君の夫だ。良き夫を努めてきた」と語るチャーリーが結婚指輪をしていないと言うのが、どうにも理解できません。

 会話の内容を整理してみるとオードリーとチャーリー以外に4人の人物が出てきます。

  〇ビリー・・・・・2日前から行方不明、オードリーの愛人?

  〇ティナ・・・・・ビリーと最後に会った女性、チャーリーが電話をする

  〇チャック・・・・・先週、ビリーのトラックを盗んだ

  〇ポール・・・・・怪しげな書類に関わっている人物

 リストにしてみても全く何が何だかわかりません。トラックを盗んだと聞くと、チャック=リチャードのような気もするのですが、チャックは "チャールズ" の愛称であり、混乱のもとなのですがチャーリーも "チャールズ" の愛称なのです。これが "リック" であったり "リッチー" であったり、もしくは "ディック" であったりするならリチャードだとすぐわかるのですが、今回の情報だけではどうにもこうにも理解ができません。オードリーが探しているビリーは、第7章のラスト、ダブルRダイナーに現れた「なあ?ビリーを見なかったか?」と突然現れた男が探していたビリーと同一人物のような気もします。その際に起きたダブルRダイナーのお客さん総入れ替えというパラレルが、今回のオードリーがいる部屋とも関連づいていそうですが、となると、この携帯もパソコンもない世界がどこかのパラレルとしてつながっているとしても、それがどこなのかはやはり完全な情報不足になります。

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 さらに、オードリーはしきりにロードハウスに行きたいと騒いでいます。そうするとこの部屋はツイン・ピークスのどこかにありそうな感じもしますが、不思議なのは、もしオードリーが結婚してリチャードを産みツイン・ピークスのどこかで暮らしているとするなら、先に登場しているベンジャミン・ホーンやシルビアが、オードリーの話題を出してもいいのではないかと思うのです。それが一切なく、今回の第12章でトルーマン保安官からリチャードの事件を聞いた後、ベン・ホーンがポロリと呟いたのは「リチャードは父親を知らない」という事実だけです。父親の情報は明らかになっても、母親だと思われるオードリーの話題が一切出ない。しかも、オードリーがツイン・ピークスで暮らしていて、かつリチャードの母親なら、トルーマン保安官はベン・ホーンではなくオードリーを訪ねたに違いないのです。

 いずれにしても、この不思議な状況が残り3分の1となった新シリーズで少しは解明するのか。いろいろな謎が収束に向かっている中で新たに提示された謎は、この「The Return」の中でも特殊な状況下に置かれていると言えそうです。

 

2.その他

 デイヴィッド・リンチはダジャレが好きです。今週のフランス美人とのシーンでも必殺の "カブ" 爆弾が放たれました。それを聞いたアルバートが直立不動で完全に固まってしまったところを見ると、その威力は相当なものです。あまりに効きすぎてしまったので、逆にゴードンがアルバートを心配してしまったほどです。

 第9章で悪クーパーにマーフィー刑務所長を殺せと命じられたハッチ&シャンタル。ハッチはただ撃ち殺すのではなく、どうもいたぶって楽しみたかったようですが、お腹が空いたシャンタルは、早くバーガーが食べたくて、さっさと済ませろと煽ります。それに従うハッチ、見事な腕前でマーフィー所長を仕留めます。

 ジャコビー先生のネット放送がまた始まりました。これはあれですね、どうも毎日毎日19:00に放送をしているようです。ということは、物語内の時間経過を図るのにDr.アンプが登場すると1日が終わると計算できそうです。となると、この夜が明けると、運命の10月1日になりそうです。

 第12章のラスト、BANG BANG BARでのシーン。第9章ではやたらと脇を掻いている女の子が出てきましたが、今回はさらに物語と関係なさそうなシーンです。というのも、BANG BANG BARのシーンはライブもそうですが、どうも各回ゲストコーナーとして扱っている節があり、本編とはあまり関係ない、リンチのお遊び的な面が反映されているように思われるのです。ただ、トリックという男が車の事故に遭って死にそうになったという挿話は、たぶん、車で逃げているリチャードと接触したことを暗にほのめかしているようにも受け取れます。さらに彼の左手は先週のゴードンのように小刻みに震えていました。

ツイン・ピークス The Return 考察 第11章 ワームホール出現!座標解読!オレ、あいつ気に入った!

ずいぶんと楽しい回でした、姐さん。

これは完全にコメディーですわ。

笑いが止まらない。

先週は随分とシリアスに考察しましたが、

今週は、もういいや。

だって、楽しいんだもん。

 

ツイン・ピークス郊外

 キャッチボールしている男兄弟三人。

 取り損ねたボールを追いかけていくと、

 草むらを這ってくるミリアム発見。

 左のおでこがパックリ割れとります。

 ヤバイですな。

 人里離れたトレーラーから、

 いったいどんだけの距離を這ってきたのさ。

 完全にゾンビ状態です。

 トレーラーは爆発したんかな?

 

◆ニュー・ファットトラウト・トレーラーパーク

 誰かから連絡を受けるベッキー

 完全にローラ・ママ状態。

 ア゛ア゛ア゛~~~!!!

 車を貸してと言われ、シェリー到着。 

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 ベッキー、銃を持って暴走開始です。

 それを止めようとボンネットにシェリー。

 ジャッキー・チェン顔負けです。

 しかもアクション映画並みに、

 母親を車から振り落とすベッキー

 転がったよ!

 あんたの母親、転がったよ!

 こんな親子喧嘩、見たことない。

 ベッキー、完全に目がイッてます。

 

 騒ぎを聞きつけカール登場。

 先週は素晴らしいアコースティックを披露。

 インディアンの歌っていうのが乙でした。

 しかもシェリー、普通に立ち上がります。

 膝をすりむいただけみたい。

 ダブルRまで送ってと言われ、

 カール、ステンレスパイプで笛を吹く!

 パイプですか!

 しかも、すぐにワーゲンバスが来た!

 なんだ、このシステム!

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◆ワーゲンバス車内

 ノーマに連絡するシェリー。

 どうしたらいいかわからないと嘆くと、

 ボビーに連絡したら?と言います。

 ボビー?

 しかも、カール、おもむろに無線を出し、

 保安官事務所と連絡を取ります。

 なんだ、このシステム!

 しかも "シェリー・ブリッグス" ときた!

 この二人、結婚してたぁ!

 

◆ティンバーレイク通り1601のアパート

 208号室に押し掛けるベッキー

 出てこい!腰抜け!とドアをバンバン叩き、

 ふざけんな!と銃をぶっ放す。

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 先週、DVについて語ったけど、

 これってどっちがDVなん?

 DV通り越して、殺意しかないじゃん。

 しかも、スティーヴン、

 廊下の向こうで完全に固まってるし。

 そりゃ、ビビるわな。

 

 あまり気づかないかもしれないけど、

 この一連のベッキーのシーン、

 使われている楽曲は「広島の犠牲者に捧げる哀歌」

 第8章のトリニティのやつです。

 ね?

 やっぱ原爆と関係ないでしょ。

 ツイン・ピークス The Return 考察 第8章 

 

ツイン・ピークス保安官事務所

 オペレーターのマギー。

 どうやらベッキー騒ぎの件で、

 次から次へと通報が来ているようです。

 それを見事にさばいております。

 

バックホーン シカモア2240

 FBIチームが「ゾーン」の入口に到着。

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 地名が "シカモア" って、どんだけ?

 案内をするヘイスティングス

 今日は落ち着いているようです。

 フェンスの向こうに黒い男発見。

 今までで一番デブっちい。

 それを見てヘイスティングス、ビビる。

 てことは、

 第9章の号泣会見で言っていた大勢の輩は、

 この真っ黒いおっちゃん達のことかも。

 ゴードンとアルバートに見つかると、

 黒い男、すかさず逃げます。

 

 フェンスをくぐり抜けるゴードン。

 今まであまり気づかなかったけど、

 ゴードン、ズボンの位置が上すぎない?

 もう、完全におじいちゃんじゃん。

 そして、来ましたよ、ワームホール

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 やばい。

 これはもう "ガルガンチュア" だ。

 わからない人は映画「インターステラー」観てね。

 しかし、このワームホール

 傍から見てると何も起きていない。

 ゴードン一人、両腕をフラフラしてるだけ。

 なんかボケちゃった老人のように見える。

 もう、完全におじいちゃんじゃん。

 

 ゴードン視点で見ると、

 ワームホールの出口が見えてきます。

 その先には階段があり、

 そこに三人の真っ黒いおっちゃんが!

 ていうか、一人紙袋持ってる奴がいる!

 なんだお前、伊勢丹帰りか?

 

 ゾーンに行きそうになるゴードン。

 アルバートが引き戻します。

 どうやら二人は事の事実に気づいたようです。

 そして、見つけたのがルースの遺体!

 腕に座標が書いてあります。

 "48551421...."

 それを写真に撮るアルバート

 

 第9章の「ゾーンを探して」のホームページに

 隠しリンクで座標が表示されていました。

 今は既に消されてますけど。

 リンク先に行くとサウスダコタの西部、

 山間の何もない場所を示しています。

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 これね。

 「44°30'44.8"N 103°49'14.6"W」

 https://goo.gl/maps/G6e2nb7mveA2

 気になる人はリンク先に飛んでみて。

 これ、ゾーンの入口のことかなと思いましたが、

 どうも違うみたい。

 結局、なんだったんだろ。

 

 そうこうしているうちに、

 ヘイスティングスに忍び寄る黒いおっちゃん。

 彼の頭を潰します。

 ヘイスティングス、ジ・エンド。

 傷口がニューヨークのサム&トレイシーに似てる。

 潰したんじゃなく、噛み千切ったのかな。

 

◆ダブルRダイナー

 ボビーきた。

 ベッキー、もう終わりにしたいんだけど、

 でも、まだ愛してるんだって。

 どうしたもんじゃろのぉ。

 とりあえずトレーラーから出て、

 スティーヴンと距離を置きなさい、と。

 私たちはあなたを失いたくない。

 今夜は一緒にいましょ。

 チャンチャンってなるところに、

 ん?レッドが来た。

 んでもって、シェリーが乙女に変身。

 すげぇなぁ。

 さっきまでの会話なんだったん?

 

 なにもできないボビーを見ると、

 たぶん、離婚しているからっぽい。

 寂しいのぉ、ボビー。

 で、ウキウキで戻るシェリー。

 ノーマもベッキーも呆れ顔。

 そこに銃声!

 慌てて外に飛び出すボビー。

 なかなかな展開です。

 

 ダブルRダイナーに撃ち込まれた2発の銃弾。

 どうやら少年が間違えて発砲したらしい。

 その親は銃について夫婦喧嘩。

 クラクションがけたたましい。

 しかし、親子揃って迷彩柄の服って、

 どう見ても確信犯っぽい気がするけど...。

 しかも2発撃ってるし。

 マシンガンじゃなくてよかった、みたいな。

 

 すぐさま応援に駆け付けるジェシー保安官補。

 さっきまでビッグ・エドのスタンドにいたら、

 銃声が聞こえたらしい。

 意味がわからない。

 彼、実は不思議な力があるのかな?

 

 クラクションを鳴らし続ける車を

 とりあえず、なだめに行くボビー。

 運転手はおばちゃん。

 怒り狂ってます。

 彼女のおじが夕食に来る。

 久しぶりに彼女はおじに会える。

 なのに遅刻するなんてありえない。

 しかも、彼女は病気だ。

 そうしているうちに

 助手席の彼女が起き上がる。

 緑のゲロ吐きながら。

 ウギャー。

 またゲロだ!

 死体とか裸にモザイクかけるなら、

 ゲロにモザイクかけてくれよ、WOWOW

 しかも、緑ってなんだよ。

 また、ピッコロ大魔王みたいじゃないか!

 こんな状態でおじと夕食できるのかよ!

 救急車呼んだ方がいいんじゃないか!

 もう混沌としすぎて、

 ボビー、開いた口が塞がらないよ。

 

 ◆ツイン・ピークス保安官事務所

 衛星地図で目的地を探すトルーマン保安官。

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 バンクーバー島が見えることから、

 位置的にはワシントン州北部の山間地みたい。

 それを不思議そうに見ているホーク。

 いかにもネットとかパソコンが苦手そうです。

 オレの地図の方がわかりやすいと革の巻物を開きます。

 この地図、

 もとは古いが常に新しく書き換えられるらしい。

 言わば、"生ける地図" だと。

 なんで?

 トルーマン保安官なんて、意味さえ聞かずにスルーです。

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 ホークが続けます。

 かつてブルー・パイン・マウンテンに少佐の基地があった。

 そして、この山は極めて崇高かつ神聖な場所のようです。

 さきほどの衛星地図が指し示した場所が、

 ブルー・パイン・マウンテンだったのかわかりませんが、

 どうやらトルーマン保安官が納得しているようなので、

 行き先は、この "神聖な山" で決まりのようです。

 革に描かれた星々の位置も10月1日を示しているみたい。

 

 地図に記されている "たき火" に注目すると、

 「火ではなく、今でいう "電気" のようなもの」

 と、ホークがとんでもない重要なことを語ります。

 火は文字通りの火ではなくて "電気" だった!

 電気!

 「火よ、我と共に歩め」も

 「電気よ、我と共に歩め」ということになる?

 

 それについてトルーマンは「善か?」と聞きます。

 このタイミングでなぜ "善悪" が気になったんだろう?

 なにか不穏なものを感じたのだろうか。

 ホークは "悪" について説明を始めます。

 肥沃な土地にあるトウモロコシ畑。

 しかし、焼失したのか真っ黒です。

 その意味は「病」「異常」「死」

 それが火と結びつくと "黒い火" になる。

 意味深だなぁ。

 

 そして、エクスペリメント・マーク。

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 これね。

 で、このマークが意味するのは、

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 これ。

 でも、よく見ると触覚が折れ曲がってないんだよね。

 まあ、それを言うと真っ黒でもないんだけどさ。

 ホークはこの意味をよく知っているらしい。

 今後、それが明らかになるといいなぁ。

 

 丸太おばさんから連絡があり、

 探し物を見つけたなら、

 ちゃんと見つけたと連絡しなさいと怒られます。

 すいません、そんな強い言い方じゃないけどね。

 でも、ホークねぇ、

 先週のあの意味不明なポエムを聞かされちゃ、

 報告するにもタイミングがわからないよね。

 でも、電気がなんたらかんたら言ってたけど...。

 んでもって、この先には "火" があるらしい。

 どんな "電気" が待ち構えているんだ?

 

 そこへさらに登場するのがジェシー保安官補。

 お前、もう交通整理を終わらせたのか?

 トルーマン保安官に新しい車を見せたいらしい。

 なんと2000...で話の腰を折られていますが、

 なんだろう、トヨタ 2000GTとでも言いたかったん?

 

バックホーン警察

 ゴードンの右手が震えています。

 旧シリーズでもそういう現象はありましたが、

 いまいち意味がよくわかりません。

 特に旧シリーズの第27章。

 ダブルRダイナーで、

 チェリーパイを食べている婦人の右手が震えます。

 この婦人、登場したのはこれだけです。

 なんだろなぁ。

 

 先ほどのルースの座標を確認する面々。

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 この座標が示す場所は、

 どうやら北にある小さな町...というところで、

 お待ちかねのコーヒーとドーナツが運ばれてくる。

 ああ、もうちょっとだったのに!

 "北の小さな町" が、ツイン・ピークスのことなら、

 アルバートはそう言ってもおかしくないのですが、

 裏切りダイアンが同席していたので、はぐらかしたのか。

 もしくは、ぜんぜん違う場所なのか。

 ちなみに「48.55142-117.965256」で検索すると、

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 この辺りを指し示します。

 座標の後半が擦れているので確かではないですが、

 先ほどのトルーマン保安官が指し示した場所と、

 ほぼ近しいところを現わしているようです。

 ということは「座標」=「聖なる山」になります。

 なんか、核心に近づいてきましたね。

 

 運ばれてきたドーナツ。

 ミスドハニーディップとシュガーレイズド。

 もう、これからはこれで決まりです。

 でもゲロだけは、もう勘弁して欲しいなぁ。

 

 面々は真っ黒いおっちゃんの話に移ります。

 一見、ホームレスのようで、

 ボロ服にヒゲ、ニット帽を被っていたと言います。

 ニット帽?

 さっきヘイスティングスを襲った

 デブっちいおいちゃんは、

 帽子なんて被っていませんでした。

 階段にいたおっちゃん達は、

 揃いも揃ってみんな被ってましたけど。

 だけど、それを見れる人と、

 なんにも見えない人がいるようです。

 

ラッキー7保険

 後半はお待ちかねのクーパー・ダギー!

 ブッシュネルがクーパーを呼び出します。

 待っている間に腕立て伏せって、なに?

 しかも、コーヒーに釣られてクーパー登場!

 もう犬と同等じゃないか!

 パブロフの犬か!

 

 第6章でクーパーが落書きした調査書によると、

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  〇汚職警官が犯罪に絡んでいる

  〇組織犯罪に社内の人間も絡んでいる

  〇ミッチャム兄弟の件は放火じゃなかった

 以上の事がブッシュネルにはわかったらしい。

 少なからず、ここではっきりしたのは、

 第5章で語られたリトルフィールドの放火案件は、

 アンソニーが言うシロではなかった上に、

 ミッチャム兄弟絡みの事件でもあった!

 

 そのミッチャム兄弟から、

 クーパーに会いたいと連絡が入った。

 もちろん、ぶち殺すために。

 でも、ブッシュネルは真逆の判断をします。

 いくら黒い噂があっても、彼らは関係ない。

 しかも、先週、アンソニーが焚き付けた

 支払い拒否の3000万ドルを払うと言います。

 ヤバイ。

 これでアンソニー、面目丸潰れです。

 

◆ミッチャム兄弟の屋敷

 PM2:23に朝食を食べている兄弟。

 マジか、完全に昼過ぎてるけど。

 ブラッドリーは一晩中、

 ダギーを殺す夢を見ていたらしい。

 憎くてたまんねぇと。

 ロドニーにあと3時間待てるか?と聞かれ、

 ギリギリだと答える。

 そうかギリギリ、ガマンできるんだ。

 食欲もないらしい。

 マジで腹が煮えくり返っているようです。

 

◆サイモン・コーヒー店

 5時半の迎えに合わせて、

 クーパーとブッシュネルが下りてくる。

 エントランスにあるコーヒーショップに、

 片腕の男が現れ、こっちに来いと手招きする。

 それに引寄せられるクーパー。

 

オフィスビル前の広場

 迎えに来ている白いリムジン。

 クーパーはでっかい箱を持っています。

 いったいコーヒーショップで何買ってきたん?

 リムジンの運転手は第4章に登場した、

 あのカジノのお抱え運転手。

 赤いドアのことを覚えていたようです。

 

ネバダ砂漠 金鉱の町の遺跡

 華やかなラスベガス・ストリップ。

 道を走っていくと徐々にホテルなどが閑散となり、

 そして、見渡す限りの砂漠地帯となる。

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 今作「The Return」で頻発する、

 このリンチの映像による対比はなんでしょ。

 もう、これが劇場で見れないって!

 どう見てもテレビの範疇超えてるでしょ!

 贅沢だよ!

 

 ゴールドラッシュの夢の跡。

 ゴーストタウンと化した遺跡で、

 クーパーを待ちわびるミッチャム兄弟。

 ブラッドリー、夢の話を続けます。

 夢の中だと先週キャンディに殴られた傷が、

 キレイに跡形もなく消えていると言います。

 確かめると、本当に消えている!

 他にも夢を見たけど思い出せない...。

 てか、夢の跡地で夢の話って!

 

 そうこうしているうちにクーパー到着。

 でっかい箱を持って出てきます。

 その箱を見てブラッドリーが夢を思い出す。

 もし、あの箱の中に例のモノが入っていたら、

 もし万が一にでも入っていたら、

 あれほどぶち殺したいと思っていたが、

 それをしちゃならないと言います。

 箱の中身はなんだ!とロドニー。

 「チェリーパイ」

 んなわけないでしょ。

 箱、あんなにデカいんだよ。

 で、開けてみたら、

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 チェリーパイだよ!

 なんで、こんなに箱がデカいんだよ!

 しかも、美味そうだよ!

 ブラッドリー、夢のお告げに感動です。

 ロドニーは、まだぶち殺したくてウズウズしてます。

 そこへ出てくるのが3000万の小切手。

 ミッチャム兄弟、無邪気に喜びます。

 ありえないくらいに掌を返しました。

 クーパーはまったく理解できていませんが。

 

◆サンティーノ

 接待を受けているクーパー。

 そこに現れる一人の婦人。

 どうやらクーパー帰還の際に、

 ジャックポットの恩恵に与ったおばあちゃんらしい。

 あれは何日前の設定になるのかわからないけど、

 その後、あれよあれよと人生が好転したらしい。

 

 キャンディたちが到着。

 どうして遅れた?と聞かれると、

 道路が渋滞していて、道中が車だらけだったと、

 それにめちゃめちゃ感動している様子。

 あいかわらずの不思議ちゃんぶり。

 

 運ばれてくるチェリーパイ。

 すげえ、うめぇとパイを食うロドニー。

 その真似をしてクーパーも「すげえ、うまい」

 はい、25年ぶりの名セリフ頂きました!

 

久々のドーナツとチェリーパイ。

往年のピーカーには嬉しい内容でしたね。

さっそく、ミスドとケーキ屋に行こうっと。

んでもって、座標の指し示す位置が粗方見えてきました。

もう、あとは聖なる山に行くだけ。

 

気になるのは裏切りダイアンがどこまで裏切るか。

そして、トラックに乗ってどこかに行ったきりの悪クーパー。

先週、軽くで済ましましたが、

ニューヨークでのあの写真、謎だらけです。

悪クーパーがニューヨークに居たのもそうですが、

一緒に写っていたあの坊さんみたいな僧侶は誰?

次回、その辺、なんかはっきりするんかな?

ツイン・ピークス The Return 考察 第10章 愛のバラード。そして、ラスベガスの思惑。

1.ルース・ダヴェンポート殺人事件

 前回の第9章でルース・ダヴェンポート殺人事件の全貌がついに明かされました。サウスダコタ州バックホーンで起きた猟奇殺人事件は、不可思議な空間「ゾーン」によってもたらされた奇怪な事件だということ。そして、そこにはツイン・ピークスの住人でありアメリカ空軍の軍人であるガーランド・ブリッグス少佐が、何かしらの理由で事件に巻き込まれていました。

 ブリッグス少佐は1952年から1969年まで実際に行われていた "ブルーブック計画" に参加していた経歴を持ち、1989年にはホワイト・ロッジ失踪事件を起こしています。さらに同年に起きたツイン・ピークス郊外にある政府施設の火災事故で死亡。それは今から25年前のことになります。

 FBIの捜査動向から、ブリッグス少佐と "青いバラ事件" が密接な関係にあることも判明し始めています。アメリカが極秘裏に進めていたUFO研究と、クーパー捜査官をはじめ数名のFBI捜査官が関与していると思われる "青いバラ事件" が、いったいどこまで関連性のある事象なのかは不明ですが、いずれにしても超常現象の類である可能性が高いです。

 その事件の元凶となったのが地元ハイスクールの校長であるウィリアム・ヘイスティングス。彼は被害者ルース・ダヴェンポートと不倫関係にあり、事件現場であるアローヘッドのアパートから彼の指紋が発見されたことによりバックホーン警察に拘留されました。ヘイスティングスは "異次元空間" について熱心な研究を行っており、その成果を自身のホームページで公開していました。そして、その研究の末、彼は異次元空間への扉を開き、そこでブリッグス少佐と出会ったことを告白したのです。

 奇妙なことは、ヘイスティングス周辺の人々が次々と殺害されていることです。事の真相についてバックホーン警察やFBIはまだ気づいていませんが、ヘイスティングスの妻フィリス、ヘイスティングスの秘書ベティは、いずれも悪クーパー(クーパーのドッペルゲンガー)によって殺害されています。その理由はヘイスティングスがブリッグス少佐から依頼されて手に入れたという "座標" が関係していました。そして、今現在、その "座標" を知っているのは、ヘイスティングス本人と悪クーパーと行動を共にしていたレイ・モンローの二人だけという状況になっています。さらにレイ・モンローは、25年以上前から失踪したままのFBI捜査官フィリップ・ジェフリーズと関係していたのです。

  このような経緯から新シリーズ第1章で提示されたバックホーンでの殺人事件の謎は「ゾーン」と「座標」というキーワードに集約されました。それとツイン・ピークスとの関連性はまだ明らかにされていませんが、時同じくして、ブリッグス少佐の息子であるボビー保安官補も「ジャック・ラビット・パレス」という奇怪なメッセージを受け取っています。そして、そのメッセージから察すると、今から2日後である10月1日に、何かしらの現象が起きるのではないかとされています。

 

2.女性のトラブル

 今回の第10章で期待されていた「ゾーン」や「座標」の行方、もしくは「ジャック・ラビット・パレス」の続きについて、物語はいっさい触れることがありませんでした。その代わりに提示されたのは、それぞれの愛のカタチ、そして、女性が巻き込まれたトラブルについてでした。「ブルー・ベルベット」や「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」で描いてきたリンチの十八番とも言える女性のトラブル。まずはそれについて、今回描かれた3人の女性に焦点を当ててみます。

 

 ①ミリアム・サリヴァン

 第6章で少年をピックアップトラックでひき逃げしたリチャード・ホーン。その現場でリチャードと目を合わせてしまったミリアム。二人はもともと知り合いだったらしく、不審な行動を起こすミリアムに感づいたリチャードが、彼女の家まで押しかけてきます。

 第6章でダブルRダイナーのウェイトレスであるハイジが「ミリアムは貧しい暮らしをしている」と同僚のシェリーに語っていましたが、それを裏付けるように彼女はどこかの農場の一角を借りてトレーラー暮らしをしています。母親の分のコーヒーをダブルRダイナーでテイクアウトしていたので、母親と二人で暮らしているようにも思えますが、一人で暮らしているようにも見えます。いずれにしても簡素なキッチンとベッドしかないトレーラー暮らしは、ミリアムが低所得者であることを物語っています。それでもトレーラーの周りを柵で囲い、花を植え、クリスマスや天使の置物などを飾りつけているところを見ると、貧しい中でも生活に華を添えようとしている姿が垣間見えます。

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 そんな彼女がトルーマン保安官に事故のことを通報したと知ると、リチャードは彼女に襲い掛かります。そして、キッチンのガス栓を開けると近場にあるロウソクに火をつけます。床に倒れているミリアムの頭部には血溜りができていますが、微かに息はしているようです。彼女の息の根をあえて止めず、ガス漏れによる爆発を画策し、リチャードは証拠を隠滅しようとしています。

 たまたま事故を見かけてしまい、悪いことを悪いと声を上げただけで、ひどい暴力に遭い、簡素ながらも平安に満ちた世界を破壊されてしまったミリアム。彼女が第10話で描かれたトラブルの第一被害者でした。

 

 レベッカ・"ベッキー"・バーネット

 次に描かれるのがベッキー。彼女はダブルRダイナーのウェイトレスであるシェリーの娘です。第5章では夫スティーヴンのために、シェリーからお金を借りていました。今回、この若い夫婦がニュー・ファットトラウト・トレーラーパークの住人だったことが判明。ミリアムに続きトレーラー暮らしの姿が描かれています。

 そこでのトラブルは夫からのDVです。会話から読み取れるのは、夫スティーヴンにちゃんと働いて欲しい、もしくは家を片づけて欲しい、そのようなことを言ったら逆ギレをされた感じが見受けられます。今の夫婦の稼ぎではトレーラー暮らしの家賃もまともに払えていないようです。ただ、DVと言っても、実際にスティーヴンは赤いマグカップを窓に投げつけただけで、ベッキーに手を上げようとはしていますが、その素振りだけで終わっています。そして、ベッキーも怯えてはいますが、手を上げようとして実際には何もできないスティーヴンをどこか軽んじているようにも見えます。

 ベッキーに向かって「お前がやったことは全部わかってる」とスティーヴンは言っていますが、それが何についてなのかは明らかになっていません。前回の登場時では、コカインを吸っている夫を止めさせようとしている節がありましたが、もしかしたら、そのコカインを全部捨ててしまったとか、そういう類のことかもしれません。いずれにしても、トレーラー暮らしを余儀なくされ、薬物に手を出し、最低賃金で働くしかない若い夫婦には、あまり明るい未来があるようには見えません。

 

 ③シルビア・ホーン

 ミリアムとベッキーはトレーラー暮らしでしたが、その対比になりそうなのがベンジャミン・ホーンの妻シルビアです。彼女は守衛が常駐している豪邸に住んでいます。そこに現れたのはリチャード・ホーン。彼はシルビアのことを "おばあちゃん" と呼んでいます。一緒にいたジョニーを "パパ" とは呼んでいないことから、ほぼ彼はオードリー・ホーンの息子ではないかと思われます。その真偽はまだ定かではないですが、このシーンによって、ほぼ確定したと言えるのではないでしょうか。そうすると気になるのが、母親オードリーの現在ですが、今のところ明かされているのは、25年前の銀行爆破事件に巻き込まれた際、一命を取り留めたオードリーは病院の集中治療室に運ばれたということ。そして、その集中治療室から、なぜか悪クーパーが出てきた姿が目撃されているということだけです。

 話をシルビアに戻しますが、彼女の悲劇は、お金や豪邸があるにも関わらず、実の孫にババア呼ばわりされながら首を絞められ、さらには金庫にあったお金や宝石類を強盗まがいに全て奪われてしまったことです。リチャードがお金をせびりに来たことは今まで何度もあったようで、暴力沙汰を起こすのも日常茶飯事のようです。シルビアはそんなリチャードを厄介払いしようとしますが、抵抗しても無駄だと観念し金庫の番号を教えてしまいます。

 このことも十分に悲劇なのですが、さらにシルビアが哀しいのは、ベンジャミン・ホーンに電話でリチャードの報告をした時の事です。お金を奪われたから、その分のお金を寄こしなさいとベンに詰め寄ります。弁護士を通してでもお金は払ってもらうとまで言い切ります。もともと旧シリーズでもベンやオードリーとの関係は冷えた状態で、知的障害者のジョニーの面倒に頭を抱えていたシルビア。彼女の結婚生活は見た目の華やかさとは違い、苦悩に満ちているものだと言えます。

 

 デイヴィッド・リンチの特徴は、トラブルに見舞われた女性の哀しさを描きながら、その内面に渦巻いている怒りや復讐心、そして、孤独までも同時に描き出していることです。その最たる主人公がローラ・パーマーであり、それを描きたいがためにリンチは、誰もが知っていたローラ・パーマーの最期の7日間を敢えて映像化しました。抗いきれない力に屈しながらも、どこかで光を求めている。その姿にリンチは刹那を見いだし今まで作品にしてきました。「マルホランド・ドライブ」然り、「インランド・エンパイア」然り、いずれも独特のユーモアを交えながら描いています。そんな中で、物語も折り返し地点を迎えたこの「The Return」で、なぜトラブルの挿話をこのタイミングで入れてきたのか。それは、このトラブルと対比になっている "愛" のコントラストを出すためではないかと思われます。

 

3.それぞれの愛のカタチ

 片やトラブルに見舞われ涙を流している世界があれば、片や愛に満ち溢れ人生を謳歌している世界もある。今まで登場してきた "腕" や "巨人" などの不確かな存在は鳴りを潜め、前回の第9章や今回の第10章は現実世界のドラマが描かれています。それは六道輪廻の世界で言うなら「人間道」の世界。そして、今回の第10章のテーマである "愛" が、六道輪廻のさらに大枠の輪になる十二因縁の一つであることから、不確かな存在を描く必要がないということではないかと思います。この「六道輪廻」や「十二因縁」については、また然るべきエピソードの時に存分に語ることができればと思いますが、どういうことか今すぐ知りたいという方は、ツイン・ピークス解読者で仏教研究家である内藤さんのホームページに行ってみてください。「ツイン・ピークス考察」で検索すればすぐに辿り着くのではないかと思います。

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※六道輪廻と十二因縁の図

(六分割の円の頂上に描かれている "天道" には、衝撃の第8章で見たようなあの景色が描かれています。それについて詳しく語りたいことがたくさんあるのですが、お前はヘイスティングスかと言われそうなので、もう少しガマンします)

 

 少しだけお話をしますと、第8章の考察で、僕は「The Return」はデイル・クーパーの巡礼の物語であると結論付けました。実際に何を巡礼するのかと言うと、この六道輪廻と十二因縁をクーパーが体験していく物語であるという意味です。それはダンテの「神曲」のようであり、チョーサーの「カンタベリー物語」のようでもあるのです。全18話からなる新シリーズのエピソードは、リンチ&フロストによって周到に計算された構造をしており、六道と呼ばれる6つの世界を3エピソードずつ披露しているのではないかと推測していたのです。そして、今回のエピソードで "愛" が披露されたことにより、その推測はかなり確実性のあるものではないかと思い始めています。

 

 ①クーパー&ジェイニーE

 第3章でロッジから現実に戻ってきたクーパーは「無明」の状態だったと言えます。そして、エピソードを重ね、この第10章で「愛」の一つ手前である「受」まで辿り着きました。もちろんリンチやフロストのことですから、単純にこの要素だけをテーマにしているわけではなく、本当にいろんな要素をミックスしながら「The Return」の世界を構築しています。なので一面性だけで結論できない複雑さを伴ってくるのですが、それは逆説的に言うと、それぞれいろいろな解釈ができる自由さも併せ持っています。それがいつもながらのリンチ作品の醍醐味だと言えます。

 十二因縁から離れた解釈をすると、今回のクーパー&ジェイニーEの結びつきは、村上春樹氏の大ベストセラー作品「1Q84」になぞらえることもできます。"レシヴァ" と "パシヴァ"。与える者と受け取る者。そんな対比に置き換えることもできるのです。それはいずれにしても肉体的なつながりだけではなく、精神的にもつながる体験をしていることが重要です。

 さらにオーガズムに達するというのは、人間の精神に解放や安らぎを与えると言われています。クーパーが経験したであろうオーガズムへの到達は、その表情を見れば火を見るよりも明らかです。古くからのツイン・ピークスのファンからすると、あのクーパー捜査官が...と少なからずショックを受ける方もいるかもしれませんが、"レシヴァ" と "パシヴァ" の精神的つながり、十二因縁を巡礼していくクーパーにとっては、通らなくてはならない "人の業" なのです。そして、クーパーは精神的に解放されました。

 ただ、映像的な話をすると、ここ日本では非常に残念な処理がされています。大人の事情というものがグローバルな時代にあっても根強くありますので、致し方ないことなのかもしれませんが...。しかし、一つ言いたいのは、その行為はルネッサンスの時代、ミケランジェロシスティーナ礼拝堂に描き切ったこの世界の成り立ちに対して、法王が腰布を描かせた行為と同じではないかと思います。残念なことではありますが、それも時代なのかもしれません。

 

 ②ジャコビー&ネイディーン

 相も変わらず超資本主義社会をネットで凶弾しているジャコビー先生。それを観ているネイディーン。どうやら第5章で感化された結果、彼女は自身のカーテンショップの店先に "金のシャベル" を飾っています。お店の名前は「静かに動く、静かなカーテン」。ネイディーンの夢は既に成し遂げられています。自身が思い描いていた生活を手に入れ、それなりの満足を得ているはずのネイディーンですが、なぜ、ジャコビー先生にここまで感化されてしまったのでしょうか。 

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 それも "レシヴァ" と "パシヴァ" に当てはめることができます。"与える者" ジャコビー先生は、いかに資本社会が我々の生活を蝕んでいるか、今回では病気を例に、病院から製薬会社、果ては葬儀屋まで話を存分に盛っていますが、それを聞いた "受け取る者" ネイディーンがハッと光明を得ています。まるで初めて世の中の仕組みに気づいたと言わんばかりです。この精神的な気づきも、ある時、人と人とを結びつけます。"愛" から連想する恋愛であったり家族愛であったりとは違いますが、偶像崇拝に近い、これも少しねじれた "愛" のカタチと言えそうです。

 

 ③アルバート&コンスタンス

 前回の第9章で、アルバートの辛辣な意見に臆することなく意見を言い返していたコンスタンス。その彼女の返し技にアルバートはニヤリとしていました。一方、コンスタンスは少佐の死体を目視しただけで年齢を言い当てたアルバート鑑識眼に、妙な関心というか、感動のようなものを味わっていました。

 第10章で、この "鑑識組" の二人がディナーを楽しんでいる姿が描かれています。たぶん、第9章でブリッグス少佐のさらなる鑑識を共同で行った際、お互いの博識や経験に、今までにない"共感"を味わったのではないかと思います。それをゴードンとタミーが陰から覗いて楽しんでいるのですが、いずれにしても "共感" から生まれる "愛" について描いています。そもそもアルバートが結婚しているのかどうかは、今まで描かれたことがないのでわかりませんが、コンスタンスには子供がいることがわかっています。彼女がシングルマザーなのかどうかもはっきりしませんが、いずれにしても、この二人が今後どんな関係に発展していくかは物語が進まないとわかりません。

 

 先ほどのベッキー&スティーヴン、ベン&シルビアも、もともとはこのような "共感" からロマンスが育まれ、ある時はクーパー&ジェイニーEのような至高な経験を共にしていたはずです。ほんの1時間のドラマの中で、ここまで "愛" の成り立ちについて描き切れるのも、デイヴィッド・リンチがもともとシュールレアリスムに傾倒していた芸術家であるからこそと言えます。

 

4.ミッチャム兄弟

 第5章で初登場したミッチャム兄弟とキャンディ含む3人のキャバレーガール。第10章では、これでもかとばかりにミッチャム兄弟にダギー・ジョーンズ(クーパー / ミスター・ジャックポット)をけしかけます。その経緯と周辺人物を整理する前に、まずは謎の三人娘について少し考察したいと思います。

 

 ①三美神が意味するもの

 キャンディ、マンディ、サンディと呼ばれているらしい三人娘。キャンディはセリフがあるのでわかりますが、他の二人はどっちがマンディで、どっちがサンディなのか、いまいちわかりません。いつもピンクのキャバレーガールな恰好をし、立ち位置は決まって真ん中がキャンディです。第5章で当時カジノの支配人であったバーンズが、ジャックポットを理由にロドニーから制裁を受けている時も、三人はどこ吹く風で場をやり過ごしていました。

 三人の立ち位置を見てみると、両サイドの二人は普通に正面を向いているのに対して、キャンディはいつも背中をこちらに見せようとしています。絵画が好きな人は、女性三人がこの立ち位置で並ぶ構図にピンと来る方もいると思いますが、ギリシャ神話などに登場する三人の女神、"三美神" の構図にこれがぴったり合うのです。中でも、ボッティチェリの作品「春(プリマヴェーラ)」が一番有名であり、この構図が意味するものがわかりやすいのではないかと思います。

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 誰でも美術の教科書などで一度は目にしたことがあると思いますが、この絵の左側で手を取り合い踊っているのが三美神です。それぞれに意味があり、三人の女神の左端が「愛欲」、中央の女神が「純潔」、右端の女神が「愛」を現わしています。「愛欲」と「純潔」は相反するものであり、それを取りまとめているのが「愛」であるという解釈になります。この三美神をキャンディたちに照らし合わせると、左端の娘が「愛欲」、キャンディが「純潔」、右端の娘は「愛」ということになります。

 少々こじつけ感があるかもしれませんが、僕の妄想をそのまま続けるなら、キャンディは「純潔」の象徴ということになります。同じ意味で「貞節」「純心」「無垢」とかなりの拡大解釈をすることもできます。それを踏まえた上で、第10章のミッチャム兄弟の動きを見ていくことにします。

 

 ②怒り狂うミッチャム兄弟

 物語の順を追って見ていくと、まず導入はハエを追うキャンディから始まります。普通に見ていると、いつものリンチ特有のシュールなシーンのような気もしますが、ここにもメタファーが隠されています。ハエ は、"邪魔なもの" という意味と、「蝿の王」に象徴されるように "悪魔的なもの" という意味も含まれています。そのハエをキャンディは真っ赤なスカーフで叩き落とそうとしているのです。

 赤くて四角いモノで思い浮かぶのは "悪クーパー" です。リンチは直接的ではなく、かなり遠まわしにヒントを散りばめています。それを読み解く(妄想ともいう)とするなら、キャンディはミッチャム兄弟に降りかかる悪クーパーからの邪悪なものを感知して、それを払いのけようとしている。そんなシチュエーションであるということが読み取れます(脳内補完されます)。しかし、赤いスカーフはキャンディの手を離れ、結果、邪魔なハエを叩き落とすことはできず、ビデオのリモコンでロドニーの左頬を殴打するという結末に至ります。かなりの深読みですので、もっとシンプルにこのシーンを解釈するなら、キャンディの無邪気さを描いたシーンとも言えます。

 純心なキャンディはロドニーを傷つけたことにひどくショックを受けています。ロドニーはそんなキャンディを慰めていますが、どうにも泣きじゃくって取り合ってもらえません。そんな中、テレビから意外なニュースがミッチャム兄弟のもとに飛び込んできます。殺しの標的にしていたスパイクが逮捕され、先日のミスター・ジャックポットであるクーパーがどこの誰であるかを知ることになるのです。そこでキャンディは「あんなことをしたら、もう愛してくれないでしょ」と泣き続けます。単純に殴ってしまったからそう言ったとも思えますし、深読みするなら、邪悪なものを払いのけることができなかったから、そう言ったようにも見えます。

 その後、シルバー・マスタング・カジノにラッキー7保険のアンソニーが訪ねてきます。ミッチャム兄弟たちが「信用ならない保険屋」とボヤいているところを見ると、以前、何かしらの取引がご破算になったようです。彼らはキャンディを迎えに行かせますが、彼女はアンソニーと何かの話をしていてなかなか帰ってこない。しびれを切らしてすぐに戻させ、なんの話をしていたか問い質すと「逆転層」についての話をしていたと言います。逆転層の時は遠くの音が聞こえたり、電波伝播に異常が出たり、蜃気楼が見えたりするようです。どうにも理解できないミッチャム兄弟。アンソニーは先日のホテル火災の保険金支払いをダギー・ジョーンズが差し止めていると言います。敵はダギー・ジョーンズだと念を押すのです。穿った深読みをすると、アンソニーに逆転層の話をしているキャンディは、あなたの嘘を見抜いているという解釈ができそうです。

 ジャックポット損害に保険金の差し止め。屋敷に戻るミッチャム兄弟ですが、ダギー・ジョーンズへの怒りが一向に収まらない。明日にでもさっそくアポイントを取り、即刻ぶち殺すと息巻いています。その間、マンディとサンディはお酒を作ったりしているのですが、キャンディだけは背中を向けて会話を聞かないようにしているみたいに見えます。

 カジノでの会話でキャンディのことを「わかってる。彼女は行くところがないんだ」とミッチャム兄弟は言っていました。その背景にどんな物語や設定があるかはまだわかりませんが、キャンディを不思議ちゃんと取るか、彼らを守ろうとする女神と取るか、いろいろと妄想が膨らみます。

 

 ③ダンカン・トッドの思惑

 スパイク逮捕の知らせはダンカン・トッドのもとにも届きます。そこでダンカンはラッキー7保険のアンソニーをオフィスに呼び出します。そして、明らかになるのがミッチャム兄弟とダンカンは敵対関係にあるということでした。ホテル火災の保険金を却下するとダンカンが判断していることから、どうもその情報をアンソニーがリークしたように見受けられます。そこから見えてくる力関係は、アンソニーからするとミッチャム兄弟を裏切ってでもダンカンに従わずにはいられない何かがありそうです。それについては、もう少し物語が進まないと全貌が見えてこないようです。

 

5.ゴードン・コールの幻覚

 ホテルでの一幕。なにやら紙に落書きをしているゴードンですが、鹿のような生き物を外界から伸びてきた手が捕まえようとしています。

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 一見すると鹿のようであって、鹿ではないようにも見えます。宮崎駿監督の「もののけ姫」に出てくるシシ神のモデルと噂されているシフゾウにも見えます。シシ神は "死と再生" の象徴、転じて "自然" の象徴とされていますが、シフゾウや鹿にはそういう意味はありません。どちらも食用にされる肉であるだけです。これの意味するところが物語にどう絡んでくるのかはわかりませんが、たぶん、何か神聖なものを奪い取ろうとするものが外の世界から忍び寄っている。もしくは新たな生贄が外の世界から狙われている。そんな意味合いでしょうか。

 さらに不思議なのは、この絵を描き終えた後、ゴードンがローラ・パーマーの幻を見ていることです。これはちょっと現段階では、まったく意味がわかりません。ニューヨークのガラス・ボックスと共に悪クーパーの姿が映っていたのも、ものすごく意味深です。

 次回、第11章でこの辺の謎が少しは明らかになるのか、そして、ゾーンや座標、ジャック・ラビット・パレスはどうなるのか。残り半分をきった新シリーズ、一時も見逃せません。

ツイン・ピークス The Return 考察 第9章 PART.2 号泣校長、しらっと異次元の扉をうっかり開ける!

なにげにテンコ盛りな第9章。

土曜日の放送までにはアップしたいと思ってましたが、

さらっと流すには、あまりにも重要なことだらけで、

結局、間に合わせることができませんでした。

んん、残念。

とりあえず、さくっと行きましょう。

後半戦のスタートです。

 

バックホーン警察の廊下

 デイヴ刑事。

 ブリッグス少佐の死体のいきさつを説明する。

  〇ビルとルースは不倫関係にあった

  〇少佐の胴体はルースの頭部と発見された

  〇バックホーン警察はビルを拘留

  〇自宅でビルの妻フィリスが殺害される

  〇警察は夫婦の弁護士ジョージを拘留

  〇その翌日、ビルの秘書が車の爆発で死亡

 そこまで聞いたアルバート

 たまらなく「シーズン2はどうなる?」と、

 うんざり気味で話を切ります。

 

 はい、さらっと伏線が回収されました。

 第2章でベンツをガレージにしまっていたジャック。

 3人前のスパゲティを食べていた、あの男です。

 彼は、その後 "顎もみもみ殺し" の餌食になります。

 同じ章のダーリャ殺害時に、悪クーパーは

 「ジャックに仕掛けをさせた」と言っていました。

 ということは、

 あのベンツは "ビルの秘書の車" だったようです。

 そして、レイが "座標" を手に入れた後、

 ジャックが仕掛けた車の爆発で死亡した。

 

 ビルの妻フィリスと不倫関係にあった弁護士ジョージ。

 フィリスは悪クーパーに殺害されましたが、

 その時に「これはジョージの銃だ」と言われて撃たれます。

 警察はまんまとそこに乗っかりジョージを拘留。

 ちょいと気になるのが、

 今現在、バックホーン警察の檻には、

 ビルとジョージがいるってことなのかな?と。

 だとすると、少なからず顔を合わせてそうなので、

 なんか、お互いに気まずそうな感じがします...。

 

バックホーン警察の死体安置所

 ブリッグス少佐の死体と対面するFBIの面々。

  〇ルースはビルの研究に協力していた

  〇それを基にビルはブログを開設していた

  〇そのテーマは「異次元空間」について

  〇約1週間前、ビルはそのブログを閉鎖した

  〇その最後の書き込みは

   「今日、我々はついに、

    いわゆる "ゾーン" に入り、

    そこで少佐に会った」

  〇少佐の死体を目視するアルバート

  〇見ただけで40代の体だと判断する

 その場を離れるゴードンとアルバート

 現状整理を始めます。

  〇ブリッグス少佐なら現在72歳

  〇ツイン・ピークス郊外の政府施設の火災

  〇そこで少佐が亡くなったのが25年前

  〇死体とほぼ同じ年齢

 ゴードンが自らの考えをまとめます。

  〇25年前、クーパーは少佐と知り合った

  〇そして、懇意にしていた

  〇今、この界隈にクーパーがいる

  〇しかも刑務所から逃げ出した状態

 場に戻るゴードンとアルバート

 鑑識員のコンスタンスが、

 少佐の胃から発見された結婚指輪を見せる。

 ダギーの結婚指輪だと伝えるが、

 ゴードンもアルバートも軽くスルーする。

 

 いやいや、そこスルーしちゃうのか。

 まあ、確かにダギーって誰?ですわな。

 

 さて、異次元空間についてブログを書いていたビル。

 ゾーンのことを "いわゆる" と表現しています。

 試しに「ゾーン」で検索をかけてみると、

 日本のガールズ・ロック・バンドと出ます。

 ああ、邪魔だなぁ。

 君との、夏の終わりや、将来の夢なんて、

 今はどうでもいいんじゃい!

 検索の二次候補が、

 スポーツ選手などが極限の集中状態に入ること。

 なんか、っぽいよね。

 リンチ風に言えば "いわゆる" 瞑想?

 そっちの世界ってことですか?

 大きな魚、つかまえちゃいますか?

 "ZONE" の意味は、地域・地区、帯状に巻くなど。

 そこに行くことがビルの目的だったみたい。

 そして、そこで少佐に会ったらしい。

 んん...。

 "いわゆる" という意味がピンとこない。

 まあ、この件については、後でまた語ります。

 

◆どこかの森

 ジェリー・ホーン。右足を見つめている。

 「私は、お前の足じゃない!」と右足。

 まったくもって意味がわかりません。

 どこかに行けっ!と、

 自分の右足を投げ捨てようとしますが、

 案の定、すっ転びます。

 これは大麻でイッちゃってるというより、

 ご老人の認知症に近いような気がします。

 ジェリー、完全に森の徘徊老人です。

 

 ちなみに、また "右" です。

 なにがって?

 フスコ兄弟の壊れたテールランプが "右" 。

 スパイクのケガした手が "右" 。

 ジェリーの動かない足が "右" 。

 偶然かなぁ、どうなのかなぁ。

 

ツイン・ピークス保安官事務所

 会議室でお昼ご飯を食べているチャド。

 戻ってくるトルーマン、ホーク、ボビー。

 出て行けとあしらわれてチャドが退室。

 トルーマンは金属の棒の開け方を探る。

 しかし、皆目見当がつかない。

 ボビーが開け方を親父に教わったと言います。

 外じゃないと開けられないらしい。

 一同は外に出ます。

 

 だったら、

 チャド追い出さなくてもよかったんじゃ...。

 

 外に出ると、さっそく金属の棒を開ける。

 開け方は、棒を地面に叩きつけて衝撃を与え、

 反響音からカチッと何かがはまり込んだら、

 すぐさま、また地面に叩きつけて衝撃を与える。

 

 ボビー、

 これってホンマ、外じゃなきゃダメだったん?

 さっきの会議室の床じゃ、柔らかすぎたん?

 だったら、廊下の床とかさぁ...。

 外って言うから、

 てっきり光とか関係あるのかと思ったやん。

 なんなん、その原始的な開け方。

 

 金属の棒の中から2枚のメモが出てきました。

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 1枚目には、

 「ジャック・ラビット・パレスから

  253ヤード東へ進め

  ジャック・ラビット・パレスを去る前に

  その地の土をポケットに入れろ」

 日付が二つ「10月1日」と「10月2日」

 時間は2:53

 どうやら10月1日は、今から2日後らしい。

 

 トルーマンもホークも、

 ジャック・ラビット・パレスがどこなのか知らない。

 そこで、またもやボビーです。

 どうやらジャック・ラビット・パレスは、

 ボビーが小さい頃に住んでいた空軍基地の近く、

 少佐といろいろ空想をした場所のことらしい。

 

 トルーマン達は2日後にそこに向かうことにする。

 そこでもう1枚のメモに気づく。

 記号の羅列の中に「COOPER / COOPER」とある。

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 2人のクーパーと、ホークがミスリードする。

 

 さて1枚目のメモは、2日後にみんなで行くらしいので、

 その時に何かわかるでしょう、と。

 気になるのは、

 ツイン・ピークスを現わす二つの山、

 その上に太陽と月が描かれていることと、

 月の下にエクスペリメント・マークがあること。

 まあ、それも2日後に何かわかるでしょう、たぶん。

 

 どちらかと言うと、2枚目のメモが気になります。

 ホークは「クーパーが2人」と、

 なんか、よくわからんミスリードをしていますが、

 それがマジなら、

 第2章で "腕" が叫んでいたセリフ、

 「253。何度も何度も繰り返す。ボブ、ボブ、ボブ」は、

 ボブが3人いることを現わしているのでしょうか?

 ありえないですよね。

 いや、リンチなら、ありえるのか?

 まあ、とにかく、往年のピーカーなら、

 このメモがどこから出てきたものかは周知の事実。

 そうです、旧シリーズの第9話、

 少佐がクーパーへのメッセージだと言って、

 銀河系の外から傍受した電波を見せたものです。

 

 事の経緯をおさらいしていきましょう。

 旧シリーズの第9話まで遡ります。時は1989年。

 ◆ダブルRダイナー

  カウンターでコーヒーブレイクしている少佐。

  そこへ丸太おばさんがやってきます。

  少佐と丸太おばさん、

  実はここで初のご対面。

  マーガレットは丸太から話があると言います。

  「メッセージを伝えなさい」

  そう言われて、心当たりがある少佐。

 ◆グレート・ノーザン・ホテル 315号室

  部屋のベッドでダイアンに報告をしているクーパー。

   〇ウィンダム・アールが精神病院から失踪

   〇オードリー・ホーンも行方不明

   〇だが心配をよそにクーパーは告白をする

   〇オードリーの笑顔が頭から離れない

  その時、ドアがノックされる。

  クーパーのもとを訪れる少佐。

   〇クーパーにメッセージがある

   〇少佐の任務は機密で話すことができない

   〇だが、話せる範囲で説明をする

   〇任務の一つにモニター業務がある

   〇対象は銀河系の外

   〇いろんな電波を拾い解読する

   〇大半は無意味な記号の羅列

   〇金曜日の未明、クーパーが撃たれた時間

   〇無意味な記号の羅列の中に言葉が現れる

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   〇「フクロウは見かけと違う」

   〇なぜ、それを自分に?とクーパー

   〇記号の羅列の中に現れる

    「COOPER / COOPER / COOPER」

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 さらに旧シリーズの第8話に遡ります。

 何者かに突然撃たれたクーパーが床に倒れます。

 助けを待っている間、意識が遠のいていくと、

 そこに "巨人" が現れます。

 ちなみに "巨人" の初登場が、この時になります。

 巨人は3つのヒントをクーパーに与えます。

  ①笑う袋の中に男がいる

  ②フクロウは見かけと違う

  ③薬品なしで男は指さす

 そう言ってクーパーの左小指から指輪を抜きます。

 

 少佐が持ってきた記号の中の言葉は、

 巨人がクーパーに提示したヒントの一つでした。

 そして、新シリーズの第9章に戻りますが、

 2枚目のメモに綴られている "COOPER" の文字は、

 この時の書類を切り抜いたものになります。

 よく見ると三度目の "COOPER" が半分で切れています。

 当然、ホークもトルーマンも、

 もともと "COOPER" が三回出ていることは知りません。

 なので、クーパーが二人?と思うのも仕方がないですが、

 "COO" まで見えているんだから、

 せめて、もうちょい踏み込んでもいいんじゃないかなと。

 期待しすぎかなぁ。

 

 さらに妄想ですが。

 前半、プライベートジェット機内で、

 悪クーパー脱獄の知らせを聞いたゴードンが、

 「クーパーがパァーッと逃げた」と言いました。

 吹き替えの妙ではありますが、

 英語だと「Cooper flew the coop!」と言っています。

 ここでの "coop" は「檻」という意味です。

 妄想ですよ。

 2枚目のメモが "COO" で途切れているのは、

 "coop" の "p" が抜けているということで、

 2人のクーパーが檻を抜けたと言いたいんじゃないかと。

 悪クーパーはヤンクトン刑務所の檻から、

 善クーパーは時間差がありますがロッジの檻から。

 はい、妄想でした。

 ただ今回の第9章、こんなサブリミナルというか、

 前後で妙に関係がありそうな小ネタが多いです。

 そういうところを探して妄想するのも楽しみの一つです。

 

 さらに、今までは映画「FIRE WALK WITH ME」が、

 「The Return」のベースになってるというか、

 設定や小ネタがちょいちょい物語に絡んできてました。

 ですが、ここに来て旧シリーズまで絡んできました。

 ただ、デイヴィッド・リンチが監督した回に限ります。

 以下、リンチが監督した回になります。

  ★ツイン・ピークス インターナショナル版

  ★ツイン・ピークス 序章

  ★ツイン・ピークス 第2話

  ★ツイン・ピークス 第8話

  ★ツイン・ピークス 第9話

  ★ツイン・ピークス 第14話

  ★ツイン・ピークス 第29話

 こうやってリストにしてみると、

 リンチの代表作みたいな言われ方をしている

 この「ツイン・ピークス」ですが、

 テレビシリーズとしては "5話" しか監督してません。

 全体の6分の1です。

 そのほかの話は、マーク・フロスト、

 そして、影武者ロバート・エンゲルスの創作になります。

 フロストもエンゲルスも絡んでいない、

 ホント、どうでもいい回も中にはあります。

 今回の少佐絡みなどで旧シリーズに興味を持たれたら、

 全編見るのも、もちろんありですが、

 かいつまんで上記の5話、

 そして、序章と映画と未公開集をチェックすれば、

 ほぼ「The Return」を120%楽しめます。

 

バックホーン警察

 外でタバコを吸っているダイアン。

 ゴードンとタミーが出てきます。

 アルバートが解剖をしている間、

 とりあえず一緒にいることにしたようです。

 それにしても、なんという滞空時間でしょう。

 この気まずそうな場、というか、

 何を話すでもなく時が過ぎていく感覚、

 この三人の関係を端的に、

 そして映像的に表現しています。

 もう、リンチならでは!って感じがヤバイ。

 ゴードンとダイアンのやり取りを、

 横目で白々と見ているタミーがたまらないです。

 

サウスダコタ警察・取調室

 泣いているビル・ヘイスティングス

 一緒の檻にいるジョージから、

 フィリスが殺されたことでも聞いたのでしょうか?

 タミーが取り調べを始めます。

  〇FBIの登場に益々恐れるビル

  〇ビルは43歳

  〇ブログ「ゾーンを探して」

  〇2週間前、別世界であるものと遭遇した

  〇それは事実であり現実だった

  〇別世界への興味はかなり前から

  〇そのために山ほどの資料を読んだ

  〇別世界の中で少佐に会った

  〇ルースは隠された記録を見つけるのが得意

  〇しかるべき時刻にしかるべき場所へ行くと

   異次元空間に入れることがわかり

   さらにしかるべき人物に会える

  〇少佐は隠れていた

  〇本人は「冬眠だ」と言っていた

  〇他の連中に見つからないよう

   別の場所へ行くための "座標" が必要

  〇"座標" を軍のデータベースで見つけた

  〇"座標" はルースの手に書いてある

  〇先週の木曜日

  〇少佐に "座標" を届けに行った

  〇奴らがやってきて床に押し付けられた

  〇妻の名前を聞かれ "フィリス" と答えた

  〇6名の顔写真から少佐を指し示すビル

  〇署名をし "9月20日" とサインする

  〇"座標" を少佐に渡すと宙に浮いた

  〇「クーパー、クーパー」

  〇そして、少佐の頭が消えた

  〇その姿は美しかった

  〇その時、ルースが死んだ

  〇ビルは悲しくてルースを抱きしめた

  〇そして、目を覚ますと自分の家にいた

  〇ルースを殺したのは少佐ではない

  〇その場所には大勢がいた

 

 さて、ウィリアム "ビル" ヘイスティングス

 泣きながら、とんでもないことを告白しました。

 これをどうやって整理しましょう...。

 

 【ビルの告白①:別世界へのアクセス】

 もともとビルは別世界への興味があった。

 そのために調べた資料をホームページで公開、

 ブログも書いていたようです。

 

 もう既にあちこちでリンクが貼られていますが、

 ビルのホームページ「ゾーンを探して」は実在します。 このホームページ、ヤバすぎます。

 あっちこっちに「The Return」のサントラのリンク。

 もう、買え買え、うるさいです。

 あ...。

 心の声が...。

 もとい、

 ビルの集めた資料があまりにもヤバすぎます。

 英語が得意じゃないので、

 何が書いてあるのかさっぱりわかりませんが、

 単語だけ見ていっても、

 これはツイン・ピークスの世界の根幹ではないかと。

 いや "世界" そのものを語っているように思えます。

 理解できるものを軽くリストアップしても、

  〇パラレル・ワールド

  〇電気

  〇世界の果て

  〇タイム・トラベル

  〇オーロラの原理

  〇ダークマター

  〇宇宙望遠鏡

  〇ヒュー・エヴェレット3世

  〇コペンハーゲン解釈

  〇太陽の核融合とジェット現象

  〇木星の赤い目

  〇ビッグバンとブラックホール

  〇オールトの雲

  〇バミューダ・トライアングル

  〇ワームホール

  〇パラドックス

 ああ、きりがない!

 とにかく膨大な量です。

 さらにSF作家ロバート・A・ハインラインまで!

 しかも、数か月前までは "座標" までが、

 隠しリンクに書いてあったというんだから、もう激ヤバ。

 まあ、今はもう消されてますけど...。

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 ちなみに、リンクされていた座標は、

 「44°30'44.8"N 103°49'14.6"W」

 Googleマップで調べてみると、サウスダコタ州の外れ、

 山間の何もない地点を指し示します。

 熱心なピーカーが、実際にそこまで行っちゃったみたいで、

 そんなこともあってか、消されたっぽいです。

 そこにはコンビニエンス・ストアが?

 ああ、これだけあれば分厚い本でも書けそうな勢いです。

 ていうか、誰か日本版作って!

 

 いずれにしても、

 ビルは膨大な資料をひも解き、

 "ゾーン" へのアクセス方法を見つけ出したようです。

 これって、ほぼウィンダム・アール並みです。

 そして、このホームページに書かれていることは、

 たぶん "ロッジ" とか "腕" とかの解体新書になりそうです。

 ああ、英語が分かればなぁ...。

 

 【ビルの告白②:ブリッグス少佐】

 しかるべき人物とは、この人だ!と、

 冬眠していた少佐を叩き起こしたビル&ルース。

 ...。

 ...。

 ...。

 ねぇ?

 事の元凶って、もしかして、この二人なんじゃ...。

 なんか、そんな気しません?

 無邪気すぎて、逆に罪です。

 少佐も、起きてしまったならしょうがない、

 安全な場所に行かなければいけないので、

 "座標" の調査をビル&ルースに依頼します。

 んでもって、二人は軍のホームページをハッキング。

 泣きながら、さらっとエライことをFBIにコクってます。

 あまりの自爆ぶりに、タミーも軽くスルーです...。

 見つけた "座標" を少佐に渡したら、

 どうやらワサワサと大勢の輩が現れて、

 結局、少佐は見つかり、首ちょんぱ。

 25年前の政府施設の火災との絡みはおあずけです。

 

 なんか、スゴいですよね。

 しかも宙に浮いて頭が消えた少佐を

 "美しかった" と言っています。

 これは第8章の劇場で浮いていた "巨人" みたいな感じ?

 もしくはそれ以上?

 頭がないんでしょ?

 もうぜんぜんイメージが湧きません。

 

 少佐が言い残した「クーパー、クーパー」というセリフ。

 これも意味深です。

 たぶん、悪クーパーが絡んでいそうな感じがしますが、

 でも、悪クーパーは "座標" を探しています。

 だとすると、その場にいることはできないはず。

 少佐は善クーパーに助けでも求めたのでしょうか?

 というか、もし "ゾーン" がロッジ系の場所なら、

 どこかしらで少佐とクーパーって出会わなかったのかな?

 お互いに25年も経っているんだし...。

 

 【ビルの告白③:先週の木曜日の行動】

 頼まれた "座標" を少佐に渡したのは先週の木曜日。

 時系列が曖昧なので微妙ですが、

 たぶん、第1章でデイヴ刑事の取調べを受けた際、

 学校のミーティングがあったので、

 帰りが遅くなったと答えた木曜日と、

 同じ日ではないかと思われます。

 

 第1章を振り返ってみましょう。

 ミーティングの内容について質問をするデイブ刑事。

 ビルは答えます。

  〇会議の内容はカリキュラムについて

  〇会議は隔月で行っている

  〇会議は9時半ごろに終わった

  〇遅くなったのでみんなでピザを頼んだ

  〇家に帰ったのは10時15分から20分

  〇21:30から22:20までの間を疑うデイヴ

  〇ビルは忘れていたと補足する

  〇あの夜、秘書のベティを家まで送った

  〇ベティの車は故障していた

 徐々にボロが出始めますが、

 どうも語っていることは事実のような感じがします。

 それが実際に木曜日の夜のことではないにしてもです。

 

 ビルの秘書は、実際に車が故障していて、

 実は、その修理を請け負ったのが "ジャック" だった。

 はい、妄想です。

 でも、シーズン2のように車が爆発した。

 なんか、うまく話がつながりそうですが、

 実際にこれが真実なのかは全然わかりません。

 

 ここまでの情報をもとに、

 仮に木曜日のビルの行動を追ってみるとします。

  ~21:30 ピザを食べながらミーティングが終わる

  21:30~ ルースと落ち合い "ゾーン" に向かう

  22:00頃 少佐に "座標" を渡す

  22:05頃 奴らが現れ床に押し付けられる

  22:10頃 少佐が宙に浮き頭が消える

  22:15頃 ルースが殺される

  22:20頃 気づいたら家に居た

 適当に5分刻みにしてみましたが、

 なんとなく、それっぽい感じに見えます。

 ここまでの経験をしていながら、

 第1章では何が起きてるのかわからない風のビル、

 なかなかの役者です。

 

 ちなみに第2章では、面会に来たフィリスに、

 「夢でルースの部屋にいた」と告白します。

 お互いにゲス扱いして終わりましたが、

 今思うと、

 妻の名前を教えてしまったことに危険を感じ、

 それを伝えようとしていたのかもしれません。

 

 【ビルの告白④:9月20日】

 タミーが差し出した6人の男の写真。

 この中で少佐は誰?と問われ、ビルは4番を指します。

 もちろんブリッグス少佐に間違いありません。

 証拠のため、丸で囲み、サインと日付を入れます。

 そこにビルが書いた日付は、

 一見すると「9月20日」に見えます。

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 先ほど、

 トルーマン保安官は10月1日は二日後と言っていました。

 ツイン・ピークスバックホーンが同時進行なら、

 このシーンの日付は「9月29日」のはずです。

 なぜ、ビルはそれを「20日」と書いたのか?

 しかし、よくよく見てみると、

 20のゼロの先を奇妙に伸ばしていて、

 ムリくり「9」と解釈できないわけでもありません。

 なんか意味深です。

 

 締めは「バハマに行きたかったぁ~!」です。

 開いた口が塞がらない状態。

 トロピカルカクテルでも、

 スキューバーダイビングでも、

 なんでも構いませんが、

 でも、なんか急にバハマが出てきた感じがします。

 

 かなりの深読みではありますが、

 これも「9.11」関連のネタではないかと思っています。

 まことしやかに噂されているのが、

 オサマ・ビン・ラディンバハマで生きているという話。

 ネットで検索すると、わんさか出てきますが、

 これも第5章と同じように、サブリミナルで、

 9.11の陰謀論を視聴者に摺り込むための隠し味ではないかと。

 "世界" は、今見えているものだけが全てではないと。

 

 それにしてもビル・ヘイスティングスの号泣会見。

 考察どころが満載で、もう、頭がヘロヘロです。

 

◆グレート・ノーザン・ホテル

 相変わらず「謎の音」を探るベンとビバリー

 プラトニックなようです。

 

◆BANG BANG BAR

 バンドの演奏 "HUMAN" by Hudson Mohawke

 ボックス席にエラとクロエ。

 エラは脇の下がやけに痒いらしい。

  〇ゼブラが戻った

  〇ハイで仕事に行ったらクビになった

  〇通りの向かいの店でバーガーを売ってる

  〇あのペンギン見た?

 特に意味があるとは思えないこのシーン。

 本当にそうなのかな?

 とりあえず、

 エラは言葉通りにハンバーガーは売ってなさそう。

 どう見ても、ハイで売春したらクビになって、

 他のところに鞍替えしたっていう意味にしか聞こえない。

 

 なんとなくですけど、

 第7章のロードハウスで、

 ルノーが電話で話していた女の子、

 それがエラとクロエなんじゃないかと勘繰っています。

 ペンギンはルノーのこと?みたいな。

 それが物語に関わってくるのかはわからないけど...。

 

 ちなみに保安官事務所でルーシーが食べていたのは、

 ハンバーガー。

 とことんサブリミナルな回です。

 

 二曲目のバンドの演奏

 "A VIOLET YET FLAMMABLE WORLD" by Au Revoir Simone

ツイン・ピークス The Return 考察 第9章 PART.1 青いバラ再び!青ざめるMr.トッド!フスコ三兄弟は青臭いニヤケ顔が止まらないっ!

二週間ぶりの「The Return」です。

とにかく第8章が強烈すぎて、

三週間前の第7章なんて、

遥か彼方に吹っ飛んでしまいました。

 

なので、第7章を簡単におさらいです。

 

〇失われたローラの日記が発見される

〇25年前に救出されたクーパーは偽物の疑い

〇保安官たちは25年前のクーパーの行動を調べる

ここまでがツイン・ピークス保安官事務所の動き

 

国防総省ノックス大尉がブリッグス少佐の遺体と対面

ブリッグス少佐の死体は国防総省のもとへ

 

サウスダコタ刑務所で悪クーパーとダイアンが対面

〇マーフィー所長を脅して刑務所からバックれる悪クーパー

〇レイが悪クーパーを撃ち殺す(第8章)

FBIもクーパーに疑いをかけ始めるが確信がない

悪クーパーは周りから裏切られまくってる

 

〇クーパーのもとにフスコ兄弟がやってくる

〇スパイクの暗殺をクーパーチョップで撃退

ラスベガスはスパイク事件で大狂乱

 

そうでした。

クーパーチョップの回でした。

もう忘れてたよ、ジェイニーEが首絞めてたの。

てなわけで、その続きの第9章です。

1956年から現代に戻ってきましたよ、姐さん。

 

◆農家への道

 歩いてくる悪クーパー。

 どうやら "赤いバンダナ" が目印みたいです。

 

◆プライベートジェット機

 国防総省のデイヴィス大佐から連絡がくる。

 話を聞くゴードンはデイヴィスに対して、

 随分と失礼な物言いだと言っています。

 たぶんですが、

 "バックホーン" が

 "ファック・ゴードン" に聞こえたのでしょう。

 

◆農家

 悪クーパーを "相棒" と呼ぶシャンタルの夫:ハッチ。

 農家から出てくるシャンタル。

 血まみれ悪クーパーにビックリ。

 キズを見せなと言われ、左脇腹を見せる悪クーパー。

 ピッピー。

 はい、ストップです。

 ちょいと第8章に戻りましょう。

 「まぬけ」と、レイが放った2発の銃弾。

 それを受けた悪クーパーが倒れます。

 さて、銃弾はどこに当たっているでしょうか。

 正解は "みぞおち" と "右脇腹" です。

 その "みぞおち" の傷から例のボブ玉が出てきました。

 "左脇腹" にはいっさい傷がついていません。

 第9章に戻ります。

 シャンタルに見せている傷は確かに "左脇腹" です。

 さっそく劇場後の次元崩壊でしょうか?

 でも、この傷、

 往年のピーカーなら見覚えがありませんか?

 そうです、旧シリーズの第7話ラスト、

 クーパーが撃たれた位置、その鏡写しの箇所です。

 もっと言えば、その時にクーパーが撃たれたのも、

 "みぞおち" と "右脇腹" という奇妙な一致を見せています。

 さらに新シリーズの第7章に戻りましょう。

 FBIチームは悪クーパーの指紋を調べています。

 鑑識眼が鋭いアルバートは左右逆になっていると気づきます。

 このことからドッペルゲンガーは、

 鏡写しの存在だということがわかりました。

 ということは、悪クーパーがシャンタルに見せた傷は、

 25年前のダニと一緒に撃ち抜かれた傷ということになります。

 (よく理解できない人は旧シリーズの第8話を参照です)

 ただ、疑問が残るんですよね。

 なぜに今さら、

 そんな傷をここで見せなきゃいけないのでしょうか。

 しかも、肝心な "みぞおち" の傷はキレイに消えています。

 真っ黒おっちゃん達のなせる業なのか、

 もしくは単なる編集ミスなのか。

 まあ、深読みした方が楽しいので、

 傷を見せな、と言われたから古傷を見せた、

 そんな解釈で行こうと思います。 

 

◆プライベートジェット機

 行き先変更をダイアンに告げるゴードン。

 クーパーが知っていたある男、

 彼に関わる古い事件について確認に行くという。

 ダイアンはすぐに理解します。

 「青いバラ事件」

 そこへサウスダコタ刑務所長から連絡が来ます。

 クーパー脱獄をゴードンに知らせます。

 

 第3章の次元の果てでのこと。

 Naidoが感電して無限空間に放り出された後、

 ブリッグス少佐の顔が現れ、一言つぶやきます。

 「青いバラ

 どうやらブリッグス少佐と「青いバラ」は、

 かなり密接な関係にあるようです。

 

 さらに映画「FIRE WALK WITH ME」で、

 しかめ面のリルが胸に差していた青いバラ

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 リルの解説をするデズモンド捜査官ですが、

 "青いバラ" については説明できないと言っています。

 そして、"青いバラ" を探しに出かけたデズモンドは、

 トレモンド婦人が住んでいたトレーラーの下に、

 "翡翠の指輪" を発見し、そのまま忽然と姿を消します。

 

 映画「FIRE WALK WITH ME」公開当時、

 "青いバラ" は "存在しないもの" と解釈されていました。

 21世紀の今ではバイオテクノロジーの進化で、

 "青いバラ" を作り出すことに成功しています。

 しかも、開発したのは日本の研究者です。

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 遺伝子操作によって、

 "存在しないもの" が "存在する" ようになったのです。

 それとブリッグス少佐がどう絡むのか。

 伏線回収が今から待ち遠しいですなぁ。

 

◆農家

 デコったガラケーでメールを打つ悪クーパー。

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 「ディナーの席での会話は弾む」

 女子高生並に文字を打つのが早いです。

 んでもって、誰かに電話をかける。

 相手は Mr.トッド!

 ダギー暗殺の確認をとり、

 さっさと済ませろと電話を切る悪クーパー。

 ハッチにはマーフィー所長を殺せと指示、

 そのあとはラスベガスでダブルヘッダーだそうです。

 ダギーとMr.トッドってことでしょうか。

 それだけ言い残して悪クーパーはどこかに行きます。

 

 さて、ダギー暗殺の黒幕は悪クーパーでした。

 トッドさん、もうジ・エンドです。

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 そういえば、トッドさんのラップトップに表示された赤いスクエア。

 今回のオープニングの

 "赤いバンダナ" となにか共通の意味があるのだろうか?

 まあ、いっか。

 とりあえず、第6章でスパイクに暗殺指示を出したのは、

 悪クーパーで確定しました。

 標的は "クーパー" と ”ロレイン" です。

 では、第2章でMr.トッドが採用したのは誰でしょう。

 "ロレイン" でしょうか?

 

 同じ第2章で、悪クーパーはロッジには戻らないと言いました。

 あらかじめロッジに戻されることを知っていた悪クーパーは、

 転送を阻止しようと企み、ダギー暗殺を指示します。

 それはロッジ帰還の日までに済まさなければ意味がなく、

 もたついたジーン&ジェイクは見事に失敗。

 その報告を聞いたロレインは、

 期日をとっくに過ぎていることに恐れ戦いていました。

 

 第3章のゲロまみれの中で、

 ロッジ行きのダギーを確認した悪クーパーは、

 転送が完了したことを悟ります。

 この流れで見ると、

 Mr.トッドが採用した相手が

 ロレインである可能性は十分にありますが、

 どうしても腑に落ちない点があります。

 なぜ第6章でロレインは、依頼主のトッドではなく、

 ブエノスアイレスブラックボックスに連絡をしたのか?

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 その相手はフィリップ・ジェフリーズである可能性が高い。

 フィリップが悪クーパーの味方なのか敵なのか、

 今のところ、なかなか判然としていませんが、

 どうも裏切ってるオーラがプンプン臭います。

 レイの裏切りも然り。

 であれば、暗殺失敗に恐れ慄き、

 ロレインがフィリップに助けを求めたという見方もできます。

 だとすると、

 悪クーパーの計画は、

 フィリップによって、かなり阻止されてると言えそうです。

 そこで出てきたのが、フィリップの息がかかっていない、

 真打 "ハッチ&シャンタル" ということでしょうか。

 

◆ラスベガス市警

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 フスコ三兄弟!

 ブッシュネル社長にダギーについて聞いています。

  〇ダギー・ジョーンズの勤務年数は12年

  〇以前、交通事故を経験している

  〇事故後にラッキー7保険で勤め始めた

  〇時々、いわゆる後遺症らしきものが出るらしい

  〇詳細はジェイニーEが知っている

 去り際にブッシュネルはフスコ兄弟に訴える。

 車が爆発し、殺されかけたクーパーは、

 何かの事件に巻き込まれたのではないか?と。

 しかし、なんだ、それ?と言わんばかりのフスコ兄弟。

 そんな態度に怒りを覚えるブッシュネル、

 あやうくボクサーパンチを繰り出そうとしますが、

 こらえて、その場を去っていく。

 

 フスコ次男が調べたところによると、

 ダギー・ジョーンズの経歴は、

 1997年以前がキレイに白紙らしい。

 免許証、パスポート、社会保障番号、学歴、納税記録。

 極めつけは出生証明書まで存在しないらしい。

 フスコ兄弟、"証人保護" の可能性があるとして、

 司法省の誰かに調査を頼むことにするみたいです。

 しかし、1997年に何があったのか?

 今のところ、ヒントがなさすぎて、さっぱりです。

 

 今まで経験のない事に戸惑うフスコ三兄弟。

 なにか考えているようで、あんまり考えてなさそう。

  〇フスコ長男、テールランプの修理を思い出す

  〇239ドルもかけて修理は終わった

  〇ペンチを持ったオーストラリア人を思い出して笑う

 どうやらオーストラリア人を逮捕する際、

 彼がペンチを持って暴れ、テールランプが壊れたっぽい。

 フスコ三男は、それがどうにも可笑しかった様子。

 

 クーパーを調べるため、

 飲んでいたコーヒーカップを押収するフスコ長男。

 ちょうど現れた巡査部長に指紋とDNAの鑑定を依頼する。

 同時に拳銃に固着していた掌紋がスパイクであることが判明。

 モーテルに隠れていると知り逮捕に向かおうとするが、

 その前にクーパーの指紋とDNAを調べるらしい。

 第7章で、テレビのインタビューに答えていた女の子が、

 スパイクのことを「変なニオイがした」と言っていたので、

 てっきりロッジ系の人物だと思いましたが、

 どうも普通の犯罪者っぽいです。

 あの時、"腕" も現場に現れたので、

 そのニオイのことを指していたのでしょうか。

 しかし、掌紋が一致した!と騒いでいましたが、

 あの背丈で、あの風貌ですよ。

 現場での聞き込みで、ある程度は絞れそうですが...。

 

 待合室で待たされるクーパー&ジェイニーE。

 クーパーは掲げられているアメリカ国旗を見つめる。

 そこを赤いハイヒールの女性が横切っていく。

 ヒールに目を奪われるクーパー。

 その先にコンセントがある。

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 ひたすらにコンセントを見つめるクーパー。

 何かを思い出し始めているのでしょうか。

 

 指紋とDNAの鑑定が終わったのか、

 とりあえずフスコ兄弟が駐車場に出てくる。

 車のテールランプを確認する。

 右のテールランプ、右にキズが残ってる、

 とにかく "右" を気にしている。

 これって何かのサブリミナルなのかなぁ...。

 

◆モーテル

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 スパイクが電話をしています。

  〇JT.の携帯につながらない

  〇暗殺は惜しくも失敗

  〇ケガをしたので休暇を取る

 鏡の自分を見つめながらバーボンをあおる。

 さて、まずは "J.T." ですね。

 たぶん、"D.T." の間違いではないかと。

 ダンカン・トッド。

 スパイクの中では "デー" が "ジェー" になってる?

 発音、ぜんぜん違うけど...。

 会話もちょいとおかしいです。

 "暗殺は惜しくも失敗" って、ちょっと待てい!

 あんた、首絞められてたよね?

 ガンガンに "首" 絞められてたよね?

 それを "惜しい" とは、また見栄を張ったもんです。

 

 モーテルに到着するフスコ兄弟。

 身支度を済ませ部屋を後にするスパイク。

 あっさりと捕まります。

 観念するの、はやっ!

 しかも、フスコ三男のスマイリー!

 お前だけ銃口の先が下だぞ。

 構えてるだけで撃つ気ないだろ!

 どんだけ仕事する気がないんだ!

 

ツイン・ピークス保安官事務所

 アンディ&ルーシー夫妻が、

 椅子の色でもめています。

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 ここでも仕事への意欲がゼロです。

 マジ、どうでもいい。

 ていうか、アンディ、

 そんなことよりトラックの持ち主はどうした?

 普通、もう一回、確認ぐらい行くだろっ。

 

◆ホーン家

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 ドアが開きジョニーが渡り廊下を走る。

 手前の階段を使わず、

 どうやってか下に降りてきて、

 (たぶん、二階から飛び降りたっぽい)

 スノコルミーの滝の写真に向かって全力疾走!

 がっつり頭をぶつけて倒れました。

 

◆ブリッグス家

 ボビー、トルーマン保安官、ホークが訪ねてくる。

  ボビーの母:ベティ

 25年前、クーパーが訪ねてきた時の様子を語りだす。

  〇少佐が亡くなる前日にクーパーが訪ねてきた

  〇少佐はクーパーが帰るとすぐにベティを呼んだ

  〇ボビー、ホーク、トルーマン

  〇いつの日か、この3人が訪ねてくる

  〇訪ねてきたら渡してほしいものがある

  〇赤い椅子

  〇仕掛けを動かすと背もたれの縁が開く

  〇中から鉄の細い棒が出てくる

  〇少佐がいかにボビーを信じていたかを語る

  〇トルーマンに鉄の棒を渡す

 ブリッグス少佐は全てを見通していたようです。

 最愛の息子を信じて。

 

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 先ほどのアンディ&ルーシーに続き、

 またもや赤い椅子が出てきました。

 何かの対比になっているのか、

 それともループというか、

 繰り返しのサブリミナルを現わしているのか。

 もしくは、先ほどのルーシーのように、

 この赤い椅子も、

 ベティからガーランドへの贈り物、

 そんな椅子だったのでしょうか。

 

バックホーン警察の待合室

 FBIチームがバックホーンに到着。

 さっそくノックス大尉、デイヴ刑事と合流。

 ダイアンはやさぐれて喫煙禁止、お構いなし。

 呆れて退場する一同。

 人がいなくなるとスマホを確認する。

 「ディナーの席での会話は弾む」

 そのメールに思いを馳せるダイアン。

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 キラキラとデコったガラケーで、

 ショートメールを打っていた悪クーパー。

 送り先はダイアンでした。

 ただ、差出人が "Unknown" なので、

 ダイアンが悪クーパーと理解しているのか、

 微妙な所ではあります。

 

 この「ディナーの席 ...うんぬん」というメール、

 ダイアンが悪クーパーをどう思っているかで、

 印象がぜんぜん違う、

 ダブルミーニングになっている感じがします。

 

 メールの意味:A

 仮に悪クーパーからだと理解してなかった場合、

 「ディナーの席での会話は弾む」というのは、

 第7章での面会時に話をしていた

 最後に会った "あの夜" のことを指していそうです。

 なぜダイアンの番号を知っているのかは、

 第2章で普通にFBIのホームページを閲覧していたので、

 悪クーパーが手に入れることは容易いと思われます。

 この場合、"あの夜" の出来事が重要で、

 会話などこれっぽっちも弾んでいなかった事への嫌味、

 もしくは "あの夜" の話題が今も続いているという警告、

 そういう意味に読み取れます。

 ダイアンは文面を理解して、

 初めて悪クーパーからのメールだと気づくという流れです。

 

 メールの意味:B

 もう一つの可能性はダイアンと悪クーパーが共犯だった場合。

 今回の第9章の前半、

 国防総省からゴードンに電話がかかってきた時、

 ノックス大尉の名前が挙がると、

 眠っていたダイアンがふと目を覚ましました。

 そのあと、バックホーンに行くと決まり、

 ダイアンは誰かに連絡をしようとしますが、

 スマホが通信不能だとわかり苛立ちを隠せません。

 この時の連絡先が悪クーパーだとしたなら、

 第7章での面会時も全て演技、

 別の部屋でモニターされていることを前提に、

 ゴードン達に知られてもいい情報を、

 悪クーパーともっともらしく話していたことになります。

 その場合、

 「ディナーの席での会話は弾む」というのは、

 聖書に登場する "最後の晩餐" 、

 その会話が弾んでいるという意味に読み取れます。

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 レオナルド・ダ・ヴィンチで有名な最後の晩餐、

 ここで描かれているのは "裏切り者は誰だ?" という話です。

 ここまでの悪クーパーの経緯を見ると、

 ダーリャから始まり、

 フィリップ・ジェフリーズ、

 マーフィー刑務所長にレイ、

 スパイクやMr.トッドもその気はありませんが、

 悪クーパーからしたら裏切り者かもしれません。

 とにかく誰が裏切っているのか、

 こいつら、全員なんじゃないか?

 そんな猜疑心から、

 悪クーパーはダイアンにメールを送った。

 深読みのしすぎかもしれませんが、

 いずれにしてもダイアンの行動が不審です。

 

 さらに話はズレますが、

 第5章で悪クーパー電話早打ちの際に

 一言「ウシが月を飛び越えた」と呟きました。

 ツイン・ピークス解読者の内藤さんが言っていたように、

 これはマザーグース

 「ヘイ ディドル ディドル」の一節ではないかと僕も思います。

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 内藤さんはさらにおなじみの曼荼羅話で、

 ダブルミーニングだろうと深読みしておりますが、

 僕的には上の絵を見てわかるように、

 牛があそこまで飛び跳ねるほどの狂騒的な世界、

 それを言いたかったんじゃないかと。

 はい、話が脱線しました。

 

そんなこんなで、ここまでで第9章の半分まできました。

このあともブリッグス少佐関連の話題が目白押しです。

その考察にさらに時間がかかりそうなので、

とりあえず前半のここまで!

続きはPART.2でたっぷり語ります!

ああ!早くスキューバーダイビングがしたいなぁ!

ツイン・ピークス The Return 考察 前半 (第1章~第8章) まとめ解説 謎だらけのデイル・クーパー物語

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本国アメリカでの放送時と同じく、

ここ日本でも第8章のあとにインターバルをとっています。

たまたま宮里藍だったのか、

それともリンチ&フロストからの指定なのか、

そこんところはアナウンスがないのでわかりませんが、

たぶん後者ではないかと思われます。

 

第8章で「劇場」が出てきたということは、

生粋のリンチ・ファンの方でしたらお解りのように、

物語が折り返し地点、転換点を迎えたことを示しています。

もしくは舞台となっている次元がこれから崩壊する、

その起爆装置の役目をしているとも言えます。

イレイザーヘッド然り、マルホランド・ドライブ然り、

"劇場"後の物語転換・次元崩壊といったら凄まじいです。

登場人物の名前は平気で変わるし、

メタファーすぎて訳がわからない舞台が普通に出てきます。

リンチ一人の作品なら、

とんでもないカオスがこれから待ち受けていそうですが、

そこはマーク・フロスト!

たぶん、リンチの暴走を少しは調整してくれるはずです。

一緒になって「ヒヤッホー!」とフロストまで暴走したら、

考察してる自分がアホらしくなって頭カチ割ると思います。

というか、そんなもの本人たちでさえ、もう訳がわからなくて、

そのまま世界がブッ壊れて木っ端微塵になるでしょう。

 

フロストの安全運転のおかげかどうかはわかりませんが、

第1章から第8章までのストーリーは比較的わかりやすく、

各章もキレイに30分ごと、もしくは前半後半という形で、

それぞれのテーマが描かれていました。

 

んなわけで、第1章から順を追って、

そのテーマを大まかに確認してみようかと思います。

 

【第1章】

前半 サム&トレイシー殺人事件

後半 ルース・ダヴェンポート殺人事件

 

【第2章】

前半 ドッペルゲンガー

後半 クーパーの脱出

 

【第3章】

前半 クーパーの帰還

後半 ダギー・ジョーンズ

 

【第4章】

前半 ツイン・ピークス保安官事務所の人たち

後半 FBI捜査官たち

 

【第5章】

前半 ツイン・ピークスの人たち

後半 ダギー・ジョーンズ周辺の人たち

 

【第6章】

前半 親子

後半 伏線回収

 

【第7章】

前半 ローラ・パーマー殺人事件

後半 ダイアンとクーパー

 

【第8章】

前半 エクスペリメントとボブ

後半 森の男

 

ざっとこんな感じで物語が流れてきています。

ね、リンチ作品にしては、結構まともでしょ?

インランド・エンパイア」なんか、

始まってものの10分で訳がわからなくなりますからね。

ウサギだもん。

それに比べたら8時間経っても、

それなりにちゃんと時系列順に進んでいるんだから、

マーク・フロストの運転技術は並大抵ではないです。

 

では、次に登場人物をおさらいしていこうと思います。

 

◆デイル・クーパーFBI特別捜査官

 旧作でブラック・ロッジに閉じ込められて終わる。

 The Returnで現実に戻ってくるが、

 ダギー・ジョーンズと入れ替わってしまう。

 身体を上手く動かすことができず、

 言葉も理解できない、赤子のような無垢な存在。

 

◆クーパーのドッペルゲンガー

 旧作でウィンダム・アールの亡骸を利用して創られた。

 クーパーの代わりに現実に戻ってきてからは、

 すぐにツイン・ピークスを離れ、

 数年後にはリオデジャネイロに大豪邸を建てる。

 「ダギー・ジョーンズ」「クーパー」を名乗っている。

 とてつもなく強い。悪クーパー。

 

まずはカイル・マクラクランが演じる、この2人が物語の主軸。

結局はクーパーひとりの事を物語っています。

善と悪、陰と陽、天使と悪魔。太陽と月。

よくよく見てると、善クーパーは昼間のシーンが多く、

悪クーパーは夜のシーンが多い、これも対比になってそうです。

ドッペルゲンガーのもとがウィンダム・アールというのもミソです。

FBI最高の頭脳を持ち、その欲望も果てしないアール、

さらにボブというオマケまでついてくるのだから最強です。

ドラゴン・ボールでいう"トリプル・フュージョン"みたいな。

 

そんなクーパーの目的が物語のベクトルになります。

 〇善クーパー ブラック・ロッジからの脱出

 〇悪クーパー "座標" を手に入れる

善クーパーのロッジ脱出は第3章でクライマックスを迎え、

そこからダギー・ジョーンズとしての物語が始まります。

悪クーパーは今のところ"座標"が欲しいことしかわかりません。

 

旧シリーズは "誰がローラ・パーマーを殺したのか?" という、

ミステリアスで強烈な物語のベクトルがありました。

第17話以降はブラック・ロッジの謎にシフトを転換し、

フリーメイソンなどの都市伝説ネタを散りばめて自爆。

 

旧シリーズと新シリーズを比べた時、

この物語のベクトルの強さが格段に違うことに気づきます。

そもそもの質が違うので、一概には比べられませんが、

「ローラ殺しの犯人探し」という劇薬には、

「クーパーの現実回帰」という漢方では敵わないような気がします。

本国アメリカでの視聴率が思ったほど振るわなかったのも、

たぶん、みんなが劇薬を求めた結果だったのではないかと。

 

ただ、ライトユーザーにはそうであったとしても、

僕のようなリンチ中毒者にとっては、

純度100%の新シリーズの方が何百倍も価値があります。

ぶっ飛び具合がレッドのコカイン並みで、

リチャード曰く「スゲエ!フゥッ!」って感じなのです。

 

ではでは、新シリーズがクーパーの物語とわかったところで、

他の登場人物も見ていくことにしましょう。

 

まずは、FBIチーム。

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 ◆ゴードン・コールFBI副部長

   補聴器を両耳につけている。美人が大好き。

 ◆アルバート・ローゼンフィールドFBI捜査官

   口が悪い。シニカル。ゴードンのパシリ。

 ◆タミー・プレストンFBI捜査官

   頭脳明晰。ゴードンのお気に入り。車酔い。

 ◆ダイアン・エヴァンス

   クーパー捜査官の元秘書。やさぐれている。

とりあえず今のところ、

このチームは悪クーパーに疑問を抱いているだけの状態。

今後、物語に深く関わってくるのかは不明。

 

続いてロッジ系の人物(物体)たち。

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 ◆"腕"

   旧シリーズの「別の場所から来た小さな男」が進化。

   シカモアの木のてっぺんに脳がついている。

   常に放電している。

 ◆フィリップ・ジェラード

   片腕の男。旧シリーズでは靴の行商人。

   何かとクーパーを助けようと動いているが成果はない。

   新シリーズでの "マイク" の表記も今のところない。

 ◆巨人 "???????"

   旧シリーズでは "The Giant" と呼ばれていたが、

   新シリーズでは今のところ名前が伏せられている。

   新旧問わず、クーパーに啓示を与える存在。

 ◆ボブ

   旧シリーズでは実体があったが、

   新シリーズではボブ玉の姿でしか現れていない。

   悪の象徴。

 ◆ローラ・パーマー

   映画「FIRE WALK WITH ME」の主人公。

   肉体は滅びても、ロッジ内では年を重ねている。

   またもや意味深にクーパーに耳打ちをする。

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 ◆内道 "Naido"

   両目が塞がれている女性。

   クーパー転送時に電力レバーを下げた際、

   感電して無限空間に放り出されてしまう。

 ◆アメリカン・ガール

   旧シリーズのロネット・ポラスキーと同人物。

   クーパー転送時に「早く」と急かした。

   その時、ドアをノックしていたのは彼女のママ。

ロッジの住人の特徴は逆さ言葉を喋ること。

さらに "腕" や片腕の男がいる赤い部屋はカラーだが、

巨人がいる部屋はいつもモノクロ。

次元が違うのだろうか?

 

ロッジの住人なのか、イマイチわからない人たち。

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 ◆エクスペリメント

   体毛や顔がない宇宙人のような存在。

   ピッコロ大魔王とフリーザを足したような感じ。

   ボブ玉やトビガエルを吐き出し地球に送り込んだ。

 ◆森の男 "Woodsman"

   1956年のニューメキシコに出現。

   左手だけで人の頭部を握り潰す怪力の持ち主。

   どうやら "火" が欲しいらしい。

 ◆全身真っ黒な男たち

   クレジットに表記がないのでわからないが、

   人に危害を加える存在ではなさそう。

   コンビニエンス・ストアに屯している。

 ◆ガーランド・ブリッグス少佐

   ルース・ダヴェンポートの頭部と共に、

   首なしの死体として発見される。

   死体の年齢は25年前から変わっていない。

   ボビーによると25年前、

   どこかの基地で起きた火事で死亡した。

   第3章では次元空間に顔だけ現れ、

   「青いバラ」と言い残す。

エクスペリメントや "森の男" がロッジのビギニングなのか、

それともロッジとはまったく次元が違う存在なのかは、

第8章の時点では明かされていない。

ブリッグス少佐については、

旧シリーズでホワイト・ロッジに行ってるが、

新シリーズでの役回りはまだ不明のままになっている。

 

お次はツイン・ピークスの住人たち。

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 ◆フランク・トルーマン保安官

   旧シリーズでクーパーの相棒だったハリーのお兄さん。

   病気で入院中のハリーに変わって代理所長を務める。

 ◆トミー・"ホーク"・ヒル副所長

   インディアンが祖先。

   旧シリーズではブックハウス・ボーイズの一員。

   丸太おばさんとシンパシーを持つ。   

 ◆アンディ・ブレナン保安官補

   旧シリーズでの無精子症を克服(?)して、

   ルーシーと結婚、ウォリーという息子をもつ。

 ◆ルーシー・モラン

   保安官事務所の事務員。

   旧シリーズでは、

   アンディとリチャードの間で妊娠騒ぎを起こす。

   息子のウォリーはリチャードのように口が達者。

   その様子にフランクは呆れていましたが...。

 ◆ボビー・ブリッグス保安官補

   旧シリーズではローラのボーイ・フレンド。

   事件以降はシェリーとほぼ同棲状態。

   レオを通じてコカインの取引に手を染め、

   一時、ホーン産業の社員にもなっているが、

   今は保安官補として過去の経験を活かしている?

 ◆チャド・ブロックスフォード保安官補

   いちいち癇に障ることを言うウザイ奴。

   リチャード・ホーンと裏で取引をしている。

ツイン・ピークス保安官事務所の面子はハリーを除いて継続。

コーヒーとドーナツは今も健在のようだが、

旧シリーズほどの訴求力はない。

 

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 ◆ベンジャミン・ホーン

   グレート・ノーザン・ホテルの経営者。

   ツイン・ピークスの名士。

   旧シリーズの最終回では暖炉に頭をぶつけて、

   その生死が定かではなかったが、

   どうやら普通に生きている。

 ◆ジェリー・ホーン

   ベンジャミンの弟。

   水耕栽培大麻の吸いすぎで、

   第7章では森のどこにいるのかわからなくなった。

 ◆オードリー・ホーン

   旧シリーズの最終回で、

   銀行爆発に巻き込まれ死亡したかと思われていたが、

   第7章で奇跡的に助かりICUに運ばれていたことが判明。

   本人の姿はまだ登場していない。

 ◆リチャード・ホーン

   その家系は第8章の時点では明らかになっていない。

   クレジットされている "ホーン" の名から、

   ベンジャミン、ジェリー、オードリーの

   誰かしらとつながりがあると思われる。

   サイコな性格で、無軌道な印象。

   レッドとコカインの取引をしている。

   第6章ではピックアップトラックで子供を轢き殺した。

ホーン家が現状、どこまでの資本力を維持しているのかは不明。

旧シリーズではツイン・ピークスのどす黒い裏の顔という、

ある意味、ベンジャミン・ホーンが言葉通りの裏ボスだった。

新シリーズでどこまで物語にのさばるのかはわからないが、

今のところ、まだ同窓会の域を脱していない。

 

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  ◆シェリ

   ダブルRダイナーのウェイトレス。

   旧シリーズではレオ・ジョンソンの妻。

   新シリーズのクレジットでは、

   名前から "ジョンソン" が消えている。

 ◆レベッカ (ベッキー) バーネット

   シェリーの娘。スティーヴンの妻。

   ダブルRダイナーにパンを届けている。

   スティーヴン同様、コカインの常用者。

 ◆スティーヴン・バーネット

   ベッキーの夫。無職。

   コカインの常用者で怠け者。

   そのダメさ加減が、

   どこまで物語のスパイスになるかは未知数。

新シリーズのふれこみとして、

シェリーの娘、ベッキーが第二のローラになると、

まことしやかに言われていましたが、

第8章までではそんな兆しはゼロ。

次回からの後半戦で悲劇が待っているのだろうか。

 

 ◆マーガレット・ランターマン "丸太おばさん"

   ツイン・ピークスの顔、丸太おばさん。

   ダグラスモミの丸太を抱えている。

   超自然的な力を有し、

   新たな不吉な動きを感知する。

 ◆ローレンス・ジャコビー

   旧シリーズではハワイアンな精神科医

   新シリーズでは金のシャベルをネット通販し、

   世界の腐敗をネット放送で糾弾している。

   ツイン・ピークスを象徴する二つの山、

   ブルー・パイン・マウンテンとホワイト・テール。

   ジャコビーはそのホワイト・テールに住んでいる。   

 ◆レッド

   新シリーズの新キャラ。

   コカインの売人で、どうやらワシントン州

   たぶんシアトルからツイン・ピークスにやってきた。

   その動向はまだ不明。

 ◆カール・ロッド

   ニュー・ファットトラウト・トレイラーパークの管理人。

   "6" の電信柱や人の魂などを見ることができる。

   不思議な力の持ち主。

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以上が第8章までのツイン・ピークスの主な面々。

他にも、ローラの母セーラや片目のネイディーンなど、

ほんのワンシーンだけ登場している懐かしの人たちもいますが、

今のところ物語に深く関わっていないので割愛します。

 

続いて、ダギー・ジョーンズ絡みのラスベガスの人たち。

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 ◆ジェイニーE・ジョーンズ

   ダギーの妻。恐妻。

   今のところ新シリーズで一番存在感を出している。

   しかし、入れ替わったクーパーを全く疑わない。

   ジェイニーEだけでなく、ラスベガスの人たちは、

   みんな揃ってクーパーをダギーだと思っている。

 ◆サニージム・ジョーンズ

   ダギーの息子。おとなしい。

   学校に行く時の暗い顔は、

   何かイヤなことでもあるのだろうか?

   クーパーはそれを見て涙を流していた。

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 ◆ブッシュネル・ミューラー

   ラッキー7保険の社長。

   若い頃はボクサーだったみたい。

 ◆アンソニー・シンクレア

   ラッキー7保険の敏腕調査員。

   どうも裏で保険詐欺を働いている様子。

 ◆ジェイド

   第6章でダギーとの密会をフライデーされる。

   娼婦ではなくお抱えの愛人のようである。

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 ◆ブラッドリー・ミッチャム

   ミッチャム兄弟の兄。凄みを効かせる怖い人。

   ジャックポットでボロ勝ちしたクーパーを追う。

 ◆ロドニー・ミッチャム

   ミッチャム兄弟の弟。暴力に走る怖い人。

   兄貴の言うことに従順な感じがする。

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 ◆ダンカン・トッド

   ラスベガスの、とあるオフィスで働いている。

   誰かからの指令を受けてダギー暗殺を謀る。

 ◆アイク・"ザ・スパイク"・スタッドラー

   アイスピックで標的を刺しまくる小人の殺し屋。

   ダンカンから指令を受けてロレインを暗殺。

   その際に武器のアイスピックが折れ曲がってしまい、

   ダギー暗殺を拳銃で挑むが失敗する。

   ひたすら2個のサイコロの出目を記録している。

 ◆ロレイン

   ダギー暗殺をジーン&ジェイクに依頼するが、

   その計画は失敗してしまい、スパイクに殺される。

   暗殺の依頼主はフィリップ・ジェフリーズのようであるが、

   その真相は明かされていない。

 ◆ヤク中の母親

   ダギーが入れ替わった空き家の向かいに住んでいる。

   ひたすら「119」と叫んでいる。

 ◆ダギー・ジョーンズ

   ラッキー7保険の調査員。クーパーと入れ替わる。

   入れ替わる前は左腕が完全に痺れて動かず、

   左薬指には "緑色の指輪" を嵌めていた。

   入れ替わった後は、赤い部屋に飛ばされ、

   何者かに小さな金色の玉に変えられてしまう。

初登場時から暗殺の標的にされているダギー。

その真意は第8章までの間では、まだ明らかにされていない。

クーパーと入れ替わり、赤い部屋に飛ばされた際にも、

片腕の男は「お前は誰かに作られた存在だ」と言っている。

誰かがクーパーが悪クーパーと入れ替わらないために、

ダギー・ジョーンズを拵えたような印象を受けるが、

その真相も、当然、まだ明らかにされてはいない。

 

そして、サウスダコタの面々。

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 ◆ルース・ダヴェンポート

   図書館の職員。

   アローヘッドの自宅のアパートで、

   首だけの死体として発見される。

 ◆ウィリアム・ヘイスティングス

   学校の校長先生。愛称はビル。

   ルースのアパートで指紋が発見され、

   殺人容疑でバックホーン警察に拘留されている。

   夢の中でルースの部屋にいたと訴える。

 ◆フィリス・ヘイスティングス

   ビルの妻。弁護士のジョージと不倫している。

   悪クーパーに射殺される。

 ◆デイヴ・マックレイ刑事

   ルース殺しを担当するバックホーン警察の刑事。

   ビルとは旧知の仲で釣り仲間。

 ◆ドン・ハリソン刑事

   デイヴと共にルース殺し事件を担当する。

 ◆コンスタンス・タルボット

   バックホーン警察の鑑識員。

 ◆ドワイト・マーフィー刑務所長

   ヤンクトン刑務所の所長。

   ストロベリー殺人に絡んでいる。

   犬の脚とジョー・マクラスキーが弱み。

ツイン・ピークスバックホーンが、

今後、どのようなつながりを見せるのかはまったく想像できない。

いずれも架空の町の名前であるということ、

なぜかブリッグス少佐の首なし死体が発見されたこと、

この2点以外は、今のところ共通項が見つからない。

 

そして、悪クーパーつながりの人たち。

これもサウスダコタ近辺だと思われる。

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 ◆レイ・モンロー

   小屋で悪クーパーに呼び出され共に行動する。

   ビル・ヘイスティングスの秘書から、

   "座標" を聞き出すことが仕事。

   裏でフィリップ・ジェフリーズとつながっている。

 ◆ダーリャ

   レイと一緒に小屋で悪クーパーに呼び出された。

   悪クーパーにレイの不審な動きを問い詰められ、

   モーテルで射殺される。

 ◆ジャック

   レイに呼び出され途中から合流。

   メルセデス・ベンツの車に何か仕掛けを施した後、

   アゴもみもみで殺される。

   実際に殺されたのかどうかは不明。

 ◆シャンタル・ハッチェンズ

   モーテルの7号室に潜んでいた悪クーパーの娼婦。

   ハッチという夫がいる。

第1章で悪クーパーが訪れた森の奥の家の存在が、

未だに謎のまま放置され続けている。

たぶんこの辺りは悪クーパーのさらなる目的が判明しないと、

登場した意味が理解できないのかもしれない。

 

最後にニューヨーク。

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 ◆サム・コルヴィ

   ガラスの箱を監視するアルバイトをしている。

   上記の箱に現れたエクスペリメントに殺される。

 ◆トレイシー

   サムのガールフレンド。

   同じようにエクスペリメントに殺される。

以上が大まかな登場人物たち。

ここに登場した人物だけで59名もいます!

なんか、スゴイ規模ですな。

 

舞台もツイン・ピークスに留まらず、

バックホーン、ニューヨークと拡大。

これが最終回に向かって収束するのか?

いや、そこはリンチのこと、

あまり期待はしない方がいいだろう...。

 

今後、解明されるかどうかわからないが、

前半で提起された謎を羅列していく。

 〇430

 〇リチャードとリンダ

 〇二羽の鳥と一石

 〇エクスペリメントはなぜサム達を襲ったのか?

 〇誰がルース・ダヴェンポートを殺したのか?

 〇ビルの車のトランクから発見された肉片は?

 〇ダンカン・トッドは誰から依頼されているのか?

 〇ローラ・パーマーの顔パッカーンの意味は?

 〇ジャックが仕掛けた車の行方

 〇カードに書かれたマークの意味

 〇フィリップ・ジェフリーズの存在

 〇253

 〇"Naido"がいた部屋の存在

 〇ダギー・ジョーンズの存在

 〇ダギーが嵌めていた "緑の指輪"

 〇119と叫ぶヤク中の母親のその後

 〇ジョージタウンの妻殺し事件

 〇クーパーの覚醒はいつ?

 〇アルバートが語ったコロンビアの男の情報

 〇ブリッグス少佐の遺体から出てきた結婚指輪

 〇リトルフィールド案件の放火の真相

 〇ブリッグス少佐の頭部の行方

 〇ルース・ダヴェンポートの胴体の行方

 〇リチャードとチャドの関係

 〇牛が月を跳び越えた

 〇フィリッブとブエノスアイレスの関係

 〇クーパーが記した報告書の意味

 〇レッドの目的

 〇トレイラーパークのカールの不思議な力

 〇スパイクの存在

 〇リチャードのひき逃げ事件の行方

 〇フランク保安官の息子の自殺

 〇オードリーが運ばれたICUから出てきた悪クーパー

 〇年齢が合わないブリッグス少佐の遺体

 〇プライベートジェット機の窓

 〇クーパーの指紋

 〇スピリチュアルな山

 〇スピリチュアルな指

 〇リオデジャネイロの大豪邸

 〇ダイアンとクーパーの最期の夜

 〇ピックアップトラックの持ち主の行方

 〇ストロベリーとジョー・マクラスキー

 〇スパイクの "焦げたオイルの臭い"

 〇拳銃に固着していたスパイクの肉片

 〇グレート・ノーザン・ホテルの異音

 〇ビリーを探す男

 〇パラレルしたダブルRダイナーの客たち

 〇全身真っ黒な男たちの存在

 〇レイとフィリップの関係

 〇コンビニエンス・ストアの存在

 〇エクスペリメントの存在

 〇ボブ玉の存在

 〇宮殿の存在

 〇巨人と婦人の存在

 〇ローラ玉の存在

 〇"森の男" の存在

 〇トビガエルを飲み込んだ少女のその後

...

...

...

ヤバイですな、残り10話でこんなにある謎が解明されるのか?

たぶん、普通に放置されて終わりでしょ。

でも、せめて大きめの謎ぐらいは明らかにして欲しいですよね。

来週から再び始まるシリーズが待ちきれないっ!