that passion once again

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『エクソシスト』と『ツイン・ピークス』の素敵な共犯関係

このまったりな正月を利用しまして、今さらですが、先日WOWOWで放送していた『エクソシスト -劇場公開版-』を初めて鑑賞しました。もちろん『エクソシスト』という作品も悪魔祓いという内容も前から知っていたのですが、なんでしょう、番組予約をしている時になんか気になって、急にちゃんと観たくなったんです。

映画公開は1973年、今から45年も前の作品になります。さすが名作として名高いだけあって、重厚感漂う雰囲気が非常に魅力的な映画でした。映像もリマスターでキレイに処理されているので古臭さを感じないし、イラクやニューヨークの地下鉄など各シーンのカットがどれもカッコいい。究極はやっぱり映画ポスターにもなっているこれ。

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こういう雰囲気、たまらなく好きですわ。なんだろう、昔、映画のチラシを集めてクリアファイルに収納していたのを急に思い出してしまいました。雑誌「ロードショー」の巻末とかにもそういうチラシの通信販売みたいなページがありましたよね。懐かしい。よく集めてたなぁ。

で、去年から完全に頭が『ツイン・ピークス』になってしまっている僕は、この『エクソシスト』に『ツイン・ピークス』との妙な共通点、いや、『エクソシスト』から拝借したであろう点があることに気づいてしまったのです。しかも『ツイン・ピークス』の中でも結構な感じで重要な部分が、この『エクソシスト』で既に描かれていたのです。中には「今さら?」と言われる部分があるかもしれませんが、はい、ホラーとかそういう類の映画は完全に避けて生きてきたので、今さら気づいちゃったわけです。ではでは、マーク・フロストは『エクソシスト』から何を拝借したのか?さっそく語っていきましょうか、姐さん。

 

1.パズズとベルゼブブ

エクソシスト』で悪魔に "憑依" されてしまった少女リーガン・マクニール。彼女に憑依した悪魔はライオンの頭と腕、鷲の脚、背中に4枚の鳥の翼とサソリの尾、更にはヘビの男根を隠し持つという悪魔パズズだと言われています。大神官ハーゴンが産み出した、ザラキを多用し最後はメガンテまで仕掛けてくるあのやっかいな強敵です。...、...、...。すいません、それはバズズですね。その元ネタと言われている悪魔がパズズだそうです。

映画の冒頭で遺跡から発掘されたのがパズズ頭部の彫像であったり、ランカスター・メリン神父がイラクを旅立つ前に対峙したのがパズズの全身像であったりと、物語は、これから出てくる悪魔はこのパズズなんだよと懇切丁寧に教えてくれるのです。

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※男根を隠し持つという割にはどこも隠れていないという...

しかし、Wikipediaを見ても映画ファンのブログを見ても『エクソシスト』に出てくる悪魔はパズズではなくベルゼブブだと言うんですね。どういうこっちゃ?と思うんだけど、要点は三つあって、一つは悪霊のボス的でキング的な存在がベルゼブブであってパズズはそこまで力がないからお役御免だということ、もう一つは原作の元ネタの一つになった1565年に起きた「ランの奇跡」という事件を起こしたのがベルゼブブだからというもの、最後は姿が蝿だとカッコつかないから見かけはパズズにしたというもの。

いずれにしても『エクソシスト』で少女に憑依した悪魔はベルゼブブということになるらしいのですが、これ『ファイナル・ドキュメント』でも同じ悪魔が出てくるのです。しかも「ジュディ」の項目でこれ見よがしに出てくるあたり、マーク・フロストの中では "極めてネガティブな存在" は "悪魔" ということでどうやら決まったみたいなんですね。しかもですよ "シュメール神話" まで出してくるあたり、もう一般の人には到底ついていけない領域にまでぶっ飛んでってしまってるのです。こんなん『The Return』を観ただけで理解しろって言うほうが無理な話で、いくらヘイスティングス校長が膨大な文献を読み漁ったという設定だとしても、一般視聴者は普通に置いてけぼりを喰らうだけなのです。

では、ベルゼブブっていったいどんな悪魔なの?って話なんですが、これがまた難しいところでして。ジュディ(JUDY)が結局はジョウディ(JOUDY)だったように、ベルゼブブも元はバアル・ゼブルという神だったらしいのです。その神がなんの因果かバアル・ゼブブ(蝿の王)と蔑まされるようになり、果ては悪霊たちの王になってしまうという。なんでしょう、『もののけ姫』でいうとタタリ神になってしまった猪神 "オツコトヌシ様" みたいな。毛色が違いますが『ドラクエ9』のラスボス "エルギオス" みたいなとでも言いましょうか。いずれにしても「善」だったものが「悪」になってしまう構造がここに介在していて、その変換点には何かしらのドラマが存在していたように見えるのです。

そういう視点で見ると『エクソシスト』も「善」であるはずのリーガンやカラス神父が「悪」に取り込まれ、ある意味での復讐心を満たしていく姿が垣間見えますし、『ツイン・ピークス』でいうなら「善」であったはずのクーパー捜査官が「悪」のドッペルゲンガーとして群雄割拠していく姿を描いたのが『The Return』であるとも言えるのです。

 

2.悪魔の言葉

女優のクリス・マクニールは一人娘のリーガンを助けるべくデミアン・カラス神父に悪魔祓いの依頼をします。聖職者でありながら精神科医でもあるカラス神父は、悪魔などいないと懐疑的で、変わり果てた少女を現代的な方法で救えないかと模索します。そのうちの一つがただの水道水を聖水だといって降りかけて相手がどう出るかを探るというものでしたが、ものの見事に相手はひっかかり、カラス神父は余計に少女に憑りついているのは悪魔ではないと確信します。しかし、その際に意味不明な言葉を発していたのが気になり、あらかじめ会話を録音していたテープを言語研究所に持っていき分析してもらいます。

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※ローマ字で「TASUKETE!」と書かれているのが当時スゴイ衝撃だったらしい

テープを聞いた分析官はいとも簡単に「これは英語だ」と解読します。意味がわからないでいるカラス神父に「こうすればわかる」と分析官はテープをなんと逆再生します。すると「時間をくれ。彼女を殺せ。おれは誰でもない。神父を恐れろ。メリン」と会話が聞こえてくるのです。

頭が完全に『ツイン・ピークス』になっている僕は驚愕しました。なんやねん!ロッジ言葉って、これが元ネタなんか!と。しかも、悪魔の言葉が逆再生って、これをこのままの意味で汲み取るならロッジの住人たちはみんな悪魔ということになります。いや、そうしてしまうと逆さ言葉を使っていた "消防士" までが悪魔ということになっちまいますんで、そこは "あちらの世界" で留めておいた方がいいかもしれません。いずれにしてもビックリ仰天でした。

エクソシスト』がただのオカルト映画で終わらない魅力がここにあります。カラス神父をはじめ、リーガンを診察する医師たちも、みんながみんな悪魔に対して医学的な方法で解決を試みているのです。レントゲンを取り、脳髄液を採取し、精神療法まで試みる。嘘の聖水を降りかけたり、会話を録音して分析したりする。そして、それらはことごとく覆されてしまう。その最後の頼みの綱が "悪魔祓い" だという構成が見事なのです。

ツイン・ピークス』の旧シリーズを見るとクーパー捜査官の調査方法というのは『エクソシスト』のそれとは真逆の方法でした。石を投げて誰に当たるかで犯人を特定する。夢で見たことをそのまま現実に持ち込む。果ては幻で現れた人物が全てをぶっちゃけてしまうという。FBIの "特別" 捜査官なのに何一つ科学的なことをしていないというこの不条理。この笑っちゃうほど現実離れしていて、行き当たりばったりなおとぼけ具合がクーパー捜査官の最大の魅力だったわけです。そうなんです。これはこれでちゃんと成立していたんです。そして、それは『The Return』でも継承されるだろうと誰もが思っていたはずなのですが、蓋を開けてみたら捜査どころか思考までストップしてしまったというね。

エクソシスト』の原作者であるウィリアム・ピーター・ブラッティも、監督のウィリアム・フリードキンも、この映画をドキュメンタリーのような作品にしたいと思って制作したようなので、そこでもリンチ&フロストの立ち位置とは完全に真逆なわけです。原作者で脚本家でもあるブラッティは1948年に起きた「メリーランド悪魔憑依事件」を基に小説を執筆したそうなので、そのリアリティには並々ならぬものがあるのも頷けます。

 

3.悪魔との戦いの行方

エクソシスト』のクライマックス "悪魔祓い" について、今さら僕がどうのこうの言うあれもないので割愛しますが、妙に『ツイン・ピークス』とリンクするなぁと思うのが、リーガンに憑依した悪魔がカラス神父に乗り移ってしまうというラストです。これ、旧シリーズのラストでクーパー捜査官に憑依したボブと被るような気がするのです。そして、どちらも少女を悪魔から守るために自らを犠牲にしている。いや、そんなキレイなものではないですね。どちらも己の中にある悪魔性(罪悪感)を認めるのです。

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※建物に落書きされている「PIGS」が意味深すぎます

カラス神父はもともと聖職者の仕事を辞めたいとボヤき、お金がないために最愛の母を劣悪な施設に追いやることになってしまい、その結果の母親の死は自分に責任があると思い込んでいました。そんな折に悪魔祓いの依頼が舞い込み、リーガンの身体に現れた "help me" というメッセージに突き動かされ、辞めたかった聖職者の立場で少女を救い出そうとします。そして、最後は自らの罪を悔い改めるかのように悪魔と共に階段を転げ落ちていきます。

自らを犠牲にして少女を救ったという面も確かにありますが、それよりも自らの中にある悪魔性、どこかで少なからず母親を疎ましく思っていた事、施しを求める乞食を見て見ぬ振りした事、果てはどこか厭世的な自分に対する虚無感を、最後の最後に全て自分に対する怒りとして悪魔と対峙した結果ではないかと思うのです。カラス神父は悪魔の中に自分の姿を見たのです。まるで鏡写しのように。

片やクーパー捜査官はと言うと、ウィンダム・アールの妻キャロラインとの不倫から始まり、テレサ・バンクス事件からローラ・パーマー事件を予測していたにもかかわらず未然に防ぐことができなかったこと、オードリーを事件に巻き込んだり、アニーまでが自分のせいで被害者になりかかったことなどが、アールに魂を差し出す決断へとなだれ込んでいきます。カラス神父のそれと比べると、やはりクーパー捜査官のそれは行き当たりばったりな、その場限りな印象を受けますが、相手に対して自分を見るという点では同じだと言えます。その懺悔の巡礼が『The Return』であり、懺悔の最果てがローラ救出、その結果は "HOME" 家までを失う結果になってしまいました。

ドラクエのように悪魔を退治して世界に平和が訪れました的な世界ではなく、悪魔と対峙したことにより自らを一度滅ぼさなければならないという結末が、この二作品のどちらにも描かれています。それは字の如く "死" をもって自らに打ち勝つという意味に読み取れるのですが、その "死" は観念的なものであって、要は過去の自分を一度清算しなければいけないということだと思うのです。ゼロにするとでも言いましょうか。それには何かしらの犠牲が伴うと。

悪魔は向こうにいるのではなく、自分の中に巣食っているのだと。向こうに悪魔が見えた時、それは自分の鏡写しなのだと。それと対峙する勇気があなたにはあるか?そんなメッセージをビシビシと感じてしまったのです。

 

なんか、正月早々、めちゃくちゃ考えさせられてしまいました...。

 

ツイン・ピークス The Return 考察 総論 (第1章~第18章) まとめ解説 これは未来か、それとも過去か?

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WOWOWの放送が終了してから早いもので半月が経とうとしています。海外では既にブルーレイボックスが発売されていますが、ここ日本ではボックス発売もレンタル解禁のアナウンスもなんにもない状態。amazonを見てもDVDボックスしか扱ってないし、WOWOWが終わったらすぐにアナウンスがあるかと思ってたら、なかなかな無風状態が続いています。『The Entire Mystery』みたいにインポートでも日本語字幕があれば言うことなしなんですが、どうもその辺で大人の事情が絡んでいそうな雰囲気です。早く8時間だか6時間だかもあるらしい未公開集を見たいんだけど、簡単に価格が3万円だ5万円だなんて言われると、じゃあ見なくてもいっか、なんかめんどくせぇ国だなって感じにもなりそうです。

12月22日に発売される『ファイナル・ドキュメント』で新たな解釈が判明されるかもしれませんが、それも結局はフロスト論になるので、リンチ的にどう解釈するかは現段階でWOWOW放送分を振り返るしかありません。ていうか、そもそもリンチを解釈することは可能なのか?という大命題がありますが、いいんじゃないですか、自分の好きなように解釈すれば。100人いて100通りの解釈があれば100通りの正解があるんです。それがデヴィッド・リンチの作品ってやつじゃないですか。意味不明で斬り捨てるのも正解だし、ループしてるんだと解釈するのも正解、これは全部 "夢" なんだと腑に落ちるのも正解なんです。まあ、こんな風に言ってしまうと、自分の解釈も正解なんだぜ!って自分で自分を擁護してるみたいでなんとも間抜けな感じもしますが、まあ、好きに語らせてください。正直なところ、毎回毎回他のブログとか見て回るのが結構楽しみだったりしたんですよ。こういう解釈の仕方もあるんだなとか、言われてみるとそのシーンって重要だったねとか、自分の解釈と比べるのが面白かったんです。それが放送が終わった途端に誰も更新しなくなったもんだから、なんか寂しくなっちゃったみたいな。

そんなわけで、姐さん、前々から言ってた総論というやつをちょいと繰り広げてみようかと思います。「総論」なんて言ってしまうとおこがましいというか、大げさな感じもしますが、単純に1章から最終回までをまとめて語ってやろうじゃないかというお話です。では、さっそくいってみましょうか。

 

1.A RANCHO ROSA

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なにげに毎回毎回ワクワクしてたのがオープニング・クレジット。今回は何色だろ?と思って見ていたのですが、1章から18章までを並べてみるとこんなに違います。ちなみに左上から順に始まり右にカウントアップしていきます。この中で明らかに異色なのが、

第14章 真っ黒

第17章 真っ白

第18章 真っ黒

この3つです。特に14章と18章が同じというところに何かヒントが隠されていそうな感じがします。振り返ってみると14章では「青いバラ事件」が語られ、モニカ・ベルッチが "夢見人" を語り、ジャック・ラビット・パレスが(たぶん)ホワイト・ロッジへの入り口だとわかった回でした。他にもダイアンとジェイニーEが姉妹だと判明し、消防士がアンディーに「ツイン・ピークス」という物語の全てを明らかにし、さらにセーラが顔パッカーンしてトラック・ユーを噛み千切った回でもありました(ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹)。こうやって書くとなかなかにてんこ盛りな感じですが、それが18章と共通しているというのはどういうことなのか。

素直に解釈するなら最終話で描かれていたものは、

 ①青いバラ事件の顛末

 ②夢見人の夢

 ③ホワイト・ロッジ

以上の3つが描かれていたのではないかと。どれも重要な項目なので詳細については後述しますが、最終話に全てが描かれていると僕が豪語したのにもここに理由があります。

オープニング・クレジットでもう一つ重要なのが17章の真っ白です。一般的な解釈は「17章と18章が対になってるからオープニングも白と黒なんやないの」というもの。確かにそれも一理あると思います。17章がフロストverのエンディング、18章がリンチverのエンディングみたいな感じ。その方がわかりやすいし、物語として見ても17章で終わるとループしてキレイに納まって、あとはリンチ世界!みたいな。ですが、そこは内藤仙人さまと一緒で、僕も "十牛図論" を唱えたいと思います。

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前にも載せましたが、この十牛図というヤツがスゴイのが「八番」です。その名も「人牛倶忘」。意味は全てを忘れてしまうこと。忘れるということさえも忘れてしまうという、なにもかも忘れた真っ白な状態を "円" だけで表現しているのです。昔の人というのはホントにスゴイなぁと思います。考え方も突き抜けてれば、なにも描かないなんていう表現まで突き抜けてます。んでもって、これが17章に当てはまるのではないかと。

17章でなにがあったかというと、

 ①2時53分に保安官事務所に勢ぞろい

 ②ぼんやりクーパー

 ③消えるローラの死体

この3つの項目に共通するのが "忘却" というキーワードです。③の死体が消えるというのがわかりやすいと思いますが、ただ殺されずに済んだというだけではなく、ローラの存在そのものが消えてしまった、要するに "何もかも忘れられてしまった" 状態を現わしているのではないかと。では①と②はどうなのかというと、後述する解釈にも絡んでくることですが、「①に勢ぞろいしているキャラたちはみんな存在していない」「②はそれを必死に思い出そうとしている」と僕は見ています。いずれにしても詳細については後述します。

こうして見ていくとオープニングから既に意味が散りばめられていそうな感じがします。他も見ていくと2章と7章が赤いのは、どちらにも "進化した腕" が登場しているからとか、4章と11章の青はそのまんま "青いバラ" にまつわるエピソードがあるとか、13章の緑は "翡翠の指輪" が重要になるとか。こじつけと言われてしまうとそうかもしれないけど、そうは言っても相手はリンチ監督です。オープニングであろうと、表現することには何かしらのメッセージが隠されているのではないかと思うのです。

 

2.ダギー・ジョーンズ

『The Return』を振り返ると結局はDVD&ブルーレイのパッケージが全てを現わしていると言えます。

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ボックスのパッケージを開けるとクーパーと悪クーパーの間にダギー・ジョーンズが現れるのです。リンチやフロストがどこまでパッケージ・デザインに絡んでいるかはわかりませんが、この18時間にも及ぶ大作を非常にシンプルにそして端的にデザインした見事なパッケージではないでしょうか。

ここで提起したいのが『ダギー・ジョーンズとはそもそもなんだったのか?』ということです。WOWOW放送を字幕ありで視聴するとセリフが表示されるのはもちろん、キャラクター名や具体的な効果音まで教えてくれるのでとても便利だったのですが、第1章から一貫していたのが悪クーパーのことを "ダギー・ジョーンズ" と表示し続けていたことです。なのでブログ初期は僕も悪クーパーのことを "ダギー・ジョーンズ" と呼んでいたのですが、途中からクーパーも悪クーパーもダギーになってしまうので訳がわからなくなるやんと悪クーパーに切り替えました。それにしても、なぜ悪クーパー=ダギー・ジョーンズなのか?です。吹き替えの際に公式の脚本みたいなものはWOWOW側にも渡っているはずなので、リンチ&フロストからすると悪クーパーは "ダギー・ジョーンズ" になると見てまず間違いないと言えるのではないかと。

では、ラスベガスのダギーはどんな人物だったかを振り返ってみます。

  名前:ダギー・ジョーンズ

  勤務先:ラッキー7保険(勤務年数 12年)

  事故歴:12年以上前に交通事故を経験

  備考:1997年以前の存在証明が一切ない

素直に読み取ると12年前にダギーは交通事故に遭い、それからドクター・ベンのクリニックに通っていたのではないかと思われます。そして、片腕の男が言っていたことを信じるなら、ダギーは12年前に誰かに造り出された。いつジェイニーEと結婚をし、サニージムが生まれたのかはわからないけど、それでもジョーンズ家という "家族" はラスベガスに存在していた。さらに2016年になると遠く離れたサウスダコタ州でブリッグス少佐の体内からダギーの結婚指輪が発見される。

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誤解を恐れずに語るなら、ブリッグス少佐の体内に結婚指輪が仕込まれたのは悪クーパーが原因であることは間違いないと言えます。なぜなら、ブリッグス少佐の首を刎ね飛ばし、ルース・ダヴェンポートを殺したのは悪クーパー以外には考えられないからです。ヘイスティングスが語っていたゾーンで起きた事件の首謀者は悪クーパーであり、その顛末がこの結婚指輪になると思うのです。では、なぜそう言えるのか?ですが、

①ルース・ダヴェンポートの頭部にできた銃痕とヘイスティングスの妻が殺害された時の銃痕が同じ

②第2章でフィリップ・ジェフリーズが悪クーパーに問い詰めた「ブリッグス少佐に会ったらしいな」というセリフはゾーンでの事件をフィリップも把握していることを暗にほのめかしている

③ダギーの結婚指輪をしていたのは悪クーパーだから

三番目が突飛と思われるかもしれませんし、先ほど "仕込まれた" と言ったばかりじゃないかと突っ込まれても仕方がないのですが、僕が言いたかったのはこういうことです。ゾーンでの事件の時に、ブリッグス少佐は「クーパー、クーパー」と言って消えていったとヘイスティングスは語っていました。となると、ブリッグス少佐は何かしらのヒントを残すために、その時何か行動を起こしたはずです。それが悪クーパーがしていた結婚指輪を飲み込んだ。だから、胃に指輪が残っていたのではないかという読みです。

そこから導き出せるのは、もともとダギー・ジョーンズというのは悪クーパーの偽名だったということです。ジェイニーEと出会い、それが偽装であれ造り物であれ、彼女と結婚をしたのも悪クーパーだった。そして、ラッキー7保険に潜り込む時点でトゥルパであるダギーが造り出された。それはアンソニーの手口のように保険金詐欺を工作するためにであり、そこで生まれた利益が悪クーパーの手元に蓄えられていったという流れです。

ここで一つの疑問が出てきます。だとしたらサニージムはなんであんなにいい子なの?ということです。これについては第18章のテキストで語った通りで、ラスベガスの人たちは非現実の住人ではないかという疑惑です(ツイン・ピークス The Return 考察 第18章 存在への祈り。異世界へのドライブ。電気が消えた!)。ちょっと混乱するかもしれませんが、僕の中ではラスベガスで現実に存在していたのはダンカン・トッドだけなのではないかと思っています。では、先ほどの悪クーパーとジェイニーEの結婚話はなんなんだ?ということですが、振り返ってみてください、ジェイニーEと親違いの姉妹だったダイアンはトゥルパでした。となると、ジェイニーEもトゥルパである可能性が非常に高いです。だとするなら、実際に悪クーパーと婚姻を交わしたジェイニーEは別に存在する、もしくは既に死んでいるのではないかと思うのです。

さらに物語の上でラスベガスの舞台というのは、六道輪廻でいう "天国" の世界、そしてクーパーが十二因縁を経験するための舞台であったと言えるのではないかと思います。ミステリー的な要素が強い『The Return』ですが、そこにリンチ的な "説法" を盛り込むためにラスベガスの舞台が用意された。そのために悪クーパーと転送されるはずだったクーパーはダギーと入れ替わってしまった。物語を追っていくと壊れた夫婦関係が修復され、途切れていた親子関係が改善されていく様子が描かれていました。いわゆる "家族愛" や "人情" がラスベガスでは描かれているのです。それはまるで人生の素晴らしさを謳歌した『ストレイト・ストーリー』をアップデートしたようでもあるのです。そのドラマ効果が第16章の歓喜と感動に昇華されていたのは僕が語るまでもないでしょう。そして、最終回での「帰宅」を手放しに喜べないのは、これらが "造られた家族" の結末だと感じたからです。

 

3.ラスベガス

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では、順を追ってラスベガスで何が起きていたのかを振り返ってみたいと思いますが、一つ気をつけたいのが何度も言うようにダンカン・トッドの存在です。先ごろ発売された『ファイナル・ドキュメント』でも言及されていましたが、悪クーパーのラスベガス組織のトップに君臨していたのがダンカン・トッドであり、彼がラスベガス犯罪の全てを牛耳っていました。なので、ダンカンとその周囲の人物たち(側近のロジャー、ラッキー7保険のアンソニー、ラスベガス警察のクラーク刑事、ダギー暗殺を依頼したロレインとその手下たち)は現実の人物たちということになります。他の人物たちが描かれているシーンはほぼ非現実の世界であり、ある意味では現実とシンクロしている状態にあります。それも含めてラスベガスのシーンを振り返ってみたいと思います。

 

【第2章】

◆ダンカン・トッドにダギー暗殺の命令が下される

◆ロジャーを呼び出し、ロレインにダギー暗殺の依頼をする

【第3章】

----- 1日目 (9月24日)-----

◆空き家で逢引きしているダギーとジェイド

翡翠の指輪をしていたダギーが赤い部屋に飛ばされる

◆クーパーがコンセントから転送されてくる

◆ジェイドの車で空き家を後にする

◆ジーン&ジェイクが暗殺失敗

◆シルバーマスタング・カジノに到着

◆メガ・ジャックポットを連発

【第4章】

◆ビル・シェイカーに家の場所を教えてもらう

◆支配人から現金を受け取る

◆リムジンで赤いドアの家まで送ってもらう

◆フクロウが鳴きながら飛び去っていく

◆ジェイニーEの平手打ち、首根っこをつかまれる

◆"3日間も行方不明" だった元ダギー・ジョーンズ

----- 2日目 (9月25日)-----

◆サニージムと対面

◆ホットケーキの朝食(フクロウの置物)

【第5章】

◆ダギー暗殺の失敗がロレインに報告される

◆ジェイニーEに仕事場まで送ってもらう

◆窃盗団が元ダギーの車に目をつける

ラッキー7保険に到着

◆ミーティングが始まり、アンソニーの嘘報告を告発

◆社長室に呼び出され大量の事件報告書を渡される

◆カジノの支配人がロドニーにボコられる

◆キャンディの右手ヒラヒラ

◆窃盗団の3人が車の爆発で焼け焦げる

◆119のヤク中ママが眠りから覚める

◆ジェイドが315号室のホテルのカギをポストに投函

銅像の靴を眺めているクーパー

【第6章】

◆警官に家まで送ってもらう

◆サニージムとのふれあい

◆ジェイドとの不倫がジェイニーEにバレる

◆電話が鳴る

◆借金取りとアポを取り付ける

◆事件報告書に落書きをする

◆ダンカン・トッドに赤いスクエアの連絡が届く

◆爆発した元ダギーの車がレッカーされる

◆スパイクに白い封筒が届く

----- 3日目(9月26日) -----

◆出社するクーパー

◆事件報告書の落書きを理解するブッシュネル社長

◆借金取りに半額の2万5000ドルを払う

◆ロレインを刺殺するスパイク

【第7章】

◆フスコ3兄弟がクーパーの取り調べにやってくる

◆スパイクの暗殺をクーパーチョップで撃退

◆進化した腕が現れる

【第9章】

◆ダンカン・トッドに悪クーパーから電話がかかってくる

----- 4日目 (9月27日)-----

◆ダギーの1997年以前の存在証明がないことがわかる

◆クーパーのDNAを採取するフスコ3兄弟

◆コンセントを意識するクーパー

◆スパイクが逮捕される

【第10章】

◆キャンディがロドニーをリモコンでぶちのめす

◆ドクター・ベンのクリニックで診察を受ける

◆ミッチャム兄弟、テレビでスパイクの逮捕を知る

ジャックポットを出したクーパーの居所が知れる

◆リビングテーブルに黒電話

◆欲情したジェイニーEがクーパーにまたがる

----- 5日目(9月28日) -----

◆クーパーにメロメロなジェイニーE

◆ダンカンに呼び出されるアンソニー

◆ミッチャム兄弟にクーパーをけしかけるアンソニー

◆ミッチャム兄弟、クーパーをぶち殺す決心をする

【第11章】

----- 6日目 (9月29日)-----

◆ミッチャム兄弟のアポを説明するブッシュネル

◆ブラッドリー、一晩中夢を見ていたと語る

◆サイモンズ・コーヒーに行くクーパー

◆迎えのリムジンに乗ってミッチャム兄弟のもとへ

◆ブラッドリー、夢の話を繰り返す

◆ロドニーの左頬の傷が直っている

◆幸福のチェリーパイ

◆バーでジャックポットばあさんと再会

【第12章】

◆サニージムとキャッチボールをする

【第13章】

----- 7日目(9月30日) -----

◆ミッチャム兄弟たちと会社に戻るクーパー

◆アンソニー、ダンカンから見切られる

◆ジェイニーEのもとに新車のBMWと遊具セットが届く

◆「まるで天国にいるみたい」

◆フスコ3兄弟、クーパーのDNA結果をポイ捨て

◆アンソニー、クラーク刑事からトリカブトを入手

----- 8日目(10月1日) -----

◆新車のBMWで会社まで送るジェイニーE

◆アンソニー、クーパー暗殺を断念

◆アンソニー、ブッシュネル社長に懺悔

【第14章】

◆ラスベガスFBIにゴードンからダギー情報収集の命令が下る

【第15章】

◆ラスベガスFBI、別のジョーンズ一家を逮捕

◆ダンカン・トッド、シャンタルに射殺される

◆ハッチ&シャンタル、バーガーを食べて火星を見つめる

◆クーパー、コンセントにフォークを差して感電

【第16章】

----- 9日目(10月2日) -----

◆ラスベガスFBI、クーパーの家に到着

◆入院しているクーパー

◆ハッチ&シャンタル、会計士に殺される

◆クーパー復活

◆ロドニー、黒電話でクーパーの依頼を快諾する

◆新車のBMWで颯爽とカジノに向かう

◆シルバーマスタングでのお別れ

◆リムジンでツイン・ピークスに向かう

【第17章】

◆ラスベガスFBI、クーパーの居場所を突き止める

◆ブッシュネル社長、ゴードンにメッセージを伝える

【第18章】

◆ダギーが家に帰る

 

ちょいと長過ぎてしまいましたが、これでわかり易くなったと思います。クーパーがダギーとして過ごした期間は約1週間であり、映画「FIRE WALK WITH ME」とうまいこと対になっています。そして、それが非現実の世界だと断言できるのが "フクロウ" の存在と "電話" でのやり取りです。この中で携帯やスマホでやり取りをしているのはダンカンとロレインとその手下、ラスベガスFBI、そしてブラッドリーが自家用機をチャーターしている時だけです。フクロウについては『The Return』の中で登場したのはラスベガスのみ。これは明らかにクーパー/ダギーが非現実の世界で仮想家族との愛を経験するためだけに造り出された世界であると読み取れるのです。

非現実と現実が交錯している世界ではありますが、それも『The Return』の特徴であり、内藤仙人さまの理論を拝借するなら「生と死の狭間の世界」であるから、現実が非現実に干渉することが可能なのです。ゴードンの言葉を借りるなら「現れたけど、現れなかった」世界。ローラの言葉を借りるなら「私は死んでいる、でも生きている」ということになります。そして、その理論が最終回のオデッサで爆発します。現実と非現実だけではなく、時も人も滅茶苦茶にミックスされている世界がオデッサなのです。映画「インターステラー」で10次元の世界が視覚化されていましたが、超ひも理論アインシュタイン相対性理論を下敷きにした物語という点で『The Return』も多次元の世界を映像化した作品だと言えるのです。そのヒントはヘイスティングスのホームページ「ゾーンを探して」にもここかしこに記されていました。要は次元の階層が幾重にも重ねられている世界なのです。その中で語られているのは「インターステラー」と同じ "愛" についてでした。

 

4.オデッサ

『The Return』の最大の謎が最終話のオデッサであることは間違いありません。前述したように第17章で終わっていれば上手い具合にループして物語もとりあえずまとまったように見えます。それがそうならなかったのは単純に "それでは物語が終わらない" から。なぜループで終わることができなかったのか。

発売された『ファイナル・ドキュメント』を読むと第17章の保安官事務所に到着した後、タミー・プレストン捜査官は一人ツイン・ピークスに残り、アルバート曰く "超多次元なクソ事件" の後始末をしていたようです。当事者が "超多次元" と言っている時点で、やはりいくつもの次元の階層があるということが明らかになったわけですが、ここで注意したいのが「青いバラ事件」が全ての根幹だということです。

ローラ・パーマー殺人事件、その1年前に起きたテレサ・バンクス殺人事件、そして、今回のルース・ダヴェンポートとニューヨークの殺人事件は全て「青いバラ事件」関連であるとされています。その肝心の事件内容については、タミーをチームに加入後、アルバートからほんのさわりを説明されただけでした。その要約は以下になります。

 ①事件は1975年ワシントン州オリンピアで発生

 ②ゴードンとフィリップが事件を担当

 ③ドッペルゲンガー、もしくはトゥルパが絡んでいる

 ④事件の容疑者はロイス・ダフィーという女性

 ⑤ブルーブック計画との関連性がある

この5つの事象とローラを含む4つの殺人事件の共通項を探ると、ある一つのものが見えてきます。それは "ウィンダム・アール" の存在です。これらをタイムラインに沿って、どうアールに繋がるのかを各項目ごとにひも解いていきますが、それは奇しくも第14章で消防士がアンディーに見せた幻視をひも解くことにもなります。

 

 A.ブルーブック計画

ウィンダム・アールはブリッグス少佐と同じようにブルーブック計画に参加していた人物であり、しかも驚くことにFBIにも同時に在籍していました。『The Return』の中でブリッグス少佐の存在がこれだけ重要視されていたにもかかわらず、それ以上に重要な人物が "失踪" の一言で片づけられているのは明らかにおかしいです。

旧シリーズの第27話を振り返ると、ブリッグス少佐はブルーブック計画の資料の中にアールの狂気を発見し夜も眠れなくなったと語っていました。そして、ブルーブック計画の調査を外される結果になった一つのビデオテープが再生されます。そこには若き日のアールの姿があり、彼はビデオの前でこう語っていました。

「これら悪の魔術師はダグパスと呼ばれ、悪のために悪を育む彼らは闇の中の化身で理屈など持たない。悪のみを求める純粋さが、それを培養するための秘密の場所を探り当てた。その結果、邪悪の力はさらに増した。その場所は実在し、中に入ることもその力を利用することもできる。さまざまな名で呼ばれるが最も一般的なのがブラックロッジ。信じないのか?頭がおかしいと?」

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※TWIN PEAKS Episode 27 より

この "ダグパス" という存在が『The Return』でいう "ジュディ" であることは疑いようがありません。そして、その存在の中心にいるのが "エクスペリメント" であることを消防士はアンディーに伝えています。全ての根源は "エクスペリメント" であり、それはマンハッタン計画が開いてしまった別次元への扉でもあったのです。アールはブルーブック計画在籍時にそれを知り、その諸悪の根源がツイン・ピークスにあるゴーストウッドの森にあることを既に調査済みでした。そして、それは "ボブ" を始め、別の世界から来た小さな男やウッズマン(木こり)、さらにはジャンピングマンにトレモンド夫人などの存在を造り出したと考えられます。

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※エクスペリメントが産み出した "恐怖" を象徴する卵は世界各地に散らばったと考えられる

 

 B.1975年の事件

ここが一番難しい所なのですが、第18章が放送された当時、僕はオデッサの出来事は全て1975年の青いバラ事件の再現ではないかと思っていました。リチャード=ウィンダム・アールが、キャリー=ジュディをいかにエクスペリメントが産まれた最南の町テキサス州ニューメキシコ州)から最北の町ワシントン州に運び出したかを描いていたと思っていたのです。しかし、これはあまりにも見当外れでした。

1975年当時、ウィンダム・アールはワシントンはワシントンでもD.C.の方でキャロラインと結婚したばかりであり、活動の拠点はもっぱらフィラデルフィアでした。しかし、ここで疑問点が出てくるのです。まずは『ファイナル・ドキュメント』に記されている問題の箇所をお読みください。

"クワンティコでの研修を歴史的な好成績で修了したアールは、1960年代の中頃に最初の任務に就き、長らくプロジェクト・ブルーブックとして知られてきた組織とFBIを結ぶ連絡係兼セキュリティ担当官を努めた。この間、ご存じのように彼はダグラス・ミルフォードと接触している(さらにこのあと、アールはあなた自身に指名されて青いバラ特捜チームのメンバーになるわけだが、ここで詳述するには及ばないだろう)。1973年、アールはウォーターゲート事件公聴会で..."

おわかりでしょうか。この文面の流れから見るとアールが青いバラ特捜チームに加入したのは「青いバラ事件」が発生する10年も前のことになります。この事から何が導き出せるかというと、アルバートが語っていた「青いバラ事件」は 、この不可思議な事象を調査するチームの一事件でしかなく、全ての発端ではなかったということです。チームの "名称" の発端は「青いバラ事件」で間違いなさそうですが、その本質というか根源はそれよりも10年も前に既に始まっていたのです。それは先述したように旧シリーズの第27話で語られていた "ダグパス" にまつわるものであり、ゴーストウッドの森から発生した何かであることをほのめかしています。

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※ダグパスである彼らには理屈が存在しない

 

 C.テレサ・バンクスとローラ・パーマーの共通点

旧シリーズの出発点が「インターナショナル版」であることは周知の事実であり、デイヴィッド・リンチの傑作と言われているのも、この妙なエンディングが後付された「インターナショナル版」であることも事実です。既にそこでテレサ・バンクスの事件は語られており、クーパーはローラ・パーマー殺害の犯人はテレサ事件と同一犯であると端から確信しています。そして "ボブ" が憑依したリーランド・パーマーが犯人であることもリンチ&フロストの中では最初から構想としてあったことがわかっています。

全てはデイヴィッド・リンチのその場その時の魔法のようなインスピレーションから生まれたものでした。ABCに売り込むためと、資金作りのためにワーナーがソフト化する条件として、急遽、あの病院の地下ボイラー室のシーンと赤い部屋の逆再生が一夜にして撮影されたのは今では伝説として語り継がれています。それは何年も構想を練り続けた結果、突発的にあふれ出た奇跡のような瞬間であったと思います。そして世の中の芸術作品が時として永遠の輝きを放つのは、そうしたどこから来たのかわからないインスピレーションを見事に捉えたものであるのです。

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※長らく絶版だったインターナショナル版は2007年発売の"TWIN PEAKS GOLD BOX"で約20年ぶりに復活した

「インターナショナル版」の魅力はABCに受け入れられ、その後のファースト・シーズンの大ブームは『The Return』を死ぬほど楽しみにしていたピーカーたちには説明不要ですよね。そして迎えたセカンド・シーズン、ウィンダム・アールは第9話でクーパーの宿敵として早くもアルバートの会話の中に登場しています。しかし、世の中はアールなんてどうでもよくて、誰がローラ・パーマーを殺したのかが知りたくてウズウズしていました。リンチ&フロストはギリギリまでそれに抵抗していたようですが、世論の圧力は相当だったようで、その結果が旧シリーズ第17話以降のグダグダ感です。

映画「FIRE WALK WITH ME」は今でいうビギニング系の奔りみたいなものですが、そこで初めて登場したテレサ・バンクスの左薬指には得体のしれない指輪が嵌められていました。そして、ローラ・パーマーもその指輪を巡って "ボブ" との決別を図りました。人それぞれ「フクロウの指輪」「緑の指輪」「翡翠の指輪」と呼び名が違いますが、映画版で明らかになったこの指輪がテレサとローラを結びつける重要なアイテムでした。そして、それは遥か昔、アメリカ北西部に住んでいたインディアンの一部族であるネズ・パース族の曾長からニクソン大統領にまで受け継がれていく指輪でもあったことが『シークレット・ヒストリー』には描かれていたのです。

前述のようにウォーターゲート事件に絡んでいたウインダム・アールが翡翠の指輪のことを知らないわけがありません。そして、チェット・デズモンド捜査官の動きはともかくとして、いちいちダイアンに報告をしていたクーパーの動きは全てアールに筒抜けだった可能性があります。そこからテレサとローラの事件に翡翠の指輪が関係し、"ダグパス" 絡みの存在まで浮き彫りになっていると知れば、旧シリーズの第21話以降のアール登場は必然だったと言えます。

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※ローラは2人の天使によって救済されたというのが映画「FIRE WALK WITH ME」での物語

 

 D.ヘイスティングスが開いたゾーンへの入り口

新シリーズ第18章の「◆赤い部屋(悪クーパーの消滅)」で語ったように、僕は悪クーパー=ウィンダム・アールだと思っています。それを前提としてこの後の話をしていきます。

旧シリーズで "ダグパス" を求め、そしてクーパーの魂と肉体、さらには "ボブ"とまで一体となったウィンダム・アールは巨大な犯罪シンジケートを組織立て、その後の25年を謳歌していたに違いありません。その牙城が崩れたのは、ある男の好奇心でした。ウィリアム・"ビル"・ヘイスティングス。このバックホーンという町の校長先生が、膨大な書物を読み解きインターネットを駆使して異次元の扉 "ゾーン" を開いてしまったことが『The Return』の全ての始まりだったのです。

ヘイスティングスが開いてしまった "ゾーン" という異次元の扉は、それだけでは意味を持ちません。彼ヘイスティングスが最も罪深いのは、25年前の悪クーパー/アールの襲撃から身を隠していたブリッグス少佐を "冬眠" から叩き起こしたことです。ヘイスティングスは第9章の号泣会見でこう語っていました。「彼は隠れていた」。単なる好奇心から、25年もの間ひたすら隠れていた少佐を叩き起こし、それが瞬時に悪クーパー/アールの網に引っ掛かったのです。そして、それはルース・ダヴェンポートの悲劇へとつながり、果てはエクスペリメントまで呼び起こしてしまったのでした。

その頃、フィリップ・ジェフリーズは悪クーパーと共にニューヨークのペントハウスにガラスの箱を設置していました。それは "ジュディ" の確保という共通の目的があったからであり、それ以外の事についてはお互いにそ知らぬふりをしていたようです。フィリップは時空を行き来できるということを悪クーパー/アールに明らかにせず、悪クーパー/アールも方々でブリッグス少佐を追い求めていたこと(ペンタゴンに報告された15回もの少佐の指紋は全て悪クーパー/アールによるもの)をフィリップには黙っていました。

ヘイスティングスの行動はロッジなどのあちら側の世界にも影響を及ぼします。ブリッグス少佐の存在が明らかになったことにより、フィリップは悪クーパー/アールと共にいる "ボブ" をロッジに呼び戻そうとしますが、これは跳ね除けられました。次にレイ・モンローを使い "ボブ" の始末を企てます。しかし、この結果も『The Return』で描かれていた通りです。

ロッジ内では長らく閉じ込められていたクーパーを現世に戻してまで、悪クーパー/アールの始末を企て始めますが、その行為はエクスペリメントを解放することになってしまいました。しかもダギー・ジョーンズによってドッペルゲンガー回収計画までが阻止されてしまったのです。

クーパーの現世回帰により解放されたエクスペリメントは、ニューヨークのサム&トレイシーを殺害し、その後の行方はまったくわからずじまいになっています。その前に、なぜクーパーがエクスペリメントを解放してしまったのか?ですが、ここで新シリーズの第2章を振り返ってみます。事の発端は赤い部屋が二重に乖離し始めた事と、進化した腕が「存在しない」と叫びながらクーパーを次元の海に突き落としたことです。次元の海を落ちていくクーパーが辿り着いたのがニューヨークのガラスの箱でしたが、この時にエクスペリメントが現世に現れる道筋を作ってしまったのではないかと思うのです。

このようにヘイスティングスの行動はあらゆる方向に影響を与え、結果として25年ぶりにクーパーが現実に帰還、悪クーパー/アールは業火に焼かれることとなったわけです。ヘイスティングス自身も悲劇に見舞われ、彼の周辺人物たちもことごとく悲劇的な最期を遂げています。そして、物語は時空と魂が混沌とするオデッサへとなだれ込みます。

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※『The Return』で語られた英雄はこの "純真な心" を持つ夫婦であった

 

先述したように第18章の放送時、僕はオデッサのシーンは青いバラ事件の再現だと思っていました。とは言っても、時代も違えば場所も違うのはもちろん重々承知なのですが、それでもなぜそう思ったのかはラスベガスの項目で説明したように、ここで描かれていることが一つの次元ではないからでした。

そこで消防士がアンディーに見せた幻視に立ち返りたいと思うのですが、エクスペリメントの誕生からブレナン夫婦の活躍までを時の流れに沿って一直線で消防士は描いていました。

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この流れがツイン・ピークスの全てであり、これが正式なタイムラインとなります。とすると、やはりキャリー・ペイジの家の庭に立つ電信柱が物語の帰結地点になるのです。

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では、この6の電信柱が意味するところはなんなのか?というのが論点になりそうなのですが、よくよく見ると、もともとはモノクロだった6の電信柱は徐々に色づいていき、最終的にカラーの映像に切り替わります。この切替わりは全部で3段階になります。6が3つは素直に考えると「666」になりますので、聖書で言う悪魔を現わすことになります。さらにモノクロ・カラー・ハイビジョンと捉えると、これは3つの時代を表現しているのではないかとも思うのです。この3つの時代、ウッズマンが奇怪な事件を起こした1960年代、ローラ・パーマーを巡る1990年代、クーパーが精神的巡礼をした2010年代が混然としている世界、それがオデッサではないかと。

全ての時代が並行して存在しているため、キーレスの高級車とブラウン管のテレビが同時に存在し、新聞には風力発電の開発が報じられ、ダイナーの壁には古びた70年代の看板がさも最新の流行のように掲げられているのです。オデッサの標識には2010年の国勢調査による人口数が表示され、キャリー・ペイジの家に置かれているスティックタイプの掃除機は1990年代の最新型のようです。この「時代が混然としている世界」を "夢" の具現化と片づけるのはとても容易いのですが、リンチが描こうとしていたのはそういう画一的なものではないと思います。夢であり現実でもある世界。もっと言えば、そんな夢とも現実ともつかない世界が僕らが今生きている "現代" ではないのか。そんな強烈なメッセージが作品から聞こえてくるのです。

そこではクーパーはクーパーでなくなりリチャード捜査官として、ダイアンはリンダとして自ら身を引いた世界。ローラはキャリー・ペイジとして腐敗し始めた死体と生活し、セーラ・パーマーの存在は消滅、トレモンド夫人が取って代わって何事もない一般的な生活を過ごしていました。ここには魔術的な存在はなく、風にざわめく不気味な森の姿もありません。僕らは "電気" という名の "火" に骨の髄まで浸かりながら生活をしていて、それなしで生きていくことは今や不可能なのです。『The Return』のラストシーンはリンチのそんな現代に対しての一つの解答なのではないかと思うのです。

 

5.オードリー・ホーンの物語

『ファイナル・ドキュメント』が発売される前は未だ昏睡状態から覚めていないオードリーが、ロードハウスに行くことによって昏睡状態から目覚めた、そんな流れが妥当ではないかと思っていました。しかし、マーク・フロストの裏設定によると、半分は合っていて半分は間違っている、そんなニュアンスに取ることができます。何が合っていて、何が間違っていたのか。

【間違っていた点】

①銀行爆発事件の3週間半後には目覚めていた

②ジャックとの記憶を一切なくしている

③チャーリーとの結婚は事実

【合っていた点】

①リチャードを産んだ

②未だに消息不明

③ロードハウスが何かからの目覚めであった

オードリーについては第12章の考察で触れましたが(ツイン・ピークス The Return 考察 第12章 不機嫌な薔薇たち)、その後もあまりにも情報が少なく途方に暮れてはいました。そこでの『ファイナル・ドキュメント』ですが、これはもう『The Return』で描かれていたのはあちらの世界としか言いようがありません。また、先の第12章の考察で取り上げた三人の登場人物、セーラ・パーマー、ダイアン・エヴァンス、オードリー・ホーンには自分でもビックリするぐらいの共通点がありました。それは「アルコール依存症」。つまり常に酩酊状態にあり、現実から乖離した存在であるということ。そして、何かしらの精神疾患を抱えているのではないかということです。さらにはセーラはトビガエルが、ダイアンとオードリーは悪クーパー/アールに何かしらの危害を加えられた疑いがあります。これはスター・ウォーズ的に言えば "ダークサイド" に落ちた、もしくは故意に引きずり落とされたということになります。その結末についてリンチはいつものごとく多くを語らず、全権を視聴者の想像に委ねています。

そんな訳で僕的な解釈をするならオードリーの物語は以下になります。

銀行爆発事件の後、昏睡状態から目覚めたオードリーは自分が妊娠していることを知る。その父親は明らかにジャックことジョン・ジャスティス・ウィーラーなのだが、オードリーは彼の記憶を失くしており、夢見ていたクーパー捜査官がその父親であると確信している。その後、グレート・ノーザンを離れ、オードリーはひとりでリチャードを産んだ。その後、シングル・マザーとしての人生を謳歌していたが、あるタイミングで一人の男が現れる。彼はチャーリー、職業は会計士だった。タミー・プレストン捜査官の調査により、彼女らの結婚は明らかに金銭目的であったとされている。夢見がちな少女であったオードリーが、シングル・マザーという現実に疲れ果てた結果が、愛のない結婚生活ではなかったかと想像する。その荒みきった生活が『The Return』で描かれていたものであり、思春期を迎えたリチャードにも多大な影響を与えた。そして、今から4年前、突然この夫婦は消息を絶ってしまう。僕が思うに、見るに見かねたチャーリーが、オードリーを施設に預けたというのが筋ではないかと思う。アルコール依存症の患者は、それ以上悪くならないようにすることはできるが、良くなることはまずないという。そんな施設の中でアルコールを絶ったオードリーは幻覚に悩まされるようになり、それはいつ終わるともしれない悪夢だった。憧れのクーパー捜査官を想いながら音楽に身を委ね、幻覚から目覚めて現実に失望し、また幻覚の世界に逃げていく。オードリーは幻覚の中で永遠にビリーを探し求め、永遠にクーパーに憧れ続け、永遠に現実に失望し続けている。しかし、その悪夢でさえ、オデッサの消灯により全てが無に帰ったのだった。

ツイン・ピークス The Return 考察 第18章 存在への祈り。異世界へのドライブ。電気が消えた!

最終回です、姐さん。25年ぶりに復活した我らがツイン・ピークス。長い沈黙を破り、まさかの続編が制作されると発表された時はどうなることかと思いましたが、いざ蓋を開けてみたらデイヴィッド・リンチの集大成で終わりました。とにかくスゴイです。巷でシーズン4の制作を待ち望んでいる声が多いのももちろん頷けますが(それだけ宙ぶらりんな謎がてんこ盛り!)、仮にそれが制作されたとしても謎が増えるだけでなんの解決にもならなさそうな感じもします。ていうか、僕的にはシーズン3の謎はこの第18章で全て解決できそうな気がするんですよね。それぐらいリンチ作品としては非常に珍しくキレイに納まっていると思うんです。放送当時はグワーッと書き連ねて終わり!みたいな感じになってしまいましたが、それを再度一つ一つゆっくりブラッシュアップしていこうと思います。

 

◆赤い部屋(悪クーパーの消滅)

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『悪クーパーが燃えています。燃やしても燃やしても燃えきれない感じ。もう完全に銅像と化してます』

最終回の冒頭がいきなり "業火に焼かれている悪クーパー" というのがぶったまげてしまいます。前回の第17章でクーパーに翡翠の指輪を嵌められ、カランカランとロッジ送りになったその後のシーンになるみたいですが、これには下記の三通りの感じ方があるようです。

Aさん「やった!とうとう悪クーパーが滅びたぞ!」

Bさん「悪クーパー!てめぇ、結局なにがしたかったんだ!」

Cさん「あのソファは燃えないの?」

燃えているのは悪クーパーの魂なので、家具が燃えて赤い部屋が火事になったりすることはなさそうですよ、Cさん。とまあ、そんなわけで僕は完全にBさんの方なんですが、イマイチ悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかがわかりません。そもそも悪クーパーってドッペルゲンガーですよね。だとすると、

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こんなだったり、

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こんな風に消えるのが今までだったはずです。んでもって、最後に残るのは "金の種" のみ。なのに悪クーパーはオニのように "赤い炎" で燃えています。ここで思い返したいのが第11章でホークが語っていた "黒い火" です。

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ホークが語るところによると、焚き火のように見えるものは "火" の象徴であり、炎の一種ではあるがそれよりも "現代の電気" に近いものであるということ。そして、"黒いトウモロコシ" は「病・異常・死」が肥沃であることを示していて、この二つの象徴を足すと "黒い火" を意味することになる、そんなお話でした。要約すると下記のような式になります。

火(電気)+黒いトウモロコシ=黒い火

ダギー・ジョーンズもダイアン・エヴァンスも "黒いトウモロコシ" の状態であり、赤い部屋で "電気" に触れたことにより "黒い火" となって消えていきました。ここで明らかになるのは、ダギーもダイアンも既に死んでいる状態、もしくは病に犯された異常な状態であるということです。では、悪クーパーはどうなのかというと "黒い火" になっていません。ということは、彼は "黒いトウモロコシ" ではないということです。だったら、いったい悪クーパーはなんなんだ?という話ですが、前半考察にも書いたように彼はウィンダム・アールなのです。

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旧シリーズの最終回でボブに魂を抜かれてしまったウィンダム・アール。その時、初めて赤い部屋で "炎" が立ち上がります。旧シリーズ、映画、新シリーズ、いずれも赤い部屋で炎が立ち上がるのは、このウィンダム・アールが魂を抜かれた時と、アールの魂が宿った悪クーパーが消えていく今のこのシーンだけです。となると、このことから容易に想像できるのは「新シリーズでの悪クーパーの行動は全てウィンダム・アールの企みによるもの」という見方ができます。そうすると、悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかが自ずと見えてきそうではないですか。まあ、その辺の振り返りは、また "総論" の時にゆっくりと語りたいと思います。

 

◆赤い部屋(ダギー・ジョーンズの再誕)

『ソファの上に種とクーパーの髪が置かれる。片腕の男が「電気、電気」と呟き、指先でバチッバチッと4回スパークすると、あっという間にダギーが出来た。なんなんだ、これ...。こんなB級的な発想が普通に許されている時点で既に神』

悪クーパーが燃えているシーンからいきなりこのシーンにつながるので、一瞬、ソファに置かれた "金の種" が悪クーパーの種ではないかと思えてしまうのですが、もちろんこれはダギー・ジョーンズの種。そして、電気を帯びた一房の髪を "種" は食べるようにして吸収していきます。ここで一つ頭に入れておきたいのは、片腕の男が "電気" を操ることができるということ。そして、"進化した腕" は常に放電していたということです。この二人の関係は以下の写真の通り。

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ピーカーには今さら説明不要だと思いますが、もともとこの二人は一つでした。ニューヨークの謎に関するテキストでも少し触れましたが、片腕の男は "神" と出会い、ボブと悪事をすることをやめることにしました。その時に自分の悪の部分を切り落としたのが "左腕" であり、その "左腕" が実体となり意識を持ったのが "小人" もしくは "別の場所から来た小さな男" でした。そして、二人とも "電気" を操ることができる。それは "火" を操ることができると言いかえることもできます。

ドッペルゲンガー、もしくは "トゥルパ" はこうして作られるという「種明かし」になっているシーンがこのダギー再誕になるのですが、さて、この "化身" を作り出せるのは、電気を操ることができるこの二人だけなのでしょうか?仮にそうだとすると、ダギーであったりダイアンであったりのドッペルゲンガーを作り出したのは "進化した腕" ということになりそうです。となると、そこから導き出せるドッペルゲンガーの存在理由は下記の二通りになります。

 A."ガルモンボジーア" を搾取するために産み出された存在

 B.ボブの手助けをするために産み出された存在

Aの方向で考察すると "進化した腕" はガルモンボジーア(痛みや悲しみ)を味わうためにダギーやダイアンが住む世界を作り出したと考えられます。その視点で見ていくと、お酒とギャンブルが大好きだったという元ダギーに、ジェイニーEは随分と悩まされていたようですが、その苦しみは映画でのローラ・パーマーのような役割に見えてきます。そして、真意の程は定かではないですが、片親違いの姉妹であるダイアンも、ストーリーでは描かれていない部分でなにかしらの辛酸を舐めていたのではないかと思われます。

Bの方向で見ていくと、旧シリーズの最終回でウィンダム・アールと共に現世に解き放たれたボブを、何かしらの理由で手助けするためにダイアンとダギーを産み出したと考えられます。そうするとダギーの存在よりもダイアンの存在の方がボブもしくはアールにとっては重要だったのではないかという勘繰りが出てきます。FBIの情報であったり、クーパーからの情報であったりを手に入れるためにダイアンを利用したと考えられるのです。さらに拡大解釈をするなら、悪事のための資金繰りのためにダギーの存在を作り、ラスベガスのトッドであったりミッチャム兄弟であったりを動かすことに成功した。

どちらの方向でもこじつけようと思えばいくらでもこじつけられそうですが、いずれにしてもダイアンの存在、そして、ダギー・ジョーンズ周辺の存在というのは "造られた世界" と言えそうな気がするのです。

 

◆ダギー・ジョーンズの家(ダギーの帰宅)

『チャイムが鳴り、玄関ドアを開けるジェイニーE。そこにはダギーの姿が。サニージムも喜んで駆け寄ります。ダギー、チャイムが押せるようになったね...』

先ほどダギーとダイアンが住む世界は "造られた世界" であると仮定しました。その仮定をもう少し推し進めてみると、ちょっと考えたくない世界が見えてきます。それはジェイニーEとサニー・ジムも "造られた存在" なのではないかという仮説です。さらにそこから見えてくるのはラスベガス自体が "造られた世界" なのではないかという疑惑です。

『The Return』の中でラスベガスのストーリーというのは、本編のミステリーとは完全に切り離された世界が描かれていました。ちょっと振り返ってみると、そもそもラスベガスの舞台は第3章のこれが入口でした。

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ナイドが電圧を落としたであろう大きなコンセントからそもそも転送されてきたわけです。このどこかの画用紙にとりあえず『3』と書いたようなデマカセ的な部分からクーパーはラスベガスにやってきた。ここからして、ただでさえ普通じゃないツイン・ピークスの世界で、さらに異色の世界へ "転送" されていることを象徴しているのではないかと思うのです。

またラスベガスに登場するキャラクターはツイン・ピークスの住人に引けを取らない曲者ばかりが、ここぞとばかりに揃っています。ジェイニーEを筆頭にブッシュネル社長とラッキー7保険の社員たち、ミッチャム兄弟にキャンディー、119のヤク中ママ、フスコ3兄弟、アイク・ザ・スパイク、極めつけは進化した腕や片腕の男が普通に登場!どのキャラクターも愛すべき存在であり(特にジェイニーEとミッチャム兄弟!)『The Return』を大いに盛り上げてくれたキャラクター達ばかりです。そんな彼らや彼女らがいわゆる "幻" の世界の住人だったなんて、思うだけで寂しくなってしまうのですが、物語を追っていくとどうも幻の世界ではないかと思えて仕方がないのです。その理由は、

 ①進化した腕や片腕の男がちょいちょい登場する

 ②ミッチャム兄弟の家に "黒電話" がある

 ③ランスロットコートに住人がいない

 ④「シカモア通り」が存在する

 ⑤「ここは天国」というセリフが登場する

 ⑥シルバー・マスタング=白銀の馬

 ⑦ラッキーセブン=過去・現在・未来・東西南北

 ⑧赤いドアとフクロウ

 ⑨誰もツイン・ピークスとつながらない

 ⑩ラスベガス="肥沃" の土地

とりあえず10項目挙げてみました。他にも細かく観ていくと出てきそうですが、とにかく条件はいろいろと揃ってしまいそうなのです。そんなラスベガスでのラストシーンが、このダギー・ジョーンズの帰還。しかも "赤い部屋" からダイレクトに "赤いドア" まで辿り着いてしまうのです。それでも例え幻の世界であっても、ここは "天国" であり、ジョーンズ一家は幸せな時をこれから過ごしていけそうではあります。そういう意味ではラスベガスがハッピーエンドな世界でホッとします。本当に短いシーンですが、ダギーの「家(Home)」というセリフも泣けてきます。

このセンテンスを読んで「あれ?ミスター・トッドが抜けてない?」と思った方、かなり鋭い方だと思います。安心してください、忘れているわけではありません。ラスベガスのキャラクター達の中で唯一「第2章」に登場していた彼は "現実" のキャラクターになります。その辺については "総論" の時に思う存分語りたいと思っています。

 

◆ゴーストウッドの森(ローラの消失)

『ローラを連れて "森の心臓" に向かうクーパー。カリカリ音がしてローラが消える。森に響き渡るローラの絶叫。どうしたもんじゃろのぉ...と困り顔のクーパー。先週のシーンの繰り返し。困った顔をしたいのは見てるこっち側なんだけどな』

このシーンの解釈として一般的に定着しそうなのが「ローラママの時空を超えた攻撃によってローラ救出は失敗した論」ではないかと思います。その根拠となるのが第17章のこのシーン。

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鬼気迫るローラママが酒瓶で「こんにゃろう!こんにゃろう!」と凄まじい怨念でローラの写真を叩きつけています。これが "1989年2月23日" の夜にまで影響していると思えば思えなくもない解釈ではありますが、どうでしょう?いくらリンチだからと言って、そればっかりは突飛すぎやしないでしょうか。どちらかというとクーパーの時空転送によって、あるはずのローラの死体が歴史から消えてしまったことへの怨念・悔しさみたいな、そんな印象の方が強いような気がするのです。だから、いくら酒瓶で叩きつけても写真にはキズひとつ付かなかった。逆にローラママの攻撃をことごとく跳ね返し、お前の負けだと微笑んでいるようにも見えるのです。

ではこのカリカリ音でローラを連れ去ったものはなんなのか?ですが、音響から辿ると "炎" が燃え盛る音とローラの絶叫が第2章のローラの絶叫とほぼ同じです。となると、あの第2章のクーパーに耳打ちをした後にローラをどこかに連れ去った何者かがカリカリ音の正体になりそうな気がします。そのシーンはこの後にもリフレインされるのです。

では、そのカリカリ音の正体はなんなのか?という話ですが、たぶん、こいつです。

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アルルのヴィーナス。

あの "こすれる" ようなカリカリ音は大理石が擦れる音ではないかと。第1章で消防士は大理石の擦れる音をクーパーに聴かせ「今それは我々の家に」と呟き、クーパーも「そうだ」と応えていました。それはアルルのヴィーナスが消防士とクーパーの家 "ホワイトロッジ" に侵入していることを現わしているのではないかと思うのです。とは言っても、このアルルのヴィーナスがヒョイヒョイと動いているわけではなく、あくまでもヴィーナスは象徴であります。では、何を象徴しているのか?ですが、それはもう言うまでもなく "ジュディ" です。なので、ローラは "ジュディ" にさらわれた、もしくは消滅させられたということになるのではないかと。

あまり伝わらないと思うので順を追って説明をしますが、まず "ジュディ" は「極めてネガティブな存在」であると第17章でゴードンが語っていました。ここまでは誰でもわかると思います。では、なぜそれが "アルルのヴィーナス" とつながるのか?ですが、『The Return』に登場しているヴィーナスは復元前の状態であり、現在ルーブル美術館に展示されているヴィーナスには両腕が復元されています。

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復元された彫刻の右手には "林檎" が、そして左手には "手鏡" が握られていたのではないかと言われています。この二つのキーワード、まず "鏡" はリンチ・ファンでしたら説明するまでもないですよね、あっちの世界への入り口です。問題は "林檎" です。話は聖書に飛びますが、アダムとイブが楽園から追放されたのは "禁断の果実" を食したからでした。それは悪魔の化身である "蛇" がイブをそそのかしたからであり、そそのかされたイブやその子孫であるすべての女性は "産みの苦しみ" を課せられてしまいます。

なんとなく伝わるでしょうか?"アルルのヴィーナス" は罪深いイブを象徴しているのではないか。そして、イブをそそのかした "蛇" が「極めてネガティブな存在」なのではないか。フィリップ・ジェフリーズも暗に "蛇" の象徴である「8」を提示していましたし、第17章では「ここでジュディを見つけるだろう」とも語っていました。

さらにリンチ監督はあえて復元される前の "アルルのヴィーナス" を赤い部屋に配置しています。この時空にまつわる考察は赤い部屋にあるもう一つのヴィーナスである "ミロのヴィーナス" と共に総論で語りたいと思います。

 

◆赤い部屋

突然、第2章にフラッシュバック。

片腕の男「これは過去か、それとも未来か」

しかし、現れるはずのローラの姿がない...。

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過去改変の影響がさっそく現れているけど、

だとしたらクーパーがここに居るのもちょっと変。

 

部屋の向こうで、こっちさ来いと片腕の男。

ついていくと "進化した腕" がいる部屋へ。

完全に第2章の繰り返し。

違うのは "腕" が語るセリフ。

"通り沿いの家に住んでいたあの少女の物語なのか?"

これはオードリーがチャーリーに確認した話題。

それをなぜ "腕" が語っているのだろう?

 

またもや突然に場面が切替わり、

ローラがクーパーに耳打ちをする。

第2章の時は「ああ...」と納得していたクーパー。

今回はそれが「はあん?」に変わっています。

いやいやいや、

はあん?って言いたいのはこっちですけど!

 

悲鳴と共に宙に消えていくローラ。

目線を戻すクーパーの先にクーパー。

またドッペルゲンガーか?

と思いきや、ソファにはリーランド。

「ローラを捜せ」

言われて、何かを決心するクーパー。

赤いカーテンの向こうに行くと、

右手をヒラヒラヒラヒラさせます。

それに呼応するかのように先のカーテンが開く。

 

この右手ヒラヒラ、

第5章でロドニーが支配人をボコってる横で、

キャンディも同じようにヒラヒラさせていました。

また先週の第17章でも、

悪クーパーが保安官事務所に辿り着くと、

急に怯え始めたナイドが右手をヒラヒラしていた。

 

話が飛びますが『インランド・エンパイア』では、

誰かに殺される!とバーに逃げ込んだニッキーを、

赤いカーテンの向こうへ案内したカロリーナが、

サヨナラとばかりに左手をヒラヒラさせていました。

 

一見すると "念" を送っているような印象を受けます。

となると、

クーパーはこの短期間で

ジェダイ並みにフォースが操れるようになったと。

驚異的な覚醒ですな!

 

グラストンベリー・グローブ

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赤いカーテンの先はグラストンベリー・グローブ。

これが正規の出口なんかな?

外ではダイアンが待っていました。

...、...、...。

んん、嘘っぽい、嘘っぽいぞ。

 

◆山間のハイウェイ

ドライブ・タイム。

景色は段々と配電線が立ち並ぶ山間になる。

鉄塔の姿形がフクロウのマークに見えるのは、

もう完全に頭がイカれてしまった証拠かもしれない。

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 「ちょうど430マイルの地点だ」

そう言って車を止めるクーパー。

外に出ると、電気のジリジリ音と時間を確認する。

そして、ウンウン、そうだ、間違いない、と納得。

またジェダイですか?

いったいフォースは何を感じてるんですか?

 

「ここを超えれば全てが変わるだろう」

そう言ってキスをせがむクーパー。

...、...、...。

第8章のあの少年もキスをせがんでいたな...。

今まで逃げ腰だったダイアンは、

クーパーとキスすると「行きましょう」と急に決心。

 

車を動かし、430マイルの地点を超えると電気が走る。

するとクーパーとダイアンの席があべこべになる。

もう右も左も関係ないということかな...。

時は急激に進み、道は暗闇に変わる。

フォースの次はデロリアンか...。

もうBTTFはいいでしょう...。

 

◆どこかのモーテル

車を駐車場に入れ込むと、

チェックインを済ませに行くクーパー。

その間、車中で待っているダイアンは、

建物の向こうに自分の姿を確認する。

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だけど、ダイアン、微動だにせず...。

ねえ、ドッペルゲンガーだよ、ダイアン?

少しは驚いたら?

ダイアンに "死" のフラグが立ってしまいました。

 

◆モーテルの7号室

部屋に入り、抱き合うクーパーとダイアン。

しかし、どうもさっきからクーパーの様子が威圧的。

で、The Plattersの "MY PRAYER" が流れる。

これ第8章で "森の男" がブチ切った続きになります。

なんでしょう、ちょいちょい第8章が顔を覗かせます。

抱き合っているのにクーパーは無表情だし、

ダイアンは何か救いを求めるように天を仰ぐ。

そして、何も見ないでとばかりに、

クーパーの目を両手で覆います。

 

翌朝、目が覚めるとダイアンの姿がない。

部屋の中を見回しても、

古いテレビに古くさいチェスト。

ベッド脇にはダイアル式の電話と1枚のメモ。

起き上がるクーパーはメモを読み上げる。

 

"リチャードへ

私は出ていきます

捜さないで

もう あなたが分からない

私たちが共有したことは終わった

リンダより"

 

クーパーはリチャードとリンダに違和感を感じる。 

 

部屋の外に出ると、昨夜のモーテルとは違う建物。

キーレスで車のロックを外す。

この車も昨夜の古びたクーペとは明らかに違う。

リンカーンのコンチネンタル。

クーパーは建物を振り返り、違和感を感じている。

が、何食わぬ感じでその場から走り去っていく。

 

さて、駆け足でここまできましたが、

一旦、ここまでのクーパーの足跡を

ストーリー順におさらいしてみようかと思います。

 

1989年2月23日 ローラを助けようとするが消失

  ↓

2016年 赤い部屋で右往左往(第2章まで戻る)

  ↓

1970年代 グラストンベリー・グローブに出てくる

  ↓

1970年代 インペリアル・クーペで430マイル先へ

  ↓

1970年代 モーテルに泊まる

  ↓

1991年 モーテルで目覚める

 

実際はどこまでかわかりませんが、

登場している車の車種から、

ほぼこの年代で移ろっているのではないかと妄想。

もう次元というよりも時空がめちゃくちゃです。

 

以前、オードリー関連でも考察しましたが、

スマホだ、タブレットだ、という時代に、

モーテルの部屋にダイアル式の電話があるってのは、

もうそれだけで疑ってかかるべき小道具ですね。

 

さらに消防士のメッセージが一挙に登場。

"430" は "430マイル地点" のことみたいですが、

これは、どこから430マイルなのかイマイチです。

ジャック・ラビット・パレスから235ヤードのように

何かしらの基準になるものがありそうですが、

んん...、そこは想像して楽しみなさいということかな。

 

"リチャードとリンダ" は、

もう全ての人の想像を覆す展開で登場。

このシーン以降のクーパーは、

完全にリチャードの人格に入れ替わっています。

見た目はクーパーだし、

本人もクーパーだと思ってるようですが、

これはリチャードとシンクロした状態ではないかと。

それを念頭にこの後のシーンを見ていきます。

 

オデッサ

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テキサス州オデッサ

クーパーは "ジュディのコーヒーショップ" に赴く。

 

◆ジュディのコーヒーショップ

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店内では老夫婦がブレックファースト。

まるで『マルホランド・ドライブ』の老夫婦みたい。

店に入ってきて誰かを探しているクーパー。

いや、リチャード捜査官。

いないとわかると席に着きます。

「他にもウェイトレスがいるだろ?」と聞かれ、

なぜか一瞬固まるクリスティというウェイトレス。

何か事情を知ってそう。

「今日は休みだし、もう3日も休んでる」と言い残し、

カウボーイ3人組の方におかわりを注ぎに行きます。

ていうか、どんだけコーヒー飲み放題なんだろ?

 

クリスティにちょっかいを出すカウボーイたち。

リチャード捜査官、その手をはなせっ!と一喝。

なんだろ、昔の刑事ドラマを見てるみたい...。

んだと、こんにゃろ~とカウボーイたち。

リチャード捜査官、一人を金蹴り、

もう一人のつま先を拳銃で撃ち抜く。

ていうか、金蹴り!

やっぱ、昔の刑事ドラマみたいだよ...。

彼らの拳銃を奪うと、それをフライヤーの中に入れる。

しかも、銃を構えたままです。

この銃の構え方も、随分と前時代的です...。

「心配しなくていい、私はFBIだ」

逆にそう言われると嘘っぽく感じるんですけど...。

リチャード捜査官、

住所のメモを受け取り店を後にします。

なんかチャールズ・ブロンソンの方が似合いそう。

 

◆キャリー・ペイジの家

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メモの住所に到着。

荒れ果てたピンクい平屋の家。

驚くことに家の脇にはリアルな "6の電信柱" 。

これはカールが幻視していた電信柱です。

 

ノックするとキャリー・ペイジが出てくる。

リチャード捜査官は彼女がローラだと思っている。

キャリーは捜し人が見つかったと思いドアを開けたが、

どうやら的外れだったみたい。

訳の分からないことを聞くFBIを追い出そうとするが、

「母親の名前はセーラじゃないか?」と聞かれ、

急に動揺を隠せなくなる。

「一体、どういうこと?」と聞き返すキャリーに、

リチャード捜査官はまた訳の分からないことを言う。

ひとまずキャリーが心配していたことではなさそう。

「君を母親の家に連れて行きたいんだ」という誘いに、

キャリーはある計画を思いついたみたい。

このFBIを名乗るちょいとお頭が足りない男を使って

ここから逃げ出そうとするらしい。

リチャード捜査官は、それにぜんぜん疑問を抱かない。

 

家の中に入ると、ソファで男の死体が硬直していた。

額を撃ち抜かれ、腹が膨れて膿んでいる。

死後数日経っているのか蝿もたかっている。

見た目はキラーボブのよう。

長髪でジーパン姿、腹にあるのはボブ玉だろうか?

しかし、リチャード捜査官、なにをするわけでもない。

 

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視線は暖炉の上にある馬の模型と青い皿に移る。

床にはライフルが一丁転がっている。

この様子から男の死体の経緯が推測できるけど、

リチャードもキャリーも、そんな事にはお構いなし。

電話が鳴りだすがそれもほったらかし。

ワシントン州って寒いの?

コートがあるから持って行かなきゃ。

食料がなにもない!

途中で調達すればいいのね、最高じゃない!

なんか今からピクニックでも行くような雰囲気です。

さあ、行きましょ行きましょ。

そう言って外に出る二人。

去り際に憎々しげに男の死体をにらむキャリー。

ヤバイ、あの男を殺したの、あんたでしょ。

ということは、母親のセーラも殺してるね!

 

◆ドライブ・タイム

今回、二度目のドライブ・タイム。

テキサス州からワシントン州まで車で移動って、

もろにアメリカ縦断じゃないですか!

なのに一回ガソリンを給油しただけ。

しかもひたすら夜道を走っていきます。

まるでトワイライト・ゾーンですね...。

 

橋を渡り、ツイン・ピークスに入りました。

ダブルRダイナーがある交差点を曲がります。

今まであった "RR2go!" のロゴも消えています。

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ツイン・ピークスに見覚えがあるか?と聞かれるが、

もちろんキャリーにあるわけがない。

彼女はただオデッサから出られればそれでよかった。

逆に途中でよく逃げなかったなぁと思う。

 

◆アリス・トレモンドの家

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かつてパーマー家が住んでいた家に到着。

リチャードとキャリー、

なぜか仲良く手をつないで玄関に向かいます。

あんた達、途中でなんかあったでしょ。

 

長年のピーカーからすると、

これってとんでもないパラドックスですよね。

先週もそうだけどクーパーとローラが手をつなぐって、

普通じゃ考えられないシチュエーションですよ。

 

ドアをノックすると見知らぬ婦人が出てきます。

アリス・トレモンドさん、だそうです。

リチャード捜査官、しきりにセーラ・パーマーを連呼。

知らないものは知らないんだって。

ちょいと変質者気味です。

トレモンドさんの前に住んでたのは、

チャルフォントさん、だそうです。

この2人の名前、説明不要ですよね。

皆さんご存知の、あのご婦人です。

 

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ジャンピングマンの化身である孫を従えていた

あのトレモンド婦人が "ジュディ" なのでしょうか?

いや、なんか違うような気がします。

婦人は "ガルモンボジーア" が大嫌いな人でしたから。

まあ、その辺はまたゆっくり妄想したいと思います。

 

な~んだ、セーラ・パーマーの家じゃないのか...と、

明らかに肩を落として車に引き返すリチャード。

そんなに落ち込むなよ...。

テキサスからは遠かったかもしれないけどさ。

で、ふと何かに気づいたように振り返ります。

「今は何年だ?」

そう問われて、なぜかキャリーも答えられない...。

 

そんなんしている内に、どこからかセーラの声。

「ロォ~ラァ~~~!」

随分と明るいセーラの声です。

それを聞いたキャリー、殺した母親の記憶が蘇った?

急に叫び声を上げます。

リチャード、めっちゃビクッ!となっています。

で、全ての電気が消える!

要するに "火" が消えた!

すげぇ!

 

◆エンドクレジット

ローラの耳打ちに切ない表情を浮かべるクーパー。

まるで何かを諦めてしまったかのよう...。

バダラメンティの重々しい旋律が、

さらにクーパーの諦めを助長します...。

 

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そして、いつもはビシュンビシュンとスパークする

"LYNCH/FROST PRODUCTIONS" のクレジットも、

無音。

 

完全に電気が消えてしまったみたいです...。

 

そんなわけで、終わってしまいました。

今回の『The Return』最高だったなぁ。

リンチ監督の集大成っていうのが、とにかく最高。

やっぱ映画館で観たいよね、全部とは言わないけど。

せめて第1章と第8章、そして第11章かな。

それでもう3時間になっちゃうんだけど。

 

結局は夢オチなの?ループなの?って感じですが、

んん...、僕的には "覚え書き" みたいな感じがします。

リンチの覚え書き。

いろんな映画のオマージュが詰まっていて、

映画だけじゃなくて絵画であったり音楽であったり、

セルフ・パロディまで含めて、

とにかくリンチ監督の全てが詰まった作品。

いや、これで全てじゃないだろうから、

余計にリンチ監督の底知れないクリエティブに、

畏怖の念すら感じます。

 

マーク・フロストは、

そこに "アメリカ" という歴史と社会のスパイスを、

本当に都市伝説的に物語に組み込んでいました。

今さらUFOだもんなぁ。

本当、そういうの好きなんだろうな。

僕も好きだけど。

 

もともとは今回の第18章、

総論として一つの記事を書いたら、

もう終わりにしようと思っていたのですが、

まあ、2~3日でまとめられる量ではないので、

いつもの簡易バージョンを急遽、こしらえました。

 

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 昨今の映画やテレビドラマなんてまったく観てなくて、映画館なんてそれこそ軽く4~5年は行ってないオッサンが、何をとち狂ったか毎週毎週テレビにかじりついている生活もとうとう終わりです。この半年近く、楽しかったなぁ...。デイヴィッド・リンチ監督、ありがとう。やっぱり僕はリンチの世界観が大好きなんだなと痛感しました。そして、その世界観の "行間" を読む作業のなんと楽しいこと楽しいこと。説明台詞やテロップがやけに目立つこの頃のテレビドラマに比べたら、今回の『The Return』は取説や工具なしで車のエンジンを組み立てるようなものです。目の前に部品は転がっているけど、どれがどう組み合わさるのかさっぱりわからない。とりあえず大枠のカバーでこんな形のものっていうのはわかるけど、その中身をどう組み立てれば動くようになるのかが、いろいろ想像したり他の機械を参考にしたりしないと紐解いていけないみたいな。その紐解いていく中で "ハッ!" となる瞬間がたまにあるんだけど、それがたまらなく気持ちいいんですよね。正解なのか見当違いなのかは別として。

 その "ハッ!" となった閃きみたいなものを、この数か月間ブログに書き連ねてきました。それも今回でひとまず区切りをつけようかと思います。各章ごとにまとめたり前半後半でまとめたりしてきたので、最後に総論としてまとめようと思っていたのですが、なかなか時間を作るのが難しくなってきました。

 

 最後に僕なりの『The Return』の解釈をズラズラズラーッと書き連ねていきます。

 総論としては、前にも書いたように "リンチの覚え書き" というのが、今回の『The Return』だと思います。とにかく毎回毎回、短編ドラマのように1時間ごとにテーマがあって、それに沿ってキャラクターが動いている。もしくはドラマが起きていました。第6章の親子であったり、第8章のニューメキシコであったり、第10章の愛であったり、なんでしょう、出てくるキャラクター達が変わらない18編ある短編集のような形、そんな風に僕には見えます。

 『インランド・エンパイア』でデジタルカメラを手にしたリンチ監督が、なんとなく撮りためた映像を後付けで編集したように、今回の『The Return』も同じ手法を逆からしていたのではないかと思います。このテーマだったら、これが使える。こっちのテーマだったら、これが使える。それがキューブリックであったり、ホッパーであったり、自らの過去の作品群であったり。そんなリンチ監督のインスピレーションやイマジネーションが詰まった作品というのが、全体的な印象です。

 

◆結局、オチはなんなの?

 最終的なオチは "クーパーが現実に戻ってきた" というのがオチだと思います。それがあの第16章のありえないぐらいの高揚感ではないかと。現実に戻りボブとドッペルゲンガーをロッジに戻した。ここまでが大筋の流れ。その後のローラ救出は名の通り "別次元" の話のような気がします。

 

◆ラストシーンの意味は?

 それがわかればみなさん苦労しないと思いますが、僕が思うところでは、あのセーラが「ローラ」と呼ぶ声は、旧シリーズの序章、寝坊しているローラを呼ぶセーラの声と同じだと思います。その声を聞いてキャリーが絶叫したというのは、まだ1回や2回見ただけでは理解できないのかもしれません。

 

◆"ジュディ" ってなんなのさ?

 第17章で突然カミングアウトされた "ジャオデイ" というネガティブな存在。はっきりしたことはもちろんわかりませんが、なんとなくこんな感じではないかと思うのが、新シリーズの随所に織り込まれたゴードンのダジャレにヒントが隠されてるっぽいなぁと。

 映画『FIRE WALK WITH ME』でフィリップ・ジェフリーズはゴードンの「メーデーメーデー!」を "MAY" と "DAY" に分け「5月?」と言っていました。同じように "ジャオデイ" を "JOW" と "DAY" に分けると "揺れ動く日" になります。(関係ないと思いますが "ジャオ" って中国語だと "叫び" という意味みたいです。ニュアンス的には叫びの根源、要するに恐怖の根源みたいなイメージにもとれるのですが、まあ、これは僕の妄想でとどめておくことにします。)揺れる、安定しない、そんなイメージが "ジャオデイ" から導かれるのですが、なんかしっくりきません。

 綴りが違うのですが "GEORDIE" という言葉があります。ジョーディと読むのですが、ちょっと調べてみると、これはイギリス北西部の訛りのことを言います。この訛り、例えば "Today" が "The dayah" になったりと同じ意味でも見た目がぜんぜん違うようです。またイギリス "England" の名前の由来は "Angele-land" 天使の国という意味みたいなので、フレディー君、君は天使の国から来たのか?みたいな感じもするのです。ちょいと話がズレましたが、要するに "ジュディ" もしくは "ジャオデイ" は見た目と本質が違うのではないかと思うのです。フィリップが遭遇した若い女性然り、テキサスにあった "ジュディの店" 然り、それは提示されているものとその本質が違う。

 そこから何が導き出されるかというと "ジュディ" = "トレモンド夫人" ではないかと。ジャンピングマンを従い、あちこちのトレーラーハウスなどに幻のように現れては消えていく。彼女が何をしようとしているのかはイマイチわかりませんが、現時点ではローラをどこかに導こうとしている存在であるということしかわかりません。これも何度か『The Return』を繰り返し観ることによって、おぼろげに理解できるのかもしれません。

 

◆セーラ・パーマーはどうしちゃったの?

 大方の感想を見ていると第8章でトビガエルを飲み込んだ少女=ローラママというのが一般的な見解になっていますが、僕的には釈然としません。そもそもトビガエルが孵化するのに11年もかかっているのが不思議だし、タイミングが "森の男" が闇から出現するのと同時というのも図ったような感じです。それよりも仮にローラママがトビガエルを飲み込んだためにあのような非存在的なキャラクターになったというなら、旧シリーズでの彼女のキャラクターが全て崩壊するような感じがします。

 Youtubeで面白い見解があったので貼りますが、

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 まるでマーティーに時空の歪みを説明するドク・ブラウンのようですが(笑)、新シリーズの第1章から既にクーパー改変前と改変後を同時に描いていたという見解です。これおもしろいなぁと思ったのは、今回の新シリーズ、明らかに "現実" を描いているシーンと "非現実" を描いているシーンに分かれていると思うんですね。その違いはエキストラがいるかいないか、道を走っている時に対向車とすれ違うかどうか、そして、リンチ作品の黄金の小道具 "黒電話" があるかどうかなんですが、ローラママが登場するシーンは全て "現実" バージョンになっています。逆にダギーが住むランスロットコートや、ツイン・ピークスでいうとグレート・ノーザン・ホテルや保安官事務所というのは、どこか現実と離れ小島のような印象があります。改変後でわかりやすいのが、最終章のクーパーデロリアンだったりモーテルだったりというのは、明らかに "非現実" バージョンだと思うのです。その棲み分けがこの改変前と改変後だとしたら面白いなぁと、BANG BANG BAR のあの意味不明なシーンも納得できるなぁと。

 ただ、それだけでローラママが変貌するのはやはり腑に落ちません。第15章ではジャンピングマンとローラママがダブっていましたが、ここから読み解けるのがジャンピングマンを従えていたトレモンド夫人=ジュディに操られていたのではないか、というのが一つの見解です。それは旧シリーズの最終回でブリッグス少佐にメッセージを伝えているシーンにもつながります。

 では、第8章でトビガエルを飲み込んだあの少女は誰なのか?ですが、僕的な見解は第14章の考察で語ったように "青いバラ事件" の被害者、もしくは加害者でもあったロイス・ダフィーではないかと思っています。その謎は「ケネディ暗殺の真相」や「マリリン・モンロー自殺の真相」と同じで永遠に解明されないのではないかと思っています。逆にだからこそ、ミステリアスで僕たちの興味を麻薬的にそそるのではないかと思うのです。

 

 いずれにしても、最後の最後に "電気" が消えてしまいました。これは完全に終わったというリンチ監督からのメッセージだと思います。どこで聞いたか見たか忘れてしまいましたが、カイル・マクラクランはこのエンディングが数あるうちの一つだったことをインタビューで答えていました。また、撮影された総時間は180時間分もあるなんてこともどこかで聞いたような気がするので、この18時間で納まりきれなかった数々のエピソードが裏設定として存在していたことを証明しています。

 12月に発売される『ファイナル・ドキュメント』やDVD/ブルーレイなどで、埋もれてしまったエピソードが明らかになると嬉しいですが、それまではWOWOW放送分で、このリンチ集大成クロニクルを存分に味わいたいと思います。

ツイン・ピークス The Return 考察 第17章から見えてきたニューヨークの謎

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 新シリーズがスタートしてからずっと気になっていたのが "ニューヨーク・シティ" だったのですが、今週の第17章で、おぼろげながら、その意味が少しわかったような気がしてきました。そのきっかけはフィリップ・ジェフリーズの存在。ゴードンはフィリップの事を「通常の意味ではもはや存在していない」と語り、フィリップは「ゴードンの記憶に残るのは非公式版だ」と説明していました。これが何を意味するのかとずっと妄想していたのですが、どうやら "フィリップの姿は一つではない" のではないかと思い至ったのです。第14章のモニカ・ベルッチの夢の時でも、2月16日の午前10時10分(今思うと完成された数字が2つも並んでいます)フィラデルフィア支部に現れたフィリップのことを「その日彼は現れた、いや現れなかった」とゴードンは語っていました。放送当時はゴードンの妙な言い回しにひっかかりながらもスルーしていたのですが、それも現時点から見ると、デヴィッド・ボウイの姿が本来の姿ではなかったから "現れたけど現れなかった" という曖昧な表現になったと読めます。では、それらが何につながるのかと言うと。

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 この悪クーパーと一緒に写っている男がフィリップ・ジェフリーズの非公式版の姿ではないかと。第10章でタミーから写真を受け取ったゴードンは「なんてことだ!これは大変なことだ。本当に大変なことだ」と今まで見たことないくらいに驚いていました。カメラは悪クーパーのアップになっていたので、当時はニューヨークの凄惨な殺人事件と悪クーパーが絡んでいることにゴードンは驚いていると思ったのですが、今観なおしてみるとフィリップと悪クーパーが一緒にいることに驚いているようにも見えるのです。また、この写真のフィリップの姿も一見すると宙に浮いているように見えるし、なんだか脚の高いイスに座っているようにも見える、なんとも不思議な構図をしています。いずれにしても、この写真から悪クーパーよりフィリップの方が立場が上という印象を受けます。

 第2章では悪クーパーとフィリップが通信機を通して会話をしていますが「遅いぞ。ニューヨークで会いたかったんだ。まだバックホーンなのか?」というフィリップの問いに対して、「お前はどこでもない場所にいるのか?」と悪クーパーが質問返ししています。この "どこでもない場所" とはコンビニエンス・ストアの2階だというのはすぐに想像できますが、なぜフィリップが ”ニューヨークで会いたかった” のかは最終回直前になってもはっきりした理由が出てきません。

 では、この2人はニューヨークで何をしようとしていたのでしょうか?それが第17章でゴードンが語っていた "極めてネガティブな存在" = "ジュディ" に関係するのではないかと思うのです。映画「FIRE WALK WITH ME」で描かれていたようにフィリップは独自の捜査で "ジュディ" の存在に気がつきました。そして、僕らの知らないところでブリッグス少佐も "ジュディ" の存在を知り、その情報をクーパーとゴードンに知らせていました。では、ブリッグス少佐はどこで "ジュディ" を知ったのか?

 

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 突然、旧シリーズに戻りますが、第27話でブリッグス少佐を拉致したウィンダム・アール。彼はフクロウの洞窟に描かれていた謎を解明するために少佐をハロペリドール漬けにし自白させます。そこから出てきたワードは「木星土星が出会う時、彼らは受け入れる」。それを聞いたアールは、ブラック・ロッジへの入り口は "ある場所のある時刻" に行かなければならないことに気づき、洞窟の絵が "地図" になっていることを知ります。まるで新シリーズのバックホーンで聞いたようなエピソードですが、当時はこの辺りの謎解きのスピード感に相当シビれまくったもんでした。

 ただ、僕がここで言いたいのは、さらにその続きです。レオのファインプレーでアールのアジトから逃げ出したブリッグス少佐は、たまたま通りかかったホークに発見され保安官事務所に保護されます。何があったのかクーパーとハリーから質問されたブリッグス少佐は、旧シリーズの第28話でとんでもないことを言っていたのでした。

ガーランド?妙な名前だな。ジュディ・ガーランド

 25年前、既にガーランドは "ジュディ" のことを口にしていたのです。さらに語りは続きます。

「あれは神だった」

 森の奥深くでブリッグス少佐は "神" と面会していた。それは片腕の男マイクが "腕" を切り落とすきっかけになった "神" と同じような気がするのです。

 その発端はクーパーと山にキャンプに出掛けた時でした。突然、森の暗闇にまばゆいばかりの光が現れ、ブリッグス少佐はどこかへ連れ去られてしまったのです。

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 その時、光の先に現れたこの人影。ブリッグス少佐は "番人" と呼んでいましたが、この恰好、先ほどのニューヨークのペントハウスで悪クーパーと一緒に写っていた男の服装とどこか似ています。

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 森の奥に潜む "神" を守る "番人"。もしかしたら、これもフィリップ・ジェフリーズだったのかもしれません。旧シリーズの第27章でウィンダム・アールはブリッグス少佐に「久しぶりだな!」と語りかけていました。新シリーズではアールのアの字も出てきませんが、彼が "青いバラ特捜チーム" の一員だった可能性があることを『シークレット・ヒストリー』は仄めかしています。ならば、チームリーダーであるフィリップがブリッグス少佐を知らないわけがありません。25年前、フィリップは森の奥にブリッグス少佐を招き入れ、"神" と対面した証である "3つの三角の痣" を首筋に入れた。それは "ジュディ" に対抗する勢力を組織立てるためだった可能性があるのです。

 

 新シリーズに戻り、"番人" であるフィリップが、なぜ悪クーパーと手を組んでニューヨークのペントハウスにガラスの箱を設置したのでしょうか。それは "ジュディ" を炙り出すためではないかと。今一度振り返ります。"ジュディ" = "極めてネガティブな存在" です。強大な負の力。旧シリーズ的に言うなら "強大な悪の力" 。第8章では、その根源が "トリニティ実験" にあったと描かれています。世界を "恐怖" に陥れた核爆弾。そこでエクスペリメントが産まれた、もしくは引寄せられた。では、ニューヨークで起きた極めてネガティブな "恐怖" と言えば、もう明らかです。やはりニューヨークの舞台は "9.11" を描いていたのです。

 建物の中と外に設置された縦横3.0m四方の強化ガラスの箱。その中は、たぶん真空状態になっていそうです。影を作らないように両サイドからLEDライトを当て、ガラスの周囲に6台、箱の真正面に1台設置されたデジタルカメラが24時間回りっ放しで一部始終を録画しています。サムとトレイシーの性行為に引寄せられるかのように(もしくはそうなるように仕向けて)、その箱の中に現れたのは "エクスペリメント・モデル"。彼(もしくは彼女)は強化ガラスを突き破りカップルの頭部(鼻から上部)だけを無残な状態にしてしまいます。まるで卵を殻ごと貪るように "人間の脳" を貪ったように見えます。

 "ジュディ" を炙り出そうとした結果、エクスペリメントが現れ、極秘だった場所がニューヨーク警察、そしてFBIに知られるようになってしまった。そもそも新シリーズを通してフィリップは悪クーパーをどうにか始末しようとしている節がありました。穿った見方をすると、クーパーや消防士が言っていた "一石二鳥" というキーワードは、このフィリップの行動に当てはまるような気がするのです。

 一つの石(ガラスの箱)で、"ボブ" と "ジュディ" という二羽の鳥を捉えようとした。

 結果としては、この事件を機にゴードンたちが悪クーパーと接触することとなり、ゴードンとフィリップの原点でもある "青いバラ事件" にもつながる流れの起点にもなったのです。それは "時" を操ることができるフィリップの何度目かの挑戦だったのかもしれません。

 

【小ネタ】

◆「119」と叫んでいたヤク中の母親は、もしかしたらロッジの住人、もしくはロッジの誰かが憑依したキャラクターかもしれない。アメリカの110番の番号は "911" 。"もてと" と同じ原理。

ツイン・ピークス The Return 考察 第17章 保安官事務所に勢ぞろい!ピートが釣りしてる!すごいもん見たなっ!

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まるで霧深い森に迷い込んだような第17章。

ダンテの『神曲』のオープニングのようです。

"正しい道を踏み迷い、

はたと気づくと暗黒の森の中だった"

 

姐さん、どうしたらいいですか?

カオスに続いて崩壊が始まりました...。

時と空間の秩序の崩壊です。

宇宙の破滅ですわ!

ね?エメット・ブラウン。

 

◆メイフェア・ホテル 1827号室

ダイアンを撃つ事ができなかったと嘆くゴードン。

そもそも撃つ気がなかったように思いますが...。

なんか、いじけたおじいちゃんみたい...。

ワシも撃ちたかったのぉ。

あんたら二人でバン!バン!って撃ちよるさかい、

なんかワシ 仲間外れみたいやのぉ...。

ワシもカッコ良く撃ちたかったのぉ...、みたいな。

ごめんね、ゴードン。

 

ゴードン・コールは、

この25年間、アルバートに隠していたことを告白。

長いモノローグなので要所で分割します。

 

A-1 ブリッグス少佐はある存在を発見した

A-2 それは極めて "ネガティブな力"

A-3 遠い昔は "ジャオデイ" と呼ばれていた

A-4 時を経て呼び名は "ジュディ" に変わった

 

B-1 ゴードン達は "ジュディ" へ辿り着く計画を練った

B-2 その後、ブリッグス少佐に何かが起きた

B-3 クーパーにも何かが起きた

 

C-1 フィリップ・ジェフリーズはこの世に存在しない

C-2 フィリップは "ジュディ" に気づいたと言っていた

C-3 そして、彼も姿を消した

 

D-1 クーパーの最期の言葉

「もし僕が消えたら、

あらゆる手を尽くして見つけ出してほしい

僕は一石で二羽の鳥を狙う」

 

E-1 今抱えている二人のクーパー問題

 

F-1 レイから暗号メッセージが届いていた

F-2 悪クーパーが座標を探している

F-3 その座標を知っているのはブリッグス少佐

 

まずはA項目について。

ジュディ=ジャオデイ。

ていうか、そもそもジュディって女性だったはず。

それがとんでもない存在に変わり始めてます。

極めてネガティブって、どんな?

あ...。

ローラ・ママ?

 

B項目。

アルバートが知らない計画を僕らが知る訳がない。

B-2 ツインピークス郊外で起きた政府施設の火災

B-3 ドッペルゲンガーの誕生

 

C項目。

ジュディが女性だと言っていたのはフィリップ。

彼はシアトルにある "ジュディの店" まで行った。

さらにブエノスアイレスではホテルで待ち合わせ。

彼が接触したのは "化身" だったのだろうか?

フィリップと少佐は同じ存在の事を指してる?

 

D項目。

第1章の消防士のお告げがお目見え。

だけど、それってクーパーが自分で言ってたらしい。

25年も経ったから忘れちゃったん?

それで消防士が念押しで告げたってこと?

いずれにしても "二羽の鳥" は何を指すんだろ?

 

E項目。

暗に "青いバラ事件" を示唆しています。

 

F項目。

このくだりが一番ショッキングかもしれない。

レイって情報屋だったの!みたいな。

しかも刑務所からの送信。

なんか、いろいろとつじつまが合わないんだけど。

でも思い返してみると、

第8章で悪クーパーを撃ち殺した後、

フィリップに報告してる姿はなんかFBIっぽかった。

ていうか、レイは座標を知ってたんだから、

それを教えてもらえばよかったんやない?

あ、でも「金になる」って言ってたから、

もしかしたらゴードンに売るつもりだったんかな?

 

いろいろと謎が解明したようで、

なんだか煙に巻かれたようなゴードンのモノローグ。

真相はいかに?

 

FBIラスベガス支部のヘッドリーから連絡がきます。

ダギーを見つけたけど居場所がわからない。

それを聞いたアルバート

マルクス兄弟か?と斬り捨てます。

いやいや、アルバート

それを言うならフスコ三兄弟の方だよ。

ヘッドリーは優秀なんだよ、たぶん。

 

そこへブッシュネル社長が登場。

クーパーの伝言を伝えます。

トルーマン保安官のもとへ向かう

〇ラスベガスは2時53分

〇3つの数字を足すと完全数字 "10" になる

感謝の意を伝え、電話を切るゴードン。

ブッシュネル、ヘッドリーに電話を渡さない。

この小芝居、マルクス兄弟

 

2:53のそれぞれの数字を足すと "10" になるって、

言われて初めて全部 "素数" だったことに気づいた。

ただ、クーパーの言う "完成された数字" の意味が、

どうも理解できません。

それを言うなら "6" の方がよっぽど完全数字です。

黙示録では逆に不完全な数字とされていますが...。

で、"10" で完全と聞くと思いつくのが「十牛図」。

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自己の悟りに至る10の段階を10枚の絵にしたもの。

前にも "牛" 関連で少し触れましたが、

クーパーの言わんとする所は10枚目「入鄽垂手」、

再び俗物の世界に入って、

人々に安らぎを与え、

悟りへ導く必要がある状態に辿り着いた、と。

詳しいところは、また後日。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

チャド、なんか企んでいます。

ていうか、酔っ払い。

なんか彼に妙な愛着が湧いてきちまいました。

 

◆伝播する何か

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第14章以降、ちょいちょい出現するこのイメージ。

電気を通して何かが伝わってるのはわかりますが、

いったい何が伝播しているのでしょう。

そして、悪クーパーが次の目的地へ向かっています。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

ナイドが何かを感じます。

また鳥の合唱。

のた打ち回るチャド。

ふと思ったんだけど、

二羽の鳥ってナイドと酔っ払いのこと?

 

◆グレート・ノーザン・ホテル

ジェリーが保護されました。

ワイオミング州ジャクソンホールで...。

彼、完全にアイダホを縦断しています。

どんだけの脚力やねん!

しかも保護された時、素っ裸だったみたい。

 

◆伝播する何か

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...、...、...。

もしかして、ジェリー...、

悪クーパーにすっ飛ばされた?

 

◆ジャック・ラビット・パレスの先

悪クーパーが座標の位置に到着。

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この "溜まり" が何なのかイマイチわかりません。

『シークレット・ヒストリー』では、

丸太おばさんが "森の心臓" と呼んでいました。

何か地下から湧き上ってる感はあるんだけど...。

なにはともあれ、

悪クーパー、ワームホールに吸い込まれます。

もう2時53分とかも関係ないみたい...。

 

◆時をつかさどる劇場

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悪クーパー、即行で捕まってるやん!

しかもブリッグス少佐の首もありました。

それ以外は第8章と変わらず。

 

劇場のスクリーンに映し出されている "森の心臓" 。

消防士が宙に浮いています。

この人、浮かぶの好きやなぁ。

 

次にパーマー家が映し出されます。

消防士、何かをスライドさせるジェスチャー

するとスクリーンがどこかの道に切り替わります。

劇場の奥の部屋には大量の梵鐘が!

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なんだ、これ。

まるで発電所やないか!

...、...、...。

発電所

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なんか気づいちゃった?

梵鐘って原子炉の形に似てる!

これもまた後日ゆっくりと。

今週はヤバイ。

まだ始まって15分も経ってないのに既に2800字。

 

でもって、悪クーパーがボン!と弾ける。

なんだ?イレイザーヘッドのヘンリーみたい。

髪が逆立ってますよ。

で、スクリーンの向こうに飛ばされました。

 

ツイン・ピークス保安官事務所

飛ばされた先は保安官事務所。

ちょうどよくアンディがいます。

クーパー捜査官だ!と喜んでいます。

頼む、アンディ。

何かが違うってことに気づいてくれ!

そんなんだからチャドに茶化されるんだぞ。

 

ナイドが不穏な空気を感じて騒いでいます。

それが子守唄に聞こえたのか酔っ払いが寝落ち!

マジか!

どうした酔っ払い。

お前、どんなタイミングで眠気に襲われたんだよ!

そのタイミングを狙っていたチャド。

靴底からカギのスペアを取り出した。

随分と用意がいいじゃねぇか、チャドさんよ。

 

ルーシーまで呑気に喜んでいます。

まあ、この夫婦じゃ仕方がないか...。

ていうか、なんか悪クーパーが朗らかだ!

なんなんだ?気持ち悪いぞ。

トルーマン保安官とオフィスに向かう悪クーパー。

タニタしてるアンディ。

ふと消防士に教わったイメージが脳裏に浮かぶ

 

牢屋のカギを開けるチャド。

抜け出ると武器保管庫に向かいます。

何を企んでるんでしょ?

 

お互い席に着くトルーマン保安官と悪クーパー。

アンディがコーヒーを用意すると言うと、

「いらない」

マジか!

ツイン・ピークスの中で初めてじゃないか。

いや、数あるリンチ作品の中でも初だぞ!

この人、コーヒーを断りやがった!

もう一度、言います。

この人、コーヒーを断りやがった!

スゲエ。

革命的だ。

さすがにアンディも何かに気づいたみたい。

ホークを呼んでくるとバタバタ走っていきます。

 

ルーシーに一大事だ!と叫ぶアンディ。

当たり前だよ、コーヒーを断ったんだ。

もう世界がひっくり返ったっておかしくないさ。

 

で、ホーク!って呼びに来たのが、

なんで留置所なんだよ、アンディ!

あったま、おかしいだろ!

ほら、チャドが拳銃構えて待ってるやん。

酔っ払いはなぜか左頬の絆創膏を剥がしたよ。

何か起きるかと思ったけど、なんも起きないよ。

ただ痒かっただけみたい...。

アンディに詰め寄るチャド。

ナイドと酔っ払いの鳥の合唱を聞かされ続け、

相当に溜まってるっぽい。

で、そこへフレディが園芸手袋パンチを一発。

開いた牢屋にノックアウトされるチャド。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あの人チキン呼ばわりされてムキになってたよね。

 

電話を取るルーシー。

相手はクーパー。

すかさずトルーマン保安官につなぎます。

チカチカしてるボタンだそうです。

彼はクーパーが二人いることを事前にわかってます。

それに勘付いた悪クーパー。

すかさず発砲!

トルーマン保安官の帽子がフワッと浮く!

...、...、...。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あの人、パイ皿投げて危機を救ってたよね。

 

倒れる悪クーパー。

トルーマン保安官を救ったのはルーシー。

銃、撃てるんだね...。

なんかビックリ...。

やっと携帯電話ってのがどんなかわかったんやって。

よかったよかった。

アンディと留置所の面々も上がってきました。

って、お~~~い!!!!!

酔っ払いはどうした?

全員、上に行くぞって言ってたよね?

...、...、...。

もしかしてさ、チャドにしか見えてなかったの?

あの酔っ払い。

 

ホークも到着します。

クーパーは悪クーパーに触るなと忠告します。

すぐに到着するから、それまで待てと。

そうしている内にやってきました。

"木こり" が3人、またワサワサしてます。

どういう原理なのかイマイチわからないけど、

復活の儀式なんだろうね、これは。

そこへクーパーも到着。

でもって、悪クーパーのお腹から、

まるでエイリアンのようにボブ玉が出てきました。

クーパーを見つけるとボブ玉アタック!

んん...。

微妙...。

微妙だ...。

誰かがやられてるのを見ると、

急にしゃしゃり出たくなるのがフレディー。

ボブ玉に向かっていきます。

ていうか、

クーパー、なんでフレディー知っとるん?

あらかじめ消防士から教えてもらってたん?

いずれにしてもボブ玉 VS フレディーの始まり。

んん...。

微妙...。

リンチ先生にはアクションは無理なのかなぁ...。

とりあえずボブ玉を蹴散らすフレディー。

クライマックス感は半端ないぐらいあるけど、

それと同じくらい違和感も感じるという...。

 

フレディーの園芸手袋って、

なんとなく "超人ハルク" みたいと思ってました。

ホント、短絡的な発想なんですけど...。

でもね、ハルクの奥さんの名は "ローラ" だし、

超人ハルクに登場する敵って "電気系" が多い。

ボブ玉みたいな敵 "Galaxy Master" もいる。

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まあ、どこまで関連性があるのかわかりませんが、

なんとなく共通点があるなぁ...と。

閑話休題

 

悪クーパーに "翡翠の指輪" を嵌めるクーパー。

ロッジ強制送還、完了です。

んで、トルーマン保安官に315号室の鍵を求めます。

どうやらブリッグス少佐が教えてくれたらしい。

 

ナイドの姿に目をやるクーパー。

ここからしばらく、

ずっとクーパーの顔が画面いっぱいに映り込みます。

 

部屋に現れるボビー。

クーパーはブリッグス少佐の功績を称えます。

そして、ゴードンたちも到着。

いつの間にかクーパーの独白状態です。

「我々はこうして導かれた」

「これから変わりゆくものもいくつかある」

うなづくホーク。

暗に丸太おばさんの "変化" に言及しています。

「過去が未来を決める」

なんか、聞いたことあるなぁ、こんなセリフ。

未来は白紙だって、自由に描いていけって。

 

キャンディたちがサンドウィッチを運んでくる。

なんだろ、キャンディがシャキッとしてます。

すると突如ナイドが騒ぎ始める。

クーパーと手を合わせると頭が黒い炎に包まれ、

そして、赤い部屋で何かの殻が割れていきます。

そこから現れたのは赤髪のダイアン。

クーパーと熱い口づけを交わします。

全て覚えていることを伝えると時計に目をやります。

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時刻は "2時53分" ちょうどを何度も指しています。

 

そして、画面に映り続けていたクーパーが口を開く。

「僕らは夢の中に生きている」

 

保安官事務所に集った人達に別れの挨拶をする。

突然、辺りを暗闇が襲い掛かる。

クーパーはゴードンに呼びかける。

もう...、世界の崩壊や...。

 

とりあえず、

みんながいきなり拍手をし始めて、

「おめでとう」と言いださなくてよかった...。

 

◆グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室

相変わらず画面いっぱいにクーパーの顔。

暗闇の向こうからクーパー、ダイアン、ゴードン。

ベン・ホーン曰く "修道院の鐘の音色" が響いてる。

クーパーは315号室の鍵でボイラー室の扉を開く。

もう...、全てが滅茶苦茶で何がなんだかだ...。

去り際にクーパーが一言。

「カーテンコールで また会おう」

意味深すぎるだろ!

 

◆次元の狭間

リンチ・ブラックから現れるクーパー。

向かいからは片腕の男が現れる。

 

"未来における過去の暗黒を通して

魔術師は見たいと乞い願う

1つの声が放たれるのは2つの世界の狭間

火よ 我とともに歩め"

 

このセリフはインターナショナル版で、

片腕の男マイクが病院で語っていたセリフ。

この後、病院の地下室にボブがいると教えられ、

クーパーとハリーは刑事ドラマさながらで向かう。

ここで、このセリフが登場したということは、

たぶん、今この場面が25年前であり、

クーパーが夢で見ている世界ということなのか...。

 

◆コンビニエンス・ストアの2階

クーパーと片腕の男が、

ゴーストウッドの回廊を進んでいく。

階段を上り、扉の向こうに消えると、

ジャンピングマンが電気と共に階段を下りてくる。

 

どこかのモーテル。

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前回と同じように8号室の明かりが灯っている。

"木こり" たちの姿はない。

邪悪なものは消滅したのだろうか?

 

フィリップ・ジェフリーズを訪ねるクーパー。

前回の時はあまりよく見えなかったけど、

蒸気の先にはハロ現象のような日暈があります。

一種の "虹の環" みたいなものですが、

どうもフィリップは、

その日輪の向こうから語りかけてくるみたい。

蒸気も "虹の環" を造る為にあるようです。

 

クーパーはフィリップにある日付を伝えます。

"1989年2月23日"

これはローラが殺された日。

ということは、

フィリップがフィラデルフィアのFBIに現れたのは、

やはりその1年前の "1988年" ということになります。

前回、ここに悪クーパーが訪れた時、

なんでそれを "1989年" って言ったんだろう?

 

フィリップはクーパーに忠告します。

「ここは滑りやすい」

「ここで君は "ジュディ" を見つけるだろう」

「恐らく誰かがいる」

そして、君はこれを頼んだか?と、

フクロウのシンボルを吐き出します。

やがてそのシンボルは "8" に変化する。

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∞(無限大) とも読めるこのシンボル、

ループ、メビウスという意味も含んでいそうです。

"8" がひっくり返るというのも意味深です。

そして、片腕の男が "電気だ、電気" と叫ぶと、

クーパーは1989年のあの時にタイムスリップする。

まるで "雷" に打たれた、あの時計塔のように。

確かに何千ワットもある "電気" だね。

 

◆パーマー家の前

ジェームズがローラを迎えにくる。

その様子をリーランドが見つめている。

 

◆21号線の信号

途中、森の中で語り合うローラとジェームズ。

その様子をクーパーが森の中から覗いている...。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あれは次元の切替わる重要な場面だった。

 

そんなクーパーがボブに見えたのか、

ローラが悲鳴を上げます。

これは映画「FIRE WALK WITH ME」でも同様、

見事なシンクロです。

 

信号の前でローラがバイクから飛び降りる。

泣きながら森の中に消えていくローラ。

赤信号と共にジェームズが走り去っていく。

森の先ではジャック、レオ、ロネットが待っている。

 

気持ちが治まり、3人のもとに行こうとした時、

ローラの前にクーパーが現れる。

 ...、...、...。

夢の中でクーパーに会っていた事を思い出すローラ。

「どこに行くの?」と問いかける彼女に、

「家に帰ろう」と森の中に引き連れていくクーパー。

モノクロだった世界が色づいていく...。

 

ただ、なんとなくだけど、

ここで話しているローラは、

ローラに似ているけどローラじゃない気がする。

なんか違和感が...。

 

湖畔に横たわるビニールに包まれた死体が消える。

なんか、見たことあるなぁ、こんなシーン。

あれはどこかの新聞記事が入れ替わったんだっけ。

 

◆マーテル家

翌朝、ジョシーがハミングしながら化粧をしている。

ピートは釣りに出かけた。

寂しく鳴る霧笛の音を聴きながら...。

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ヤバッ。

ピートの哀愁が凄まじいんだけど...。

 

◆パーマー家

セーラが何やら唸っている。

そして、ローラの写真をひっつかむと、

酒瓶でおもむろに写真を何度もたたきつける。

しかし、写真は傷一つ付くことがなかった。

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まるで『ワイルド・アット・ハート』のマリエッタ。

そういえば、

彼女も娘がいなくなってから気が狂ってしまった。

 

◆ゴーストウッドの森

たぶん、"森の心臓" に向かっているクーパー。

途中、電気の音が木霊する。

掴んでいたはずのローラの手が消えてしまう。

そして、森の中に彼女の悲鳴が響き渡る。

...、...、...。

さて、何が起きてるのか、さっぱりわかりません。

 

◆「The World Spins」 by Julee Cruise

相変わらずの刹那、相変わらずの天使の声。

若かりし日のローラと相まって、

なんとも言えない切なさが込み上げてきます。

 

で、来週はとうとう最終回。

前評判通り、この回で終わってもいいような出来。

ロスト・ハイウェイ』のラストみたいな感じ。

それがもう一話あるんでしょ?

メビウスの先にいったい何が待ち受けてるん?

 

そして、とうとう "8" が出てきました。

これは "蛇" を現わしていることが確実。

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これは仏教の "三毒" の一つ "瞋" を意味します。

人間の煩悩の一つ "怒り" を現わします。

今週、ブチ切れていた人が数人いましたよね。

あと出てきてないのは "豚" なんですけど。

出てくるのかなぁ...。

 

仏教つながりで、

内藤仙人さまが急にBTTFの話題を振りまいたので、

今週、頭がマーティ・マクフライになりまくり。

確かに共通項がありすぎるような気がします。

片や、超がつくエンターテイメントですけどね。

 

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フクロウのシンボルがメビウスに変化しましたが、

上のシンボルも、

ツイン・ピークスの世界を端的に表しています。

来週、それが明らかになるのか?

なんだかんだで、あと1回。

毎週末のリンチ・タイムも来週で終わりかぁ。

寂しいなぁ。

ツイン・ピークス The Return 考察 後半 (第9章~第16章) まとめ解説 シンクロニシティ

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 今週の第16章で、とうとうクーパーが現実世界で復活しました。それを待っていたかのように、今までバラバラだったパズルのピースが全て "ツイン・ピークス" に集まろうとしています。

 本国アメリカでは旧シリーズの放送形態を再現するかのようにラスト2話(第17章と第18章)を連続で放送していました(旧シリーズの時は第28話と第29話を連続で放送)。ここ日本では通常通り1話ずつ放送するようなので、この "ラストを連続で放送する" という形態にあまり意味はないのかもしれません。しかし、パズルのピースが最終章の手前で全て集まってきているということを考えると、どうも意図的に構成しているのではないかとも思うのです。

 今まで放送された内容を見ると第8章以前と第8章以降では明らかにテイストが違うポイントが3つあります。まず1つは "BANG BANG BAR" ことロードハウスのシーン。第8章以前のロードハウスは現実に即したツイン・ピークスの住人たちが次々と登場していましたが、第8章以降になると物語とはなんの脈略もない人物たちが登場して、わけの分からない会話をボックスシートで繰り広げていました。第9章とか第12章辺りでは、これはもうオマケみたいなものなのかなと思っていたのですが、第14章でビリーの話題が出てきたことで、ちょっと見方が変わりました。それについては後述します。

 もう1つは第8章以降、進化した "腕" が全く登場しないことです。この理由については最終回を迎えてみないとなんとも言えませんが、明らかに第8章が何かの軸になっていることを現わしています。

 そして、最後の1つは "時間軸" 。特にツイン・ピークスを舞台にしたシーンは、どの順番が正規の時系列なのかが全くわかりません。この構図は『マルホランド・ドライブ』のシレンシオ以前と以降、もしくは『インランド・エンパイア』のシルクのハンカチを覗き見る以前と以降と同じ形をしています。『ロスト・ハイウェイ』の入れ替わりシーンも然りです。その構図は前半(第1章~第8章)と同じように、あるテーマを各章ごとに繰り広げるため、あえてシーンをぶつ切りにしてコラージュのように各章にまとめた印象があります。云わば "連想ゲーム" のような姿をしているのです。

 その理由を探るべく、まずは前半考察と同じように、各章の大まかなテーマとロードハウスで何が起きていたかを確認してみます。

 

 【第9章】

テーマ:ガーランド・ブリッグス少佐

ロードハウス:腋が痒い女 エラ

 

 【第10章】

テーマ:愛

ロードハウス:レベッカ・デル・リオ 「No Stars」

 

 【第11章】

前半テーマ:座標と "ゾーン"

後半テーマ:ミッチャム兄弟

 

 【第12章】

テーマ:青いバラ

ロードハウス:アンジェラの話題

 

 【第13章】

テーマ:時間軸

ロードハウス:ジェームズ・ハーリー 「Just You」

 

 【第14章】

テーマ:夢

ロードハウス:ビリーの話題

 

 【第15章】

テーマ:真相

ロードハウス:四つん這いで叫ぶ女 ルビー

 

 【第16章】

テーマ:復活

ロードハウス:オードリーのダンス

 

 こうして大まかに並べていくと各章のテーマとロードハウスはどこかシンクロしているように見えてきます。また一部で話題となっているのが『The Return』に隠されたシンクロニシティです。第1章のサム&トレイシーと第3章のクーパー帰還のシーンは見事なシンクロをしています(Twin Peaks mauve zone - YouTube)。これに限らず、ジャコビー先生のシーンやゴードンのローラ幻視など、ピーカーたちが発見したシンクロは各章に散りばめられ『The Return』と『Fire Walk With Me』までが25年の時を超えて対になっていることまで現わしています(ただし、それがどこまで意図的に製作されているのかはわかりませんが...)。

 このシンクロニシティは、第14章の "夢見人" で考察した "集合的無意識" と深い関わりがあります。僕たちの "意識" や "夢" は、海底よりも深い精神世界で誰もがつながっているという概念が集合的無意識で、それをベースにして例えばAさんはBさんと全く同じ経験を次元の離れた全く違う場所で体験したというのがシンクロニシティになります。それは客観視して初めてわかることであり、主観だけではシンクロしているのかどうかわからないのです。もっと簡単に言うと "正夢" と言い換えることもできるかもしれません。正夢で語ってしまうと "デジャヴ" ということになり、どちらかというとニュアンスが "幻" になってしまいますが、それを既視感ではなくタイムスリップしているような感覚、それがシンクロニシティだと言えるのです。そして、この概念を利用してデイヴィッド・リンチはある人物の物語を他の人物の物語とシンクロさせてストーリーを組み立てているのです。まるで『ロスト・ハイウェイ』のフレッドとピート、『マルホランド・ドライブ』のダイアンとベティ、『インランド・エンパイア』のスーザンとニッキーのような感じです。

 例えば、ロードハウスで腋を掻きむしっていたエラ。彼女の存在はかなり理解に苦しんだのですが、シンクロしているという視点で見てみると、誰とシンクロしているのかが、なんとなくぼんやりと見えてくるのです。彼女はハイになったまま仕事に行ったためクビになったと言っていました。これと同じ境遇のキャラクターは一人しかいません。スティーヴンです。彼はハイになった状態で面接を受けて見事に落ちています。この二人の共通キーワードは "仕事中にハイになっている" こと。ただ、エラは女性でブロンドです。そして、ハンバーガーを売ってる。スティーヴンの妻ベッキーはダブルRダイナーにパンを届けていました。そして、彼女もブロンドです。となると、エラ=ベッキーというのが、なんとなくぼんやりと見えてきます。第15章でスティーヴンは自ら命を絶ったであろう描写がありました。その後のベッキーがどうなったかは描かれていませんが、もしかしたら、その未来の姿がエラなのかもしれません。

 かなりこじつけ感が強くて、自分で書いててもホントかよ?と思ってしまってるのですが、それでも可能性はゼロではないような感じもします。いずれにしても『The Return』の中には共通ワードを持つキャラクターというのがちょいちょい存在するのです。このシンクロニシティが残り2話でどのような結末を迎えるのかはわかりませんが、いずれにしても登場するキャラクターや場所が相互作用しながら、非常に精神性の高い物語がなにかしらの収束を迎えることは確実です。

 エンターテイメントという性質上、リンチ監督は誰もが楽しめる娯楽として物語を紡いでいる一方で、『インランド・エンパイア』からの10年で積み上げてきたインスピレーション、もっと言えばあのカンヌ映画祭での世紀の大ブーイングへの逆襲を、この『The Return』で成し遂げようとしている感じもするのです。

 

 では、第8章以降、各キャラクターたちがどのような道を歩んできたかも最終章の前にざっと振り返ってみたいと思います。

 

◆デイル・クーパーFBI特別捜査官

 第7章でスパイクによる暗殺を撃退したクーパーはラスベガス警察で指紋やDNAを採取される。この頃から妙にコンセントが気になり始めています。警察から解放されたクーパーは、そのままダギーが交通事故に遭った時からの掛かりつけの医師のもとに行き検査を受ける。その夜、ジェイニーEと体を結びオーガズムを味わう。翌日、ミッチャム兄弟から呼び出しを受けてチェリーパイを届けると、相手は大喜びで一晩中大騒ぎをする。家に帰るとジェイニーEは「天国にいるみたい」とクーパーに抱きついて離れない。その翌日、今度は同僚のアンソニーがコーヒーをご馳走してくれる。家に帰りチョコレートケーキを食べながらテレビをつけると「ゴードン・コール」の名前。持っていたフォークをコンセントに差し込み感電。目が覚めるとクーパーに戻っていた。ツイン・ピークス保安官事務所に向かう。

 

◆クーパーのドッペルゲンガー(悪クーパー)

 第8章でレイに撃たれるが生き返る。ハッチ&シャンタルが待つ農家へ向かう。ダンカン・トッドが計画通りに事を済ませていないことを知りハッチに始末を命令する。農場(ファーム)に行き、レイから座標を受取り、フィリップ・ジェフリーズの裏切りを知る。コンビニエンス・ストアを訪れ、フィリップに裏切りの理由を問い詰めるがスルーされてしまう。外にいたリチャードを連れて、ジュディと関係があるらしい場所へ向かうが、そこは罠だった。ダイアンに座標の全てを教えてもらい、ジャック・ラビット・パレスの奥へと向かう。

 

 第8章以前は対照的に描かれていたクーパーと悪クーパーだが、第8章以降は出番が極端に減ってしまいました。その理由は先ほどのシンクロニシティが関係あると思うのですが、それはさて置き、そもそもの目的であった "座標" を手に入れた悪クーパーは、順当に駒を進めている印象です。その最終的なゴールは "ジュディ" 。逆に悪クーパーをロッジに強制送還させるため現生に帰ってきたクーパーは、ダギー・ジョーンズという別の人生を味わうことによって十二因縁を経験することになりました。やっと本来の姿に戻り、いかに悪クーパーを強制送還させることができるのか?が最終章の見所となりそうです。

 

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 次はゴードン・コールを中心としたFBIの面々。

 第7章で悪クーパーと対面したダイアン。FBI一行は一路フィラデルフィアへ帰途しようとするが、国防総省長官からブリッグス少佐の情報が入り、サウスダコタ州バックホーンへ向かう。首のない少佐の遺体と対面し、身体の状態が40代のままであることに疑問を抱く。一緒に発見されたルース・ダヴェンポートの殺害容疑で署に拘留されているビル・ヘイスティングスを事情聴取すると、"ゾーン" という不可思議な空間の話が出てくる。その夜、ダイアンが悪クーパーとメールのやり取りをしていたことが発覚、時同じくしてニューヨークのペントハウスに悪クーパーが訪れていた写真も発見される。

 翌日、ビルの案内によってシカモアという地名の空地を訪れ、ゴードンは "ゾーン" に接近、近くにルース・ダヴェンポートの遺体を発見、ホームレスのような "木こり" の存在にも触れる。ルースの遺体に書かれていた "座標" がツイン・ピークスを指していることも明らかになった。その不可思議な現象の数々に触れた日の夜、ゴードンとアルバートは "青いバラ特捜チーム" にタミーを加入させる。

 トルーマン保安官から連絡をもらっていたゴードンは25年ぶりにツイン・ピークス保安官事務所と連絡を取る。そこでクーパーが2人いるという情報が入る。同じ頃、タミーはアルバートから "青いバラ事件" の顛末を聞き "トゥルパ" の存在を知る。ダイアンが悪クーパーと会った最後の夜、彼はブリッグス少佐の話をしていたことも明らかになった。さらに少佐の遺体から出てきた結婚指輪の話をすると、指輪に彫り込まれていた人物の名がダイアンの姉妹であることが判明、ゴードンはラスベガスのFBIにダギー・ジョーンズの情報収集を命令する。

 ゴードンはその日見た "モニカ・ベルッチ" の夢を語る。その夢の中で1989年2月16日、FBIフィラデルフィア支部にフィリップ・ジェフリーズが現れた時の事を思い出す。

 あくる日、部屋を訪れてきたダイアンは悪クーパーと最後に会った夜のことを告白する。そして、様子がおかしくなった彼女は「私は保安官事務所にいる」と告げるとゴードンに銃を向ける。アルバートとタミーによって撃たれたダイアンは一瞬にして姿を消してしまう。それは "青いバラ事件" の再来のようであった。

 

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 映画「Fire Walk With Me」で長年の謎とされてきた "青いバラ" と "フィリップ・ジェフリーズ" が、ツイン・ピークスという物語の非常に重要なキーワードであることが明らかになりました。第8章以前では、25年間失踪していたクーパーの真偽を問うだけに留まりましたが、第8章以降では "ブリッグス少佐" の謎を追う内にゴードンの原点とも言える "青いバラ事件" が重要視されるようになり、さらには身近な存在であるはずのダイアンが悪クーパーと内密なやり取りをし、"トゥルパ" であることも判明したのです。また、この "トゥルパ" もしくは "化身" という単語がチベット用語であることから、旧シリーズと変わらず "密教" が物語に深く関わっていることも明らかになっています。ダイアンが最後に言い残した「保安官事務所にいる」というセリフから、FBIの面々も最終章でツイン・ピークスに向かうことが示唆されています。

 

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 続いてはツイン・ピークス保安官事務所の面々です。

 トルーマン保安官、ホークと共に実家を訪れたボビーは、父親ブリッグス少佐が残したスティック状の筒を受け取る。その中身には2枚の小さなメモが封入され、1枚には2日後の10月1日に "ジャック・ラビット・パレス" で何かが起きることが、そしてもう1枚には記号の羅列の中に "クーパー / クーパー" と印字がされていた。そのメモを頼りに位置を割り出したトルーマン保安官に、ホークは古い地図を広げてみせる。ブルー・パイン・マウンテンが "崇高かつ神聖な場所" であること、そして、山の上に描かれている黒いマークについては何も知るべきではないと語る。

 町の交差点で起きた悲惨なひき逃げ事件、その目撃者が酷い暴力によって重体に陥ってしまった傷害事件の犯人がリチャードであるとわかったトルーマン保安官は、祖父であるベンジャミン・ホーンのもとを訪れる。事の真相を聞かされたベン・ホーンは目撃者の治療費を全額負担することを約束した。そして、たまたま届いた "315号室" の古いルームキーを、ハリーに記念として渡してほしいとフランクに託す。

 10月1日、リチャードとドラッグの闇取引をし、ミリアムからの手紙を隠蔽しようとした罪で、トルーマン保安官たちはチャドを逮捕する。そして、ボビーの案内に従いジャック・ラビット・パレスへと赴く。そこからさらに東へ253ヤード進むとシカモアの梢が立つ少し開けた場所へ出る。そこにはナイドが全裸で横たわっていた。彼女を助け起こそうとした矢先、突如現れたワームホールにアンディが吸い込まれてしまう。その先には "消防士" がいて、アンディに数々のイメージを見せる。その投影が終わると、一行はいつの間にかジャック・ラビット・パレスまで戻されていた。

 保護したナイド、逮捕されたチャド、そして、左頬に傷がある酔っ払いが留置所に拘留されている。さらにロードハウスで騒ぎを起こしたジェームズとフレディまでが拘留されてしまう。酔っ払いはダギー・ジョーンズのように人の言葉をただオウム返しし、ナイドは何か伝播でも送るかのように鳥のような鳴き声を出し続けている。

 

 悪クーパーが求めていた座標、ヘイスティングスやFBIが求めていた座標を、保安官事務所の面々はブリッグス少佐の、ある意味 "遺書" のような小さなメモから、いとも簡単に手に入れました。それは父から子へのメッセージでもあり、宇宙の果て、ないしは森の奥深くから届いたメッセージでもありました。そこに横たわっていたのは第3章で無限空間に放り出されてしまったナイド。その希有な存在は、今、保安官事務所で保護されています。クーパーやゴードンたちが集うであろう場所に、これだけの面子がこの時点で揃われたことには、かなりの意味がありそうです。

 

 その他、オードリーを含めたホーン・ファミリーについてや、もともとのダギー・ジョーンズとは結局何者だったのか?なども妄想していきたいところですが、それは最終回を迎えてからゆっくりと味わいたいと思っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第16章 クーパー復活!ダイアン消滅!ここのご近所どうなってんだ!

最終回が見えてきたと言うことで、

リンチ先生、ぶっこんできましたよ!

姐さん、カオスです。

カオスがやってきました。

 

◆どこかの丘

冒頭は静かに、

まるで "マルホランド・ドライブ" のオープニング。

今にも正面からヒャッホー!と車が走ってきそう。

 

先週、殴り倒したリチャードに向かって、

「おしゃべりしよう」と言ってた悪クーパー。

なんにも喋りません。

...、...、...。

ほら、リチャード、なにか喋りたそうじゃん。

少しは気使ってるみたいだよ。

 

トラックは開けた丘に辿り着きます。

小高い丘のてっぺんには大きな岩が。

まるでグラストンベリーの丘みたい。

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こっちの丘は教会が建っているけど、

その昔はアーサー王の墓があったというから、

同じように大きな岩がポツンと、

そんな風に置いてあっただけかもしれない。

 

悪クーパー、やっと口を開きます。

「オレは "ある場所" を探しているんだ」

「その場所がなんなのか、わかるか?」

んなの、わかるわけないやん!

リチャード、キョトってるよ。

あんた今まで、なんも喋らへんかったやん。

「3人の人間から "座標" を聞いた」

「うち2つの "座標" が一致した」

「お前なら、どうする?」

リチャード「そりゃ一致した場所に行くさ」

「お前は賢いな、リチャード」

なんなんだ、これ...。

なにが言いたいのかさっぱりわからへん。

 

その向こうから走ってくるのがジェリー!

マジか。

あんた、どこまで迷子なんだ。

おもむろにリュックから双眼鏡を取り出すけど、

お~い!

使い方、間違ってるよ。

ていうか、それでも見えるんかい!

そっちの方が奇跡だよ。

 

岩に近づく悪クーパーとリチャード。

「オレの方が "25" も年上だ」

「お前、あの岩に乗れ」

...、...、...。

ムチャぶりだよ、センパイ...。

でも、リチャードがやけに素直だなぁ。

ひょいひょいと岩に乗ります。

んでもって、座標の位置まで行くと、

「よし!ここだ!」

ってところで電気に打たれます!

バリバリバリバリバリ!!!!!

リチャード電気分解されて、ジ・エンド。

最後は頭部がボン!と火花を吹いて爆発。

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なんなんだ、これ...。

それを無表情で見ている悪クーパー。

「チッ...」と舌打ちします...。

んだよ、罠だったのか...、みたいな。

でもって「じゃあな、息子よ」って、

お~~~い!!!!!

あんたの息子だったんかい!

さらっと、とんでもないことコクりますな!

みんなが言ってた、

オードリー、悪クーパーにヤラれた説、ほぼ確定。

25年前、

ICUの中で何があったか想像するだけでおぞましい。

 

でもさ、旧シリーズでの彼。

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何かと、このセーターで茶化されているジャック。

その名をジョン・ジャスティス・ウィーラー。

ホーン産業の経営難立て直しの為にやってきた男。

旧シリーズの第27話で、

いきなりブラジルに帰国することになって、

自家用機で飛び立つ寸前の彼を呼び止め、

オードリーは処女を捧げたんでしたよね?

てな具合だから、

リチャードの父親はジャックだと思ってましたが、

新シリーズでは何もなかったかのような扱い。

こんな奴いたっけ?みたいな...。

深い事はまた後でじっくり妄想するとして、

どうやら悪クーパーの毒牙は、

ブラジル、リオデジャネイロまで行ってたっぽい。

 

座標を "3人" から聞いたと言うのも気になります。

一致したという "2つ" は、まず間違いなく、

レイとフィリップから教えてもらった座標です。

悪クーパー、端っから疑ってたようで、

うまくリチャードを使って出し抜きました。

残りの "1人" はおそらくダイアン。

ただ、全部教えてもらってたわけじゃないみたい。

で、このメール。

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悪クーパー、絵文字ってなんだよ!

わかりやすく書くなら、

「(笑)ぜんぶ」

怖ぇぇぇ!!!!!

ダイアン、なんで全部教えてなかったん?

 

ていうか、消防士!

結局、クーパー、リチャードに会ってないけど!

リンダはどこにいった?

 

ランスロットコート

ダギー・ジョーンズの家にハッチ&シャンタル到着。

二人とも作業着を着てるので、

何かに成りすまして家に入り込もうって魂胆みたい。

シャンタル、スナック菓子をポリポリ。

ふと足元を見ると、なんと箱買いしてるよ、この人!

どんだけ好きなんだ!

 

先週に引き続き妙な会話をするこの夫婦。

今朝、鳥の鳴き声がうるさかったって...。

もしかして、ナイド?

 

そこにラスベガスのFBIが到着。

ウィルソン!

そんな堂々と窓から中を覗くやつがいるか!

曲がりなりともFBIだろ!

おとぼけ具合がハンパないです。

 

◆病室

ベッドで昏睡状態のクーパー。

ジェイニーEとサニージムが心配気に付き添ってる。

そこにブッシュネル社長、登場。

さらにミッチャム兄弟まで見舞いに来た!

フィンガーサンドウィッチだって。

うまそうやなぁ。

ロドニー、

食料を届けるから家の鍵を貸してくれと言う。

そんな簡単に家の鍵なんて渡さないだろ、

て、あっさり渡したよ、ジェイニーE!

マジか。

「あら、まあ♪」じゃないよ...。

あんた、貰えるものはとことん貰う主義だね!

 

◆メイフェア・ホテル

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なんだかんだで、

第10章から滞在し続けてるメイフェアホテル。

ゴードンが装置の音に耳を澄ましています。

何を感じてるんでしょう。

 

◆病室

ホテルの装置の音と病室のモニターの音がシンクロ。

サニージムがトイレに行きます。

ジュース飲み過ぎたんやな。

一人になったブッシュネル社長にフィルから連絡が。

FBIが病院に向かってると。

ヘッドリー捜査官、なかなか行動が素早いですな。

ウィルソンを怒鳴り散らしてるだけのことはあります。

 

ランスロットコート

スナック菓子を食べ続けてるシャンタル。

向こうからウィルソンがフォードに乗り換えて到着。

 

ハッチはサミーの話をし始める。

金を貸してくれたからいい奴だったんやって。

そうしている内にミッチャム兄弟が到着。

リムジンから出てくる彼らを見てハッチが呟く。

「あん中の一人がダギーか?」

「どいつがうちのボスに似てるってんだ、バカ!」

イラついてるシャンタルに理由を聞くと、

なんとスナック菓子があと一袋しかないらしい!

そんなに食ったんか!

さっき箱にたんまり入ってたじゃん!

ダギーの家に食料を届けるキャンディたち。

シャンタル、なんだったら、あれ貰っとけ。

 

すると今度は目の前にまた1台の車が到着。

ザワスキー会計士?

誰だ、お前?

ハッチ&シャンタルの車が邪魔だと言ってくる。

シャンタル、消えな!と一蹴。

どけないなら動かす、と会計士、

いきなり自分のベンツをワゴンにぶつけてきた!

力づくで動かすにもほどがあるだろ!

生理中のシャンタルは一瞬でブチ切れます。

会計士に拳銃一発をぶち込む!

が、外れた!

嘘だろ!

射撃の名手だぜ!

ベンツの裏に逃げ込む会計士。

今度はマシンガンでお見舞い。

シャンタル、腕を撃たれる!

マジか!

なんちゅう会計士や!

しゃあない、逃げよう!とハッチ。

ワゴンを出すシャンタルに会計士が撃ちまくる。

軟なワゴンでは簡単に弾が車体を貫通してしまう!

ヤバイ、シャンタルがやられた!

さらに容赦なく撃ちまくる会計士。

ハッチまでがマシンガンの餌食に!

なんだ、これ。

まるでタランティーノみたい。

でも、間の取り方はきっちりリンチ印。

いろんな映画のオマージュを散りばめてますな。

 

何事かとダギーの家から出てくるミッチャム兄弟。

おとぼけ具合がたまりません。

この愛すべき兄弟、

後半からグイグイ株を上げてます。

 

フォードで待機していたウィルソン。

会計士を逮捕します。

しかし、この会計士、いったいなんだったん?

ていうか、

このランスロットコートという新興住宅地。

これだけの騒ぎがあるってのに誰も出てこない!

ガレージのシャッターもみんな閉まってる。

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人が生活している気配がまるでない...。

なんか不気味...。

 

◆病室

突如、グレート・ノーザン・ホテルの謎の音が響き、

ブッシュネル社長を病室の外に導きます。

そして、うっすらと片腕の男が現れると、

おもむろにクーパーが目覚めた!

しかも、動きが機敏だ!

「完全に目覚めた」とクーパー。

やっほーい!

15時間も待ったぜ!

普通の2時間映画で言うなら7~8本分だ。

長ぇぇぇ!!!!!

 

片腕の男、いきなり "翡翠の指輪" を渡す。

目をパチクリさせるクーパー。

そんなことよりもって感じで、

「種は持っているか?」と問いかけます。

金色の小さな玉を見せる片腕の男。

クーパー、髪の襟足をひとつまみ抜くと、

「もう一つ作ってもらいたい」と渡します。

なに、このシステム...。

 

ジェイニーEとサニージムがトイレから帰ってくる。

起き上がっているクーパーに大喜び。

サニージムなんてクーパーに抱きついちゃいます。

しかも、寝ぐせがついてるよ!

クーパーの寝ぐせだよ。

ブッシュネルも戻ってくるなりガッツポーズ。

 

今すぐドクターを呼んできてくれないか。

サンドウィッチを取ってくれ腹ペコだ。

(FBIが僕を探してる?)素晴らしい。

バイタルを確認してくれ、退院する。

服を取ってくれ、そこのキャビネットだ。

車を正面にまわしておいてくれないか。

着替える、下で落ち合おう。

...、...、...。

矢継ぎ早とは、このことですな。

今までのダギー状態だったら、

この間にできることって、

せいぜいチョコレートケーキを口に運ぶぐらいだよ。

サニージムもビックリ。

 

ブッシュネルから拳銃を借り、

ミッチャム兄弟に連絡を入れると、

ワシントン州スポケーンへ向かうと伝えます。

ミッチャム兄弟、

お安い御用だと、さっそく自家用機を準備。

3人娘に飛行機に乗るぞぉ~!と言ったところで、

ツイン・ピークスのテーマ」が流れ始める!

なんだ、これ。

否が応でもテンションが上がっちまうじゃないか!

 

ゴードンから電話が掛かってくるだろうから、

これを伝えて欲しいとメモを渡すクーパー。

そして、別れの握手。

あなたは尊敬すべき人物、あなたの親切を忘れない。

そう言って、病室を後にするクーパーに、

ブッシュネルが「FBIはどうする?」と聞いてくる。

振り向いたクーパーは一言。

「私がFBIだ」

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ウギャーーー!!!!!

こんなキメ顔、卑怯だろ!

もう考察もへったくれもあるか!

リンチ先生、あんた最高だよ!

これだけでご飯10杯はおかわりできまっせ。

 

◆病院のロータリー

BMWに乗り込むクーパー、颯爽と出発します。

入れ違いざまにヘッドリーたちが到着。

この絶妙なタイミングもいいね。

そのまま高速道路を疾走していくBMW

サニージム楽しそう。

ジェイニーEもどことなく満足げ...。

 

◆メイフェア・ホテルのバー

幸福な余韻のまま、

いつものように黄昏ているダイアンがいる。

なんだろ、珍しく "青い服" です。

スマホに届く悪クーパーからの "ALL" メール。

幸福な時は一瞬にして消えてしまいます。

時刻は "16:32" 。

覚えてる...、覚えてる...、と座標を打込むダイアン。

「48551420117163956」

うまくいくかどうか心配してるけど、何を?

ちなみに上の座標はこちら。

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第11章でトルーマン保安官が検索してた位置と一致。

48°55'14.20"N 117°16'39.56"W

https://goo.gl/maps/Efa4wXVXhTq

ここが聖なる山かぁ。

 

◆メイフェア・ホテル 1827号室

座標を送るとダイアンの表情が強面になる。

ハンドバックに拳銃を入れたまま部屋へ向かう。

流れる音楽は第1章の悪クーパー初登場時と一緒!

これから何か不穏なことが起こる予感が。

部屋の前までダイアンが辿り着くと、

ゴードン、気配を感じたのか 入れと呼び込みます。

妙に意識が研ぎ澄まされて人間離れしてきました。

アルバートとタミーは至って平然。

なんだろ...、全てお見通しみたいな?

 

ダイアンはクーパーとの最後の夜を語りだします。

今から21~22年前。

ダイアンはまだFBIに勤めていた。

音信が途絶えていたクーパーが突然自宅に現れる。

もちろん、これは悪クーパー。

まるで尋問のようにFBIの様子を事細かに尋ねると、

悪クーパーはダイアンに口づけをした。

「それは前にも一度あったこと」

そうなの?

ゴードンもアルバートも、ふぅんって感じ...。

タミーだけ、妙にゴードンを気にしている。

 

悪クーパーの口づけに違和感を覚えたダイアン。

怖くなったその時、彼は笑ったらしい。

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こんな風に笑ったのか。

それとも、

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こんな風に笑ったのだろうか?

いずれにしても、

クーパーは笑いながらダイアンを犯した。

...、...、...。

涙ながらにダイアンが語っているのに、

ゴードンもアルバートも妙に冷静というか...。

ふぅん、そうなの?みたいな。

なんなんだろ、これ。

 

その後、

ダイアンは古いガソリンスタンドに連れて行かれた。

たぶん、コンビニの事だと思うけど...、

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だったらコンビニって言えばいいのに。

ちゃんと看板までついてるんだし。

なんか、このニュアンスの違いが気になる...。

その告白の時にまたもや "ALL" メールが届く。

時間は "15:50" !

時が逆行しています。

メールを見てどこか正気に戻ったようなダイアン。

「私は保安官事務所に...、保安官事務所にいる」

「彼に座標を送った」

「私は私じゃない。私は私じゃない。私は...」

持っていた拳銃をゴードンに向けるダイアン!

すかさずアルバートとタミーがダイアンを撃つ!

のけぞったダイアンは一瞬にして姿を消した!

ええっ!

"翡翠の指輪" 関係ないの!

マジか。

タミーはリアルな "青いバラ事件" に感嘆。

「ワ~オ、本物のトゥルパ」

よかったね、タミー。

結局、裏切りダイアンはなんだったん?

彼女の言うこと全て信じていいのかな?

 

◆赤い部屋

イスに腰掛けているダイアン。

ダギー・ジョーンズの時と同じように、

「何者かに作られた存在だ」と片腕の男が言います。

ダイアンの顔が卵の殻のように割れ、

黒い炎が吹き出すと中から種が出てきます。

そして、たぶんリチャードのように電気分解されて、

煙と共に存在は消え、イスに種だけが残った。

それは "金" ではなく "銀" だった...。

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ん?

リチャードのように?

...、...、...。

彼も作られた存在なのか?

 

◆シルバー・マスタング・カジノ

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ジェイニーEとお別れの時がやってきました。

思い返せば、

いきなりの平手打ちから始まり、

首根っこをつかまれ、

怒声に次ぐ怒声。

入れてもらったコーヒーはマズくて吹出すし、

食事はいつもサンドウィッチかチョコレートケーキ。

ホットケーキなんて最初の朝だけだったなぁ...。

襲われた時、スパイクの首を絞めている姿を見たら、

本気でこの人は怒らせない方がいいと思った。

だけど、裸を見せたらコロッと変わって、

今では愛してる、愛してる、愛してる...。

なんだかんだ言っても名残惜しいなぁ...。

 

ジェイニーE、もうダギーじゃないとわかってる。

この人は、私の "あの夫" じゃないんだって。

よく喋るし、指示は的確、車の運転だって上手い。

こんな人が私の夫であるはずがない。

でも、サニージムはそんなこと認めたくない。

パパはいつだってパパなんだ。

誰であってもいい、

キャッチボールができなくても、

お菓子をポリポリ食べてるだけでもいい。

ただ、そばに居て欲しい。

離れないでほしい。

クーパーはそんな想いを全部受け止めます。

「君たち二人を愛してる」

抱擁...。

ヤバイ、涙腺が...。

 

別れ際、ジェイニーEがたまらなく追いかけます。

「行かないで」と、すがるのです。

言われたことを繰り返すだけのダギーはもういない。

「行かないと...」

その瞳に宿る決心にジェイニーEは得心します。

別れの口づけ...。

感謝の気持ちを伝えるジェイニーE。

なんなんだ、これ...。

今週はいろんな感情が綯い交ぜになって、

どう処理したらいいのかまったくわからない。

 

◆ミッチャム兄弟のリムジン

彼らとツイン・ピークスに向かうクーパー。

君たちは "黄金の心" を持っていると称えると、

キャンディが感極まります。

 

◆BANG BANG BAR

今週はパール・ジャムエディ・ヴェダー

シアトル出身の彼がツイン・ピークスに出演って、

なんか感慨深いものがあります。

90年代初頭のあの閉塞感と妙な熱気。

お互いに随分と遠いところまで来たねぇ...みたいな。

 

オードリーとチャーリーが、

とうとうロードハウスにやってきました。

んでもって、MCのムチャぶりで、

いきなりオードリーのダンスコーナーが始まる。

曲も "Audrey's Dance" !

マジか。

これって、夢に揺蕩う乙女ってこと?

いい気持ちでクネクネ踊っていると、

いきなり「モニークに手を出すな!」と乱闘が。

で、みんな騒然の鏡シーン!

もう、なんのこっちゃ...。

 

そんなこんなで来週は2話連続放送の最終回!

...、...、...。

ではなくて、普通に1話ずつ放送するみたい...。

だとしたら第8章の後のインターミッションって、

やっぱ普通に宮里藍だっただけなのかなぁ...。

旧シリーズの放送形態を、

まんま再現してるんだと思ってたんだけど...。

ツイン・ピークス The Return コラム マーガレット・ランターマン(丸太おばさん / ログ・レディ)

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今週の第15章が最期となってしまった丸太おばさん。『ツイン・ピークス』の代名詞と言っても過言ではない町一番の変人でした(これは最大限の褒め言葉です)。彼女を演じていたキャサリン・E・コールソンさんは癌闘病の末、2015年9月28日に既に亡くなられています。享年71歳。長編映画テビュー作『イレイザーヘッド』から実に35年以上という長い付き合いになるデイヴィッド・リンチ監督は、彼女の訃報を受けて当時こんなコメントを残していました。

「今日、私は大切な友人のひとりであるキャサリン・コールソンを失いました。キャサリンは、まさに純金のような人物でした。彼女はいつも友人たちのそばにいて、全ての人々、家族、そして仕事への愛に溢れる人物でした。彼女は疲れを知らない働き者でした。彼女は笑いのセンスがあり、笑うことが好きでしたし、周りを笑わせることが大好きでした。彼女はスピリチュアルな人で、長年に渡り超越瞑想を実行していました。そして、彼女は丸太おばさんでした」

新シリーズ『The Return』の出演時も鼻にカニューレを付け、女優さんなのにカツラを被るわけでもなく、普通であればあまり公には見せたくない "素" の状態(しかも癌という非常にデリケートな状態)をこれでもかと曝しながら演じられていました。まるで「キャサリン・コールソン=丸太おばさん」なのだと言わんばかりです。こんな女優さん、今まで見たことがありません。その魂をあるがままの姿でカメラに納めることができたのもリンチ監督だからこそと言えますし、彼女をそうまでさせてしまうリンチ監督への絶大な信頼と愛情に思いを馳せると、観ているこちら側の胸にもズシンと重く響くものがあります。

第15章の考察で丸太おばさんのシーンはさらっと終わらせたのですが、最後に語られた台詞が丸太おばさん曰くキャサリン・コールソンさんからのとても熱いメッセージだったので、とてもあのふざけた駄文の中に入れる気にはなれませんでした。そして、保安官事務所の会議室で捧げられた黙祷、小屋の明かりが静かに消えていく様を観ていると、一つの時代が終わったと感じずにはいられないのです。

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旧シリーズでの丸太おばさんの印象は冒頭の "変人" もしくは "偏屈" な女性というイメージが強く、小学校とかで必ず一人はいた怖いおばさん先生みたいな感じ。裏を返すと「悪いことは悪い」としっかり怒ってくれる、今振り返ると良い先生だったんだな、みたいな人。

集会所のシーンで照明のスイッチをカチカチしていたのも、ダブルRダイナーの隅っこで噛んでいた "松脂" をプホッ!と吹き飛ばすのも、丸太おばさんだから笑って見ることができたキャラクターでした。そんなリンチ印の "ちょっとおかしな人" という面がありながら、ブリッグス少佐に啓示を与えたり、クーパーと共に巨人を目撃したり、最終回では保安官事務所に「これが入口への道よ」と "焦げたオイル" を届けたり、徐々に "森" からのメッセージを伝える重要なファクターへと変貌していきました。

中でも、映画「FIRE WALK WITH ME」での登場シーンが僕は一番好きなのですが、自棄になってロードハウスに向かうローラ・パーマーに、丸太おばさんは次のように語りかけます。

「こういう "火" が燃えだすと消すのが難しくなるのよ。無垢な弱い枝なんて真っ先に燃えてしまう。そして、風が吹くと全ての "善" が危険にさらされてしまうの」

まるで熱を帯びたローラの "火" を鎮めるように額や頬や掌に手を当て、"気を付けるのよ" と目配せすると多くを語らずにその場を去っていきます。ローラは丸太おばさんの手の温もりに一時の安らぎを覚え、ガラスに映る変わり果てた自分の姿を見ると、失い始めていた純真さに気づきます。ロードハウスのステージではジュリー・クルーズが、まるでシューベルトアヴェ・マリアのような祈りの歌「Questions In a World of Blue」を歌っています。失われていくもの、消えていくもの、救われないもの、そんな喪失感にローラの涙が止まらなくなります。

町で一番の変人と思われていた丸太おばさんが、誰の理解も得られず一人苦しんでいたローラを、実は町で唯一理解していたというシーン。いつ観ても、ジュリー・クルーズの歌と相まって静かな浄化を促してくれます。

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丸太おばさんことマーガレット・ランターマンには、今まで語られることがなかった裏設定がありました。『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』には、マーガレット・ランターマンがどのようにしてダグラスモミの丸太を抱えた "丸太おばさん" になったのかが描かれています。その他にも、小学校のクラスメイトに "ある人物" が居たり、その人物と一緒に "ある事件" に巻き込まれたことも描かれているのですが、ここでは丸太おばさんのビギニングについてだけ、少し触れたいと思います。

マーガレット、通称マギーは三十路を超えても恋愛や結婚などに興味がなく天涯孤独の身でした。町の図書館で働きながら、自然保護団体に協力する日々を送っていたのですが、そんなある日、マギーは一人の屈強な "木こり" サム・ランターマンと出会い、雷に打たれたように恋に落ちたのでした。二人の交際は順調に進み、交際を始めてからちょうど1年後、"ジャック・ラビット・パレス" でサムはプロポーズをします。もちろんマギーは喜んで受け入れるのですが、実はかなりの奥手だったサムをプロポーズに導いたのは、他ならぬ彼女の策によってだったのです。

結婚式当日、午後から嵐が吹き荒れはじめ、式の最中に一際大きな雷が森に落ちました。すぐに火の手が上がり、大火はブルー・パイン・マウンテンの麓に向かい始めます。消防団の団長を務めていたサムは、式を中断すると消火活動のために森に向かい、マギーもウェディングドレスを着たまま救助活動を手伝います。森の火は一晩中燃え盛り、ゴーストウッドの森を焼き尽くしていきました。

翌朝、マギーのもとに訃報が届きます。夫であるサムが消火活動中に過って谷に転落し亡くなってしまったのです。その報せが届いた時、マギーはまだドレス姿のままでした。

2日後、彼女は夫の亡骸を自宅の敷地の一区画にそっと埋葬しました。その翌日、想い出の地 "ジャック・ラビット・パレス" に赴いたマギーは、倒木していたダグラスモミの破片から小さな丸太を見つけます。それ以来、彼女は片時も離さずその丸太を腕の中に抱き続けています。まるで生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえるかのように...。

この丸太はマーガレットにとって夫であるサムの分身であり、森からのメッセージを受信するアンテナのようでもあり、天涯孤独で打ち解け合う人もいなかった彼女の唯一のぬくもりでもあったのです。

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マーガレットはラストシーンで自分の死が近いことをホークに報告します。死は終わりじゃないということ、そして、変化があるだけのことなのだと言い残すのです。それでも "怖さ" があると打ち明けます。手放す事が怖いと言うのです。この "心の揺れ" が、僕の胸にひどく突き刺さってきます。頭ではわかっている。終わりじゃないとわかっているんだけど、どうしようもなく込み上げてくるものがやはりあるのです。それをマーガレットは素直に "怖い" と表現していました。

今年、僕の周りでも癌で亡くなった方が数人います。一人はまだ40代で現役バリバリの野郎でした。サーフィンが好きで、野球が好きで、ガッチリとした体格が自慢の野郎でしたが、癌に侵されてから見る見るうちにやせ細っていきました。最後まで「病気には負けない」と口にしていたのですが、病とはやはり恐ろしいものです。自分でなんとかできるものなら、みんながみんな、必ずなんとかしたいと思うはずです。それができない悔しさ、今まで普通にできていたことができなくなっていく絶望、その境地を思うと居たたまれなくなります。鏡を見ると変わり果てていく自分の姿、それが僕だとしたら、あの "野郎" みたいに、あんなに気丈にふるまうことなんて、とてもできないと思います。

キャサリン・コールソンさんは、それを何千何万という視聴者の前で、ありのままに演じきっていきました。その姿をドキュメンタリーではなく、エンターテイメントの中に見事に組み込んだリンチ監督の手腕には敬服するばかりです。今回の新シリーズ『The Return』、リンチ監督の集大成以上の神がかり的な凄さをひしひしと感じます。

"変化" を迎えた世界が、マーガレットにとって、夫サムと大自然の中で新たな生活ができる幸福な世界であることを願っています。

ツイン・ピークス The Return 考察 第15章 エド、おめでとう!コンビニの先でヤカンがお出迎え!丸太おばさんに献杯!

お久しぶりです、姐さん。

先週、物語の根幹を理解したつもりでしたが、

そんなものなんの意味もありませんでした。

姐さん、

恐れていたことがとうとう起きちまいました。

マーク・フロスト、さじを投げちまいやした!

わけわかんねえっす!

森で犬の散歩してる場合じゃないぞ!

どうすりゃいいんだよ!

 

◆ホワイト・テール・マウンテン

リンチ先生、

ドローン撮影が余程お気に召した様子です。

 

◆州間高速道路90号線

ネイディーンが金のシャベル持って歩いてます。

なんか嬉しそうですよ。

ジャコビー先生に会えたのがよっぽどだったみたい。

 

◆ビッグ・エドのガソリンスタンド

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こないだは夜のシーンだったので、

あまり気にならなかったけど、

どうやら場所を変えたらしいです。

ちなみに昔はこんな。

めっちゃ廃れてます。

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そこへやってきたネイディーン。

ノーマとくっつきなさいと言います。

ええ!

今さら!

ネイディーンとエドが出会ったのは1984年。

既に30年以上も経ってますけど!

 

◆ダブルRダイナー

オーティス・レディングの「愛し過ぎて」

もお~、リンチの選曲は間違いがない!

この曲、これから完全にエドのテーマだよ。

歌詞までビッタンコなんだもん!

 

ノーマもフランチャイズをやめるらしい。

ウォルター、ショック。

ていうか、もともと相手にされてなかったし。

まあ、仕方がないさ。

ツイン・ピークスの男達は、

みんな一度はノーマさんに恋をするのだ。

で、30数年の時をかけて、

やっと...、やっと...、二人は結ばれました。

おめでとう!

 

◆電線

先週、アンディーが見た電線。

何かが伝播しているようです。

バリバリバリバリバリ...。

 

◆コンビニエンス・ストア

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悪クーパーがコンビニに到着。

この人、普通にやってきたな。

そんな簡単に行けるところなん?

二階に上がると何やらコンデンサがある。

これって映画に出てたやつやん。

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これね。

昔は "きこり" も身なりがキレイだったよね。

今は真っ黒だけどさ。

ていうか、今の "きこり" 口から血流してるけど...。

 

悪クーパー、フィリップに会いたいんだって。

言われて、コンデンサの電源を入れると、

ジャンピングマンの顔が現れます。

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こいつね。

ただ、怖いのがさ、

セーラの顔がめっちゃダブってるのよ。

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なにこれ?

ジャンピングマン=セーラ・パーマーってこと?

だとしたら、やばくないですか?

なんかラスボス感、出てきたんですけど...。

 

で、案内される悪クーパー。

その扉ってローラが夢で迷い込んだ扉だよね。

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壁の柄まで25年前と一緒です。

んでもって通路を歩いていくんですが、

ちょいちょい森がオーバーラップします。

たぶん、この森はゴーストウッドの森。

どうやら次元の階層が複数重なってるようです。

 

その先にまた階段。

これはゴードンが "ゾーン" で見た階段。

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てことは、ヘイスティングスもここに来た?

ブリッグス少佐は、ここで冬眠をしてた?

ね?

わけわかんないでしょ?

迷宮に入り込んだ感じするでしょ?

 

階段の先はどこかのモーテル。

悪クーパー、8号室の部屋に行きます。

開けようとしたら鍵が掛かってる。

そこに女が現れる。

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鍵を開けてくれます。

ていうか、誰?

ジュディ?

 

8号室の中にはフィリップ・ジェフリーズ。

ていうか、なに?

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みんなヤカンだって言うけど、

これ、ヤカンが喋ってる訳じゃないよね?

ヤカンの先のまるい部分がフィリップってこと?

それとも、その "思念" が具現化したもの?

事情が事情だから仕方ないけど、

もお、なにがなんだかです。

 

悪クーパー、完全にフィリップを疑ってます。

『ジュディ』を教えろと迫ります。

するとヤカンの口から数字が出てきます。

"485514....."

これルースの腕に書かれてた "座標" です。

てことは、聖なる山?

ジュディは聖なる山にいるのね?

 

黒電話に出たら外に追い出される悪クーパー。

そこにはリチャード。

どうやら悪クーパーを追いかけてきたらしい。

オードリーがクーパーの写真を持っていた。

だから、追いかけてきた。

意味がわかりません。

しかも、簡単にボコられます。

まあ、見た目はサイコな感じだけど、

喧嘩は強そうじゃないリチャードですからね。

二人はトラックの中でおしゃべりするんだって。

 

トラックに乗る前にメールを一本打つ悪クーパー。

「ラスベガスは?」

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これ第12章で裏切りダイアンがもらったメールです。

たぶん。

日付はわかりませんが、

ダイアンが受け取ったメールの時間は "19:28"、

悪クーパーが送った時間は "21:34" です。

二人の間にどれだけの時差があるんでしょ?

 

◆ゴーストウッドの森

スティーヴンとガーステン。

森の奥まで逃げてきたみたい。

なにやら左腿をさすっているスティーヴン。

しきりに「俺がやった...」と言ってます。

なにを?

スティーヴン、

どうも見えない何かに追われてるみたい。

それから逃げるため拳銃自殺するらしい。

犬の散歩中のシリルが二人を見かける。

ていうか、どこまで散歩してきてるん?

とりあえず見つかって逃げるガーステン。

銃声が響き渡る。

たぶん、スティーヴン、終わりです。

 

◆ニュー・ファットトラウト・トレイラーパーク

カールにスティーヴンのことを教えるシリル。

さっきのネイディーンもそうだけど、

この人たちの脚力、どうなってるん?

 

◆BANG BANG BAR

ZZ TOPの「SHARP DRESSED MAN」

フルヴォリュームで楽しんでるバーの人たち。

ていうか、バンドいないじゃん!

 

ジェームズとフレディーがやってくる。

レネーに声をかけると、

旦那のチャックがブチ切れます。

まあ、当たり前です。

ダチのスキッパーとボコボコにしてたら、

フレディーが入ってきて、

園芸手袋パンチで一発KO...。

なんなんだ、これ...。

 

◆FBIラスベガス支部

ウィルソンがダグラス・ジョーンズを連行。

その様子を見に行くヘッドリー。

部屋には子沢山なジョーンズ一家

旦那さん、可哀そうに手錠かけられてるやん!

なんなんだ、これ...。

 

◆ダンカンのオフィス

ダンカンとロジャー。

突然現れたシャンタルに殺されます。

なんだよ、シャンタル!

お色気じゃないのかよ!

夫婦そろって射撃の名手かよ!

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所

牢屋に入れられるジェームズとフレディー。

「その手袋野郎、今度は何した?」とチャド。

フレディー、前にもなんかしとったんか!

レネーの旦那の様子が気になるジェームズ。

なんか、いちいちウザいんだよなぁ。

黙ってろ。

ナイドは相変わらず鳥の鳴きまね中。

 

◆ハッチの車の中

夫婦でハンバーガーのディナー中。

さりげなくインディアン虐殺の話が出てきます。

いいぞ、もっと語れ。

「火星だ」

...、...、...、

マジか...。

 

◆ダギー・ジョーンズの家

こっちはチョコレートケーキのディナー。

ジェイニーEってコーヒー出さないよね。

やっぱ、まずいのかな...。

テレビをつけると『サンセット大通り』

"ゴードン・コール" というセリフに、

クーパー慌てて一時停止ボタンです。

なんだ?

目覚めるのか?

フォークをコンセントに差して感電します。

 

ここで『サンセット大通り』ってスゴイな。

こんなネタバレ、自分からするなんて、

『The Return』のリンチは何かがいつもと違う。

 

◆丸太おばさんの小屋

ホークに電話をする丸太おばさん。

別れの挨拶です。

おやすみなさい、そして、さようなら。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:会議室

丸太おばさんが亡くなったことが知らされる。

 

◆オードリーの家

相変わらず外に出る出ないで喧嘩してる二人。

なんなんだろなぁ...。

最後にはチャーリーの首絞めてるし。

ていうか、

チャーリーにしろ、スパイクにしろ、

背の小さい人は首を絞められる運命なのか?

 

◆BANG BANG BAR

本日二度目のBANG BANG BAR。

ルビーという娘が人を待ってます。

一見、昔のマデリーンみたい。

なぜか床を四つん這いで歩き始めます。

で、泣き叫んで終わり。

マジ、わけわかんねえよ!

あと3話でホントに終わるのか!

ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹

1.青いバラ事件

 1975年、ワシントン州西部に位置する州都オリンピアで、とある殺人事件が起きた。当時、事件捜査を担当したのは二人のFBI捜査官。一人はワシントン州の地域担当官だったゴードン・コール、もう一人は彼とタッグを組んでいた特別捜査官フィリップ・ジェフリーズであった。二人は捜査の末、事件の犯人である "ロイス・ダフィー" という女性に辿り着き、容疑者逮捕の為に彼女の部屋に赴いた。その時、部屋の中から銃声が響き渡り、FBIの二人は急いで部屋の中へ飛び込むが、その目の前にはまるで鏡写しの様に二人のロイス・ダフィーの姿があった。一人は床に倒れており、腹部に銃弾を受けて瀕死の状態、もう一人は銃を構えたまま後ずさりし、ショックから手に持っていた銃を床に落とした。ゴードンとフィリップは瀕死のロイスに駆け寄りすぐに救助を始めようとするが、彼女はそっと微笑み「私は青いバラと同じ」と言い残すと息を引き取った。そして、不思議なことにゴードンとフィリップの目の前で彼女は忽然と姿を消してしまった。もう一人のロイスは部屋の隅で叫び声を上げ続けていた...。あえなく逮捕された彼女はひたすら無実を訴え続けたが、州裁判所の判決を前に首を吊り自害してしまった。

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※画像は1975年のオリンピア(作品との関連はありません)

 先々週の第12章で "青いバラ特捜チーム" の発端となったのが「青いバラ事件」であったことが語られました。その事件で死んだ女性が最後に言い残した言葉から、このプロジェクト名が取られたというのです。そして今週、その事件のあらましが再びアルバートの口から語られました。ロイス・ダフィー (Lois Duffy) という女性が誰かを殺し、そして彼女にはドッペルゲンガーがいたことが明らかになったのです。銃で撃たれたロイスの左薬指に "翡翠の指輪" が嵌められていたのか?など詳細についての謎は残りますが、先週のレイ・モンローの一件からおおよその想像はみなさん付くのではないかと思います。悪クーパーを殺した暁には左薬指に "翡翠の指輪" を嵌めろというくだりです。しかし、そもそもロイスという女性が若いのかどうかもわかりませんし、容姿がどのようなものだったのかもわかりません。ロイスが誰を殺したのかもわからずじまいです。

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※海外のピーカーが作ったマガジン風の「青いバラ事件」

 第12章のアルバートのセリフを振り返ると「数年後、軍とFBIは極秘チームを立ち上げ、ブルーブック計画が残した謎に連なる "不可思議な事件" の捜査に乗り出した」と語っていました。その "不可思議な事件" が「青いバラ事件」であり、そこには殺人とドッペルゲンガー、未確定ですが "翡翠の指輪" が絡んでいたのでした。アルバートはこうも言っています。「今までとは違う道を進まない限り答えに辿り着かない」と。その意味するところは、オリンピアで起きた殺人事件が、犯人を逮捕して解決という単純なものではなく、UFOなどの超常現象にまつわる不可解な事象を孕んでいることを示しています。まるでローラ・パーマー殺人事件がそうであったように、この "青いバラ事件" も同じ部類のものだと言えるのです。そして、それは1969年にプロジェクト中止に追い込まれたブルーブック計画から "連なっている謎" でもあったのです。

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※報告書は20年に及ぶ調査の結果、地球外生命体は存在しないという結論に達している

 第12章の考察で、僕はブルーブック計画の発端が "ロズウェル事件" であり、その事件が1947年に "ニューメキシコ州" で起きたUFO墜落事件ということから、第8章のトリニティ実験とその後の "森の男" 絡みの事件と関連があるのではないかと論じました。繰り返しになりますが "ブルーブック計画" というのは、実際にアメリカにあった極秘プロジェクトです。第12章の時点では「青いバラ事件」もニューメキシコ州で起きた事件ではないかという "仮説" のもとで考察をしていましたが、今週、その舞台はワシントン州であったことが明らかになりました。ただ舞台は違いますが、そこに関連する人物はアルバート曰く “連なっている" ので、何かしらの繋がりがあるのではないかと思っています。つまり、そこに登場するのは剛腕な握力を持つ "森の男" と、その放送を聞いて倒れていった車の整備士やダイナーのウェイトレス。この二人はただ気絶をしただけなのか、そのまま卒倒してしまったのかははっきりしていません。そして、トビガエルを口から体内に取り入れてしまった少女。トビガエルという奇怪な存在が悪なのかどうなのかもはっきりしていませんし、この物体を産み出したエクスペリメントが何を求めているのかもはっきりとは描かれていません。ただ、これらのことから推測できるのは、マンハッタン計画から綿々と受け継がれてきた研究(エクスペリメントの意味は「実験」)が、どこかの段階で未知の扉を開けてしまい、そこから得体の知れないものたちが出現してしまったということではないかと思うのです。まるでビル・ヘイスティングスが開いてしまった "ゾーン" のように、それは遥か彼方の惑星からやってきたのではなく、私たちのすぐそばに平衡世界として存在しているのだと言いたげなのです。

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マンハッタン計画の主要箇所は、今回の「The Return」の舞台となっている場所と驚くほど酷似している

 タミー・プレイストン捜査官は “青いバラ“ の意味について考察をします。その内容については第7章で論じた僕の記事とほぼ一緒で、1992年に公開された映画「FIRE WALK WITH ME」の時にピーカー達が考察していた内容とも一緒でした。つまり “青いバラ” = “存在しないもの” という定義です。これは長年の謎とされてきた定義が、25年の月日を経てついに公式に認められたということになります。デズモンド捜査官はゴードンからの指令により、この世に存在しないものを探し出そうとしていたのです。さらにタミーがスゴイのはその論理から “化身” というチベット用語にまで発展させていることです。この “化身" という単語は “トゥルパ” とも呼ばれ、タミーが解釈していたように "魔術的顕現" や "喚起されたもの" という意味があります。これはそのままドッペルゲンガーを説明しているようにも聞こえます。ただ、第7章の考察で語ったように ”青いバラ” は現代では “存在するもの” となっています。これはかつては存在しなかったものが存在するようになったというロジックのようにも解釈できるのです。それはまるでロッジから産み出された "化身" のようでもあり、存在を否定されたブルーブック計画への再定義のようにも受け取れます。

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ドッペルゲンガーは "死の前兆" であると信じられていた

 ゴードン・コールは久方ぶりにツイン・ピークス保安官事務所に連絡を取ります。25年ぶりに放射された "ルーシーおとぼけ回答" に瞬間凍結したゴードンは、フランク・トルーマンから知らされた "二人のクーパー" という情報を聞き、事の真相に光明を得たように見えます。第3章のヤンクトン刑務所で対峙したデイル・クーパーへの違和感が、ここで若き日の "青いバラ事件" とオーバーラップし、真のデイル・クーパーが他にいるという解釈へ進んだと思われるのです。僕たち視聴者はゴードンが対峙したクーパーが "ドッペルゲンガー" であることを既に知っているのですが、ゴードンからするとフランクが教えてくれた "二人のクーパー" というキーワードで初めてそこに至ったとなります。さらにその解釈は26年前のフィリップ・ジェフリーズの一言に集約されていきます。1988年のFBIフィラデルフィア支部に突如その姿を現わしたフィリップは、クーパーを指さして「ここにいるのは誰だと思う?」と予言するのです。"青いバラ事件" では相棒だったフィリップ・ジェフリーズ、"青いバラ" を求め失踪してしまった3人のFBI捜査官、存在するはずのない Woodsmanや "ゾーン" への接近、ブルーブック計画に参加しその後も秘密裏にデータ収集をしていたガーランド・ブリッグス少佐、そして、少佐の不自然な遺体、全てバラバラに思えていたパズルのピースがゴードン・コールの中でカチカチと組み合わされていく音が聞こえてきそうです。

 

2.夢見人

 "夢" というキーワードはデイヴィッド・リンチの作品には欠かせない重要な要素だと言えます。特に『ツイン・ピークス』以降の3作品『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』は「感覚映像ー自由連想仮説」を裏付けるような、レム睡眠の偶発的な視覚映像から出発する連想ストーリーをキュビズム的に俯瞰できる構造をしていました。『The Return』はその集大成とも言えるべきもので、各章は物語のあるキーワードを軸に次々と連想もしくは連鎖されていき、その連鎖反応が次章の視覚映像の出発点を産みだしていっているのです。その核心とも真実とも言える大きなテーマが、この第14章でなぜかモニカ・ベルッチによって告げられました。

「夢を見て、夢の中に生きる夢見人。その夢を見ているのは誰?」

 まるで僕たちが生きている現実が誰かの夢の中の世界で、その誰かが目覚めてしまうと僕たちの現実は一瞬にして存在しなくなってしまう。デイヴィッド・リンチはその理論に対して "強烈な不安感" と表現していました。永遠に続くエッシャーの無限階段が突如として外されてしまったような感覚。クリストファー・ノーラン監督作品「インセプション」にもこの理論は登場しています。

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※夢の構造はエッシャーの無限階段に似ている

 そもそも人は睡眠中になぜ "夢" を見るのか。さまざまな研究によって人体の不思議が徐々に解明されつつあるようですが、いずれにしても取り沙汰されるのはその原理やシステムについてであり、肝心な夢の "イメージ" がどこから生まれてくるのかという問いかけへの解答には、少なからずなっていないように個人的には思います。そんな中でカール・グスタフユングが提唱する "集合的無意識" という概念が、その解答に一番接近しているのではないかと思っているのです。それは "夢" だけではなく、リンチが常日頃ライフワークにしている "瞑想" にも当てはまる概念だと思うのです。

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 上記の図はユングが提唱する人間の意識の構造を図式化したものです。人間の意識は『個人の顕在意識』『個人の無意識』『集合的無意識』の3層から成り立っているという考え方です。各個人は海に浮かぶ島であり、海面から突き出ているのが『顕在意識』の領域、海面下に埋もれているのが『無意識』の領域、そして、海底で全てが繋がっている部分が『集合的無意識』の領域になります。『顕在意識』は常日頃僕たちが意識できる当たり前の現実の世界、『無意識』は普段は隠れている領域もしくは意識することができない領域のこと。潜在意識、潜在能力、そんな言葉に置き換えることも可能だと思います。そして『集合的無意識』は人々の意識が全て集まっている場所。それは太古から現代まで、とにかく歴史上存在した全ての人間の意識が集まっている場所、普遍の場所になります。"夢" を見るという行為は顕在意識の島から海にダイブして無意識の領域に潜っていくこと。"瞑想" するということは顕在意識の島から集合的無意識まで深く静かに潜りこんでいく行為だと言えます。そして、この意識の構造の図式、『The Return』の中で見たような覚えがありませんか?

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 そうです第8章で登場したあの島です。大海原の中にポツンと佇む島、これが集合的無意識の海に浮かぶ "誰か" の顕在意識になるのです。その顕在意識の島の突端には宮殿があり、そこに今回明らかになった "消防士" とセニョリータが居ました。消防士の存在については、また然るべき時に考察したいと思いますが、いずれにしても彼らは "誰か" の意識の中にある産物だと言えるのです。そして、モニカ・ベルッチが語った "夢見人が見る夢" を見ている "誰か" とは、この顕在意識の持ち主になるのではないかと思うのです。残り数話の中で、それが解明されるのかどうかはわかりませんが、なにかしらのヒントは提示されるはずだと僕は確信しています。

 

3.ジャック・ラビット・パレス

 ツイン・ピークスという町には不思議な場所が点在しています。ベンジャミン・ホーンが経営しているグレート・ノーザン・ホテルのすぐ脇にある "スノコルミーの滝" 。この滝は、かつて周辺に集落を作っていたインディアンたちの奇妙な精霊信仰の場所でもありました。そして、ツイン・ピークスを象徴する二つの山。ブルー・パイン・マウンテンとホワイト・テール・マウンテン。精神科医の医師免許を剥奪され、今では社会の腐敗と強欲さを凶弾しているローレンス・ジャコビーはホワイト・テールの頂上付近に居を構えています。そして、第11章でトーマス・"ホーク"・ヒル保安官が語っていたようにブルー・パインは "神聖な山" とされています。その "神聖な山" の麓にはゴーストウッドと呼ばれる奥深い森が広がり、その森の奥には "グラストンベリー・グローブ" と呼ばれる12本のシカモアの木で作られたサークルが存在します。

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※実際のグラストンベリーにはアーサー王の墓があるが、その王の存在は未だに実在していたかどうか不明である

 1983年、ブルー・パイン・マウンテンの麓に戦略防衛構想(SDI)関連の施設が政府によって建設されました。この施設建設に疑問を抱いたのが現ニュー・ファットトラウト・トレイラーパークの管理人であるカール・ロッドであり、彼は秘密裏に進められている建設現場への不信をツイン・ピークス・ポスト紙に寄稿しました。それを受けて政府から発表されたのが先のSDI関連施設という回答だったのですが、実はそれは隠れ蓑であり、実際はガーランド・ブリッグス少佐が務める極秘施設「SETIアンテナアレイ7-1」またの名を「リスニング・ポスト・アルファ(LPA)」と呼ばれるブルーブック計画直下の調査施設だったのです。そこには最新鋭の深宇宙マルチスペクトル探査受信装置が設置され、宇宙全体から知的生命の痕跡を探し出そうとするものでした。

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※現時点で3億8000万光年先の宇宙の姿まで人類は確認している

 ブリッグス少佐が残したメモに記された "ジャック・ラビット・パレス" は、このLPA施設のそばにある古いダグラスモミの巨木の跡でした。この巨大なダグラスモミの樹が倒木したのは1927年のある嵐の夜、鋭い稲妻が木のてっぺんに落ち、ゴウゴウと燃え上がったためでした。当時、その燃え上がるダグラスモミの巨木のそばに背丈2メートル以上はありそうな巨人が現れたことをある青年が目撃していますが、町の人たちは一笑に付し相手にしませんでした。この小さな町で起きた巨人伝説の信憑性はさておき、このダグラスモミの巨木には僕たちの理解に及ばない不思議な力が存在していると言えそうです。そして何かに導かれるように、その地点にブリッグス少佐の息子ボビーとツイン・ピークス保安官事務所の面々が辿り着くのです。ボビーは小さい頃「ひとりでこの森をうろつくな」と父親に言われていたようなので、その頃から既にこの森の神秘性もしくは不穏な何かをブリッグス少佐は感じていたのかもしれません。

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 さらにそこから東へ253ヤード進めとメモには記されていました。言われる通り進んでいくと、靄が立ち込める少し開けた場所に辿り着きます。そこには一本のシカモアの木が梢立ち、近くにはグラストンベリー・グローブのオイル壺のような "溜り" ができていました。溜まっている液体がどのような種類のものなのかは判別しにくいですが、"焦げたオイル" ではなさそうです。そして、そのそばには裸で横たわるナイドの姿があったのです。一同は彼女のそばに近づき助け起こそうとしますが、その時、メモにあった2時53分の時刻になり、突然、森の中にワームホールが出現、ナイドのそばにいたアンディーがその渦の中へと吸い込まれてしまうのです。

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 吸い込まれた先での出来事と場所については然るべき時に考察をしますが、もともと悪クーパーが追い求めていた "座標" の位置がこの場所だとしたら、その目的は一つしかありません。もともとここの "座標" はゾーンに入り込んできたウィリアム・ヘイスティングスとルース・ダヴェンポートに、ブリッグス少佐が "安全な場所" に行く為、見つけて欲しいと依頼をした場所でした。つまりブリッグス少佐は、このシカモアの梢が立つ場所に来れば "身の安全を守ることができる" と思っていたことになります。そして、悪クーパーはそこに逃げ込んでいると思しきブリッグス少佐の後を追っているということになるのです。

 では、その "安全な場所" とはどこのことなのか?ということになりますが、これはほぼ "ホワイト・ロッジ" のことを指すのではないかと思われます。その根拠は旧シリーズの第20話のオープニングです。森の中で何者かにさらわれたブリッグス少佐が2日後に生還し、ツイン・ピークス保安官事務所で失踪時の顛末を語っている時でした。今まで頑なに機密として目的を語りたがらなかったブリッグス少佐は一言告白します。

「われわれは "ホワイト・ロッジ" を探している」

 ここからは事の要約になります。"神聖な山" とされているブルー・パイン・マウンテン。それはこの辺りで集落を作っていたインディアンたちの時代から綿々と受け継がれてきた概念です。そこにブルーブック計画直下の極秘施設が政府によって建設され、ガーランド・ブリッグス少佐はその施設で宇宙からの電波を傍受していました。そして具体的には語られていませんが、25年前のツイン・ピークス郊外の政府施設で起きた火災というのは、この極秘施設LPAのことをほぼ指していると思われます。その火災でブリッグス少佐は死亡、その直前に悪クーパーが少佐のもとを訪ねています。しかし、その後25年の間に国防総省ペンタゴンには計15回もブリッグス少佐の指紋照合の結果が送られ、その手掛かりはいつも不明だったのです。25年後のサウスダコタ州バックホーンで、ビル・ヘイスティングスがゾーンへの扉を開いた時、そこで "冬眠" をしていたのはブリッグス少佐でした。冬眠から目覚めた少佐は "安全な場所" を求め、その座標の数字をビル&ルースに入手してもらうよう依頼します。それを手に入れたビル&ルースは、再びブリッグス少佐のもとを訪ね座標の数字を伝えます。すると少佐は宙に浮き「クーパー、クーパー」と言い残し、その頭部が忽然と消えてしまいます。残った胴体は殺されたルース・ダヴェンポートの頭部と一緒にバックホーンのアパートへと飛ばされ、それを調査したコンスタンス鑑識官によりペンタゴンに16回目の指紋照合の結果が送られたのです。そして今、その座標の位置に最愛の息子ボビーが訪れてきました。さらにルースの遺体を見つけたFBIの面々、そして、悪クーパーとつながっているダイアンも、いずれこの地に辿り着く流れが見えてきています。その辿り着いた先、最終的な場所というのが、かのブルーブック計画の時点から追い求められていた "ホワイト・ロッジ" になるのでは?と思います。その重要な場所の目印となるのが、この不思議な引力を持つダグラスモミの巨木 "ジャック・ラビット・パレス" になるのです。

※この節で考察している情報の中で、テレビ放送で明らかになったもの以外の情報が複数ありますが、それらは全て書籍『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』からの引用になります

 

4.その他

【ゴードンとルーシー】

 25年ぶりの連絡なのにその大声で一発でゴードンだと理解したルーシー。ゴードンも相手がルーシーだとわかっていた様子。そこに "お久しぶり" も "ご無沙汰" の挨拶もなし。さすがです。ルーシーに至っては「ボラボラ島にも行きました」なんて話まで飛び出る始末。どうやらアンディーとルーシーの新婚旅行は "太平洋の真珠" へのバカンスだったようです。

 

【ダイアンとジェイニーE】

 至る所で驚愕されている "ダイアンとジェイニーEが姉妹" という話ですが、みなさん、あまりにもチョッパーすぎやしないですか?と僕は思っています(ちなみにチョッパーは漫画『ワンピース』のあのタヌキチもしくはチョニキのことです)。あの裏切りダイアンが果たしてゴードンたちに真実を話すでしょうか?いつも "クソ" と悪態をついて、今回なんか「アシスタント登場」なんてあまりにもわざとらしい登場の仕方をしています。先々週、悪クーパーから「ラスベガスは?」なんてメールをもらっているぐらいなので、これはゴードンたちをラスベガスに誘い込むミスリードではないかと思うのです。仮にこの姉妹説が真実だとするなら、姉妹喧嘩は原爆以上の破壊力で周囲を巻き込みそうです。恐ろしい...。

 

【FBIラスベガス支部

 ヘッドリー捜査官とウィルソン捜査官。ゴードンから連絡を受け、ラスベガス在住のダグラス・ジョーンズの情報を至急集めろ、相手は武装しているから十分警戒しろと言われます。さっそく調べてみると市街地だけで23人もダグラス・ジョーンズがいるらしい。23人!そんなに同姓同名っているもんですか?2人から3人の間違いじゃないですか?しかも、ウィルソン捜査官、23人もいちゃどうやって絞るのさとボヤくと、ヘッドリーからそれがオレたちの仕事なんだ!何回言えばわかるんだ!と怒られます。いやいや、毎回毎回23人もの容疑者から1人に絞っているわけじゃないですよね?ヘッドリー先輩、そんなにゴードンに認めてもらいたいん?あの人、モニカ・ベルッチの夢ばかり見てるらしいよ。

 

【チャド逮捕】

 あっけなく逮捕されたチャド。どうやらフランクは何か月も見張っていたらしいのですが、逮捕の決め手になったのがなんだったのかはわかりません。たぶん、リチャードに "完了" ってメールを送ったり、ドーナツ食べながらミリアムからの手紙を破棄したり、飲食禁止の会議室でお昼ご飯食べたり、ロードハウスでリチャードからお金を受け取ったり、いや、一番はフランクの息子の自殺をおちょくったのが逆鱗に触れたのかもしれません。いずれにしても、今まで描かれていたシーン全てがフランクには筒抜けだったようです。

 

【消防士とアンディー】

 ワームホールにアンディーが吸い込まれたのもビックリですが、突然「私は消防士だ」と、とんでもないカミングアウトをした巨人にもビックリです。あんた消防士だったの?みたいな。これってブラック・ロッジが "火" を弄ぶ場所だとしたら、それを "消火" する場所がホワイト・ロッジって考え方でいいのでしょうか?確定するには、もう少し情報が欲しい感じです。さらに数々の映像をアンディーに見せるわけですが、これが今までのおさらい、というか、とんでもない早送りダイジェストになっています。

 〇エクスペリメントの存在

 〇ボブ玉の誕生

 〇コンビニ オープン

 〇オープンに群がる真っ黒おっちゃん

 〇火、あるか?

 〇電線を伝って悪が伝番

 〇ローラ・パーマー殺害

 〇赤い部屋

 〇二人の天使に救われるローラ

 〇ナイド

 〇善クーパーと悪クーパー

 〇保安官事務所の電話が鳴る

 〇アンディーと不安げなルーシー

 〇再びナイド、アンディーの姿あり

 〇6の電信柱

 ローラが天使に救われるという辺りまでは、それまでの事柄が時系列順にダイジェストされているのがなんとなくわかりますが、ナイド以降はわかるところとそうでないところがあり、なんのこっちゃ?という感じです。これから未来のことを映し出しているようにも見えるし、それにしてもナイドの存在があまりにも謎すぎて、結局はなんのこっちゃ?という感じです。アンディーは十分理解したみたいですけど...。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所】

 保護したナイドにパジャマを着せているルーシー。ただ「ここで犬が迷子になった時からずっとロッカーに入れっぱなし」だったパジャマを着せるって、お~~~い!!!!! あんたらカヨワイ大和撫子になにしとるんじゃい!しかも留置所にチャドと、もう一人酔っ払いまでいるじゃないか!あんた酔っ払ったはずみで左の頬どうしたん?穴でも開いたのか?口から血が止まらないじゃないか。三人で鳥の鳴きまねをするって、僕ら "カゴの中" とでも言いたいんすか?

 

【ジェームズとフレディー】

 ガーデニング用の緑の手袋を右手にしているフレディー。どうやら "森の男" 並みに怪力の持ち主らしい。となると "森の男" は左手が怪力っぽかったので、買わずにビニールを破って手袋を持ち逃げした犯人が彼なのだろうか?いやいや、そんなことはございません。"森の男" は50年以上前の存在なのです。なのに、このロンドンで一番治安の悪い貧困層から飛び出てきた兄ちゃんに、消防士が "森の男" に対抗できる力を与えたって、なんで?消防士の人選ってアンディーもそうだけど、なんかビミョーじゃない?だって、ナイドに犬に使ったパジャマ着せてるんだよ?このフレディーも、なんでわざわざ海の向こうの人間なんだろ?ちなみにフレディーはもうすぐ23才になるらしい。さっきは23人のダグラス・ジョーンズ。なんかロジックでも隠れてます?デイヴィッド・リンチさま。

 

【グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室】

 ボイラーチェックに来るジェームズ。奥の扉からあの奇妙な音が響いてきます。以前、ビバリーが警備の人間に調べてもらったが異常はなかったとベン・ホーンに報告をしていましたが、嘘八百もいいところバリバリ音が鳴っています。バカ正直なジェームズのことなのでビバリーにちゃんとボイラー室と報告をしたでしょうから、これはベン・ホーンといい関係になりたかったビバリーがわざと嘘の報告をしたということっぽいです。

 

【エルクス・ポイント #9】

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 エルクスはヘラジカという意味です。

 日本ではあまり知名度のない動物なのですが、

 調べてみたらビックリしてしまいました。

 これです。

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 デカッ!

 森で出会ったら確実に殺されます。というか、ここ日本でも昔は生息していたみたいですので、第10章で考察したシシ神さまのモデルはシフゾウではなく、このヘラジカだったのかもしれません。ヘラジカの通称が「森の王」と呼ばれているんだから、なんか、もうそのまんまという感じがするじゃないですか。となると "ゴードンが書いた落書き" のモデルもこのヘラジカではないかと思います。さらに体が白いヘラジカは "神の使い" としてインディアン達から崇められていたとも言いますし、通常のヘラジカのことをインディアン達は "木を喰う者" と呼んでいたみたいです。ただ、"エルクス" という名称はヨーロッパ地方での呼び名で、アメリカ北部では "ムース" という名称が一般的なようです。だとしたら、このバーの店長はヨーロッパ出身ということでしょうか?しかも "#9" ってなに?

 

【セーラとトラック・ユー】

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 街でこんなTシャツを着てる輩を見かけたら、みなさん要注意です。彼は超がつく熟女好き、というよりも守備範囲がありえないぐらい広すぎます。ヤバイです。女性の方、特にお気を付けください。もし彼に捕まってしまったらムダな抵抗などはせず、迷わず自分の顔をパッカーンと開いてください。たぶん、彼は知らぬ間に首の半分を食いちぎられ、あっという間に倒れてしまいます。

 冗談はさておき、このセーラの中に存在するものとはいったいなんでしょうか?電気が走り、左の薬指だけが壊死したように真っ黒で、まるで喪黒 福造のような笑みを見せます。今にも「ドーン!!!!!」と指を差されそうですが、相手が不幸に落ちていくという辺り、まんまのような気がしてしまいます。

 第12章の考察でセーラのスメアゴル状態は長い孤独から育まれた分裂症のようなものと結論してみましたが、今回の顔パッカーンでどうやら別の側面もあることが明らかになりました。その側面についてのヒントは旧シリーズの最終話にあります。ダブルRダイナーでコーヒーブレイクをしているブリッグス少佐のもとにジャコビー先生がセーラを連れてきます。なにやらブリッグス少佐に伝えたいことがあるというのです。そして、セーラが口を開くとロッジの住人の声が語り始めます。「わたしはクーパー捜査官とブラック・ロッジにいる」と。そして、こうも続けます。

「私はあなたを待っている」

 ここでセーラを通してブリッグス少佐に語りかけているのは "別の場所から来た小さな男" ではないかと思われます。となると、今回の顔パッカーンの中にいるドス黒いものはブラック・ロッジの小人ということでしょうか?もしくはブラック・ロッジの中でもさらに位の高い何かなのでしょうか。トラック・ユーの首を噛み千切る動作は、ニューヨークのサム&トレイシーを襲ったエクスペリメントを彷彿させるようでもありました。謎は深まります。

 

5.BANG BANG BAR

 今週のBANG BANG BARはLissie。今までにない高揚感あるロックチューンでした。バーのボックス席で語られていたのは、オードリーが話していた "ビリー" について。これ、どうもおかしいです。ここ数回のBANG BANG BARで感じていたことですが、第8章の劇場後からBANG BANG BARのシーンだけ、どうも本編とは別の平行世界を描いているのではないかと思い始めています。これについては、また時間のある時に考察したいと思います。