that passion once again

日々の気づき。ディスク・レビューや映画・読書レビューなどなど。スローペースで更新。

ツイン・ピークス The Return 考察 第8章 ボブ誕生?トリニティ?こんなものわかるかっ!

スゴすぎた。

わけがわからなさすぎ!

だけど猛烈に魅力的。

そして、とてつもなくリンチ的!

こんなの、わかったフリしようものなら、

リンチ・フリークから袋叩きに遭いますな。

青二才がイキってんじゃねぇぞ、と。

よっしゃ、物は試しじゃないの。

無謀な解読に挑んでみましょう、姐さん。

しっかし、この21世紀に、よくもまあ、

こんな前衛的なものをテレビで放送したもんだ。

SHOWTIME、スゴすぎ。偉い!

ていうか、第8章だけでも映画館で観たいぜよ!

劇場で鑑賞してこそ真価が発揮されるぜよ!

もう、こんなのツイン・ピークスじゃないぜよ!

テレビドラマの範疇、とっくに超えてるぜよ!

 

◆ベージュのレンタカーの車内

 運転しているレイ・モンロー。助手席に悪クーパー。

  〇マーフィーが用意した車には3つの追跡装置

  〇「C」「FIRE」「D・X」

  〇前を走るトラックのナンバー「DEGWW 8」に転送

  〇レイは普通に銃刀法違反で捕まったらしい

  〇二人の行先は "農場" (ファーム)

  〇そこは安全だという

  〇レイは何かの組織、もしくは集団から "座標" を盗んだ

  〇悪クーパーが欲しい "座標" はレイが全て記憶している

  〇それは全て "数字"

  〇その "座標" はとても価値がある

  〇その "座標" は大金になるらしい

 第2章のダーリャ殺害時にも思いましたが、

 どうもレイとダーリャは、

 悪クーパーを普通にクーパーと呼んでいます。

 第1章で出てきた小屋の主人オーティスは、

 悪クーパーのことを "ミスターC" と呼んでいました。

 どうでもいい疑問かもしれませんが、

 彼らはクーパーが、

 もともとFBIだったということを知っているのでしょうか?

 

◆どこかの野原

 小便がしたいと車を止めるレイ。外に出ていく。

 グローブボックスから拳銃を取り出す悪クーパー。

 さて、前回、脱獄の条件提示で、

 マーフィー所長に「友達を入れておけ」と言ってましたが、

 それはどうやら拳銃だったようです。

 

 拳銃でレイを脅す悪クーパー。

 「報酬の50万ドルは諦めろ」

 しかし、レイも隠し持っていた拳銃を構える。

 引鉄を引く悪クーパー、しかし、拳銃は空砲。

 「引っかかったな」と悪クーパーを撃つレイ。

 2発の銃弾を腹に受けて悪クーパーが倒れる。

 ん?

 これって、レイとマーフィー所長はグルですか?

 "友達" って空砲のこと?

 

 ちょいと仮説を立ててみます。

 悪クーパーをおびき寄せるため、

 レイはわざとヤンクトン刑務所に捕まった、フリをした。

 第2章で盗聴されたレイとダーリャの会話の中で、

 「銃を持って州境を越えたらパクられた」と言ってましたが、

 サウスダコタ州はアメリカの中でも銃規制が甘い州らしいので、

 とてもレイが話していたことが本当だとは思えない。

 さらにプリペイド携帯だから大丈夫とも話していましたが、

 どうやらプリペイドの方が盗聴しやすいそうです。

 だとすると、レイは悪クーパーに聞かれるのを前提に、

 ダーリャと会話をしていたような節があります。

 それを真に受けていたダーリャが、なんかかわいそうですが...。

 

 となると、レイとマーフィー所長が、

 どうも裏でつながっていそうな気がしてきます。

 悪クーパーは拳銃を車に入れとけと言いましたが、

 レイは普通に懐に隠し持っていた。

 普通に捕まって、普通に脱獄するのに、

 この流れってやっぱおかしいよね。

 てことは、

 "座標" について、マーフィー所長も一枚噛んでいるのか?

 んん...。

 なんか違和感を感じるんだよなぁ。

 みんな役者すぎるような気がする。 

 

 本編に戻ります。

 悪クーパーにとどめを刺そうとレイが拳銃を構えると、

 野原の向こうから6人の全身真っ黒い男たちが現れる。

 彼らは実体を持たず、稲光の中で存在する。

 6人のうち3人はレイの周りを威嚇するように踊り、

 残り3人は悪クーパーの手当て(?)を始める。

 腹の傷を広げ、その血を顔に塗りたくる。

 傷はどんどん広がる。

 そして、広がった傷から黒い物体が姿を現わす。

 臓器のようなその物体の中にボブの姿がある。

 それを見たレイは、あまりの恐ろしさに逃げ出す。

 稲光と煙幕と共に黒い男たちも姿を消す。

 

 はい。

 集団でやってきましたよ、真っ黒なおっちゃん達が。

 第2章、ビル・ヘイスティングスの牢屋に現れ、

 顔だけ宙に消えていった全身真っ黒なおっちゃん。

 第7章、シンディ大尉が電話をしている廊下を

 ただただ通り過ぎていった真っ黒なおっちゃん。

 意味深に単独行動を起こしているのかと思いきや、

 ワサワサ出てきましたよ。ワサワサ。

 そして、悪クーパーを助けてるのか、

 それとも子供のように砂場で戯れているのか、

 とにかく「わーい、わーい」とワサワサしてます。

 それは、ボブがおびき寄せたのか?

 それとも未知なる力が働いているのか?

 そもそも、このおっちゃん達はなんのメタファーなん?

 ただ現れるだけで、あまり悪意を感じないんだけど。

 

◆ベージュのレンタカーの車内

 フィリップ・ジェフリーズに留守電を入れるレイ。

 「ヤツは死んだと思う」

 「でもヤツの仲間が現れたんで確信は持てない」

 「クーパの中に 何かいた」

 「それが今回の件の鍵になるかも」

 「行き先は言ってある」

 「追いかけてきたら そこで捕らえる」

 これもさっぱりわからない。

 フィリップはいったい何を企んでいるんだろう。

 ていうか、どのタイミングで、

 フィリップは悪クーパー抹殺の依頼をレイにしたんだろう。

 しかも、50万ドルをちらつかせて。

 さらに "今回の件" の鍵って、なに?

 "座標" のことか?

 それとも我々が知らない何かか?

 ヤバイ、めっちゃ気になるやん!

 

◆BANG BANG BAR

 バンドの演奏 "SHE'S GONE AWAY" by Nine Inch Nails

 トレント・レズナーデイヴィッド・リンチの間柄は、

 リンチ・ファンには今さら説明するまでもないと思いますが、

 知らない人は、まあ、ググってみてください。

 「ロスト・ハイウェイ」と「Came Back Haunted」

 ちなみにナインインチのMV「Came Back Haunted」には、

 進化した"腕" のようなものが出てきます。

 イレイザーヘッドの赤ん坊みたいなもの、とも言えますけど。

 しかし、

 普段、海外のテレビに出演したというか、

 メディアに露出したという話をあまり聞かないナインインチを、

 こんなメインストリームの注目度100%の作品に出演させたというのは、

 なんか余計にリンチ最後の集大成感がバリバリあるような気がします。

 なんだろう、

 本当にこのThe Returnでリンチの映像作品が見納めなのかもしれない。

 リンチ先生の最後の作品なら、俺も一肌脱ぎますよっ!とばかりに、

 トレントが出演を快諾したような感じがスゴイするのよね。

 だとしたら、マジで毎週毎週が永久保存版ですな!

 ちなみに、この "SHE'S GONE AWAY" は、

 ツイン・ピークス用に書き下ろした新曲らしいです。

 作品とリンクしている歌詞も要チェックですよ。

 て、絶対秘密主義で貫かれた制作現場、

 トレントは脚本を読まずに曲を書いたみたいですけど...。

 

◆どこかの野原

 彼女はどこかに消えた、彼女はどこかに去って行った

 そんな歌が終わると同時に悪クーパーが復活する。

 もう不死身やん...。

 

ニューメキシコ州ホワイトサンズ

 1945年7月16日 午前5時29分45秒

 初の核実験「トリニティ実験」が行われる。

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 TNT換算で約19キロトン。

 それは1トン爆弾2万個分のエネルギーに匹敵し、

 マグニチュード6(熊本地震)と同等のエネルギーがあり、

 約6000発の雷と同等の電磁力エネルギーを発する。

 それらが一瞬にして爆発。

 瞬く間にキノコ雲が大きくなる。

 そのコアに向かってカメラはどんどん近づいていく。

 大量の放射能によって細胞がことごとく破壊され、

 猛烈な衝撃波が塵となった細胞を宙に舞わす。

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 太陽の表面温度の約170倍もある炎が全てを焼きつくし、

 さらにコアまで潜り込んでいくと、

 あちらこちらで核分裂が起こり、中性子が飛び回り、

 超臨界から放出されたエネルギーが爆発を何度も起こしている。

 さらにカメラはグラウンド・ゼロに向かっていく。

 

◆コンビニエンス・ストア

 グラウンド・ゼロの先にコンビニエンス・ストアがある。

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 見えない何かがコンビニを出入りし、

 不穏な煙幕が店内から溢れ出す。

 店内の電気が何度もショートする。

 熱量の増加に伴い勢いを増していく煙幕だが、

 ふと霧が晴れるように消える。

 そして、全身真っ黒な男達が6~7人、

 コンビニの中を行ったり来たりしていくと電気量が増えていく。

 その電気量が沸点まで高まると時空がゆがみ始める。

 さらに電気量は増し、次元そのものが崩壊し始める。

 

◆次元の狭間

 邪悪なるもの "エクスペリメント"。

 口から煙のようなゼリー層を吐き出す。

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 そのゼリー層の中には卵のようなものが多数あり、

 そこに一際大きな臓器のような塊が紛れている。

 その臓器の塊にはボブの姿がある。

 ボブの塊と卵がゼリー層から抜けてどこかに放出される。

 

グラウンド・ゼロ

 ウラニウム原子が核分裂を起こし続け、

 素粒子素粒子の衝突が超臨界を作りだし、

 そのエネルギーが生み出した炎が全てを焼き尽くす。

 その中心から液体状の塊が浮かび上がってくる。

 それは質量とエネルギーが極限まで凝縮された塊。

 カメラはその塊の中に潜り込んでいく。

 エネルギーの内部はあらゆる次元を包括しており、

 その中心に迫るカメラは次元の彼方まで飛ばされていく。

 その果てには "集合的無意識" の海が広がっていた。

 

 てな具合で、なんかスゴすぎて頭がクラクラします。

 まるでNHKスペシャルでも見ているような気分です。

 いったい誰が、ツイン・ピークスの続編で、

 核爆弾が描かれることを想像できたでしょうか?

 ゴードンの部屋に飾られていた「きのこ雲」の写真も、

 暗にこれを示唆していたみたいです。

 もう、リンチの発想なのか、

 はたまたマーク・フロストの発想なのか、

 その辺はよくわかりませんが、

 まあ、とにかくスゴイ流れです。

 

 さらにムードを盛り上げていたのが使用されていた楽曲。

 クシシュトフ・ペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」

 その前衛的な音楽がリンチ映像と相まって、

 さらに破壊と恐怖を観るものに突き付けてきます。

 

 ただ、僕も調べてみてわかったのですが、

 ペンデレツキという人は、どうも原爆の悲惨さをイメージして

 この楽曲を作ったわけではないようです。

 もともとは無題で、広島の "ひ" の字もなかった。

 それがどうしてこのタイトルになったかというと、

 松下眞一という人がペンデレツキに、

 「広島の原爆っぽいから、このタイトルにしなよ」と助言し、

 ペンデレツキも「ああ、いいね」と、

 あっさりその提案を受けたようなんですね、Wikipediaによると。

 被爆国に住む僕ら日本人は、

 原爆=広島・長崎、それをリンチがテーマにした、

 と、妙な親近感を沸かせてしまいがちですが、

 この映像、

 リンチも決して原爆の脅威を狙って映像化したわけではなく、

 時空や次元が歪むほどの衝撃=核爆弾、

 そこに原爆と実はなんの関係もない音楽を当てはめた。

 そこにこそリンチの意図があるような気がします。

 

 さらにグラウンド・ゼロの先にコンビニがあるっていうのも、

 なんか、もんのすごくシュールですよね。

 爆心地の先にコンビニだよ?

 しかも真っ黒なおっちゃん達が、またワサワサしてるし。

 焼け焦げちゃったから真っ黒なのかな?

 ブリキのロボットみたいに、あっちこっち動き回ってるし、

 窓の向こうにはクリーム・コーンの缶詰めが積みあがってるし、

 もう、ヤバいよ、現実に帰りたいよ!

 

 映画「FIRE WALK WITH ME」で、

 ロッジの住人たちのミーティングが開かれていたのは、

 コンビニエンスストアの上だった。

 フィリップ・ジェフリーズはそう叫んでいました。

 そして、続けてこうも言っています。

 「オレたちは夢の中で生きてる!」

 そのコンビニがこの場所だとすると、

 これは "夢の世界" = "無意識を顕在化させた世界"

 そんな風に解釈することもできそうです。  

 

 さらに"エクスペリメント"ですよ。

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 第1章のガラスの箱に出てきたのは紛れもなくコイツです。

 しかも、よく見ると、なによ、

 ピッコロ大魔王みたいに、

 頭に触覚というか角みたいなものがあるじゃない。

 これは第2章で悪クーパーが出したカードのマークそのものじゃん。

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 さらにピッコロみたいに口からタマゴを吐き出すって、

 もう、どこまでドラゴン・ボールやねん!

 挙句の果てには "ボブ" まで産まれてるし、マジか!

 25年前、ただの大道具さんが撮影中に、

 ヤバイヤバイ映っちゃう!って、

 慌ててベッドの陰に隠れただけの存在が、

 今では悪の権化から生み出された、

 悪の象徴になっちゃってるよ。スゲエなぁ。

 

 まあ、冷やかしはこの辺までにして、

 このシークエンスを大マジメに考えてみると、

 多くの人が感じているように、

  ★人類初の核実験

     ↓

  ★その衝撃により何かの扉が開いた

     ↓

  ★悪の世界から "ボブ" が生まれる

     ↓

  ★44年後、ローラを殺す

     ↓

  ★さらに28年後、悪クーパーと悪さする

 と、まあ、こんな流れに見えます。

 

 なんか、おかしくないですか?

 

 「人類最大の悪=核爆弾の開発」

 破壊力という点では、この定義が成り立つように見えますが、

 それにしても "ボブ" の存在が、あまりにも突飛です。

 そもそも、ここにいる "ボブ" は僕たちが知っている彼ではない。

 "腕" が進化を遂げたように、"ボブ" も進化したのだろうか?

 仮にそうだとしても1989年の44年前に、

 "ボブ" があの姿だったというのは、どういうことなのだろう。

 謎がさらなる謎を引寄せ、もう謎の雪だるま状態です。

 

◆"集合的無意識"の海

 限りなく広がる"集合的無意識"の海。

 アカシックレコードの大海原。

 その先に "顕在意識" の島が見えてくる。

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 "顕在意識" の島の突端には "内なる宮殿" がある。

 これが "誰" の顕在意識なのかは、わからない。

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◆内なる宮殿

 壁にくり貫かれている窓から建物内に入る。

 まだら模様の絨毯が敷かれた部屋には、

 梵鐘のような発電機らしきものと、

 スタンドライトにパーティーション、

 壁やソファには葉のデザインが施されている。

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 ソファではスパンコールのドレスを纏った婦人が、

 蓄音機から流れる音楽に身を委ねている。

  ドレス婦人:セニョリータ・ディードー

 唐突に警報が鳴り響く。

 梵鐘の裏から姿を現わす巨人(???????)。

 ディードー嬢と顔を見合わせる。

 先ほどのくり貫かれた窓の先を訝しげに眺めている。

 梵鐘のスイッチを切ると警報が鳴りやむ。

 再び、梵鐘の裏へと姿を消す巨人(???????)。

 

 さて何からいきましょうか...。

 

  〇まだら模様の絨毯

   この部屋の絨毯は、

   第1章のオープニング、

   巨人とクーパーが話していた部屋の絨毯と一緒

 

  〇蓄音機

   この部屋の蓄音機は、

   第1章のオープニングで、

   奇妙な音を奏でていた蓄音機と一緒

 

  〇ソファ

   この部屋のソファは、

   第1章のオープニングのソファと同じ、

   葉の模様をあしらっている

 

  〇スタンドライト

   この部屋のライトは、

   第1章のクーパーの左横にあったライトと同じ

 

  〇梵鐘のような発電機 もしくは警報機

   姿形は、第3章に出てきたブリキの箱の上、

   Naidoがレバーを下ろした発電機と一緒。

   しかし、第3章の梵鐘には、

   てっぺんにヒューズというかプラグというか、

   放電クランプのようなものはついていない

 

 そんな感じで、ほぼこの部屋、もしくはこの建物は、

 第1章のオープニングと同じ場所だと言える。

 第3章のNaidoがいた部屋とも、床の絨毯の柄は一緒で、

 さらに蓄音機から流れていた曲 "SLOW 30'S ROOM" が、

 Naidoの部屋にも微かに聞こえていた。

 すぐにドアのノックにかき消されてしまうけど...。

 どこまでの関連性があるのか現時点ではわからないけど、

 クーパーが「ここはどこだ?」と聞いていたので、

 Naidoがいた部屋は、

 第1章の部屋とはパラレルになっていそうな感じがする。

 

 さらに今回登場したセニョリータ。

 名前をカタカナにするのが難しいけど、

 ダイド、ディド、ディードーと表記できる。

 真っ先に思いつくのはダイド、

 10年ほど前にエミネム絡みで、

 ちょい人気だったイギリスの女性歌手の名前。

 "騒ぐ" や "ふざける" という意味がある。

 でも、そこはリンチ。

 もしくは都市伝説大好きマーク・フロストのこと、

 そんな単純なものではないと思う。

 だとすると、ディードーじゃないだろうか。

 古代都市国家 "カルタゴ" を建国した女王の名前である。

 カルタゴは、現在のチュニジアの首都近辺に、

 紀元前9世紀頃に栄えた都市であり、

 オペラ「トロイアの人々」や、

 ローマ最大の敵ハンニバルの軍勢で有名な都市国家

 そして、ローマによって跡形もなく滅ぼされた都市でもある。

 実は "民族滅亡" というテーマは、

 この「The Return」の裏テーマとして、

 かなり重要なポイントではないかと思っています。

  〇インディアンとアメリカの関係

  〇カルタゴとローマの関係

  〇グローバリズムイスラエル

  〇冷戦とキューバ

 善悪の二項対立という構造、

 そして"恐怖"というテーマ。

 ヤバイ、また話を広げすぎてしまっているので、

 もうこれ以上はやめよう。

 

◆時をつかさどる劇場

 大海原のような まだら模様の絨毯が敷き詰められている。

 ステージ上にはスクリーンと梵鐘型の発電機。

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 劇場のステージに上がる巨人(???????)。

 左手を掲げるとスクリーンに映像が映し出される。

  〇トリニティ実験

  〇コンビニエンスストアと黒い男達

  〇エクスペリメントとゼリー層

  〇ボブの塊

 映像はボブの塊で一時停止する。

 ステージ奥に移動する巨人(???????)、宙に浮かぶ

 そこへディードー嬢がライトに照らされて登場。

 巨人(???????)は、金色の煙幕を吹き出し始める。

 スクリーンのボブが消え、宇宙が映し出される。

 ステージに上がり、その様子を見守るディードー嬢。

 巨人(???????)から噴き出る金色の光の粒が、

 徐々に子宮のような形を描いていく。

 そこから金色に輝く玉が生み出される。

 それを受け取るディードー嬢。

 金色に輝く玉に浮かび上がるローラ・パーマー。

 ディードー嬢、愛おしそうにキスをすると宙に手放す。

 上部に設けられた振り子時計のモニュメント。

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 金色に輝く玉が、ホルン状の筒に吸い込まれていく。

 スクリーンに映し出される地球。

 筒の先から放出された金色に輝く玉が、

 スクリーンの向こう側へ突き抜け、地球へと落ちていく。

 それを見守るディードー嬢。

 

 さてさて、いっちばん、わけわかんないシーンです。

 とりあえず、この劇場、

 マルホランドドライブの "クラブ・シレンシオ" と同じ場所です。

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 「楽団はいません。これは全て録音です!」ではないけど、

 横から奇妙な男が出てきてもおかしくない状態です。

 さらにローラ・パーマー!

 もう、なんやねん!

 赤ん坊の姿でもなければ、熟女の姿でもない、

 みんなが知ってるローラの笑顔が浮かび上がるって、

 もう、ここまで来るとウルトラマンじゃない?

 さっきの警報も怪獣出現の警報みたいだし、

 スクリーンに映し出されるのも怪獣の様子確認みたいだし、

 ローラ玉を地球に送るのも、

 まるでM78星雲からの贈り物みたいだよ。

 普通に見てると、ボブ VS ローラ みたいに見えるけど、

 あまりにも階級が違いすぎるシングルマッチだよね。

 その結果はみんなが知ってるし。

 

 巨人が吹き出した金色の煙幕は "子宮" の形をしていました。

 となると、このシークエンスは排卵を表現している?

 だとすると、同じ排卵をしたエクスペリメントは男性側?

 これってイレイザーヘッドのオープニング?

 ボブ玉とローラ玉が交わるということは、結局、なに?

 最高に訳が分からなさすぎます!

 

 しかし、こう捉えると、どうでしょう。 

  〇ボブ玉=脅威、悪意、暴力=男性的

  〇ローラ玉=警鐘、愛、献身=女性的

 なんか、いいとこまで来たような感じがします。

 旧作でもローラの立ち位置は上記類のようなものでした。

 映画「FIRE WALK WITH ME」では、

 献身的というよりは、逆にボブに抗う姿が描かれていましたが、

 それはローラ視点で物語が語られていたからだと思われます。

 

 今回の第8章のここまでのストーリーも、

  〇悪クーパーが撃たれたよ!

  〇そのお腹からエイリアンみたいにボブ玉が出てきた!

  〇みんな、ボブ玉 知らないでしょ? 説明するよ

  〇実はトリニティ実験ってのがあってさ

  〇電気仕掛けのコンビニがオープンしてね

  〇ピッコロ大魔王 エクスペリメントが産んだんだよ

 こうやって書いてみると、

 ここまでのストーリーって、素直に一直線のような気がしてきた。

 となると、このボブ玉と旧作のキラー・ボブは別物、

 完全にパラレルということになりそうです。

 

 そして、ローラ玉は、

 みんな気をつけて、ボブ玉が生まれたよ!

 と、警告をするために地球に送り込まれた。

 ボブと戦うためではなく、

 ボブの存在を知らせるための言わば "Jアラート" みたいな役割。

 ボブ玉、飛んできたよ!避難、避難!みたいな。

 そして、事実、旧作では、

 ローラの日記などでボブの存在が浮き彫りにされた。

 でも、その姿をみんなに教えたのはローラではなく、

 ローラの母、サラ・パーマーだったけどね...。

 

ニューメキシコ砂漠

 時は巡り、1956年8月5日。

 砂漠に落ちている卵が孵化する。

 中から生まれてきたのはトビガエル。

 何かに向かって這っていきます。

 

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 エクスペリメントが吐き出した卵が孵化しました。

 11年後に...。

 なんで孵化するのに、そんなに時間がかかるの?

 さらにカエルの背中に羽根が生えていて、

 前足は虫のように節が何か所もあります。

 キモイ。

 

 ネットで、ちょっと面白いのを拾ったので貼ります。

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 「The Flying Frogs」

 どうやら女性をターゲットに纏わりつく生き物。

 インディアンと何か関係があるようです。

 水・陸・空、どこにでも行ける超ハイブリッドな存在。

 どうせマーク・フロストが考えた架空のものだろ?と、

 高を括っていたんですが、どうも違うみたい...。

 

 ちなみにトーテムポールに描かれる「カエル」の象徴は、

 伝達者・仲介人・春・新しい人生、だそうです。

 

◆倉庫があるガソリンスタンド

 一組のカップルが、何かのイベントから帰ってくる。

 少女が道に落ちている1セントを拾う。

 表が上、幸運が来る徴。

 少年は少女の幸運を願う。

 

◆どこかの平原

 空から降りてくる男の影。

 仲間も姿を現わす。

 

 そして、日が暮れる。

 道を走ってくる一台の車。

 前方に停車している車の周りに人だかりの影。

 男が一人道に現れ、走ってきた車を制止する。

 車に乗っている老夫婦は訝しむ。

 全身真っ黒な "森の男" がタバコを差し向け、

 「火、あるか?」と繰り返す。

 いつの間にか車の周りに他の男達が群がっている。

 恐怖に怯え、そこから逃げ出す老夫婦。

 

 さてさて、なんですか?

 "森の男" ?

 しかも、空から降りてきました。

 シュワッ!って感じで...。

 エンドクレジットには "Woodsman" とあったので、

 森の住人、きこり、という意味があるみたいです。

 唐突に「火、あるか?」って、ないわ!

 

◆少女の家への帰り道

 少女を家まで送っていく少年。

  〇少年は町の方に住んでいる

  〇家は学校のそば

  〇少年はメアリーを送っていくと思っていた

  〇少年とメアリーの関係は終わったらしい

  〇少女にキスを求める少年

  〇はにかみながらキスを受け入れる

  〇また、と家に帰る少女

  〇その表情は幸せそう

 

◆KPJKラジオ

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 ラジオ局から流れるThe Plattersの"MY PRAYER"。

 時は22:16。

 その放送を聴きながら整備士が仕事をしている。

 ダイナーのメイドがテーブルを拭いている。

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 先ほどの少女がベッドで物思いにふけっている。

 "森の男" が単身でラジオ局にやってくる。

 受付女性に「火、あるか?」と聞きながら、

 左手で彼女の頭を握りつぶす。

 ブースに乗り込んでいく "森の男"。

 DJの頭を鷲掴みにし、放送マイクを奪う。

 「これが水だ。そして、これが井戸。

 すべて飲み干し降りてゆけ。この馬は白目で、中は闇」

 その文言を繰り返し繰り返し語る。

 それを聞いたメイドや整備士が倒れる。

 

 なんでしょう。

 急に村上春樹の小説を読んでいるような気分になってきました。

 まあ、"井戸" ってワードだけですけどね。

 でも、さりげなくリンチと村上氏は似ていると思ってます。

 どちらも "あちらの世界" を描こうとしているし、

 どちらも そこそこインテリだし、

 そこそこ訳のわかんないキャラも出てくるし。

 まあ、それについては、また後々に語るとします。

 

 "森の男" のセリフをそのまま解釈するなら、

   "欲望" という名の水を好きなだけ飲め、

   だが井戸は枯れることがない。

   井戸の底で欲望に溺れてしまえ。

   "自由" という名の馬は息絶えた。

   お前は欲望の闇から逃げられない。

 こんな感じのニュアンスになる。

 普通すぎるけど。

 

 しかし、"森の男" は誰に向かってこれを語ったのだろう?

 んでもって、なぜ頭を潰さなければいけなかったのか?

 

◆少女の部屋

 "森の男" の放送を聴き、訝しむ少女。

 眠気に襲われベッドに横になる。

 道の向こうからトビガエルが這ってくる。

 部屋の窓から少女のもとへ忍び込む。

 そして、眠る少女の口から体内に這い込んでいく。

 

 ヤバい。

 エクスペリメントから産まれたトビガエルが、

 無垢な少女の中に入ってしまいました。

 しかも、トビガエル、

 はなっからこの少女を狙っていたようです。

 そのための11年だったのか?

 少女が大きくなるのをただただ砂漠で待っていたのか?

 なんだろう。

 エクスペリメント、お前、何を仕掛けようとしてるん?

 

◆KPJKラジオ

 繰り返し文言を言い続ける "森の男"。

 DJの頭を握り潰し、放送を終える。

 ラジオ局を後にし、闇へと消えていく。

 

 最後にきましたリンチ・ブラック!

 もう、おなかいっぱい!

 

というわけで、伝説の第8章。

The Returnの重要な折り返し地点になること間違いなしです。

特に劇場の存在がヤバイです。

マルホランド・ドライブインランド・エンパイア

いずれも劇場が "世界" の切替わり点でした。

 

しかも、The Return 、

旧作の続編でも、映画の続編でもないことが、

ボブ玉とローラ玉ではっきりしました。

これは、たぶんクーパーの神曲編ではないかと。

クーパーのカンタベリー物語みたいな。

巡礼の旅はまだまだ続く!