that passion once again

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ツイン・ピークス The Return 考察 第14章 根幹

1.青いバラ事件

 1975年、ワシントン州西部に位置する州都オリンピアで、とある殺人事件が起きた。当時、事件捜査を担当したのは二人のFBI捜査官。一人はワシントン州の地域担当官だったゴードン・コール、もう一人は彼とタッグを組んでいた特別捜査官フィリップ・ジェフリーズであった。二人は捜査の末、事件の犯人である "ロイス・ダフィー" という女性に辿り着き、容疑者逮捕の為に彼女の部屋に赴いた。その時、部屋の中から銃声が響き渡り、FBIの二人は急いで部屋の中へ飛び込むが、その目の前にはまるで鏡写しの様に二人のロイス・ダフィーの姿があった。一人は床に倒れており、腹部に銃弾を受けて瀕死の状態、もう一人は銃を構えたまま後ずさりし、ショックから手に持っていた銃を床に落とした。ゴードンとフィリップは瀕死のロイスに駆け寄りすぐに救助を始めようとするが、彼女はそっと微笑み「私は青いバラと同じ」と言い残すと息を引き取った。そして、不思議なことにゴードンとフィリップの目の前で彼女は忽然と姿を消してしまった。もう一人のロイスは部屋の隅で叫び声を上げ続けていた...。あえなく逮捕された彼女はひたすら無実を訴え続けたが、州裁判所の判決を前に首を吊り自害してしまった。

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※画像は1975年のオリンピア(作品との関連はありません)

 先々週の第12章で "青いバラ特捜チーム" の発端となったのが「青いバラ事件」であったことが語られました。その事件で死んだ女性が最後に言い残した言葉から、このプロジェクト名が取られたというのです。そして今週、その事件のあらましが再びアルバートの口から語られました。ロイス・ダフィー (Lois Duffy) という女性が誰かを殺し、そして彼女にはドッペルゲンガーがいたことが明らかになったのです。銃で撃たれたロイスの左薬指に "翡翠の指輪" が嵌められていたのか?など詳細についての謎は残りますが、先週のレイ・モンローの一件からおおよその想像はみなさん付くのではないかと思います。悪クーパーを殺した暁には左薬指に "翡翠の指輪" を嵌めろというくだりです。しかし、そもそもロイスという女性が若いのかどうかもわかりませんし、容姿がどのようなものだったのかもわかりません。ロイスが誰を殺したのかもわからずじまいです。

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※海外のピーカーが作ったマガジン風の「青いバラ事件」

 第12章のアルバートのセリフを振り返ると「数年後、軍とFBIは極秘チームを立ち上げ、ブルーブック計画が残した謎に連なる "不可思議な事件" の捜査に乗り出した」と語っていました。その "不可思議な事件" が「青いバラ事件」であり、そこには殺人とドッペルゲンガー、未確定ですが "翡翠の指輪" が絡んでいたのでした。アルバートはこうも言っています。「今までとは違う道を進まない限り答えに辿り着かない」と。その意味するところは、オリンピアで起きた殺人事件が、犯人を逮捕して解決という単純なものではなく、UFOなどの超常現象にまつわる不可解な事象を孕んでいることを示しています。まるでローラ・パーマー殺人事件がそうであったように、この "青いバラ事件" も同じ部類のものだと言えるのです。そして、それは1969年にプロジェクト中止に追い込まれたブルーブック計画から "連なっている謎" でもあったのです。

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※報告書は20年に及ぶ調査の結果、地球外生命体は存在しないという結論に達している

 第12章の考察で、僕はブルーブック計画の発端が "ロズウェル事件" であり、その事件が1947年に "ニューメキシコ州" で起きたUFO墜落事件ということから、第8章のトリニティ実験とその後の "森の男" 絡みの事件と関連があるのではないかと論じました。繰り返しになりますが "ブルーブック計画" というのは、実際にアメリカにあった極秘プロジェクトです。第12章の時点では「青いバラ事件」もニューメキシコ州で起きた事件ではないかという "仮説" のもとで考察をしていましたが、今週、その舞台はワシントン州であったことが明らかになりました。ただ舞台は違いますが、そこに関連する人物はアルバート曰く “連なっている" ので、何かしらの繋がりがあるのではないかと思っています。つまり、そこに登場するのは剛腕な握力を持つ "森の男" と、その放送を聞いて倒れていった車の整備士やダイナーのウェイトレス。この二人はただ気絶をしただけなのか、そのまま卒倒してしまったのかははっきりしていません。そして、トビガエルを口から体内に取り入れてしまった少女。トビガエルという奇怪な存在が悪なのかどうなのかもはっきりしていませんし、この物体を産み出したエクスペリメントが何を求めているのかもはっきりとは描かれていません。ただ、これらのことから推測できるのは、マンハッタン計画から綿々と受け継がれてきた研究(エクスペリメントの意味は「実験」)が、どこかの段階で未知の扉を開けてしまい、そこから得体の知れないものたちが出現してしまったということではないかと思うのです。まるでビル・ヘイスティングスが開いてしまった "ゾーン" のように、それは遥か彼方の惑星からやってきたのではなく、私たちのすぐそばに平衡世界として存在しているのだと言いたげなのです。

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マンハッタン計画の主要箇所は、今回の「The Return」の舞台となっている場所と驚くほど酷似している

 タミー・プレイストン捜査官は “青いバラ“ の意味について考察をします。その内容については第7章で論じた僕の記事とほぼ一緒で、1992年に公開された映画「FIRE WALK WITH ME」の時にピーカー達が考察していた内容とも一緒でした。つまり “青いバラ” = “存在しないもの” という定義です。これは長年の謎とされてきた定義が、25年の月日を経てついに公式に認められたということになります。デズモンド捜査官はゴードンからの指令により、この世に存在しないものを探し出そうとしていたのです。さらにタミーがスゴイのはその論理から “化身” というチベット用語にまで発展させていることです。この “化身" という単語は “トゥルパ” とも呼ばれ、タミーが解釈していたように "魔術的顕現" や "喚起されたもの" という意味があります。これはそのままドッペルゲンガーを説明しているようにも聞こえます。ただ、第7章の考察で語ったように ”青いバラ” は現代では “存在するもの” となっています。これはかつては存在しなかったものが存在するようになったというロジックのようにも解釈できるのです。それはまるでロッジから産み出された "化身" のようでもあり、存在を否定されたブルーブック計画への再定義のようにも受け取れます。

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ドッペルゲンガーは "死の前兆" であると信じられていた

 ゴードン・コールは久方ぶりにツイン・ピークス保安官事務所に連絡を取ります。25年ぶりに放射された "ルーシーおとぼけ回答" に瞬間凍結したゴードンは、フランク・トルーマンから知らされた "二人のクーパー" という情報を聞き、事の真相に光明を得たように見えます。第3章のヤンクトン刑務所で対峙したデイル・クーパーへの違和感が、ここで若き日の "青いバラ事件" とオーバーラップし、真のデイル・クーパーが他にいるという解釈へ進んだと思われるのです。僕たち視聴者はゴードンが対峙したクーパーが "ドッペルゲンガー" であることを既に知っているのですが、ゴードンからするとフランクが教えてくれた "二人のクーパー" というキーワードで初めてそこに至ったとなります。さらにその解釈は26年前のフィリップ・ジェフリーズの一言に集約されていきます。1988年のFBIフィラデルフィア支部に突如その姿を現わしたフィリップは、クーパーを指さして「ここにいるのは誰だと思う?」と予言するのです。"青いバラ事件" では相棒だったフィリップ・ジェフリーズ、"青いバラ" を求め失踪してしまった3人のFBI捜査官、存在するはずのない Woodsmanや "ゾーン" への接近、ブルーブック計画に参加しその後も秘密裏にデータ収集をしていたガーランド・ブリッグス少佐、そして、少佐の不自然な遺体、全てバラバラに思えていたパズルのピースがゴードン・コールの中でカチカチと組み合わされていく音が聞こえてきそうです。

 

2.夢見人

 "夢" というキーワードはデイヴィッド・リンチの作品には欠かせない重要な要素だと言えます。特に『ツイン・ピークス』以降の3作品『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』は「感覚映像ー自由連想仮説」を裏付けるような、レム睡眠の偶発的な視覚映像から出発する連想ストーリーをキュビズム的に俯瞰できる構造をしていました。『The Return』はその集大成とも言えるべきもので、各章は物語のあるキーワードを軸に次々と連想もしくは連鎖されていき、その連鎖反応が次章の視覚映像の出発点を産みだしていっているのです。その核心とも真実とも言える大きなテーマが、この第14章でなぜかモニカ・ベルッチによって告げられました。

「夢を見て、夢の中に生きる夢見人。その夢を見ているのは誰?」

 まるで僕たちが生きている現実が誰かの夢の中の世界で、その誰かが目覚めてしまうと僕たちの現実は一瞬にして存在しなくなってしまう。デイヴィッド・リンチはその理論に対して "強烈な不安感" と表現していました。永遠に続くエッシャーの無限階段が突如として外されてしまったような感覚。クリストファー・ノーラン監督作品「インセプション」にもこの理論は登場しています。

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※夢の構造はエッシャーの無限階段に似ている

 そもそも人は睡眠中になぜ "夢" を見るのか。さまざまな研究によって人体の不思議が徐々に解明されつつあるようですが、いずれにしても取り沙汰されるのはその原理やシステムについてであり、肝心な夢の "イメージ" がどこから生まれてくるのかという問いかけへの解答には、少なからずなっていないように個人的には思います。そんな中でカール・グスタフユングが提唱する "集合的無意識" という概念が、その解答に一番接近しているのではないかと思っているのです。それは "夢" だけではなく、リンチが常日頃ライフワークにしている "瞑想" にも当てはまる概念だと思うのです。

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 上記の図はユングが提唱する人間の意識の構造を図式化したものです。人間の意識は『個人の顕在意識』『個人の無意識』『集合的無意識』の3層から成り立っているという考え方です。各個人は海に浮かぶ島であり、海面から突き出ているのが『顕在意識』の領域、海面下に埋もれているのが『無意識』の領域、そして、海底で全てが繋がっている部分が『集合的無意識』の領域になります。『顕在意識』は常日頃僕たちが意識できる当たり前の現実の世界、『無意識』は普段は隠れている領域もしくは意識することができない領域のこと。潜在意識、潜在能力、そんな言葉に置き換えることも可能だと思います。そして『集合的無意識』は人々の意識が全て集まっている場所。それは太古から現代まで、とにかく歴史上存在した全ての人間の意識が集まっている場所、普遍の場所になります。"夢" を見るという行為は顕在意識の島から海にダイブして無意識の領域に潜っていくこと。"瞑想" するということは顕在意識の島から集合的無意識まで深く静かに潜りこんでいく行為だと言えます。そして、この意識の構造の図式、『The Return』の中で見たような覚えがありませんか?

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 そうです第8章で登場したあの島です。大海原の中にポツンと佇む島、これが集合的無意識の海に浮かぶ "誰か" の顕在意識になるのです。その顕在意識の島の突端には宮殿があり、そこに今回明らかになった "消防士" とセニョリータが居ました。消防士の存在については、また然るべき時に考察したいと思いますが、いずれにしても彼らは "誰か" の意識の中にある産物だと言えるのです。そして、モニカ・ベルッチが語った "夢見人が見る夢" を見ている "誰か" とは、この顕在意識の持ち主になるのではないかと思うのです。残り数話の中で、それが解明されるのかどうかはわかりませんが、なにかしらのヒントは提示されるはずだと僕は確信しています。

 

3.ジャック・ラビット・パレス

 ツイン・ピークスという町には不思議な場所が点在しています。ベンジャミン・ホーンが経営しているグレート・ノーザン・ホテルのすぐ脇にある "スノコルミーの滝" 。この滝は、かつて周辺に集落を作っていたインディアンたちの奇妙な精霊信仰の場所でもありました。そして、ツイン・ピークスを象徴する二つの山。ブルー・パイン・マウンテンとホワイト・テール・マウンテン。精神科医の医師免許を剥奪され、今では社会の腐敗と強欲さを凶弾しているローレンス・ジャコビーはホワイト・テールの頂上付近に居を構えています。そして、第11章でトーマス・"ホーク"・ヒル保安官が語っていたようにブルー・パインは "神聖な山" とされています。その "神聖な山" の麓にはゴーストウッドと呼ばれる奥深い森が広がり、その森の奥には "グラストンベリー・グローブ" と呼ばれる12本のシカモアの木で作られたサークルが存在します。

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※実際のグラストンベリーにはアーサー王の墓があるが、その王の存在は未だに実在していたかどうか不明である

 1983年、ブルー・パイン・マウンテンの麓に戦略防衛構想(SDI)関連の施設が政府によって建設されました。この施設建設に疑問を抱いたのが現ニュー・ファットトラウト・トレイラーパークの管理人であるカール・ロッドであり、彼は秘密裏に進められている建設現場への不信をツイン・ピークス・ポスト紙に寄稿しました。それを受けて政府から発表されたのが先のSDI関連施設という回答だったのですが、実はそれは隠れ蓑であり、実際はガーランド・ブリッグス少佐が務める極秘施設「SETIアンテナアレイ7-1」またの名を「リスニング・ポスト・アルファ(LPA)」と呼ばれるブルーブック計画直下の調査施設だったのです。そこには最新鋭の深宇宙マルチスペクトル探査受信装置が設置され、宇宙全体から知的生命の痕跡を探し出そうとするものでした。

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※現時点で3億8000万光年先の宇宙の姿まで人類は確認している

 ブリッグス少佐が残したメモに記された "ジャック・ラビット・パレス" は、このLPA施設のそばにある古いダグラスモミの巨木の跡でした。この巨大なダグラスモミの樹が倒木したのは1927年のある嵐の夜、鋭い稲妻が木のてっぺんに落ち、ゴウゴウと燃え上がったためでした。当時、その燃え上がるダグラスモミの巨木のそばに背丈2メートル以上はありそうな巨人が現れたことをある青年が目撃していますが、町の人たちは一笑に付し相手にしませんでした。この小さな町で起きた巨人伝説の信憑性はさておき、このダグラスモミの巨木には僕たちの理解に及ばない不思議な力が存在していると言えそうです。そして何かに導かれるように、その地点にブリッグス少佐の息子ボビーとツイン・ピークス保安官事務所の面々が辿り着くのです。ボビーは小さい頃「ひとりでこの森をうろつくな」と父親に言われていたようなので、その頃から既にこの森の神秘性もしくは不穏な何かをブリッグス少佐は感じていたのかもしれません。

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 さらにそこから東へ253ヤード進めとメモには記されていました。言われる通り進んでいくと、靄が立ち込める少し開けた場所に辿り着きます。そこには一本のシカモアの木が梢立ち、近くにはグラストンベリー・グローブのオイル壺のような "溜り" ができていました。溜まっている液体がどのような種類のものなのかは判別しにくいですが、"焦げたオイル" ではなさそうです。そして、そのそばには裸で横たわるナイドの姿があったのです。一同は彼女のそばに近づき助け起こそうとしますが、その時、メモにあった2時53分の時刻になり、突然、森の中にワームホールが出現、ナイドのそばにいたアンディーがその渦の中へと吸い込まれてしまうのです。

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 吸い込まれた先での出来事と場所については然るべき時に考察をしますが、もともと悪クーパーが追い求めていた "座標" の位置がこの場所だとしたら、その目的は一つしかありません。もともとここの "座標" はゾーンに入り込んできたウィリアム・ヘイスティングスとルース・ダヴェンポートに、ブリッグス少佐が "安全な場所" に行く為、見つけて欲しいと依頼をした場所でした。つまりブリッグス少佐は、このシカモアの梢が立つ場所に来れば "身の安全を守ることができる" と思っていたことになります。そして、悪クーパーはそこに逃げ込んでいると思しきブリッグス少佐の後を追っているということになるのです。

 では、その "安全な場所" とはどこのことなのか?ということになりますが、これはほぼ "ホワイト・ロッジ" のことを指すのではないかと思われます。その根拠は旧シリーズの第20話のオープニングです。森の中で何者かにさらわれたブリッグス少佐が2日後に生還し、ツイン・ピークス保安官事務所で失踪時の顛末を語っている時でした。今まで頑なに機密として目的を語りたがらなかったブリッグス少佐は一言告白します。

「われわれは "ホワイト・ロッジ" を探している」

 ここからは事の要約になります。"神聖な山" とされているブルー・パイン・マウンテン。それはこの辺りで集落を作っていたインディアンたちの時代から綿々と受け継がれてきた概念です。そこにブルーブック計画直下の極秘施設が政府によって建設され、ガーランド・ブリッグス少佐はその施設で宇宙からの電波を傍受していました。そして具体的には語られていませんが、25年前のツイン・ピークス郊外の政府施設で起きた火災というのは、この極秘施設LPAのことをほぼ指していると思われます。その火災でブリッグス少佐は死亡、その直前に悪クーパーが少佐のもとを訪ねています。しかし、その後25年の間に国防総省ペンタゴンには計15回もブリッグス少佐の指紋照合の結果が送られ、その手掛かりはいつも不明だったのです。25年後のサウスダコタ州バックホーンで、ビル・ヘイスティングスがゾーンへの扉を開いた時、そこで "冬眠" をしていたのはブリッグス少佐でした。冬眠から目覚めた少佐は "安全な場所" を求め、その座標の数字をビル&ルースに入手してもらうよう依頼します。それを手に入れたビル&ルースは、再びブリッグス少佐のもとを訪ね座標の数字を伝えます。すると少佐は宙に浮き「クーパー、クーパー」と言い残し、その頭部が忽然と消えてしまいます。残った胴体は殺されたルース・ダヴェンポートの頭部と一緒にバックホーンのアパートへと飛ばされ、それを調査したコンスタンス鑑識官によりペンタゴンに16回目の指紋照合の結果が送られたのです。そして今、その座標の位置に最愛の息子ボビーが訪れてきました。さらにルースの遺体を見つけたFBIの面々、そして、悪クーパーとつながっているダイアンも、いずれこの地に辿り着く流れが見えてきています。その辿り着いた先、最終的な場所というのが、かのブルーブック計画の時点から追い求められていた "ホワイト・ロッジ" になるのでは?と思います。その重要な場所の目印となるのが、この不思議な引力を持つダグラスモミの巨木 "ジャック・ラビット・パレス" になるのです。

※この節で考察している情報の中で、テレビ放送で明らかになったもの以外の情報が複数ありますが、それらは全て書籍『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』からの引用になります

 

4.その他

【ゴードンとルーシー】

 25年ぶりの連絡なのにその大声で一発でゴードンだと理解したルーシー。ゴードンも相手がルーシーだとわかっていた様子。そこに "お久しぶり" も "ご無沙汰" の挨拶もなし。さすがです。ルーシーに至っては「ボラボラ島にも行きました」なんて話まで飛び出る始末。どうやらアンディーとルーシーの新婚旅行は "太平洋の真珠" へのバカンスだったようです。

 

【ダイアンとジェイニーE】

 至る所で驚愕されている "ダイアンとジェイニーEが姉妹" という話ですが、みなさん、あまりにもチョッパーすぎやしないですか?と僕は思っています(ちなみにチョッパーは漫画『ワンピース』のあのタヌキチもしくはチョニキのことです)。あの裏切りダイアンが果たしてゴードンたちに真実を話すでしょうか?いつも "クソ" と悪態をついて、今回なんか「アシスタント登場」なんてあまりにもわざとらしい登場の仕方をしています。先々週、悪クーパーから「ラスベガスは?」なんてメールをもらっているぐらいなので、これはゴードンたちをラスベガスに誘い込むミスリードではないかと思うのです。仮にこの姉妹説が真実だとするなら、姉妹喧嘩は原爆以上の破壊力で周囲を巻き込みそうです。恐ろしい...。

 

【FBIラスベガス支部

 ヘッドリー捜査官とウィルソン捜査官。ゴードンから連絡を受け、ラスベガス在住のダグラス・ジョーンズの情報を至急集めろ、相手は武装しているから十分警戒しろと言われます。さっそく調べてみると市街地だけで23人もダグラス・ジョーンズがいるらしい。23人!そんなに同姓同名っているもんですか?2人から3人の間違いじゃないですか?しかも、ウィルソン捜査官、23人もいちゃどうやって絞るのさとボヤくと、ヘッドリーからそれがオレたちの仕事なんだ!何回言えばわかるんだ!と怒られます。いやいや、毎回毎回23人もの容疑者から1人に絞っているわけじゃないですよね?ヘッドリー先輩、そんなにゴードンに認めてもらいたいん?あの人、モニカ・ベルッチの夢ばかり見てるらしいよ。

 

【チャド逮捕】

 あっけなく逮捕されたチャド。どうやらフランクは何か月も見張っていたらしいのですが、逮捕の決め手になったのがなんだったのかはわかりません。たぶん、リチャードに "完了" ってメールを送ったり、ドーナツ食べながらミリアムからの手紙を破棄したり、飲食禁止の会議室でお昼ご飯食べたり、ロードハウスでリチャードからお金を受け取ったり、いや、一番はフランクの息子の自殺をおちょくったのが逆鱗に触れたのかもしれません。いずれにしても、今まで描かれていたシーン全てがフランクには筒抜けだったようです。

 

【消防士とアンディー】

 ワームホールにアンディーが吸い込まれたのもビックリですが、突然「私は消防士だ」と、とんでもないカミングアウトをした巨人にもビックリです。あんた消防士だったの?みたいな。これってブラック・ロッジが "火" を弄ぶ場所だとしたら、それを "消火" する場所がホワイト・ロッジって考え方でいいのでしょうか?確定するには、もう少し情報が欲しい感じです。さらに数々の映像をアンディーに見せるわけですが、これが今までのおさらい、というか、とんでもない早送りダイジェストになっています。

 〇エクスペリメントの存在

 〇ボブ玉の誕生

 〇コンビニ オープン

 〇オープンに群がる真っ黒おっちゃん

 〇火、あるか?

 〇電線を伝って悪が伝番

 〇ローラ・パーマー殺害

 〇赤い部屋

 〇二人の天使に救われるローラ

 〇ナイド

 〇善クーパーと悪クーパー

 〇保安官事務所の電話が鳴る

 〇アンディーと不安げなルーシー

 〇再びナイド、アンディーの姿あり

 〇6の電信柱

 ローラが天使に救われるという辺りまでは、それまでの事柄が時系列順にダイジェストされているのがなんとなくわかりますが、ナイド以降はわかるところとそうでないところがあり、なんのこっちゃ?という感じです。これから未来のことを映し出しているようにも見えるし、それにしてもナイドの存在があまりにも謎すぎて、結局はなんのこっちゃ?という感じです。アンディーは十分理解したみたいですけど...。

 

ツイン・ピークス保安官事務所:留置所】

 保護したナイドにパジャマを着せているルーシー。ただ「ここで犬が迷子になった時からずっとロッカーに入れっぱなし」だったパジャマを着せるって、お~~~い!!!!! あんたらカヨワイ大和撫子になにしとるんじゃい!しかも留置所にチャドと、もう一人酔っ払いまでいるじゃないか!あんた酔っ払ったはずみで左の頬どうしたん?穴でも開いたのか?口から血が止まらないじゃないか。三人で鳥の鳴きまねをするって、僕ら "カゴの中" とでも言いたいんすか?

 

【ジェームズとフレディー】

 ガーデニング用の緑の手袋を右手にしているフレディー。どうやら "森の男" 並みに怪力の持ち主らしい。となると "森の男" は左手が怪力っぽかったので、買わずにビニールを破って手袋を持ち逃げした犯人が彼なのだろうか?いやいや、そんなことはございません。"森の男" は50年以上前の存在なのです。なのに、このロンドンで一番治安の悪い貧困層から飛び出てきた兄ちゃんに、消防士が "森の男" に対抗できる力を与えたって、なんで?消防士の人選ってアンディーもそうだけど、なんかビミョーじゃない?だって、ナイドに犬に使ったパジャマ着せてるんだよ?このフレディーも、なんでわざわざ海の向こうの人間なんだろ?ちなみにフレディーはもうすぐ23才になるらしい。さっきは23人のダグラス・ジョーンズ。なんかロジックでも隠れてます?デイヴィッド・リンチさま。

 

【グレート・ノーザン・ホテル:ボイラー室】

 ボイラーチェックに来るジェームズ。奥の扉からあの奇妙な音が響いてきます。以前、ビバリーが警備の人間に調べてもらったが異常はなかったとベン・ホーンに報告をしていましたが、嘘八百もいいところバリバリ音が鳴っています。バカ正直なジェームズのことなのでビバリーにちゃんとボイラー室と報告をしたでしょうから、これはベン・ホーンといい関係になりたかったビバリーがわざと嘘の報告をしたということっぽいです。

 

【エルクス・ポイント #9】

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 エルクスはヘラジカという意味です。

 日本ではあまり知名度のない動物なのですが、

 調べてみたらビックリしてしまいました。

 これです。

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 デカッ!

 森で出会ったら確実に殺されます。というか、ここ日本でも昔は生息していたみたいですので、第10章で考察したシシ神さまのモデルはシフゾウではなく、このヘラジカだったのかもしれません。ヘラジカの通称が「森の王」と呼ばれているんだから、なんか、もうそのまんまという感じがするじゃないですか。となると "ゴードンが書いた落書き" のモデルもこのヘラジカではないかと思います。さらに体が白いヘラジカは "神の使い" としてインディアン達から崇められていたとも言いますし、通常のヘラジカのことをインディアン達は "木を喰う者" と呼んでいたみたいです。ただ、"エルクス" という名称はヨーロッパ地方での呼び名で、アメリカ北部では "ムース" という名称が一般的なようです。だとしたら、このバーの店長はヨーロッパ出身ということでしょうか?しかも "#9" ってなに?

 

【セーラとトラック・ユー】

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 街でこんなTシャツを着てる輩を見かけたら、みなさん要注意です。彼は超がつく熟女好き、というよりも守備範囲がありえないぐらい広すぎます。ヤバイです。女性の方、特にお気を付けください。もし彼に捕まってしまったらムダな抵抗などはせず、迷わず自分の顔をパッカーンと開いてください。たぶん、彼は知らぬ間に首の半分を食いちぎられ、あっという間に倒れてしまいます。

 冗談はさておき、このセーラの中に存在するものとはいったいなんでしょうか?電気が走り、左の薬指だけが壊死したように真っ黒で、まるで喪黒 福造のような笑みを見せます。今にも「ドーン!!!!!」と指を差されそうですが、相手が不幸に落ちていくという辺り、まんまのような気がしてしまいます。

 第12章の考察でセーラのスメアゴル状態は長い孤独から育まれた分裂症のようなものと結論してみましたが、今回の顔パッカーンでどうやら別の側面もあることが明らかになりました。その側面についてのヒントは旧シリーズの最終話にあります。ダブルRダイナーでコーヒーブレイクをしているブリッグス少佐のもとにジャコビー先生がセーラを連れてきます。なにやらブリッグス少佐に伝えたいことがあるというのです。そして、セーラが口を開くとロッジの住人の声が語り始めます。「わたしはクーパー捜査官とブラック・ロッジにいる」と。そして、こうも続けます。

「私はあなたを待っている」

 ここでセーラを通してブリッグス少佐に語りかけているのは "別の場所から来た小さな男" ではないかと思われます。となると、今回の顔パッカーンの中にいるドス黒いものはブラック・ロッジの小人ということでしょうか?もしくはブラック・ロッジの中でもさらに位の高い何かなのでしょうか。トラック・ユーの首を噛み千切る動作は、ニューヨークのサム&トレイシーを襲ったエクスペリメントを彷彿させるようでもありました。謎は深まります。

 

5.BANG BANG BAR

 今週のBANG BANG BARはLissie。今までにない高揚感あるロックチューンでした。バーのボックス席で語られていたのは、オードリーが話していた "ビリー" について。これ、どうもおかしいです。ここ数回のBANG BANG BARで感じていたことですが、第8章の劇場後からBANG BANG BARのシーンだけ、どうも本編とは別の平行世界を描いているのではないかと思い始めています。これについては、また時間のある時に考察したいと思います。