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ツイン・ピークス The Return 考察 第17章から見えてきたニューヨークの謎

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 新シリーズがスタートしてからずっと気になっていたのが "ニューヨーク・シティ" だったのですが、今週の第17章で、おぼろげながら、その意味が少しわかったような気がしてきました。そのきっかけはフィリップ・ジェフリーズの存在。ゴードンはフィリップの事を「通常の意味ではもはや存在していない」と語り、フィリップは「ゴードンの記憶に残るのは非公式版だ」と説明していました。これが何を意味するのかとずっと妄想していたのですが、どうやら "フィリップの姿は一つではない" のではないかと思い至ったのです。第14章のモニカ・ベルッチの夢の時でも、2月16日の午前10時10分(今思うと完成された数字が2つも並んでいます)フィラデルフィア支部に現れたフィリップのことを「その日彼は現れた、いや現れなかった」とゴードンは語っていました。放送当時はゴードンの妙な言い回しにひっかかりながらもスルーしていたのですが、それも現時点から見ると、デヴィッド・ボウイの姿が本来の姿ではなかったから "現れたけど現れなかった" という曖昧な表現になったと読めます。では、それらが何につながるのかと言うと。

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 この悪クーパーと一緒に写っている男がフィリップ・ジェフリーズの非公式版の姿ではないかと。第10章でタミーから写真を受け取ったゴードンは「なんてことだ!これは大変なことだ。本当に大変なことだ」と今まで見たことないくらいに驚いていました。カメラは悪クーパーのアップになっていたので、当時はニューヨークの凄惨な殺人事件と悪クーパーが絡んでいることにゴードンは驚いていると思ったのですが、今観なおしてみるとフィリップと悪クーパーが一緒にいることに驚いているようにも見えるのです。また、この写真のフィリップの姿も一見すると宙に浮いているように見えるし、なんだか脚の高いイスに座っているようにも見える、なんとも不思議な構図をしています。いずれにしても、この写真から悪クーパーよりフィリップの方が立場が上という印象を受けます。

 第2章では悪クーパーとフィリップが通信機を通して会話をしていますが「遅いぞ。ニューヨークで会いたかったんだ。まだバックホーンなのか?」というフィリップの問いに対して、「お前はどこでもない場所にいるのか?」と悪クーパーが質問返ししています。この "どこでもない場所" とはコンビニエンス・ストアの2階だというのはすぐに想像できますが、なぜフィリップが ”ニューヨークで会いたかった” のかは最終回直前になってもはっきりした理由が出てきません。

 では、この2人はニューヨークで何をしようとしていたのでしょうか?それが第17章でゴードンが語っていた "極めてネガティブな存在" = "ジュディ" に関係するのではないかと思うのです。映画「FIRE WALK WITH ME」で描かれていたようにフィリップは独自の捜査で "ジュディ" の存在に気がつきました。そして、僕らの知らないところでブリッグス少佐も "ジュディ" の存在を知り、その情報をクーパーとゴードンに知らせていました。では、ブリッグス少佐はどこで "ジュディ" を知ったのか?

 

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 突然、旧シリーズに戻りますが、第27話でブリッグス少佐を拉致したウィンダム・アール。彼はフクロウの洞窟に描かれていた謎を解明するために少佐をハロペリドール漬けにし自白させます。そこから出てきたワードは「木星土星が出会う時、彼らは受け入れる」。それを聞いたアールは、ブラック・ロッジへの入り口は "ある場所のある時刻" に行かなければならないことに気づき、洞窟の絵が "地図" になっていることを知ります。まるで新シリーズのバックホーンで聞いたようなエピソードですが、当時はこの辺りの謎解きのスピード感に相当シビれまくったもんでした。

 ただ、僕がここで言いたいのは、さらにその続きです。レオのファインプレーでアールのアジトから逃げ出したブリッグス少佐は、たまたま通りかかったホークに発見され保安官事務所に保護されます。何があったのかクーパーとハリーから質問されたブリッグス少佐は、旧シリーズの第28話でとんでもないことを言っていたのでした。

ガーランド?妙な名前だな。ジュディ・ガーランド

 25年前、既にガーランドは "ジュディ" のことを口にしていたのです。さらに語りは続きます。

「あれは神だった」

 森の奥深くでブリッグス少佐は "神" と面会していた。それは片腕の男マイクが "腕" を切り落とすきっかけになった "神" と同じような気がするのです。

 その発端はクーパーと山にキャンプに出掛けた時でした。突然、森の暗闇にまばゆいばかりの光が現れ、ブリッグス少佐はどこかへ連れ去られてしまったのです。

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 その時、光の先に現れたこの人影。ブリッグス少佐は "番人" と呼んでいましたが、この恰好、先ほどのニューヨークのペントハウスで悪クーパーと一緒に写っていた男の服装とどこか似ています。

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 森の奥に潜む "神" を守る "番人"。もしかしたら、これもフィリップ・ジェフリーズだったのかもしれません。旧シリーズの第27章でウィンダム・アールはブリッグス少佐に「久しぶりだな!」と語りかけていました。新シリーズではアールのアの字も出てきませんが、彼が "青いバラ特捜チーム" の一員だった可能性があることを『シークレット・ヒストリー』は仄めかしています。ならば、チームリーダーであるフィリップがブリッグス少佐を知らないわけがありません。25年前、フィリップは森の奥にブリッグス少佐を招き入れ、"神" と対面した証である "3つの三角の痣" を首筋に入れた。それは "ジュディ" に対抗する勢力を組織立てるためだった可能性があるのです。

 

 新シリーズに戻り、"番人" であるフィリップが、なぜ悪クーパーと手を組んでニューヨークのペントハウスにガラスの箱を設置したのでしょうか。それは "ジュディ" を炙り出すためではないかと。今一度振り返ります。"ジュディ" = "極めてネガティブな存在" です。強大な負の力。旧シリーズ的に言うなら "強大な悪の力" 。第8章では、その根源が "トリニティ実験" にあったと描かれています。世界を "恐怖" に陥れた核爆弾。そこでエクスペリメントが産まれた、もしくは引寄せられた。では、ニューヨークで起きた極めてネガティブな "恐怖" と言えば、もう明らかです。やはりニューヨークの舞台は "9.11" を描いていたのです。

 建物の中と外に設置された縦横3.0m四方の強化ガラスの箱。その中は、たぶん真空状態になっていそうです。影を作らないように両サイドからLEDライトを当て、ガラスの周囲に6台、箱の真正面に1台設置されたデジタルカメラが24時間回りっ放しで一部始終を録画しています。サムとトレイシーの性行為に引寄せられるかのように(もしくはそうなるように仕向けて)、その箱の中に現れたのは "エクスペリメント・モデル"。彼(もしくは彼女)は強化ガラスを突き破りカップルの頭部(鼻から上部)だけを無残な状態にしてしまいます。まるで卵を殻ごと貪るように "人間の脳" を貪ったように見えます。

 "ジュディ" を炙り出そうとした結果、エクスペリメントが現れ、極秘だった場所がニューヨーク警察、そしてFBIに知られるようになってしまった。そもそも新シリーズを通してフィリップは悪クーパーをどうにか始末しようとしている節がありました。穿った見方をすると、クーパーや消防士が言っていた "一石二鳥" というキーワードは、このフィリップの行動に当てはまるような気がするのです。

 一つの石(ガラスの箱)で、"ボブ" と "ジュディ" という二羽の鳥を捉えようとした。

 結果としては、この事件を機にゴードンたちが悪クーパーと接触することとなり、ゴードンとフィリップの原点でもある "青いバラ事件" にもつながる流れの起点にもなったのです。それは "時" を操ることができるフィリップの何度目かの挑戦だったのかもしれません。

 

【小ネタ】

◆「119」と叫んでいたヤク中の母親は、もしかしたらロッジの住人、もしくはロッジの誰かが憑依したキャラクターかもしれない。アメリカの110番の番号は "911" 。"もてと" と同じ原理。