that passion once again

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ツイン・ピークス The Return 考察 第18章 存在への祈り。異世界へのドライブ。電気が消えた!

最終回です、姐さん。25年ぶりに復活した我らがツイン・ピークス。長い沈黙を破り、まさかの続編が制作されると発表された時はどうなることかと思いましたが、いざ蓋を開けてみたらデイヴィッド・リンチの集大成で終わりました。とにかくスゴイです。巷でシーズン4の制作を待ち望んでいる声が多いのももちろん頷けますが(それだけ宙ぶらりんな謎がてんこ盛り!)、仮にそれが制作されたとしても謎が増えるだけでなんの解決にもならなさそうな感じもします。ていうか、僕的にはシーズン3の謎はこの第18章で全て解決できそうな気がするんですよね。それぐらいリンチ作品としては非常に珍しくキレイに納まっていると思うんです。放送当時はグワーッと書き連ねて終わり!みたいな感じになってしまいましたが、それを再度一つ一つゆっくりブラッシュアップしていこうと思います。

 

◆赤い部屋(悪クーパーの消滅)

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『悪クーパーが燃えています。燃やしても燃やしても燃えきれない感じ。もう完全に銅像と化してます』

最終回の冒頭がいきなり "業火に焼かれている悪クーパー" というのがぶったまげてしまいます。前回の第17章でクーパーに翡翠の指輪を嵌められ、カランカランとロッジ送りになったその後のシーンになるみたいですが、これには下記の三通りの感じ方があるようです。

Aさん「やった!とうとう悪クーパーが滅びたぞ!」

Bさん「悪クーパー!てめぇ、結局なにがしたかったんだ!」

Cさん「あのソファは燃えないの?」

燃えているのは悪クーパーの魂なので、家具が燃えて赤い部屋が火事になったりすることはなさそうですよ、Cさん。とまあ、そんなわけで僕は完全にBさんの方なんですが、イマイチ悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかがわかりません。そもそも悪クーパーってドッペルゲンガーですよね。だとすると、

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こんなだったり、

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こんな風に消えるのが今までだったはずです。んでもって、最後に残るのは "金の種" のみ。なのに悪クーパーはオニのように "赤い炎" で燃えています。ここで思い返したいのが第11章でホークが語っていた "黒い火" です。

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ホークが語るところによると、焚き火のように見えるものは "火" の象徴であり、炎の一種ではあるがそれよりも "現代の電気" に近いものであるということ。そして、"黒いトウモロコシ" は「病・異常・死」が肥沃であることを示していて、この二つの象徴を足すと "黒い火" を意味することになる、そんなお話でした。要約すると下記のような式になります。

火(電気)+黒いトウモロコシ=黒い火

ダギー・ジョーンズもダイアン・エヴァンスも "黒いトウモロコシ" の状態であり、赤い部屋で "電気" に触れたことにより "黒い火" となって消えていきました。ここで明らかになるのは、ダギーもダイアンも既に死んでいる状態、もしくは病に犯された異常な状態であるということです。では、悪クーパーはどうなのかというと "黒い火" になっていません。ということは、彼は "黒いトウモロコシ" ではないということです。だったら、いったい悪クーパーはなんなんだ?という話ですが、前半考察にも書いたように彼はウィンダム・アールなのです。

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旧シリーズの最終回でボブに魂を抜かれてしまったウィンダム・アール。その時、初めて赤い部屋で "炎" が立ち上がります。旧シリーズ、映画、新シリーズ、いずれも赤い部屋で炎が立ち上がるのは、このウィンダム・アールが魂を抜かれた時と、アールの魂が宿った悪クーパーが消えていく今のこのシーンだけです。となると、このことから容易に想像できるのは「新シリーズでの悪クーパーの行動は全てウィンダム・アールの企みによるもの」という見方ができます。そうすると、悪クーパーが新シリーズで何をしたかったのかが自ずと見えてきそうではないですか。まあ、その辺の振り返りは、また "総論" の時にゆっくりと語りたいと思います。

 

◆赤い部屋(ダギー・ジョーンズの再誕)

『ソファの上に種とクーパーの髪が置かれる。片腕の男が「電気、電気」と呟き、指先でバチッバチッと4回スパークすると、あっという間にダギーが出来た。なんなんだ、これ...。こんなB級的な発想が普通に許されている時点で既に神』

悪クーパーが燃えているシーンからいきなりこのシーンにつながるので、一瞬、ソファに置かれた "金の種" が悪クーパーの種ではないかと思えてしまうのですが、もちろんこれはダギー・ジョーンズの種。そして、電気を帯びた一房の髪を "種" は食べるようにして吸収していきます。ここで一つ頭に入れておきたいのは、片腕の男が "電気" を操ることができるということ。そして、"進化した腕" は常に放電していたということです。この二人の関係は以下の写真の通り。

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ピーカーには今さら説明不要だと思いますが、もともとこの二人は一つでした。ニューヨークの謎に関するテキストでも少し触れましたが、片腕の男は "神" と出会い、ボブと悪事をすることをやめることにしました。その時に自分の悪の部分を切り落としたのが "左腕" であり、その "左腕" が実体となり意識を持ったのが "小人" もしくは "別の場所から来た小さな男" でした。そして、二人とも "電気" を操ることができる。それは "火" を操ることができると言いかえることもできます。

ドッペルゲンガー、もしくは "トゥルパ" はこうして作られるという「種明かし」になっているシーンがこのダギー再誕になるのですが、さて、この "化身" を作り出せるのは、電気を操ることができるこの二人だけなのでしょうか?仮にそうだとすると、ダギーであったりダイアンであったりのドッペルゲンガーを作り出したのは "進化した腕" ということになりそうです。となると、そこから導き出せるドッペルゲンガーの存在理由は下記の二通りになります。

 A."ガルモンボジーア" を搾取するために産み出された存在

 B.ボブの手助けをするために産み出された存在

Aの方向で考察すると "進化した腕" はガルモンボジーア(痛みや悲しみ)を味わうためにダギーやダイアンが住む世界を作り出したと考えられます。その視点で見ていくと、お酒とギャンブルが大好きだったという元ダギーに、ジェイニーEは随分と悩まされていたようですが、その苦しみは映画でのローラ・パーマーのような役割に見えてきます。そして、真意の程は定かではないですが、片親違いの姉妹であるダイアンも、ストーリーでは描かれていない部分でなにかしらの辛酸を舐めていたのではないかと思われます。

Bの方向で見ていくと、旧シリーズの最終回でウィンダム・アールと共に現世に解き放たれたボブを、何かしらの理由で手助けするためにダイアンとダギーを産み出したと考えられます。そうするとダギーの存在よりもダイアンの存在の方がボブもしくはアールにとっては重要だったのではないかという勘繰りが出てきます。FBIの情報であったり、クーパーからの情報であったりを手に入れるためにダイアンを利用したと考えられるのです。さらに拡大解釈をするなら、悪事のための資金繰りのためにダギーの存在を作り、ラスベガスのトッドであったりミッチャム兄弟であったりを動かすことに成功した。

どちらの方向でもこじつけようと思えばいくらでもこじつけられそうですが、いずれにしてもダイアンの存在、そして、ダギー・ジョーンズ周辺の存在というのは "造られた世界" と言えそうな気がするのです。

 

◆ダギー・ジョーンズの家(ダギーの帰宅)

『チャイムが鳴り、玄関ドアを開けるジェイニーE。そこにはダギーの姿が。サニージムも喜んで駆け寄ります。ダギー、チャイムが押せるようになったね...』

先ほどダギーとダイアンが住む世界は "造られた世界" であると仮定しました。その仮定をもう少し推し進めてみると、ちょっと考えたくない世界が見えてきます。それはジェイニーEとサニー・ジムも "造られた存在" なのではないかという仮説です。さらにそこから見えてくるのはラスベガス自体が "造られた世界" なのではないかという疑惑です。

『The Return』の中でラスベガスのストーリーというのは、本編のミステリーとは完全に切り離された世界が描かれていました。ちょっと振り返ってみると、そもそもラスベガスの舞台は第3章のこれが入口でした。

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ナイドが電圧を落としたであろう大きなコンセントからそもそも転送されてきたわけです。このどこかの画用紙にとりあえず『3』と書いたようなデマカセ的な部分からクーパーはラスベガスにやってきた。ここからして、ただでさえ普通じゃないツイン・ピークスの世界で、さらに異色の世界へ "転送" されていることを象徴しているのではないかと思うのです。

またラスベガスに登場するキャラクターはツイン・ピークスの住人に引けを取らない曲者ばかりが、ここぞとばかりに揃っています。ジェイニーEを筆頭にブッシュネル社長とラッキー7保険の社員たち、ミッチャム兄弟にキャンディー、119のヤク中ママ、フスコ3兄弟、アイク・ザ・スパイク、極めつけは進化した腕や片腕の男が普通に登場!どのキャラクターも愛すべき存在であり(特にジェイニーEとミッチャム兄弟!)『The Return』を大いに盛り上げてくれたキャラクター達ばかりです。そんな彼らや彼女らがいわゆる "幻" の世界の住人だったなんて、思うだけで寂しくなってしまうのですが、物語を追っていくとどうも幻の世界ではないかと思えて仕方がないのです。その理由は、

 ①進化した腕や片腕の男がちょいちょい登場する

 ②ミッチャム兄弟の家に "黒電話" がある

 ③ランスロットコートに住人がいない

 ④「シカモア通り」が存在する

 ⑤「ここは天国」というセリフが登場する

 ⑥シルバー・マスタング=白銀の馬

 ⑦ラッキーセブン=過去・現在・未来・東西南北

 ⑧赤いドアとフクロウ

 ⑨誰もツイン・ピークスとつながらない

 ⑩ラスベガス="肥沃" の土地

とりあえず10項目挙げてみました。他にも細かく観ていくと出てきそうですが、とにかく条件はいろいろと揃ってしまいそうなのです。そんなラスベガスでのラストシーンが、このダギー・ジョーンズの帰還。しかも "赤い部屋" からダイレクトに "赤いドア" まで辿り着いてしまうのです。それでも例え幻の世界であっても、ここは "天国" であり、ジョーンズ一家は幸せな時をこれから過ごしていけそうではあります。そういう意味ではラスベガスがハッピーエンドな世界でホッとします。本当に短いシーンですが、ダギーの「家(Home)」というセリフも泣けてきます。

このセンテンスを読んで「あれ?ミスター・トッドが抜けてない?」と思った方、かなり鋭い方だと思います。安心してください、忘れているわけではありません。ラスベガスのキャラクター達の中で唯一「第2章」に登場していた彼は "現実" のキャラクターになります。その辺については "総論" の時に思う存分語りたいと思っています。

 

◆ゴーストウッドの森(ローラの消失)

『ローラを連れて "森の心臓" に向かうクーパー。カリカリ音がしてローラが消える。森に響き渡るローラの絶叫。どうしたもんじゃろのぉ...と困り顔のクーパー。先週のシーンの繰り返し。困った顔をしたいのは見てるこっち側なんだけどな』

このシーンの解釈として一般的に定着しそうなのが「ローラママの時空を超えた攻撃によってローラ救出は失敗した論」ではないかと思います。その根拠となるのが第17章のこのシーン。

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鬼気迫るローラママが酒瓶で「こんにゃろう!こんにゃろう!」と凄まじい怨念でローラの写真を叩きつけています。これが "1989年2月23日" の夜にまで影響していると思えば思えなくもない解釈ではありますが、どうでしょう?いくらリンチだからと言って、そればっかりは突飛すぎやしないでしょうか。どちらかというとクーパーの時空転送によって、あるはずのローラの死体が歴史から消えてしまったことへの怨念・悔しさみたいな、そんな印象の方が強いような気がするのです。だから、いくら酒瓶で叩きつけても写真にはキズひとつ付かなかった。逆にローラママの攻撃をことごとく跳ね返し、お前の負けだと微笑んでいるようにも見えるのです。

ではこのカリカリ音でローラを連れ去ったものはなんなのか?ですが、音響から辿ると "炎" が燃え盛る音とローラの絶叫が第2章のローラの絶叫とほぼ同じです。となると、あの第2章のクーパーに耳打ちをした後にローラをどこかに連れ去った何者かがカリカリ音の正体になりそうな気がします。そのシーンはこの後にもリフレインされるのです。

では、そのカリカリ音の正体はなんなのか?という話ですが、たぶん、こいつです。

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アルルのヴィーナス。

あの "こすれる" ようなカリカリ音は大理石が擦れる音ではないかと。第1章で消防士は大理石の擦れる音をクーパーに聴かせ「今それは我々の家に」と呟き、クーパーも「そうだ」と応えていました。それはアルルのヴィーナスが消防士とクーパーの家 "ホワイトロッジ" に侵入していることを現わしているのではないかと思うのです。とは言っても、このアルルのヴィーナスがヒョイヒョイと動いているわけではなく、あくまでもヴィーナスは象徴であります。では、何を象徴しているのか?ですが、それはもう言うまでもなく "ジュディ" です。なので、ローラは "ジュディ" にさらわれた、もしくは消滅させられたということになるのではないかと。

あまり伝わらないと思うので順を追って説明をしますが、まず "ジュディ" は「極めてネガティブな存在」であると第17章でゴードンが語っていました。ここまでは誰でもわかると思います。では、なぜそれが "アルルのヴィーナス" とつながるのか?ですが、『The Return』に登場しているヴィーナスは復元前の状態であり、現在ルーブル美術館に展示されているヴィーナスには両腕が復元されています。

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復元された彫刻の右手には "林檎" が、そして左手には "手鏡" が握られていたのではないかと言われています。この二つのキーワード、まず "鏡" はリンチ・ファンでしたら説明するまでもないですよね、あっちの世界への入り口です。問題は "林檎" です。話は聖書に飛びますが、アダムとイブが楽園から追放されたのは "禁断の果実" を食したからでした。それは悪魔の化身である "蛇" がイブをそそのかしたからであり、そそのかされたイブやその子孫であるすべての女性は "産みの苦しみ" を課せられてしまいます。

なんとなく伝わるでしょうか?"アルルのヴィーナス" は罪深いイブを象徴しているのではないか。そして、イブをそそのかした "蛇" が「極めてネガティブな存在」なのではないか。フィリップ・ジェフリーズも暗に "蛇" の象徴である「8」を提示していましたし、第17章では「ここでジュディを見つけるだろう」とも語っていました。

さらにリンチ監督はあえて復元される前の "アルルのヴィーナス" を赤い部屋に配置しています。この時空にまつわる考察は赤い部屋にあるもう一つのヴィーナスである "ミロのヴィーナス" と共に総論で語りたいと思います。

 

◆赤い部屋

突然、第2章にフラッシュバック。

片腕の男「これは過去か、それとも未来か」

しかし、現れるはずのローラの姿がない...。

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過去改変の影響がさっそく現れているけど、

だとしたらクーパーがここに居るのもちょっと変。

 

部屋の向こうで、こっちさ来いと片腕の男。

ついていくと "進化した腕" がいる部屋へ。

完全に第2章の繰り返し。

違うのは "腕" が語るセリフ。

"通り沿いの家に住んでいたあの少女の物語なのか?"

これはオードリーがチャーリーに確認した話題。

それをなぜ "腕" が語っているのだろう?

 

またもや突然に場面が切替わり、

ローラがクーパーに耳打ちをする。

第2章の時は「ああ...」と納得していたクーパー。

今回はそれが「はあん?」に変わっています。

いやいやいや、

はあん?って言いたいのはこっちですけど!

 

悲鳴と共に宙に消えていくローラ。

目線を戻すクーパーの先にクーパー。

またドッペルゲンガーか?

と思いきや、ソファにはリーランド。

「ローラを捜せ」

言われて、何かを決心するクーパー。

赤いカーテンの向こうに行くと、

右手をヒラヒラヒラヒラさせます。

それに呼応するかのように先のカーテンが開く。

 

この右手ヒラヒラ、

第5章でロドニーが支配人をボコってる横で、

キャンディも同じようにヒラヒラさせていました。

また先週の第17章でも、

悪クーパーが保安官事務所に辿り着くと、

急に怯え始めたナイドが右手をヒラヒラしていた。

 

話が飛びますが『インランド・エンパイア』では、

誰かに殺される!とバーに逃げ込んだニッキーを、

赤いカーテンの向こうへ案内したカロリーナが、

サヨナラとばかりに左手をヒラヒラさせていました。

 

一見すると "念" を送っているような印象を受けます。

となると、

クーパーはこの短期間で

ジェダイ並みにフォースが操れるようになったと。

驚異的な覚醒ですな!

 

グラストンベリー・グローブ

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赤いカーテンの先はグラストンベリー・グローブ。

これが正規の出口なんかな?

外ではダイアンが待っていました。

...、...、...。

んん、嘘っぽい、嘘っぽいぞ。

 

◆山間のハイウェイ

ドライブ・タイム。

景色は段々と配電線が立ち並ぶ山間になる。

鉄塔の姿形がフクロウのマークに見えるのは、

もう完全に頭がイカれてしまった証拠かもしれない。

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 「ちょうど430マイルの地点だ」

そう言って車を止めるクーパー。

外に出ると、電気のジリジリ音と時間を確認する。

そして、ウンウン、そうだ、間違いない、と納得。

またジェダイですか?

いったいフォースは何を感じてるんですか?

 

「ここを超えれば全てが変わるだろう」

そう言ってキスをせがむクーパー。

...、...、...。

第8章のあの少年もキスをせがんでいたな...。

今まで逃げ腰だったダイアンは、

クーパーとキスすると「行きましょう」と急に決心。

 

車を動かし、430マイルの地点を超えると電気が走る。

するとクーパーとダイアンの席があべこべになる。

もう右も左も関係ないということかな...。

時は急激に進み、道は暗闇に変わる。

フォースの次はデロリアンか...。

もうBTTFはいいでしょう...。

 

◆どこかのモーテル

車を駐車場に入れ込むと、

チェックインを済ませに行くクーパー。

その間、車中で待っているダイアンは、

建物の向こうに自分の姿を確認する。

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だけど、ダイアン、微動だにせず...。

ねえ、ドッペルゲンガーだよ、ダイアン?

少しは驚いたら?

ダイアンに "死" のフラグが立ってしまいました。

 

◆モーテルの7号室

部屋に入り、抱き合うクーパーとダイアン。

しかし、どうもさっきからクーパーの様子が威圧的。

で、The Plattersの "MY PRAYER" が流れる。

これ第8章で "森の男" がブチ切った続きになります。

なんでしょう、ちょいちょい第8章が顔を覗かせます。

抱き合っているのにクーパーは無表情だし、

ダイアンは何か救いを求めるように天を仰ぐ。

そして、何も見ないでとばかりに、

クーパーの目を両手で覆います。

 

翌朝、目が覚めるとダイアンの姿がない。

部屋の中を見回しても、

古いテレビに古くさいチェスト。

ベッド脇にはダイアル式の電話と1枚のメモ。

起き上がるクーパーはメモを読み上げる。

 

"リチャードへ

私は出ていきます

捜さないで

もう あなたが分からない

私たちが共有したことは終わった

リンダより"

 

クーパーはリチャードとリンダに違和感を感じる。 

 

部屋の外に出ると、昨夜のモーテルとは違う建物。

キーレスで車のロックを外す。

この車も昨夜の古びたクーペとは明らかに違う。

リンカーンのコンチネンタル。

クーパーは建物を振り返り、違和感を感じている。

が、何食わぬ感じでその場から走り去っていく。

 

さて、駆け足でここまできましたが、

一旦、ここまでのクーパーの足跡を

ストーリー順におさらいしてみようかと思います。

 

1989年2月23日 ローラを助けようとするが消失

  ↓

2016年 赤い部屋で右往左往(第2章まで戻る)

  ↓

1970年代 グラストンベリー・グローブに出てくる

  ↓

1970年代 インペリアル・クーペで430マイル先へ

  ↓

1970年代 モーテルに泊まる

  ↓

1991年 モーテルで目覚める

 

実際はどこまでかわかりませんが、

登場している車の車種から、

ほぼこの年代で移ろっているのではないかと妄想。

もう次元というよりも時空がめちゃくちゃです。

 

以前、オードリー関連でも考察しましたが、

スマホだ、タブレットだ、という時代に、

モーテルの部屋にダイアル式の電話があるってのは、

もうそれだけで疑ってかかるべき小道具ですね。

 

さらに消防士のメッセージが一挙に登場。

"430" は "430マイル地点" のことみたいですが、

これは、どこから430マイルなのかイマイチです。

ジャック・ラビット・パレスから235ヤードのように

何かしらの基準になるものがありそうですが、

んん...、そこは想像して楽しみなさいということかな。

 

"リチャードとリンダ" は、

もう全ての人の想像を覆す展開で登場。

このシーン以降のクーパーは、

完全にリチャードの人格に入れ替わっています。

見た目はクーパーだし、

本人もクーパーだと思ってるようですが、

これはリチャードとシンクロした状態ではないかと。

それを念頭にこの後のシーンを見ていきます。

 

オデッサ

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テキサス州オデッサ

クーパーは "ジュディのコーヒーショップ" に赴く。

 

◆ジュディのコーヒーショップ

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店内では老夫婦がブレックファースト。

まるで『マルホランド・ドライブ』の老夫婦みたい。

店に入ってきて誰かを探しているクーパー。

いや、リチャード捜査官。

いないとわかると席に着きます。

「他にもウェイトレスがいるだろ?」と聞かれ、

なぜか一瞬固まるクリスティというウェイトレス。

何か事情を知ってそう。

「今日は休みだし、もう3日も休んでる」と言い残し、

カウボーイ3人組の方におかわりを注ぎに行きます。

ていうか、どんだけコーヒー飲み放題なんだろ?

 

クリスティにちょっかいを出すカウボーイたち。

リチャード捜査官、その手をはなせっ!と一喝。

なんだろ、昔の刑事ドラマを見てるみたい...。

んだと、こんにゃろ~とカウボーイたち。

リチャード捜査官、一人を金蹴り、

もう一人のつま先を拳銃で撃ち抜く。

ていうか、金蹴り!

やっぱ、昔の刑事ドラマみたいだよ...。

彼らの拳銃を奪うと、それをフライヤーの中に入れる。

しかも、銃を構えたままです。

この銃の構え方も、随分と前時代的です...。

「心配しなくていい、私はFBIだ」

逆にそう言われると嘘っぽく感じるんですけど...。

リチャード捜査官、

住所のメモを受け取り店を後にします。

なんかチャールズ・ブロンソンの方が似合いそう。

 

◆キャリー・ペイジの家

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メモの住所に到着。

荒れ果てたピンクい平屋の家。

驚くことに家の脇にはリアルな "6の電信柱" 。

これはカールが幻視していた電信柱です。

 

ノックするとキャリー・ペイジが出てくる。

リチャード捜査官は彼女がローラだと思っている。

キャリーは捜し人が見つかったと思いドアを開けたが、

どうやら的外れだったみたい。

訳の分からないことを聞くFBIを追い出そうとするが、

「母親の名前はセーラじゃないか?」と聞かれ、

急に動揺を隠せなくなる。

「一体、どういうこと?」と聞き返すキャリーに、

リチャード捜査官はまた訳の分からないことを言う。

ひとまずキャリーが心配していたことではなさそう。

「君を母親の家に連れて行きたいんだ」という誘いに、

キャリーはある計画を思いついたみたい。

このFBIを名乗るちょいとお頭が足りない男を使って

ここから逃げ出そうとするらしい。

リチャード捜査官は、それにぜんぜん疑問を抱かない。

 

家の中に入ると、ソファで男の死体が硬直していた。

額を撃ち抜かれ、腹が膨れて膿んでいる。

死後数日経っているのか蝿もたかっている。

見た目はキラーボブのよう。

長髪でジーパン姿、腹にあるのはボブ玉だろうか?

しかし、リチャード捜査官、なにをするわけでもない。

 

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視線は暖炉の上にある馬の模型と青い皿に移る。

床にはライフルが一丁転がっている。

この様子から男の死体の経緯が推測できるけど、

リチャードもキャリーも、そんな事にはお構いなし。

電話が鳴りだすがそれもほったらかし。

ワシントン州って寒いの?

コートがあるから持って行かなきゃ。

食料がなにもない!

途中で調達すればいいのね、最高じゃない!

なんか今からピクニックでも行くような雰囲気です。

さあ、行きましょ行きましょ。

そう言って外に出る二人。

去り際に憎々しげに男の死体をにらむキャリー。

ヤバイ、あの男を殺したの、あんたでしょ。

ということは、母親のセーラも殺してるね!

 

◆ドライブ・タイム

今回、二度目のドライブ・タイム。

テキサス州からワシントン州まで車で移動って、

もろにアメリカ縦断じゃないですか!

なのに一回ガソリンを給油しただけ。

しかもひたすら夜道を走っていきます。

まるでトワイライト・ゾーンですね...。

 

橋を渡り、ツイン・ピークスに入りました。

ダブルRダイナーがある交差点を曲がります。

今まであった "RR2go!" のロゴも消えています。

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ツイン・ピークスに見覚えがあるか?と聞かれるが、

もちろんキャリーにあるわけがない。

彼女はただオデッサから出られればそれでよかった。

逆に途中でよく逃げなかったなぁと思う。

 

◆アリス・トレモンドの家

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かつてパーマー家が住んでいた家に到着。

リチャードとキャリー、

なぜか仲良く手をつないで玄関に向かいます。

あんた達、途中でなんかあったでしょ。

 

長年のピーカーからすると、

これってとんでもないパラドックスですよね。

先週もそうだけどクーパーとローラが手をつなぐって、

普通じゃ考えられないシチュエーションですよ。

 

ドアをノックすると見知らぬ婦人が出てきます。

アリス・トレモンドさん、だそうです。

リチャード捜査官、しきりにセーラ・パーマーを連呼。

知らないものは知らないんだって。

ちょいと変質者気味です。

トレモンドさんの前に住んでたのは、

チャルフォントさん、だそうです。

この2人の名前、説明不要ですよね。

皆さんご存知の、あのご婦人です。

 

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ジャンピングマンの化身である孫を従えていた

あのトレモンド婦人が "ジュディ" なのでしょうか?

いや、なんか違うような気がします。

婦人は "ガルモンボジーア" が大嫌いな人でしたから。

まあ、その辺はまたゆっくり妄想したいと思います。

 

な~んだ、セーラ・パーマーの家じゃないのか...と、

明らかに肩を落として車に引き返すリチャード。

そんなに落ち込むなよ...。

テキサスからは遠かったかもしれないけどさ。

で、ふと何かに気づいたように振り返ります。

「今は何年だ?」

そう問われて、なぜかキャリーも答えられない...。

 

そんなんしている内に、どこからかセーラの声。

「ロォ~ラァ~~~!」

随分と明るいセーラの声です。

それを聞いたキャリー、殺した母親の記憶が蘇った?

急に叫び声を上げます。

リチャード、めっちゃビクッ!となっています。

で、全ての電気が消える!

要するに "火" が消えた!

すげぇ!

 

◆エンドクレジット

ローラの耳打ちに切ない表情を浮かべるクーパー。

まるで何かを諦めてしまったかのよう...。

バダラメンティの重々しい旋律が、

さらにクーパーの諦めを助長します...。

 

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そして、いつもはビシュンビシュンとスパークする

"LYNCH/FROST PRODUCTIONS" のクレジットも、

無音。

 

完全に電気が消えてしまったみたいです...。

 

そんなわけで、終わってしまいました。

今回の『The Return』最高だったなぁ。

リンチ監督の集大成っていうのが、とにかく最高。

やっぱ映画館で観たいよね、全部とは言わないけど。

せめて第1章と第8章、そして第11章かな。

それでもう3時間になっちゃうんだけど。

 

結局は夢オチなの?ループなの?って感じですが、

んん...、僕的には "覚え書き" みたいな感じがします。

リンチの覚え書き。

いろんな映画のオマージュが詰まっていて、

映画だけじゃなくて絵画であったり音楽であったり、

セルフ・パロディまで含めて、

とにかくリンチ監督の全てが詰まった作品。

いや、これで全てじゃないだろうから、

余計にリンチ監督の底知れないクリエティブに、

畏怖の念すら感じます。

 

マーク・フロストは、

そこに "アメリカ" という歴史と社会のスパイスを、

本当に都市伝説的に物語に組み込んでいました。

今さらUFOだもんなぁ。

本当、そういうの好きなんだろうな。

僕も好きだけど。

 

もともとは今回の第18章、

総論として一つの記事を書いたら、

もう終わりにしようと思っていたのですが、

まあ、2~3日でまとめられる量ではないので、

いつもの簡易バージョンを急遽、こしらえました。

 

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 昨今の映画やテレビドラマなんてまったく観てなくて、映画館なんてそれこそ軽く4~5年は行ってないオッサンが、何をとち狂ったか毎週毎週テレビにかじりついている生活もとうとう終わりです。この半年近く、楽しかったなぁ...。デイヴィッド・リンチ監督、ありがとう。やっぱり僕はリンチの世界観が大好きなんだなと痛感しました。そして、その世界観の "行間" を読む作業のなんと楽しいこと楽しいこと。説明台詞やテロップがやけに目立つこの頃のテレビドラマに比べたら、今回の『The Return』は取説や工具なしで車のエンジンを組み立てるようなものです。目の前に部品は転がっているけど、どれがどう組み合わさるのかさっぱりわからない。とりあえず大枠のカバーでこんな形のものっていうのはわかるけど、その中身をどう組み立てれば動くようになるのかが、いろいろ想像したり他の機械を参考にしたりしないと紐解いていけないみたいな。その紐解いていく中で "ハッ!" となる瞬間がたまにあるんだけど、それがたまらなく気持ちいいんですよね。正解なのか見当違いなのかは別として。

 その "ハッ!" となった閃きみたいなものを、この数か月間ブログに書き連ねてきました。それも今回でひとまず区切りをつけようかと思います。各章ごとにまとめたり前半後半でまとめたりしてきたので、最後に総論としてまとめようと思っていたのですが、なかなか時間を作るのが難しくなってきました。

 

 最後に僕なりの『The Return』の解釈をズラズラズラーッと書き連ねていきます。

 総論としては、前にも書いたように "リンチの覚え書き" というのが、今回の『The Return』だと思います。とにかく毎回毎回、短編ドラマのように1時間ごとにテーマがあって、それに沿ってキャラクターが動いている。もしくはドラマが起きていました。第6章の親子であったり、第8章のニューメキシコであったり、第10章の愛であったり、なんでしょう、出てくるキャラクター達が変わらない18編ある短編集のような形、そんな風に僕には見えます。

 『インランド・エンパイア』でデジタルカメラを手にしたリンチ監督が、なんとなく撮りためた映像を後付けで編集したように、今回の『The Return』も同じ手法を逆からしていたのではないかと思います。このテーマだったら、これが使える。こっちのテーマだったら、これが使える。それがキューブリックであったり、ホッパーであったり、自らの過去の作品群であったり。そんなリンチ監督のインスピレーションやイマジネーションが詰まった作品というのが、全体的な印象です。

 

◆結局、オチはなんなの?

 最終的なオチは "クーパーが現実に戻ってきた" というのがオチだと思います。それがあの第16章のありえないぐらいの高揚感ではないかと。現実に戻りボブとドッペルゲンガーをロッジに戻した。ここまでが大筋の流れ。その後のローラ救出は名の通り "別次元" の話のような気がします。

 

◆ラストシーンの意味は?

 それがわかればみなさん苦労しないと思いますが、僕が思うところでは、あのセーラが「ローラ」と呼ぶ声は、旧シリーズの序章、寝坊しているローラを呼ぶセーラの声と同じだと思います。その声を聞いてキャリーが絶叫したというのは、まだ1回や2回見ただけでは理解できないのかもしれません。

 

◆"ジュディ" ってなんなのさ?

 第17章で突然カミングアウトされた "ジャオデイ" というネガティブな存在。はっきりしたことはもちろんわかりませんが、なんとなくこんな感じではないかと思うのが、新シリーズの随所に織り込まれたゴードンのダジャレにヒントが隠されてるっぽいなぁと。

 映画『FIRE WALK WITH ME』でフィリップ・ジェフリーズはゴードンの「メーデーメーデー!」を "MAY" と "DAY" に分け「5月?」と言っていました。同じように "ジャオデイ" を "JOW" と "DAY" に分けると "揺れ動く日" になります。(関係ないと思いますが "ジャオ" って中国語だと "叫び" という意味みたいです。ニュアンス的には叫びの根源、要するに恐怖の根源みたいなイメージにもとれるのですが、まあ、これは僕の妄想でとどめておくことにします。)揺れる、安定しない、そんなイメージが "ジャオデイ" から導かれるのですが、なんかしっくりきません。

 綴りが違うのですが "GEORDIE" という言葉があります。ジョーディと読むのですが、ちょっと調べてみると、これはイギリス北西部の訛りのことを言います。この訛り、例えば "Today" が "The dayah" になったりと同じ意味でも見た目がぜんぜん違うようです。またイギリス "England" の名前の由来は "Angele-land" 天使の国という意味みたいなので、フレディー君、君は天使の国から来たのか?みたいな感じもするのです。ちょいと話がズレましたが、要するに "ジュディ" もしくは "ジャオデイ" は見た目と本質が違うのではないかと思うのです。フィリップが遭遇した若い女性然り、テキサスにあった "ジュディの店" 然り、それは提示されているものとその本質が違う。

 そこから何が導き出されるかというと "ジュディ" = "トレモンド夫人" ではないかと。ジャンピングマンを従い、あちこちのトレーラーハウスなどに幻のように現れては消えていく。彼女が何をしようとしているのかはイマイチわかりませんが、現時点ではローラをどこかに導こうとしている存在であるということしかわかりません。これも何度か『The Return』を繰り返し観ることによって、おぼろげに理解できるのかもしれません。

 

◆セーラ・パーマーはどうしちゃったの?

 大方の感想を見ていると第8章でトビガエルを飲み込んだ少女=ローラママというのが一般的な見解になっていますが、僕的には釈然としません。そもそもトビガエルが孵化するのに11年もかかっているのが不思議だし、タイミングが "森の男" が闇から出現するのと同時というのも図ったような感じです。それよりも仮にローラママがトビガエルを飲み込んだためにあのような非存在的なキャラクターになったというなら、旧シリーズでの彼女のキャラクターが全て崩壊するような感じがします。

 Youtubeで面白い見解があったので貼りますが、

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 まるでマーティーに時空の歪みを説明するドク・ブラウンのようですが(笑)、新シリーズの第1章から既にクーパー改変前と改変後を同時に描いていたという見解です。これおもしろいなぁと思ったのは、今回の新シリーズ、明らかに "現実" を描いているシーンと "非現実" を描いているシーンに分かれていると思うんですね。その違いはエキストラがいるかいないか、道を走っている時に対向車とすれ違うかどうか、そして、リンチ作品の黄金の小道具 "黒電話" があるかどうかなんですが、ローラママが登場するシーンは全て "現実" バージョンになっています。逆にダギーが住むランスロットコートや、ツイン・ピークスでいうとグレート・ノーザン・ホテルや保安官事務所というのは、どこか現実と離れ小島のような印象があります。改変後でわかりやすいのが、最終章のクーパーデロリアンだったりモーテルだったりというのは、明らかに "非現実" バージョンだと思うのです。その棲み分けがこの改変前と改変後だとしたら面白いなぁと、BANG BANG BAR のあの意味不明なシーンも納得できるなぁと。

 ただ、それだけでローラママが変貌するのはやはり腑に落ちません。第15章ではジャンピングマンとローラママがダブっていましたが、ここから読み解けるのがジャンピングマンを従えていたトレモンド夫人=ジュディに操られていたのではないか、というのが一つの見解です。それは旧シリーズの最終回でブリッグス少佐にメッセージを伝えているシーンにもつながります。

 では、第8章でトビガエルを飲み込んだあの少女は誰なのか?ですが、僕的な見解は第14章の考察で語ったように "青いバラ事件" の被害者、もしくは加害者でもあったロイス・ダフィーではないかと思っています。その謎は「ケネディ暗殺の真相」や「マリリン・モンロー自殺の真相」と同じで永遠に解明されないのではないかと思っています。逆にだからこそ、ミステリアスで僕たちの興味を麻薬的にそそるのではないかと思うのです。

 

 いずれにしても、最後の最後に "電気" が消えてしまいました。これは完全に終わったというリンチ監督からのメッセージだと思います。どこで聞いたか見たか忘れてしまいましたが、カイル・マクラクランはこのエンディングが数あるうちの一つだったことをインタビューで答えていました。また、撮影された総時間は180時間分もあるなんてこともどこかで聞いたような気がするので、この18時間で納まりきれなかった数々のエピソードが裏設定として存在していたことを証明しています。

 12月に発売される『ファイナル・ドキュメント』やDVD/ブルーレイなどで、埋もれてしまったエピソードが明らかになると嬉しいですが、それまではWOWOW放送分で、このリンチ集大成クロニクルを存分に味わいたいと思います。