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【コンフィデンスマンJP】伏線回収完了!時系列解読完了!バトラー、あんたが一番、得してんじゃないかっ!

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『真実を探しているものを信じよ。真実を見つけたものを疑え』冒頭でダー子が紹介していたのはフランスの小説家アンドレ・ジッド(アンドレ・ジイド)の格言。出典はジッド最期の回想録『Ainsi soit-il ou les jeux sont faits』からのもので、この格言には実は続きがあります。

『すべてのことを疑うが、あなた自身を疑うことはない』

 

第1話から熱心にドラマを見ていたコンフィ・フリークなら、ドラマ開始早々、辞めたい病のボクちゃんに「398回目ですよ」と、麩菓子を食べながら呟いたダー子に、ん?とすぐに勘付いた人も多かったのではないかと思います。前々から "3人の過去" が最終回で語られると触れ込みがされていたので、なるほど、そういうことかと。

で、お決まりのようにボクちゃんは放浪の旅に出発し、その1年後には "はにわ運送" の主任になっていました。ここで、なんやねん、コンフィデンスマン世界の引越し言うたら "シロクマ引越社" なんやないのか!とツッコミを入れた方は、かなりの筋入りの方ではないかとお見受けいたします。だよね。なんで "シロクマ" じゃなくて "はにわ" なん?まあ、いいんだけどさ。

ここで登場するのがラスボス鉢巻秀男。どうやら結婚詐欺にあったそうです。根っからの古沢ファンなら、結婚詐欺と聞いて真っ先に思い浮かぶのが『リーガル・ハイ』第2期で "世紀の悪女" と叩かれた、あの妖絶な美女、安藤貴和ではないでしょうか。となると、あの深々と帽子を被った髪の長い女性は小雪小雪なのか?いやいやいや、そんなことはあるまい。しかもだまし取られた金額が3000万って、少なっ!(決して額としては少なくないのに、少なく感じてしまうのが既にこのドラマに毒されている証拠かもしれない)。なんか、おかしくね?と思っていたら、案の定、鉢巻くんが豹変。最終回のスタートとなります。

おっと忘れてはいけません。かの金田一耕助をパロッた『名探偵 海老河原の冒険』もちゃっかりと『リーガル・ハイ』第1期第7話を踏襲しています(海老河原の口ひげは完全に名探偵ポアロです)。DVDのパッケージを見ると「名探偵 海老河原幸吉シリーズ Episode0 (ZERO)」と表記されています。そうなんです。コンフィデンスマン注目の最終回はエピソード・ゼロだったんです。

 

巷ではキレイに1話にループした!と大絶賛されていますが、これによって今まで何度かチャレンジしてきたドラマの時系列がはっきりすることになりました。まずは嘘か真かわかりませんが、ダー子・ボクちゃん・リチャードの過去を整理してみましょう。

【リチャード】

本名:鎌田潔

経歴:もともとは妻 佳代、娘 恭子と暮らしていた宝飾品のトップセールスマン。自身の売上金を会社に取られるのが嫌になり独立、仲間と共に詐欺販売で大儲けすることになる。

【ボクちゃん】

本名:西崎直人

経歴:詐欺師である母 西崎信江の一人息子。中学の時に母が逮捕されてから絶縁状態に。母 信江とリチャードは詐欺師仲間だった。母の誕生日は6月12日。現在は札幌の小さなスナックを経営している(ダー子がポロッと言っていた "松前漬け" につながる)。

【ダー子】

本名:藤沢日奈子

経歴:児童養護施設 松戸みらいガーデン(千葉県)の出身。中学の時にボクちゃんの母 信江と知り合い、詐欺の手口を叩き込まれる。悪徳アイドルプロデューサーである古本敦をダマし大金を手に入れる。その際にAKBのような服装をしていた。

とまあ、こんな経歴を並べたてられたものだから、子犬を探していた鉢巻くんはまんまと騙された訳ですが、さて、この設定のどこまでが "本物" なのでしょうか?

 ◆ダー子とボクちゃんは中学時代から知り合いだった

 ◆ダー子に詐欺を指南した師匠のような人物がいる

 ◆ダー子の師匠とリチャードは知り合い

 ◆ダー子の師匠とボクちゃんには深い関係がある

 ◆本名のイニシャルは同じアルファベットになっている

この辺りをほぼ確定としてもいいのではないでしょうか。もし映画で描かれるのがこのような三人のビギニングだとしたら、それはそれで面白いかもしれません(あまりシリアスになってもどうかとは思いますけど)。

 

そして、先述したように、この最終回はエピソード・ゼロ、今までの9話の中でも一番古い時系列になることが明かされました。5年前に新宿 金虎幇のボス孫秀波から15億をだまし取ったのが、作品内で描かれたダー子たちの一番古い事例になりそうです。その他にも、悪徳芸能事務所にありもしない音楽著作権を売り付けたり、F1好きのオーナーにレーシングカーを売り付けたりしたそうですが、これらの事例がいったいどこまでが "本物" なのかは定かではありません。古沢さんのNOTEを見ると、今回のコンフィデンスマンでは没になったネタが多数あるようですので、この著作権やF1絡みの事例は、その没ネタの一部なのかもしれません。

さらには、以前のブログでは第6話の『古代遺跡編』を軸に、ドラマの時系列を勝手に妄想してみるという試みをしましたが、全10話の全貌が見えた今となっては、ドラマで放送された順序が、そのままドラマの時系列になるのではないかと思っています。ここでもう一度、今までのちょい出し小道具を振り返ってみると、

【第1話】

◆いわき空港にMIKAブランドのポスターが貼ってある

【第2話】

◆民宿「八五郎の宿」に "うなぎのカレー煮" のダンボー

◆民宿「八五郎の宿」の本棚に『幻を求めて』

桜田リゾート「鈴の音」にMINOBEの化粧品 "弁天水"

※ダー子がバスの中で『縄文時代ガイドブック』を読んでいる

【第3話】

◆伴ちゃんが "うなぎのカレー煮" を食べている

【第4話】

◆ダー子の部屋のテレビに『ドクター・デンジャラス』

【第5話】

◆野々宮ナンシーが猫ノ目八郎の『ヤバイ!』を読んでいる

◆ダー子のフェルメールが野々宮総合病院に飾られている

【第6話】

なし

【第7話】

◆鎌倉花火大会の協賛に「公益財団あかぼし/モスモス/桜田リゾート/斑井コンサルティング」が名を連ねている

【第8話】

◆MIKAブランドの受付にダー子が作った土偶となんちゃってオジサンの埴輪

【第9話】

◆五十嵐が「ふじみ屋」の "三色だんご" を食べている

◆熱海チーターズのユニフォームに「俵屋フーズ/斑井コンサルティング」が名を連ねている

これらがこのままの時系列だとすると、第2話の「いいだばし六郎太」での失敗を機にボクちゃんが402回目の離脱をし、その2ヶ月後、エロ女将に一目惚れしたボクちゃんの頼みで桜田リゾートをターゲットにしてから、たぶん数か月の間にプロジェクトが進行し、最終的にボクちゃんと五十嵐が出会ってから丸一年強の間に第3話から第8話までが同時進行したことになります。物語の中で一番新しい出来事は、先週読み解いたように熱海チーターズがプロリーグで初勝利をした今から1年後の未来です。

前々から古沢さんは「劇中の小道具は現場の遊び心」と言っていたので、この時系列は計算されたものでは決してなくて、全話並べてみたら、この順番が一番しっくり来たってだけかもしれません。物語も1話から順に書き始めた訳ではなく、全10話分のネタを拵えるために、その3倍ものネタをああじゃないこうじゃないとこねくり回していたようです。ただ、そのどれもに共通するテーマが「信頼」だったことは見事です。

第1話で既に「信頼ってお互いに信じ合うことです」と語っていたダー子。ボスと部下の関係、売り手と買い手の関係、社長と社員の関係、男と女の関係、親と子の関係、チームの関係、会社と世間の関係、いずれも "信頼" なくしては成立しないものですが、それを杓子定規で書いたような生真面目さではなく、面白おかしく、時にパロディを大胆に挟み込みながら描いたドラマ、それが『コンフィデンスマンJP』でした。全10回、最高でした。

騙されることに慣れてしまって映画化さえ疑っているコンフィ・フリーク達ですが、ここで冒頭のアンドレ・ジッドの格言に戻ります。真実を見つけたと言う者を疑え。そして、全てを疑ってはいるが、あなたはあなた自身を疑うことを決してしない。僕自身はいったい本物なのか?それとも偽物なのか?それを追い求めている限り、コンフィデンスマンの世界は続いていくようです。...、ポウ!