that passion once again

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【dele #4】想念と贖罪

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『dele (ディーリー)』

第4話「超能力少年が隠した失踪事件」

監督:瀧本智行

脚本:瀧本智行

 

ラッドの野田くんの出演はとりあえず脇に置いといて、今回の第4話、例えば徳川埋蔵金!とかTVのチカラ!とか冝保愛子!下よし子!などが好きな人にはたまらない謎解きだったんじゃないかと思います。隠された石垣の向こうに明らかに人為的な空間が存在している。大きな水たまり、その先にある木の囲いを潜り、石段を上った先に犯人の手掛かりになる木製の細長いものがあるはず。呪われた家の裏庭に雑に埋められてしまった古い井戸がある。押入の天井裏に祀られているお札が悪さを呼び寄せている。そんなヒントとも当てずっぽうとも言えるキーワードを辿り、実際にそのものが存在していた時のなんとも言えない爽快感。まるで『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』をクリアしたような、一種のゲーム感覚とでも言いましょうか。天才超能力者 日暮裕司が残した12枚の絵には、そんな謎解きアハ体験の魅力が詰まっていました。

さらに昭和チックな雰囲気を演出していたのがVHSのような粗い画像と、岩崎太整さんなのかDJ MITSU THE BEATSが作曲したのかわかりませんが、哀愁が漂う70年代フォークのようなギターのフレーズです。この音楽の効果も相まって、日暮少年のオカルティックさ、そして、失踪した母親という艶めかしさがより際立っていました。

ブログなどでドラマの感想を見ていると「切ない」とか「泣けた」とかの意見がほとんどだったのですが、すいません、僕はどうもそういう印象が薄かったです。どちらかと言うと、上記のように昔に流行ったオカルト系の番組の面白さを踏襲しただけの、ちょっとマジメな『世にも奇妙な物語』みたいな印象です。

 

人気ロックバンド RADWIMPS のボーカルである野田くんが出演すると聞いて、さてさてどんな棒読みが始まってしまうんだ?と不安だったのですが、セリフは冒頭のモノローグだけで、あとは死んでいます、背中を丸めて立ち去ります、森の中に立っています、最後はお辞儀します、とあえて無言の演技が続き、ああ、よかったと一安心。ぬぼーっとしているのが、逆に切なさを誘ったんでしょうか。逆に「ありがとう」とか要らぬセリフを喋ってみようものなら、今回の第4話の雰囲気は総崩れしていたかもしれません。あえて喋らせない。そう判断した瀧本監督が正しいと思います。

第1話の般若の鬼気迫る悪徳刑事はとりあえず怖い人で終わらせ、第2話のコムアイのスピーチも不思議ちゃんオーラで乗り切り、そして、この野田くんは無言。『高嶺の花』に出演している銀杏ボーイズの峯田くんもそうですが、ここんところミュージシャンが役者としてドラマや映画に出演することが目立ってきました。峯田くんは、まだ役者としても数々の作品に出演しているし、その乙女んぶりも話題になっていていいキャラだったりするのですが、野田くんは役者より音楽をやっててほしい気がします。今度、映画にも出るんでしょ?巷のEXILEとか韓国アイドルじゃないんだから、言葉とメロディで僕たちを圧倒して欲しいですよね。

 

物語も佳境に差し迫ると、なんで美香さんのお母さんはこんな不幸な目に合ってしまったのか?という疑問が浮かんでくるのですが、それも結局は、てやんでい!とちょっと勢いがつき過ぎてしまっただけでしたというオチで、いやいや、それじゃあ、まるで階段から落ちて死んでしまった "くいな" じゃないか!と。ゾロが世界一の剣豪を目指す理由のためだけに階段から落ちてしまったように、仕事で家庭を顧みなかった重治さんに、もう少し家族や娘の事を考えなさい!っと諭すためだけに勢いがついちゃったみたいな。第2話の突然死、第3話の爆破事件と、なかなかこのドラマは物語のキーになる部分をさらっと流して、どちらかと言うと、その結果に重きを置いている節があります。

そもそも第3話の学生運動、第4話の超能力少年と、どこか昭和を感じさせるキーワードが立て続けに語られていました。無邪気な祐太郎くんは別として、この辺の物語はケイの過去に何かしらの意味合いがあるのではないかと感じ始めています。少年時代のヒーローが超能力少年だったというのも、何かしらの事件、もしくは暴力から解き放たれるために圧倒的な力を欲した。もしくは日暮裕司と同じように、いなくなってしまった母親を探し出そうとしていたのかもしれません。その母親像を第3話の江角幸子さんの会話に重ね合わせていたのだとしたら、ケイが浦田さんの机で真摯に耳を傾けていた理由も納得できます。

そんなんで次回はケイの元カノが登場だそうです。他者との干渉を極端に避けているケイ、その背景が少しずつ語られていくのでしょうか。

 

しかし、出社する時、必ずビルの向かいにある神社に柏手をしている祐太郎くん。いい子だなぁ...。何に感謝をしているんだろ?もしくは何を願っているんだろ?