that passion once again

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【dele #5】情愛と悔恨

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『dele (ディーリー)』

第5話「婚約者は別の顔」

監督:常廣丈太

脚本:本多孝好

 

ケイと祐太郎くんの過去が徐々に明らかになり始めた第5話。そして、本多先生が脚本を務めた2本目とあって、まあ、以前にも増して神回でした。いいドラマだ。

 

まずはケイが車イスの生活を余儀なくされているのは、高校時代に発症した何かの病気が原因ということでした。病気が発症する以前は、普通に高校生活を送っていて、遅刻しそうになったら校門に駆け込み、しかもテニス部で、さらには音楽の教育実習生だった沢渡明奈先生(柴崎コウ)と親しい関係になったと。ただ、その親しい関係というのは病気が発症してからのことらしいので、実際にどういった経緯で親しくなったのか、さらにはその病気が明奈先生と何か関係があるのか?まではまだ謎のままです。今後が楽しみです。

そんな明奈先生とは一年に一回、必ず定期的に会っているようです。まるで乙姫と彦星みたいですが、いつもは全身真っ黒なケイが、この時ばかりは白いシャツを羽織るようです。しかし、白い服、似合わねぇ~。と、言いつつ、ドラマも5話目まで来ると、ケイのこの仏頂面に妙な親しみを感じてきてしまったというか、でも、明奈先生の前ではどこか心を開きつつあるというか、感情を表に出さなくても、ケイが何を考え何を感じているかは明奈先生にはお見通しのような、そんな見透かされている弟感がまた面白いんですよね。

逆に明奈先生の登場によって、今回、舞姉さんこと麻生久美子さんの出番はなし。んん、目の保養が...。

 

祐太郎くんは祐太郎くんで、9年前に14才だった妹を亡くしていたことが判明。今回の依頼人である天利聡史くんの婚約者である楠瀬百合子さん(橋本愛)から、「いいお兄さんだった?」と問われ、ガラにもなく遠い目をする祐太郎くん。過去に何かしらの事情があったこと、そして、言うほど仲のいい兄妹でもなかったことが伺えますが、その辺も今後の展開が楽しみな材料であります。

でも、ちょっと思いました。じゃあ、祐太郎くんって何才なの?

仮に妹が生きていたとしたら現在23才になっている計算になります。今回の調査開始の時に聡史くんと小学生の同級生という設定で祐太郎くんは事務所を飛び出していきますが、その時に「オレ、27才に見えるかな?」とケイに確認しています。ということは、27才よりも下であると。じゃあ、いくつなのよ?と公式サイトを見てみたら、どうやら25才だそうです。祐太郎くんが16才の時に妹が亡くなってしまった...。この辺も今後の伏線になってくるのでしょうか?しかも、次週の予告編では「家出した14才の女の子が死体で発見されたの」と舞姉さんが語っています。いじめとか、なんかイヤ~な鬱要素があることを匂わせていましたが、"14才で亡くなった妹" というキーワードとどう絡んでくるのかが楽しみでもあります。

 

今回は本多先生の脚本とあって、小学校の校舎や鉄棒、公園のすべり台、病室や川べりなど効果的な舞台が数多く登場したり、百合子さんがゴムで髪を束ねるシーンや、最後のどんでん返しなど、『MISSING』や『MOMENT』『FINE DAYS』辺りの往年の本多作品を彷彿させる神回でした。やっぱ、このドラマ見ててよかったわぁと思ったのですが、物語的にも "死" がテーマでありながら、誰も死んでいないというのも、なかなか特殊な回だったような気もします。

また、今回も黒猫チェルシーなんていうマイナーバンドのボーカル渡辺大知くんがゲスト出演していますが、彼も銀杏ボーイズの峯田くんと一緒で、ミュージシャンでありながら役者としても結構な作品に出演しています。方や、野島伸司大先生の説明台詞をこれでもかと棒読みさせられているのに比べ、逆にこのドラマはそういった説明台詞が極端に少ない、しかも、最後のどんでん返しなんて手を握っただけ。それだけでいろんなことが理解できてしまうという、すごい恵まれた作品に出演しましたねぇ~みたいな。

劇中で流れていたショパンの『ノクターン夜想曲)第21番 ハ短調』も、おうおう、春樹チルドレン丸出しの選曲じゃないか!とほくそ笑んでしまったのですが、プレスリーの『ラブ・ミー・テンダー』よりぜんぜんいいでしょ。ショパン最晩年の曲をセレクトしたところに何か意味があるのかないのかはわかりませんが、意味がありそうで実は雰囲気だけで選びましたっていうオチだとしても、それはそれでありじゃないですか。しかも、このドラマ、主題歌もないんですよね。まあ、これだけミュージシャンが参加していたら、逆にアタマ張って主題歌を歌う人の方が大変な気もしますけど。

 

いずれにしても、百合子さんの恋心、聡史くんの秘密が胸にキュンキュン来るなかなかな回でした。これでこそ本多作品です。来週はそんな本多先生の盟友で、このドラマの企画発案でもある金城一紀先生が脚本を担当した第6話。いじめの鬱要素を気持ちいいぐらいに吹っ飛ばしてくれる、金城先生ならではのストーリーテリングを期待しています。ああ、来週は舞姉さんがいっぱい登場したらいいなぁ。