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【コンフィデンスマンJP】地面師ってなんなんだ?(不動産売買の詐欺師のことらしい...)

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あの『コンフィデンスマンJP』が1年ぶりにスケールアップして帰ってきました!先週末に放送されたスペシャル・ドラマ『運勢編』は、只今、絶賛劇場公開されている映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』(先週の映画ランキングではピカチューを押さえて堂々の1位だよ!長澤ちゃんは『キングダム』と合わせてワン・スリー・フィニッシュ!ピカチュー挟んじゃったよ!)の後日譚らしいのですが、そんなことはお構いなしです。モナコ?師匠?なんだ、チミは?ぐらいです。

オマージュ大使の田中亮監督らしく、とにかく小ネタが散りばめられていた『運勢編』。その中でも伊丹十三監督の『タンポポ』をまんまパクっているのは、いったいどういう意図なんでしょう。

タンポポ<Blu-ray>

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売れないラーメン屋、未亡人の店主、ここかしこで登場するウエスタン衣装。連ドラの第1話『ゴッドファーザー編』でも「国税局しゃしゃつゅぶ!」とオマージュなのか単におちょくってるのかわからないぐらいに伊丹十三監督に敬意を示していましたが、今作の『運勢編』ではまんまです。彼こそがエンターテイメントの原点だ!と言いたいかのように、とにかく伊丹作品をこよなく愛しているようです。次作があるとしたら、まずお葬式のシーンが追加されるのではないでしょうか。

その他、オマージュされていた映像作品は、

君の名は。

『七つの会議』と『下町ロケット

『ひとつ屋根の下』

『ソムリエ』

ラ・ラ・ランド

アントキノイノチ

カジノ・ロワイヤル

『マーヴェリック』など。

古沢脚本の『コンフィデンスマンJP』だからこそ許されるこの小ネタの嵐が作品鑑賞の醍醐味です。さらにはZOZOの前澤友作氏、サンシャイン池崎涼宮ハルヒ、ムツゴロウ、島田秀平黒柳徹子陳健一氏、"三つ柏"の三菱財閥岩崎弥太郎氏、アントニオ猪木とスタン・ハンセン、伊吹五郎、最後は西野七瀬ちゃん。もう、どんだけ!このやりたい放題さがたまらないじゃないですか。

 

さらにお決まりのちょい出し小道具も満載です!

◆高橋清志の選挙事務所にウナギのカレー煮のダンボー

◆隕石が落ちた鎌倉の屋敷は与論要造が住んでいた屋敷(大破しちゃったけど!)

◆ボクちゃんがカフェで眺めている求人雑誌に「モスモス、桜田リゾート、はにわ運送」の求人広告が掲載されている(モスモスの正社員になると寮賃・水道光熱費が無料になり、月々13,000円もの食事券が支給され、3年間勤務すると184万円も貰えるらしい!すげぇ!ちなみに桜田リゾートは月給28万円からスタートです)

◆第6話『古代遺跡編』でダー子がポシェット代わりにしていた土偶モナコが持っている

◆遺品整理「おもかげ」の事務所にウナギのカレー煮のダンボー

◆「みなと食堂」のカウンターにウナギのカレー煮

◆古書回収の家のテーブルに赤星栄介『信頼の人生』、美濃部ミカ『MIKA STYLE』の著書が積まれている

三島由紀夫潮騒』の初版と共に斑井パパの『幻を求めて』全巻が積まれている

◆「みなと食堂」の奥の和室にウナギのカレー煮のダンボー

◆古美術商のディスプレイに"なんちゃってオジサンの埴輪"

◆喫茶「銀座」に伊吹五郎製作総指揮・主演の『用心棒大集合』のポスター

てな感じで、まあ、あちこちにウナギのカレー煮のダンボールが転がっています。やっぱり人気商品は違いますね。庶民の味方です。

 

さらに気になるのが「ザ・オサカナ ベストテン」!

その内容は以下!

1位 阿久津晃/投資家 8643票

2位 三木長一郎/弁護士 6741票

3位 さくらんぼ/歌手 6186票

4位 赤星栄介♥/赤星財団 5929票

5位 ジェリンスキ翔/地面師 5610票

6位 磐梯実/映画監督 4801票

7位 高橋清志/政治家 4232票

8位 松崎美津留/ZAWAZAWA 4061票

9位 スミス夫人/資産家 3939票

10位 ホー・ナムシェン/プロモーター 3370票

お~~~い!!!!!! 三木先生が狙われてるぞっ!しかも2位だぞ!てことは、次作は『リーガル・ハイ』と『コンフィデンスマンJP』のクロスオーバーが実現するってことか!やばい、観たい!どんだけ豪華なんだ!蘭丸は無理だけどね...。

3位の"さくらんぼ"は大〇愛さんのことか?4位にまたまた赤星栄介先生が狙われているけど、名前の最後にハートマークがついているのはどういうこと?エースケなんていう子犬ちゃんまで出てきてるけど、いったい映画ではどうなっているんだ?気になる...。5位の"地面師"って、なに?"地面師"?なに?ぜんぜん想像がつかない。"地面師"?(調べてみたら不動産売買の詐欺師のことらしい...。最近では積水ハウスが63億円も騙し取られたニュースが大きく取り上げられていたけど...。ダメだなぁ、やっぱ新聞は読まないといかんなぁ...)

 

さて、肝心の物語ですが...。ここからはネタバレ上等で語っていくので、まだ未見の方はスルーしてください。とりあえず、初見はネタバレなしで楽しむのが、このドラマへの礼儀ですので、思う存分に騙されて欲しいと思います。

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さて、肝心の物語ですが、一見つながりのないエピソードが最後にひとまとめになるという構成が最高です。こういうツイストのある構成って好きですわ。宮部みゆきの『スナーク狩り』みたいな。

未亡人食堂詐欺をやってる韮山波子を使って餌を作り、腐れ縁の渡辺若葉を使ってその餌を阿久津晃の元に持ち込ませる。阿久津にはポーカーでわざと大勝ちさせ財布のひもを緩め食い付かせる。しかも、いい手を配ってあげて今日はついてると思い込ませた。

連ドラでは詐欺の対象が一人だったのに対して、さすがスペシャル・ドラマです。一気に三人です。3vs3です。スリー・オン・スリーです。その分、各キャラクターがあまり深掘りされていなかったのが唯一、残念なところでした。映画『エイプリルフールズ』のように、物語の構成に重きを置いてしまうと、どうも人物造形が上澄みだけになってしまうようです。その辺『ファイナル・ファンタジー』みたいですね。システムに重きを置いてしまうと物語が希薄になり、物語に重きを置くとシステムが希薄になってしまうみたいな。

なので『運勢編』は物語の構成を楽しむドラマです。ただ、例えばアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』、筒井康隆の『ロートレック荘事件』、東野圭吾の『容疑者Xの献身』のように、肝心なところをわざと伏せているのがフェアかどうかという議論も出てきそうです。僕自身はぜんぜんありなので十分に楽しめますが、こんなのフェアじゃない!わかるわけがない!と怒り出す人も中にはいるかもしれません。

 

サブタイトルが"運勢"ということで、物語のテーマは人間の運、フォーチュンとかラックについて語られていました。その結論はダー子が語っていたように「大切なものや失ったものに執着し、ただただ幸運が舞い込むのを願う、それが人間」ということに集約されます。何かを失ったり何かが大切だったりということが取り立ててない僕には、その"執着"という信念じみたものにあまり共感ができないのですが、ただ、わらしべ長者のように、そんなに努力もせず幸運に巡り合うことができるなら、それに越したことはありません。ただ、そんな風に考えていると「占いだの、おみくじだの、そんなもん信じて右往左往しているゴミみてぇな連中」と阿久津に悪態をつかれそうです。「冗談じゃねぇや。てめぇがやるべきことやってねぇだけなんだよ」と。はい、すいません。ぐうの音も出ないです(だけど、そんなことを語れる阿久津がちょっとカッコいいなぁとも思ってしまう)。

ドラマの冒頭で、古代ローマの政治家であり哲学者でもあるキケロの名言『人生を支配するのは運であり、英知にあらざるなり』が引用されていましたが、けっこうな偉人たちが "人生は運である" と語っています。シェイクスピアもナポレオンもアインシュタインも、偉人という偉人が "自分はただ運がよかった" と語っています。それは阿久津が言うように "やるべきことをやった" 人たちにもたらされたものであり、決して、棚からぼた餅的なものではない。やるべきことをやって、その上で最後の最後に神頼み。そんな男になりたいなぁ。できますか?夏休みの宿題を8月31日の夜にまとめてやってるような人間に?ああ...、パワースポット行こっ。