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SEKAI NO OWARIの最新ツアーで明かされた「EYE」と「LIP」の真意

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今年の2月末に発売されたアルバムを今さらレビューするのもどうかと思いますが、ただ、セカオワの最新ライブツアー「The Colors」のセットリストや演出を見る限り、これはどうにもこうにも「EYE」というアルバムが今のセカオワの立ち位置を明確に表しているのではないかと思い、ちょいと語ってみようかと思います。

そもそも、僕個人の意見としては「LIP」に詰め込まれた "いい子ちゃん" なセカオワはあまり好きではありません。アルバムが2枚同時に発売され、大方の予想通りに「LIP」がチャート1位を獲得したのも、僕個人の意見としては気に入らないのです。何が気に入らないか?一言で言うなら "世間に迎合した" アルバムだからです。その迎合したアルバムを世間が予想通りに迎え入れた。こんな出来レースセカオワには求めていないのです。

2月に発売された当時、「EYE」はダークサイド、「LIP」はポップスという括りで紹介されていました。エセジブリの主題歌「RAIN」、オリンピックテーマ曲「サザンカ」、RPGの第二章「Hey Ho」、ある意味でのクリスマスソング「イルミネーション」が収録されているとなれば、世間の人たちはヒット曲の多いポップな「LIP」を選ぶのは当然だと思います。

ライブツアーも「炎と森のカーニバル」から「TOKYO FANTASY」、そして、無謀とも言われた日産スタジアムの「Twilight City」までは良かったのですが、ドームツアー「タルカス」でファンタジーを物語に置き換えた辺りからセカオワのいい子ちゃんぶりが始まり、その余波が「INSOMNIA TRAIN」に続いていきました。ていうか、セカオワの最大の売りは "現実というファンタジー" が売りだったわけで、まんまな "ファンタジー" はただの幻想でしかなく、セカオワである意味がないのです。さらに、そのまんまな "ファンタジー" をまとめた「LIP」も、セカオワが...、というよりもFukaseが歌う意味がないのです。なので、「RAIN」とか「イルミネーション」とか、ホント、好きになれないんですよね。Fukase、いつから猫かぶるようになったんだ?と。

「LIP」に収録されている楽曲群を見ると、ほとんどがNakajin作曲が多く、ポツリとSaoriちゃん作曲が混じってきます。Fukase単独の作曲は「蜜の月」のみです。この辺りも、ゆずに例えるなら、メジャーデビューして1~2年後、急激にスランプに陥った北川を支えるように、岩沢くんの代表曲とも言える「飛べない鳥」や「3カウント」がシングルとして発表され、「アゲイン2」でやっと北川がフッきれたみたいな、そんな印象に似ています。

「LIP」13曲中3曲が天下の小林武史のアレンジ。アルバム全体の約4分の1がコバタケ印というところも、僕の気に入らないところでもあります。そこらのとっちゃん坊やだったミスチルを稀代のカリスマまで研ぎ澄ました手腕は見事でしたが、セカオワで言うと、エキセントリックで繊細なFukaseのキャラを、ただただ、そこらのとっちゃん坊やにしただけです。Fukaseの優男みたいなわざとらしい笑顔は見れたもんじゃありません。まるで『時計じかけのオレンジ』の去勢されたアレックス、そのものです。

その反面、「EYE」の楽曲群を見るとほぼFukaseオンリーになります。Fukaseが抱いている世界観(もしくは人生観)をNakajinSaoriちゃんが支えている。そんな風に見えます。ていうかさ、それが本来のセカオワだったんじゃない?と言いたいわけです。わかります?だから、最新のアー写はこうなるんです。

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Fukaseは尖ってなきゃいけないんです。Fukaseは戦い続けなければいけないのです。Fukaseはエキセントリックでなくてはいけないし、傷つきやすいからこそ相手に攻撃しなければいけないのです。噛みつかなきゃいけないのです。誰かを喰いものにしなきゃいけないのです。

 

セカオワ、約4年ぶりのオリジナル・アルバムの発売がアナウンスされ、真っ先にキックオフされたのは「スターゲイザー」のPVでした。高揚するメロディーもなければ、不埒な言葉の羅列をただただ語り倒し、欅坂の平手ちゃんがノーヘルでバイクをかっ飛ばす。コンプライアンス?そんなもの知らねえよ。闇営業?上等じゃねえか。世間に唾を吐くそんなPVを真っ先に公開したのが、今のセカオワの全てです。

「LOVE SONG」のPV公開になると、さらにブラック・セカオワが全開になり、「Food」になるともうフルスロットルです。毒も喰らわば皿まで、美味いもマズイも関係ない、目の前にあるものをあるだけ食い散らかしてやるぜ。そんなFukaseの決意表明のようにも見えます。それは北川が「超特急」で開き直った先に「ストーリー」があったように、ミスチル桜井氏が紆余曲折の挙句「youthful days」で暗いトンネルをやっと抜けきったように、この先のセカオワFukaseにも今以上の名曲が誕生する予感を与えてくれるのです。

そんな現在のセカオワを堪能できるのが最新ツアー「The Colors」です。ツアータイトルが発表された時は「イルミネーション」を主軸にしたステージングなのかなぁ?と勘繰ったのですが、まあ、いい子ちゃんは吹っ飛びました。最高です。

で、今月の幕張メッセ2DAYS、チケット余ってまっせぇ!今までのセカオワライブのチケット争奪戦を考えたら、マジでありえない現象が起き始めています。そうかそうか、世間はこういうセカオワを求めてないのね。よぉく、わかった。ていうか、世間はそもそもセカオワに何を求めていたの?ジブリ的なファンタジーだとしたら笑っちゃうよ。Fukaseが語るファンタジーというのは、僕たちが生きているこのとてつもなく醜悪な "現実" のこと。この "現実" を直視するのが「EYE」というアルバムなんです。口先だけの「LIP」に惑わされているようじゃ、世間の喰いものにされて終わってしまいまっせ!喰われるんじゃない。食い散らかしてやるんだ。この際だ、たらふく食い散らかして、全部、腹に収めてやろうぜ。