that passion once again

日々の気づき。ディスク・レビューや映画・読書レビューなどなど。スローペースで更新。

tricotの佳作EP「リピート」から、今さらメジャーデビューをする意味をちょっとだけ考えてみた

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去年の5月に5thシングル「potage」をリリース。先行PV公開されていた「ブームに乗って」の路線を踏襲するように、気怠げでありながらチルアウト的でエモな感じの最新tricotスタイルを見せつけ、若い頃のようなガムシャラなロックはもうやりませんよ~だと、イッキュウさんがアッカンベーをしているような、いいじゃんいいじゃん、相変わらずパイセンは変態だし、ヒロヒロのベースはブイブイいうとるし、雄介くんの技巧的な細かなリズムも最高と思っていたのです。

からの、イッキュウさんの課外活動ジェニーハイを経て、なんじゃこりゃ、まんまU2の「Discoteque」のPVか?と思しき「大発明」のPVが公開され、往年のtricot節が炸裂。

今のやるせない自分から脱却するため "幸せを真空パックする大発明" を求めたこの楽曲。パイセンのカッティングに寝そべってベロチューするように雄介くんがスカ的なリズムを刻み、大発明失敗の大爆発がサビで暴発。で、3rd EP「リピート」の発売となったわけです。

なんか、随分と積極的に活動してますなぁと思っていたら、今年の春、いきなりtricotがエイベックス内にプライベートレーベルを設立し、活動9年目にしてメジャーデビューをすることを発表。マジか!令和ブームに乗っかって新時代の到来。まさか絵音くん、イッキュウさんに変なこと吹き込んだわけじゃないよな?

で、ドロップされたのが「BUTTER」のPV。これが今までのtricotを総括するような作品に仕上がっておりまして、はあ、総括かぁ...、と意気消沈してしまったのです。

「爆裂パニエさん」のPVをベースにしている辺り、これでtricotは一周したと言いたいのかもしれないし(それが最新EP「リピート」のタイトルの真意かもしれない)、そこから新たな旅立ちがこの先に待っているのだと思いたいのだけど、いかんせん、アーティストという人たちは過去を振り返り始めるとロクなことになりません。前を向いて先へ先へと進む姿が頼もしいのであって、後ろを見始めたらそこにずっと立ち止まり続けなければいけないのです。その先はないのです。

今年の秋に発表されるニューアルバムがどんな姿になるのかは予想もつかないので、僕の意気消沈が杞憂であればいいのですが、なんか、ちょいとひっかかります。

現実突破を爆音に乗せて突き進んできた3人が、ドラマーの不在で紆余曲折し、最終的に雄介くんと出会い、自由自在にロックでジャジーでメロウな展開を見せた大傑作アルバム「3」。その先に進むのはメジャーという大舞台で戦うこと。今まで裏街道を練り歩いてきた3人が、メインストリートでオラ!オラ!と大股でそこらのへなちょこを蹴散らしていく、そんな未来が待っているのなら大喝采なのですが...。

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パイセン、「どこ見てんじゃい、コラぁ!」と冷や水をぶっかけてきてますが、この決意表明が本気ならば、この秋以降、ぬるくなってネチョネチョになった音楽業界にケルヒャーばりの大噴射がtricotから発射されるのかもしれません。それを期待したい。