that passion once again

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拝啓、黒沢健一さま

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ミスチルは天下を取り、スピッツは朝ドラ主題歌を奏で、エレカシはもう好き放題に生きている2019年。そんな90年代を代表するバンドたちが、今でも古びれることなくこの令和の時代でも輝いているということは、同世代としてもスゴイ嬉しいことです。

しかし、この世代のバンドで僕が一番好きだったのはL⇔Rです。嶺川貴子さまが在籍していたポリドール時代も、黒沢兄弟&木下くんの3ピースバンドも甲乙付け難く、健一くんのソロ時代も最高だし、モーターワークスも最高、さらにはソロ復帰後も最高でした。そんな彼が、今から2年半前の2016年12月に突如として旅立ってしまったことは、本当に、本当に、本当に残念でありませんでした。

訃報の後、秀樹さんが語ったところによると、L⇔Rの代表曲である「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」の成功後、健一くんは "壊れてしまった" と表現していました。当時からのファンからすると衝撃的な告白でした。アスリートが金メダルの次は金メダルを期待されるように、アーティストもミリオンの次はミリオンを期待される、その重圧の恐ろしさを感じずにはいられなかったのです。

米津玄師が「Lemon」と同じように「海の幽霊」に期待がかかっていながらドマイナーな曲をリリースしているように、あいみょんが「マリーゴールド」の後に発表した「ハルノヒ」がまんま二番煎じだったように、今、新海誠監督の『天気の子』に『君の名は。』と同じような期待がかかり、ラッドの新曲にも期待が高まっています。

爆発的なブームが起きると、僕らはスゲー!と飛びついてしまいます。ミスチルは「CROSS ROAD」の一発屋になるのはイヤだと「innocent world」を発表し、その上を行く「Tomorrow never knows」をドロップしました。ミスチルが天下を取ったのは、この三段論法でグウの音も世の中に言わせなかった強みにあり、さらには活動休止したにも関わらず、またまたトップに躍り出た強靭なタフさがあった所以だと思います。これは聖徳太子徳川家康など本当に時代のテッペンに行く大スターにだけ認められるタフさだと思うのです。

スピッツも負けてはいませんが、マサムネさんが3.11のショックでPTSDになってしまったように、桜井氏のようなタフさ加減は持ち合わせていません。エレカシの宮本さんも再ブーム到来で、今は輝いていますが、それもエレカシ30周年の節目で何かがプッチーンとブチ切れたためと思われます。そこからの振り幅が凄まじい。

話が戻って、健一くんは、そもそも売れたいと思ってなかったところがあります。まったく売れないのは問題だけど、爆発的に売れることは望んでいなかった。そして、爆発的に売れることによって生じる重圧から逃れるためには、メインストリートから外れるしか選択肢がなかった。人々はそれを "一発屋" と揶揄します。

HEAR ME NOW

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  • Various Artists
  • J-Pop
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ここに収録されている曲たちを聞けば、彼が遺したトラックの数々が、決して一時だけの気まぐれでない事を如実に物語っています。そんな才能が潰えてしまったと言うのは、本当に残念で仕方ありません。