that passion once again

日々の気づき。ディスク・レビューや映画・読書レビューなどなど。スローペースで更新。

拝啓、宇徳敬子さま

f:id:wisteria-valley:20190720225328j:plain

アルバムのタイトルに "スローライフ" とか "オーガニック" とか "カフェ" とか、とにかくオシャレそうな単語が並んでいる宇徳姉やんの最新アルバム。中身もアコースティックなほっこりソングが目白押しで、まるで自律神経を整えます系のようなリラックスした世界が広がっています。

ソロデビュー25周年を記念して開催されたクリスマス・ライブはまさかのDVD発売。全25曲入り!なんて謳っているので、姉やん、どんだけ歌ったんだ!と思ったら、25曲中10曲がMi-Keメドレー...。騙されていそうな...、そうでもないような...、なんとも言えないすっぱい気持ちが漂ってきます。ただ、一発目の「蒼い時刻」なんて、マジか!っていうくらいに20数年前と変わらない歌声。こんなんされたら、後続のシンガーなんて誰も太刀打ちできなくなるでしょ。

ラッドやミセス、マンウィズにゲス極、セカオワやワンオク、バックナンバーはあまり好きじゃないけど、その辺りの新世代バンドたちがチャートを賑わしている傍らで、ヤバTとか4リミとか、その上の世代に行くとモノアイズとかウーバーとか10フィートとか、ロキノン系のバンドたちがひしめき合っている昨今。

ふと気づくとナガマリもそうだし、森高千里さまに高嶋ちさ子さま、ちょい前は荻野目洋子さまや、そうそうTRFのYU-KIさんも、そして、宇徳姉やん、み~んな50オーバーです。なんなんでしょ。見た目、40代半ばって言ったって誰も疑わないだろうし、そろいもそろって若いって、悪いけど、世の中の50代のオバハンなんて、ホント、見れたもんじゃないですよ(いや、見れる人も中にはいますけど...。普通、やさぐれていくでしょ)。

で、50オーバーな宇徳姉やんが "スローライフ" とかさ、"オーガニック" なんて言ってみてごらんなさいよ。ちょっとインスタ始めましたみたいな、いつも残念な写真(例えば、食べかけのデザートとか?対象が小さすぎるとか?画像がブレてるとか?)をアップしまくるオバハンとか、「オレっちはよぉ~、昔っから坂井泉水より断然UK推しだったんだぜぇ。癒されまくり、サイコーだね!」と豪語しまくっているおっさん達が狂喜乱舞しちゃうじゃないですか。

で、ぶっちゃけ、僕はそういう空気って苦手なんです。

 

姉やんは、だいぶ昔、ほぼバックコーラスだけで生きていた頃があります。若手の育成というか、まあ、GIZAの娘たちを盛り上げるために、あんた達のような若い子たちが前に出なさい、私は後ろでいいの、そんなスタンスで生きていた頃がありました。昔からのファンは、あの曲に姉やんの声が聞こえる、この曲にも姉やんの声が聞こえる!と、まるで埋もれたジャズの名演を探し当てたように、愛内里菜ちゃんを始め、小松未歩とか三枝夕夏とか(懐かしいなぁ...)を聴いたものです。その姉御肌というか、裏で支えるドン的な存在というか、そういう表に出ない、出しゃばらない、そういう奥ゆかしさみたいなものが好きでした。そういえば、Mi-Keだってポンポコリンの後ろだったし...。

また、姉やんの曲はヒーリング効果があると言われ、精神疾患の治療に楽曲が使用されていたこともありました。これも、実際にどこの病院とかどんな効果が、というのは風の噂で聴いたくらいなので、よく調べてもいませんが...。「I can feel~今 きみがいちばん光ってる~」がゆうあいピックのテーマ曲になったのも、そういう経緯があってのことだったような...、うろ覚えですけど...。そういえば公式サイトでは、工学博士の福原博篤先生が姉やんの歌声には1/fゆらぎと呼ばれる自然界と同調する音域があると解説していますが...。耳に心地いいという点では納得です。

いずれにしても、ヒーリングとかから姉やんがスピリチュアル系に走ってしまったのも、なんとなくわかるような気もするのですが...。多くの40代や50代の人が、未だに手首にパワーストーンをぶら下げているのと同じように、姉やんも、どこか精神的な世界にはまり込んで、そこから抜け出せなくなってしまってるようにも見えるのです。それが前作「新月~Rainbow~」ではないかと。"新月" というワードが出てきたことや、どこかの自己啓発書の文言を並べ立てたような楽曲たちが、まんまそれを現わしているのではないかと。で、僕自身は、そういったパワースポットやパワーストーンの類というのは、ホント、他力本願、その何物でもないのではないかと、そう思っておりまして...。

もちろん、神頼みしたくなる時はあります。もう、神様仏様ご先祖様と拝みまくる時もあります。はめるだけで救われるならとパワーストーンをジャラジャラさせてた頃もありましたし、新月のデクラレーションなんてことも試したことがあります。でも、気づいたのです。願ったところで、結局、誰かの救いを待ってるうちは救われないな...ということに。もしくは、誰かの救いを待つようなスタンスは、自分の問題解決の力にはならないな...ということに。自然からパワーをもらう、神社に行って内省する、なんて聞くと、そのパワーで素晴らしいことが起こりそうだけど、実際はもう楽したいから神様でもなんでも奇跡があるなら、それでこの場を変えてよ!という。ある意味、宝くじでも買う気分と変わらないというか。棚からボタモチが落ちてきたらラッキーみたいな。それではいかんだろうと。ボタモチが食べたければ、それなりに自分から働きかけなければいかんのではないかと。

 

今年の2月に突然「今くら」にゲスト出演し、そのオーガニックな暮らしが美貌と若さの秘訣みたいな扱われ方をしていたので(半分は不思議ちゃん扱いでしたけど...)、たぶん、姉やんの中では、このスタンスでこれからもアタシは行くわ!みたいなところがあるのかもしれません...。

リアレンジで過去の名曲たちに新たな息吹を与え、衰えることのないその歌声には驚嘆するばかりではあります。若い頃のような、聴く者の背中を押すようなエネルギーは鳴りを潜め(「One More Chance」には、その気がありますけど)、そっと包み込むような、なんだかアロマオイルでも焚き始めたような、そんなリラクシング効果ばかりを狙っているところも散見してしまいがちで...。

僕の中の歌姫と言えば、宇徳姉やんとZARDの泉水さまが、ほんと二大歌姫でした。泉水さまの新曲は二度と聴くことはできないですけど...、宇徳姉やんには、長く長く、なが~く、続けていってほしい。心の底からそう思います。

アニバーサル・イヤーのカフェライブが来月で終わり、10月のフェス参加のあと、たぶん、姉やんはまた山中湖の別荘地でスローライフを満喫するのかもしれません。もしくは、ここ1年から3年の間の活動的なサイクルに慣れてしまい、リラックス期間終わり!アクティブに生きて行くよ!なんて言い出すかもしれません。アロマとかオーガニックもいいけど、たまにでいいから「ウィダーインゼリー鉄分」のような曲も出して欲しいなぁ。「マルチビタミン」でもいいけど。