that passion once again

日々の気づき。ディスク・レビューや映画・読書レビューなどなど。スローペースで更新。

永井真理子『Brand-New Door』

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思い返してみると、姐さんが初めてセルフカバー・アルバムの話を切り出したのは5月7日の木曜日、ゴールデンウィーク明けのことでした。その前日、5月6日は緊急事態宣言を全面的に解除する予定だった日なのですが、ご存じの通り、主要都市部の宣言解除は5月31日まで大幅延長されることとなり...、そんな中での突如としたアナウンスでした。

これを希望と言わずしてなんと言いましょう。前月の4月11日にはコラボ・アルバム『会えて よかった』を発売したばかりのタイミングです。さらに "セルフカバー" という初の試みにもワクワクせずにはいられないじゃないですか!姐さんが頑張ってるのなら、こっちも頑張らねばと、不思議なパワーが身体の奥底からグングンとみなぎりまくってくるのはもちろん、コロナなんかに負けてらんないってことっすね!と、誰もが明るい未来に心を躍らせた瞬間でもあったと思うのです。

 

と、書いておきながらなんですが、ボク自身、"セルフカバー" というものにはちょいと懐疑的なところがあります。

そもそもセルフカバーには二通りのパターンがあります。ひとつは、最近で言うと米津玄師さんや竹内まりやさんなどが話題になった "提供曲を自身でカバーする" パターン。ボク自身、この提供曲系についてはとくに懐疑的に思っているわけではないんですね。沢尻エリカさんに提供した「Stay with me」の真理子さんカバーも、ほんわかとした浮遊感が心地よい、淡い恋心に突き動かされていく前向きな気持ちを歌った名曲だと思っているのです。

懐疑的に思うのは、もう一つのパターンです。今まで幾多のアーティストの方々が挑戦して、ほぼ失敗しているのが "過去に発表した楽曲のリメイク作品"。このパターンのセルフカバーで、オリジナルを越えた作品というものに、正直、今まで一度も出会ったことがありません。大抵は「なんか違う...」という印象しか残らず、下手をすると拒絶反応が起こり、最初の1回しか聴かないなんてことが割とザラだったりするのです。それを客観的に捉えてみると下記の3点に集約されるのではないかと。

 ①歌い方が違う

 ②トラックに勢いがない

 ③オリジナルを壊しすぎて訳がわからなくなっている

この中でも①については致命的なところがあります。アーティスト側の制作意図として、リメイク作品を発表する時点での "声・メロディー・想い" などを歌に託しているという経緯は重々わかるのですが、それがどうにもこうにもオリジナルからかけ離れていることが多すぎるのです。この歌い方の違いには今まで何度、もう何度、失望してしまったかわかりません。

さらにはトラックのアレンジも同様です。聴き慣れたオリジナルの世界観を踏襲しすぎるあまり、ただ単に録り直しただけのお手軽トラックになっているものがあります。そういった類の楽曲は、大概にしてオリジナルの制作当時の勢いをなくした、どこか小手先だけのような、音数の少ない簡易的なトラックに聴こえてしまうことが多いのです。逆に世界観を壊しすぎて、いったいこれはなんの曲?と思うようなものも中にはあります。それはそれで実験的な試みであったりして面白いところもあるのですが、では、それがスタンダードになるかと言うと、一時だけの気まぐれで終わることがほとんどです。

なので、ナガマリのセルフカバーと聞いて一抹の不安はありました。

 

がっ!

来たる9月27日にヤバすぎるブツが届きました!

youtu.be

一瞬にしてアドレナリンを最高潮まで上昇させるギターリフ、オリジナルのニュアンスを絶妙なスパイスで放り込んでくるアレンジ、さらにあまりにも自然体、そして、貫禄と歓喜と優しさに溢れる姐さんのボーカル。

歌い方が違う?しゃらくさいこと言わんとって~!

トラックに勢いがない?ありまくりなんですけど~!

オリジナルを壊しすぎてる?耳穴かっぽじいてよく聴きんしゃい!

セルフカバー、最高じゃ~!

はい、すいません、舌の根も乾かないうちに前言撤回です。

 

そうこうしているうちに、今度はこちらが投下されました。

youtu.be

9月27日から二週間後、10月24日の大阪ライブまであと二週間という絶妙なタイミングで、あのハイパー「ハートをWASH!」に乗せて収録曲が発表されたのです。

こんなことってあります?

もう居ても立っても居られなくなって大阪まで走ったTeam Mの大移動ときたら、GoToキャンペーンよろしく、わき目もふらずに猛進していくバッファローの大群のようでした。

 

てなわけで、性懲りもせず、またまたナガマリ全曲レビューをやっちまいます。

で、なんかすいません、気がついたら10,000文字を越えるテキストになっちまいましたので、こんなん付き合ってらんねーよ!と思われる方は、ホント、テキトーに読み飛ばしてください。

 

1.「Brand-New Way」

オリジナル音源は1988年の発売。もう、かれこれ32年も前の楽曲になります。

『Brand-New Door』に収録されている楽曲のすべてに言えることですが、30年前後ものあいだ、何度も何度も繰り返し繰り返し聴き続けてきた楽曲を、ここで新たにリメイクするというのは、かなり挑戦的な試みだと思うのです。下手をすると、先ほどのどこかの誰かさんが滔々と語っていたように、なんか違う...と拒絶されまくっても全然おかしくない、リスクありまくりの試みではないかと。

そんなヤカラを平手でバッチーン!とハタいたのがこの楽曲。とにかく爽快です。

先述したようにアドレナリンが一瞬にして沸点に到達するギターリフは、新しいこと(新しい道、新しい試み、新しいやり方)に取りかかる高揚感を否が応でもかき立ててくれます。これはコロナ禍にあるボクたちが、今、ここで生きているこの世界を、なにがなんでも希望の世界へと変えていくためのファンファーレのように聴こえるのです。

中でもボクのお気に入りはBメロの部分。オリジナルでは、水たまりを駆け抜けていく降ろしたての真っ新なスウェードの靴が、キラキラと輝く水しぶきの中を颯爽と突き進んでいく様を、根岸先生が煌びやかに描いていました。それがブランニュードアver.では、次々と襲いかかってくる "ためらい" を、これでもかと無双でなぎ倒していく様に生まれ変わっているのです。それが痛快でたまらない。

先日、keiZiroさんのラジオ番組に電話ゲストで出演された際に、アルバムの中で最初にレコーディングをしたのが、この「Brand-New Way」だったというお話を真理子さんがされていました。それを聞いてなるほどと思いました。アルバムのタイトル、楽曲のアレンジ、ジャケットのデザイン、これらの大元になる想い・通念みたいなもの。もっと言うと、この "セルフカバー" 制作に踏み切った根幹になるものって、この "ためらい" をなぎ払っていく強靭な意思なのではないかと。で、なければ、ここまでオリジナルを超えるアレンジとボーカルは生まれないのではないかと。

まさに "未来をこの手でつかむ" ためのエナジーソング。やったりましょう!

 

2.「Cherry Revolution」

オリジナルは1994年。大傑作アルバム『Love Eater』の先行シングル。イントロのクラブ・ミックスに度肝を抜かれたTeam Mの方も多かったと思いますが、マジでカッチョよすぎのビービーブーですわ!アニキのセンスに脱帽です。

ここで他のアーティストの話を持ち出して恐縮なのですが、L⇔R黒沢健一さんが逝去される前に発売したラスト・アルバムが、セルフカバー・アルバム『LIFETIME BEST "BEST VALUE"』でした。2015年のことです。

このクロケンさんのアルバムはL⇔R時代からソロ時代までを網羅した選曲になっているのですが、発売された当時のインタビューでこんなことを語っていました。

セルフカバー・アルバムだから、 セルフ・プロデュースはできない。なぜなら、最初にレコーディングした時点で "これがベスト" と思って作っているから、自分でプロデュースしたらまた同じものを作ってしまう。たぶん何度やっても同じです(笑)

学者肌の音楽家だった「L⇔R」黒沢健一。早すぎる死と才能を惜しむ | WHAT's IN? tokyo

今回の『Brand-New Door』の収録曲の中で、『OPEN ZOO』以降の真理子さんセルフ・プロデュースによる楽曲が全部で2曲収録されています。そのうちの1曲が、この「Cherry Revolution」になるのですが、イントロのクラブ・ミックスを除くと、アレンジはほぼオリジナルと変わらないものになっています。

ラジオ番組『ORANGE ROOM』で満太郎さんが教えてくれたところによると、ガラッとアレンジを変えたものと、ほぼ原曲に近いアレンジのものとのバランスをアルバム全体の中で見たとおっしゃられていました。そのバランス感覚が絶妙すぎて、トータルで聴いた時の流れが、まるでライブを見ているような最高の曲順になっているのですが。ただ、その中でもクロケンさんが語っているように、'94年当時のオリジナルがほぼベストなもの、完成されて動かしようがないもの、そんな事実もあるのではないかと思うのです。裏を返すと、それだけ真理子さんが今までリリースされてきた200を超える楽曲たちが、ベストな状態で私たちの耳に届いていたことへの証明にもなると。

そんなトラックを改めて録り直すとなると、テキストの冒頭でどこかのカスが偉そうに語っていたように、小手先だけのお手軽なトラックになってしまうこともあります。'94年の、あの勢いを再現するというのも難しいところもあると思うのです。

が。

ここがまたスゴイところだと思うのです。ギターやベースの演奏はもちろん、シンセサイザーからリズムの打ち込み(実際にドラムを叩いていたりもするのでしょうか?)まで、たぶん姐さん復活後の『Life is beautiful』から、ほぼ全楽曲のトラックはアニキが一人で作り込んでいます。'94年のサザン・ロックを踏襲したバンド・サウンドの季節から、このゴリゴリのグランジとポップ・パンクを融合したサウンドへの変貌は、そんじゃそこらのセルフ・プロデュース能力ではなかなかにマネできない領域ではないかと。己の中に "革命" を起こした者だけが到達できる領域ではないかと。"見せかけ" だけじゃ、ここまでできませんゼ、アニキ!

KEEP MOVING!KEEP MOVING!

 

3.「One Step Closer」

7月10日に無観客で行われた33周年記念ライブ。そこで披露されていたライブ・バージョンでのアレンジです。オリジナルは1987年。前田先生による作詞作曲になります。

そもそも「One Step Closer」は、真理子さんにとって大切な大切な1曲であると共に、ボクらTeam Mにとっても(ボクら?)凄く大切な大切な1曲でもあると思うんです。

1stアルバム『上機嫌』から聴き続けている方もいれば、ベストアルバム『大好き』で知ったというファンの方も多いと思いますし、中には『my foot steps』からの方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。いずれにしても "1歩ずつでも 近づいていくの" "あきらめない たった1つの夢をつかむまで" という、若かりし頃の姐さんや前田先生の願いというか希望というか、何にも屈しない若さであったり、負けそうになっている自分を鼓舞するための励ましであったり、そんな精神性に満ち溢れた楽曲であると思うのです。そして、それはリスナーにも同じ共有感覚として染みついている。

オリジナルでは煌びやかな80'sシティ・ポップの中に、ディスコ・ミュージック的なベースラインを取り入れた、アレンジャー根岸さんの真骨頂みたいな楽曲になっています。ややもするとバラードになってしまいがちな歌詞とメロディーを4ビートの軽快なリズムに乗せることで、よりメランコリックさが際立つアレンジになっているのです。

それから30年以上の月日が流れ、真理子さんもボクらも、いくつもの悲しいことや苦しいことに出会ってきました。その度に輝きをなくさないようにと自分を奮い立たせ、時に臆病になってしまいふさぎ込むこともあったと思います。そりゃ、いろいろあるよね。それでも、今、こうしてボクらは2020年を楽しく(時にしんどい思いをしながら)生きています。

7月10日の33ライブで披露された「One Step Closer」は、そんな今までの足跡を振り返ると共に、ここまでよくやってきたよねという労い、そして、ここまでこれたんだから、この先もきっと大丈夫だよと、みんなであきらめないで一歩ずつ進んでいこうと、そんな大きな大きなLOVEに包まれた演奏だったと思うのです。

望郷を彷彿させるようなイントロ、AメロBメロを支えるのは根岸さんへのリスペクト、遠からず近からずの絶妙な距離感、その上に真理子さんのすべてを包み込むような優しくて力強いボーカル。この想いは絶対に成し遂げるんだという痛切な願いを込めるように、ラストのサビでグルーヴがたたみかけ、希望に満ちたシンフォニックでエンディングを迎えます。

大丈夫です。この曲がある限り、ボクらはいつでも "一歩ずつ近づいていく" ことができます。なにも不安に怯えることなんてないのです。

 

4.「ZUTTO

1990年の冬、ある等式が日本で発見されました。「永井真理子ZUTTO」。この等式を因数分解すると下記のような解にたどり着きます。

永井真理子やまだかつてないテレビ(バラエティー+音楽番組)

(歌がうまい+女性アーティスト)=(ヒット曲が生まれた番組+高視聴率)

(ボーイッシュ+キュート)=(冬の季節+バラード)

よって、永井真理子ZUTTO になると。

このパブリック・イメージの等式は、一度でも確立してしまうと、なかなかに突き崩すことが難しくなってしまいます。俳優さんが固定されたイメージがつくのを嫌がってシリーズものに出演したがらなかったり、多くのミュージシャンが固定された1曲に縛られるのを嫌がって紅白歌合戦の出演を辞退したりするのは、この恐るべきパブリック・イメージを避けるためだと言われています(他にも理由はあると思いますし、逆の方法もまた然りだとは思いますけどね)。

なので、「ZUTTO」に対する世間様のイメージは、ボクが想像している以上に粘着力が強く、たぶん、想定以上に一発屋臭がプンプンしているはずなのです。んでもって、そんな楽曲をリメイクするとなると、これはかなり無謀な挑戦に近いだろうと。できることなら手をつけない方がいいだろうと。それをリスクヘッジと呼ぶのではないですかと。そう思う訳なんです。

がっ。

このご夫妻、軽々と超えちまいましたよ。

ビックリですわ。

リスクもへったくれもありませんわ。

ホンマ、トビウオみたいな2人ですわ。

ラジオ番組『ORANGE ROOM』にグリコ&きゃのーらさん(略してびんたさん)が投稿していたように、とにかく姐さんのボーカルがふわふわと優しすぎるっ!

なんですか、これは。ヒマワリくんの羽根でも、ここまで軽くないでしょ!トゥルットゥ!

トラックもオリジナルに近いアレンジを施しながら、生音なのかどうか、クレジットがないのではっきりとはわかりませんが、maruseさんのバイオリンやミチさんの伴奏が加わっているような、とっても柔らかいトラックに仕上がっています。ラストのギターソロなんてスラッシュやブライアン・メイよろしく、こんなひと時よ、ずっと続いてぇ~とばかりにキュインキュイン唸っています。好きだわ~。

 

5.「日曜日が足りない」

「Cherry Revolution」と同じく大傑作アルバム『Love Eater』からの1曲。アレンジはほぼオリジナルに近いものとなっていますが、一点だけ違うとすると真理子さんのほんわかコーラスが加わっていること。これによって、たまに過ごせる恋人たちのキラキラ度がかなり増しております。

今回のセルフカバー・アルバム『Brand-New Door』が発売されるにあたって、多くのTeam Mの方々が収録曲の予想をされていたとは思いますが、ほぼほぼその予想って『OPEN ZOO』以前の根岸さん時代を想定されていたのではないかと思うのです。というか、ボクがそうでした。

なので『OPEN ZOO』以降の楽曲がセレクトされていることに、ちょっと予想外だったなと思うところがあるのです。しかも、2曲とも『Love Eater』から選ばれている。『OPEN ZOO』でもなければ『KISS ME KISS ME』でもなく、東芝時代からでもない。ここに何か理由があるのかな?なんて思ったりもするのですが、う~ん、まったくわかりません。

この「Cherry Revolution」と「日曜日が足りない」の2曲から読み取れることは...

①どちらもシングル曲であること

②『Love Eater』発売の前後であること

③どちらもRemix Versionが存在すること

これぐらいしか共通項がありません。

仮に姐さんの思い入れが深いという理由でこの曲たちが選ばれたのだとしたら、他の楽曲も甲乙つけがたいほどだと思うので、それだけで『Love Eater』からセレクトされるのも考えにくい。では、リミックスがあったから手をつけやすかったという理由だとしたら、どうでしょう。それもこのご夫妻に限っては、なかなかそんなお手軽な感じでお話を進めていくというのも考えにくい。

うん、まったくわかりません。

ただ、1994年という年は、たぶん、永井真理子ヒストリーの中で、なにか特別な年であったのではないかという気はします。今後、『Brand-New Door vol.2』『vol.3』が発表されていく中で、もしかしたら、その辺が明らかになるのかもしれません。

 

6.「Say Hello」

オリジナルは1991年発売の『WASHING』。もとは5分半ほどの曲でしたが、今回のブランニュードアverでは6分半の大曲に生まれ変わっています。単純に曲の長さだけで話をするのなら「my sweet days」「wanna be free」「ほんの少し」に次ぐトラック・タイム。姐さんの楽曲群の中でも上から数えて5本指に入ります。

もともとが憂いを帯びたマイナー調の楽曲で、根岸さんのアレンジもどこかプログレッシブ・ロックな感じがあり、ピンク・フロイドキング・クリムゾンなどのように複雑な構成と物語性を孕んだ変調しまくりの楽曲になっています。

そのタイトルが「Say Hello」って、いったいどういうこっちゃねんというのが、当時からのボクの感想なんですけど...。せめて「Say Don't Cry」とか「So Alone」みたいなイメージで、言うても「Change the World」みたいなところじゃない?と。「Hello」ではないでしょうと。「Hello」というのは「やあ、こんにちは」「やっほ~」みたいなことであって、言葉も出てこない別れ際のアベックが求める言葉ではないのではないかと。イヤじゃない?車の中で別れの言葉を模索している中で、急に相手が「やっほ~」なんて手を振り始めたら。なめとんのか、ワレは!って感じになるじゃないですか。

すいません、ふざけすぎました。

でも、今回のアレンジで、その「Say Hello」というのは夜明けの光、言うなれば、希望の光、光のぬくもり、そういった類のものがビルの向こう側、もしくは地平線や水平線の向こうから顔を出してくれるのを待ち望んでいる心象風景のことだということがわかったのです。世界が明るくなっていくさまと言いましょうか。この世界が「Hello」と語りかけてくれるのを待っている。

それもこれも真理子さんの説得力ありまくりのボーカルと、あなた様はドミニク・ミラーですか?と言いたくなるようなアニキのギターリフがあるからわかった感じなのです。ネーバービーザーセィーーーーー!!スゴいですよね。

東の空がほのかに白んでいく時の、あの少しづつ不安が和らいでいくような解放感。2020年の今、誰もが同じように、この世界の夜明けを待ち望んでいるような気がするのです。

 

7.「3D NIGHTへおいで」

オリジナルは1988年に発売された2ndアルバム『元気予報』に収録。フュージョン系のシンセ・ポップが楽しい、シンディ・ローパーとかワム!とかカルチャークラブとか、そんなMTV的な'80sチックがいい感じな密かな人気曲。このディスコテックなリズムって、なんか今聞いても気持ちいいんですよね。

それをなんて言うんでしょ。たぶん絶対にやらないだろうけど、例えばカルチャークラブの「カーマは気まぐれ」をパール・ジャムがカバーしたみたいと言いましょうか。エディ・ヴェダーが「カマカマカマカマカマカミ~リオ~」って歌うのを聞いてみたい気もしますが(笑)

すいません、話がそれました。

でも、それぐらい、それぐらいあのシンセ・ポップがグランジに生まれ変わっているのです。イントロのギターリフなんてR.E.M.ビル・ベリーみたいじゃないですか。なんか、アメリカ映画とかに出てくるおっきな家のガレージで、いい年した方たちが集まってね、若い頃みたいにまた盛り上がろうぜって、軽くジャムっているような感じがするんですよ。バドワイザー片手に持ったり、ジャック・ダニエルをラッパ飲みしながらさ。

カッチョえぇ~。そりゃぁ、姐さん、ライダースも似合いますわな♬

Open the closed door!

 

8.「ハートをWASH!」

さてさて、お次はハイパー「ハートをWASH!」です。

7月10日の33ライブのテキストでも書きましたが、このゴリゴリのカッティングギターだけで、ご飯100杯でも1000杯でもおかわりできちゃう最高のパンクロックです。

そこからの『Brand-New Door』の歌詞カードの話になるんですけど、これパンキッシュですよねぇ。ピストルズとかクラッシュとか、その辺のアティテュードが散りばめられています。自由への疾走ってやつっすね。

「Cherry Revolution」の冒頭の英語、真理子さん、なんて言うてるの?と思われている方がいらっしゃいましたら、P.5をご覧ください。キープムーヴィン、キープムーヴィン。

 

9.「少年」

オリジナルはナガマリ初のベスト・アルバム『大好き』に収録されている人気曲。

この永遠の名曲をリメイクするというのも「ZUTTO」と同じように、かなりのリスクを伴うものだと思うのです。だって、みんな30年近く、それこそCDがキズだらけになって音飛びするくらい聴き続けてきてるんでしょ。時間の長さというものを今一度、確認してみましょうよ。30年ですよ。

それをこんな風に一足飛びでね、スッと人の懐に染み込ませてくれるものですか?

冒頭で、個人的にはセルフカバーには懐疑的なんですと書いたのですが、その中でも歌い方の違い、昔と今との声質の違いに失望してしまうことが多いとも大口叩いて語ったのですが、ホンマ、そんなアホみたいな意見を姐さんは一蹴してくれます。

まるでU2のような、こう、己の中のイノセントを解放していくようなイントロが鳴り響いた途端に、あっ、オリジナルを越えた、と誰もが納得したはずです。それって信じられます?ファン投票をすれば上位10曲の中に必ず選ばれるような名曲が、こうも軽々と越えられるものですか?

さらに "深夜の~" と真理子さんのボーカルが始まった途端に、なんでしょ、変な話ですけど、「少年」を初めて聴いたような感動に包まれるんですよね。

で、それに輪をかけるようにね、言葉の一つ一つを本当にかみしめるように丁寧に歌ってらっしゃるんですよ。本当に丁寧なんですわ。丁寧。

来たる11月20日の渋谷ライブで、一度は閉じられたドアが、新しい扉となってとうとう開きます。その扉の向こう側には、明日に向かって走り出して行く "私の中の少年" が、誰の心の中にも必ず蘇るはずです。

 

10.「好奇心」

オリジナルは、こちらも大傑作アルバム『Catch Ball』に収録されている、陣内大蔵さん提供による楽曲。時は1990年です。

先日のラジオ番組『ORANGE ROOM』で、COZZiさんが満太郎さんに乗り移って教えてくれたところによると、今回の『Brand-New Door』のアレンジで、よっしゃ!こりゃうまくいったぜぇ~と喝采を上げたのが、この「好奇心」。そして、先ほどの「少年」だったそうです(教えて頂き、本当にありがとうございました!)。

このアレンジも、7月10日の33ライブで披露されていたものですが、その当時、ボクはこんな風に語っています。

アレンジも、なんか埃っぽい感じのいい塩梅なミディアム調になっていて、R.E.M.とかパール・ジャムとかソニック・ユースとか、頭脳警察とかシナロケとか少年ナイフとか。なんかそんな系譜の人たちが思い浮かんでくるような、パンクでグランジオルタナティブなんだけど、ポップでもあるというこのバランス感覚が素晴らしいなと思いました。

https://wisteria-valley.hatenablog.com/entry/2020/07/13/181614

この感想は変わるどころか、より強くなったと言いますか。アルバムの中で10曲目、実質、ラストナンバーに構成されているところからも、この『Brand-New Door』という "新しい扉" をめぐる物語の結末は、さらにその先を見据えた To be continued になっていると教えてくれています。

 

11.「私の中の勇気 アコースティックバージョン」

こちらは、どちらかというとボーナス・トラック的な位置づけになる楽曲ではないかと思います。

コロナ禍の自粛期間中の5月17日(日)、みんなでワチャワチャできることを楽しもう!と『おうちでトーク4』を生配信。そのラストに披露されたのが、前田先生とのこのバージョンでした。

今年の2月、横浜の大黒ふ頭にダイヤモンド・プリンセス号が入港してから、あれよあれよという間にコロナの侵食が拡がり、4月の頭には緊急事態宣言が発令、学校や職場などが一度に完全閉鎖されてしまいました。誰もが引きこもるしか対策を講じることができないもどかしさの中で、自粛期間は徐々に長引いていき、お互いに協力しあう中でも疲弊感に苛まれていくような状況でした。

真理子さんは、それでも「がんばれ」と歌いかけてくれました。

この「がんばれ」に、どれだけ元気づけられたTeam Mの方々がいたでしょう。

 

そして、あれから時は流れ、今、こうして新たなアルバムを手にできる喜びがあります。おうちシリーズから無観客ライブ、先日の大阪ハイブリッドを経て、11月20日には渋谷ハイブリッドが開催されます。

この間、姐さんは毎晩、一日も休むことなくおやすみツイートをしてくれています。

もう、ホント、ナガマリは最高だぁぁぁ!!!!!

さあ、みんなで新たな扉を開け放ち、明日に向かって走っていきましょ~!

 

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