『インランド・エンパイア』を紐解いてみようと思う
【作品情報】
タイトル:INLAND EMPIRE
監督:デイヴィッド・リンチ
脚本:デイヴィッド・リンチ
日本公開:2007年7月21日
上映時間:179分
『The Return』のナイド論を整理する際に避けては通れないのが、このリンチ史上最強に意味不明で最高にイマジネーションに溢れた超イミフ映画『インランド・エンパイア』ではないでしょうか。
21世紀を迎え、なんでもかんでもデジタル化された世界で、フィルム代を気にしないでいくらでも撮影ができるじゃないかっ!ヤッホーイ!と、SONYのデジタルカメラを片手に、こんなん思いついたからどうよ、とりあえずローラ・ダーンの家で撮影してみようよ、ヤバッ!めっちゃ楽しい、これはどうよ、それもいいじゃない、ええい、ポーランドまで行っちゃおうぜ、スゲェ、デジタル最高!と、まあ、リンチ監督が2年半かけて好き放題に撮った作品です。なので物語は脈絡がなく、もっとわかりやすい作品にしてくれ!と配給会社がせっついても聞く耳を持たず、お金がなくなれば前妻から借金をし、挙句の果てには主演のローラ・ダーンが「しょうがないから私が制作者として名前を出すわよ、でなきゃ公開もされないんでしょ?」とスタジオ・カナルを説き伏せ、映画のプロモーションにかけるお金もなくなると、ハリウッドのど真ん中に牛を連れて「チーズ」を連呼、ホント、爺さん、気が狂ったのか?と言いたくなる状況でした。
そんなキチガイ爺さんの映画を3時間も観続けるのは、観てる方もキチガイではないのかと思いますし、それを最高傑作と騒ぐのはもっと気が触れているのではないかと思います。そんなキチガイが僕です(笑)。でなければ、こんな映画を何回も何回も観るわけがありません。
さらには2時間半経ったところで、そろそろラストに向かって何かエライことでも起きるのか?と思っていると、天下のポケベル裕木奈江先生がたどたどしい英語でヴァギナを連呼、ちょい役の割には重要なセリフをどんどん語っていくわけです。それはいいとしても、どうにもこうにもこのたどたどしい英語が耳に触り、一気にリンチ世界から興ざめしていくわけで...。2時間半も意味不明な映像を観て最終的に興ざめするなんてこんな拷問はありませんぜ、姐さん。
しかし、世の中とは不思議なもので、10年前はポケベルがリンチ作品を台無しにした!と騒がれていたのに、今では国際派女優だそうです。手の平返しとはスゴイものです。そして、その役柄である "ナイド" が『The Return』の中ではかなりの重要なキャラクターときたもんだから、まあ、見過ごすわけにはいかないわけです。ただ、リンチ監督もお勉強したのでしょう。"ナイド" にはいっさいセリフがありません。ピーピー鳴いているだけです。まあ、これにも深い意味がありそうで、なかなかなのですが。
そんなわけで、秋クールの連ドラがどれもこれもつまらないので、完全にリンチ・マニアしか興味を示していない『ツイン・ピークス The Return』を振り返ろうかと思い、さらには、その前菜として、この『インランド・エンパイア』を、またまた小出し連載の形で紐解いてみようかと思います。
『ツイン・ピークス』同様、映画公開から10年の間にいろいろと考察、もしくは妄想され続けている映画ですので、今さらファントムはスー自身の影なんだぜっ!とか、劇中劇の内容はシーンの彩度で見極めていけばつながっていくんだぜっ!とか、ロコモーションガールは単なるリトルピープルなんだよなっ!とか語るつもりはありません。どちらかと言うと、ググってもあまり語られていない部分に焦点を当てながら、内藤仙人さまが語っていたようにダブル2本道、鯵の開きをおいしく食べる方法を書き込めていければと。
では、姐さん、次回の『インランド・エンパイア論』は "AXX ON... and" ですよ。